麻生太郎の母
‘ノブレスオブリージュ’、「地位ある者は、より高度な義務を果たさなければならない」麻生太郎を考えようとするとき、その言葉を思い出す。
吉田茂の娘、和子。二・二六事件が決行された日、彼女は湯河原の伊藤屋旅館の別館「光風荘」に、祖父牧野伸顕を訪ねた。そこで、河野寿大尉が率いる襲撃部隊と遭遇する。牧野は大久保利通の次男で、吉田茂の岳父であった。欧米協調を自論とする彼は、かつて内大臣として天皇の側近にあったことから襲撃を受けた。
兵士たちは伯爵を追いたててから襲撃するために、旅館に火を放った。旅館の裏には垂直のがけがあり、孫娘の和子と一人の看護婦が牧野を案内して、その崖を登った。しかし、登り切れず立ち往生したとき、下から投光器を向けられた。兵士たちが銃を構えると、二十歳だった孫娘の和子が‘おじい様’の前に着物を広げた。兵士たちはこの勇ましい姿に心を打たれ、いったんは伯爵に向けて構えた銃を下ろした。
この和子こそ、麻生太郎の母である。
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