めんどくせぇことばかり 本 世界史
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『欲望の名画』 中野京子

図書館に行ったら、“秋の本”という特集を組んで本を紹介していました。読書の秋ということでしょうか。

私にとって、秋と言ったら何でしょうね。スポーツの秋、・・・スポーツって言ったって山に登るくらいか。食欲の秋、・・・これは大いにあり得る。さんまを食いましたよ、先日。徳島の親戚から送ってもらったすだちを絞ってね。芸術の秋、・・・絵も、音楽も、映画も好きだけど、すべて受け手側ですね。

まあ、それらの本が並べられていたわけですが、芸術の秋代表には、中野京子さんの本も含まれておりました。この本は、一冊にまとめられた本としては、中野京子さんの最新作じゃないでしょうか。

なんでも、文藝春秋に時々書いている《中野京子の名画が語る西洋史》というコラムがあって、それを大幅に加筆修正してまとめたのがこの本ということです。

表紙の女性、正面にある鏡を見ながら真珠の首飾りをつけようとしています。口は半ば開き、瞳を輝かせてうっすら笑みをたたえているのは、思う人にでも会いに行くんでしょうか。フェルメールの《真珠の首飾りの女》っていう絵ですね。

中野京子さんが書いているんですが、彼女の前方に広い空間があり、そこには何も描かれずに、ただ向こう側の壁があるんですね。それがいかにも意味ありげです。

俵屋宗達の風神雷神図屏風の、風神と雷神の間の空間を思い起こさせます。風神雷神は千手観音の眷属だそうですから、背景には千手観音千体が並んでいるのを思わせるわけでしょう。三十三間堂みたいに。・・・勝手にそう思ってたんですが。背景が金色だし・・・。

そう言えば、この絵も前から金色の光が注いでいませんか。そのあたり、面白い解釈があるんだそうです。それを読んで、もしそうなら、本当にすごいなって思いました。


『欲望の名画』    中野京子

文春新書  ¥ 1,078

隠された意味を紹介し、画家の意図や時代背景を読み解いてきた中野京子の最新刊
第一章 愛欲
第二章 知的欲求
第三章 生存本能
第四章 物欲
第五章 権力欲
欲望の果てに


本書の最初に登場するドラクロアの《怒れるメディア》。

この絵を見た人に、どんなシーンを描いたものか質問したことがあったんだそうです。大半の人は、「悪者に追われた母親が子どもを守ろうとしている」と答えたそうです。

それにしては二人の子どもの様子が変です。二人ともなんとか母親の手から逃れようとしているようにしか見えません。そう、この二人の子は、このあと母親に殺されます。

エウリピデスのギリシャ悲劇、『王女メディア』ですね。高校の世界史の教員でしたから、こういうのをよく読みました。高校生は教科書の勉強よりも、こういう話を遥かに喜ぶんですよ。ギルガメッシュ叙事詩、エジプト神話から始まって、ギリシャ神話、旧約聖書なんて話してると、そのうち一学期は終わりです。

二番目のジェロームの《フリュネ》。フリュネが裁判にかけられたのには「諸説あり」とあります。不敬罪ということらしいんですが、ある本には、年寄と結婚してその夫のを殺し、遺産を自分のものにすることを繰り返したと言う説が書かれていました。

裁判の形勢が不利になると、フリュネは法廷で裸身を晒し無罪を勝ち取ります。

老裁判官たちはよだれを垂らして判決に手心を加えたかと言えばそうではなく、古代ギリシャに於いては完璧な肉体美はそれ自体が神にも等しいと考えられており、彼らはフリュネを通して美の女神を見たわけです。

有罪判決なんか出せるわけがありません。

男子生徒は大受け間違いなしです。

ですが、女子生徒に口を利いてもらえなくなりかねませんので、この絵を授業で使ったことはありません。

一つ一つの絵に、素人にはなかなか捕まえにくいポイントがあるんですね。ただ単に言われ曰くを知ることよりも、やはり作者は細部に神を宿らせているので、そういうところにこそ、その絵の本質が隠されているんですね。

面白い本でした。




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ジャンル : 本・雑誌

カリエール『欲望の名画』 中野京子

物事の主題となる様々な出来事は、すでに私から遠ざかっていきました。父母を思おうにもすでに亡く、故郷さえ遠ざかって、もう思い出の中にしか存在しません。子らはなんとか無事育ち、すでに手元には居りません。楽しいことも、苦しいこともあったけど、全部、通り過ぎたこと。

そうは言っても、今日取り上げた、死を間近にした子を描いた絵なんか見ると、やはり心が締め付けられる。そうそう、キャンプ場から消えてしまった子は、一体どうしちゃったんだろう。

ウジェーヌ・カリエールという画家のことを、私は知りませんでした。

「靄のかかったような独特の絵画手法」で知られる画家さんだそうです。彫刻家のロダン、作家のドーテらと親交があり、著名人の肖像画を多く書いたことで知られる人物なんだそうです。彼の残した肖像画には、ロダン、ドーテに加え、詩人のヴェルレーヌ、政治家のクレマンソーのものもあるそうです。

インターネットで彼の作品を見ると、それらの肖像画にしても、たしかに靄のかかっったような、なんとなく輪郭をぼやかしたような絵です。そして彼が好んで書いたもう一つのモチーフが、母子像だそうです。

この本で取り上げられているのは、『病気の子供』という作品です。
《黒髪の若い母は、涙をこぼすまいとするように固く目をつぶる。病気の子の背にまわした左手の美しさと結婚指輪が際立つ。病気は重い。どんどん悪化してゆく。神さま、どうか私からこの子を取り上げないでくださいまし。カリエール
この絵を見るたびに胸が疼くのは、伝統的絵画に於いて腕をだらりと下げた表現が「死」を表すからだ。眠りと死を区別する一種の絵画用語で、ピエタに典型的に見られる。

つまり本作の子どもにも、すでに死は定められているのだ。幼いながら、いや、幼いだけにいっそう鋭く本能的に死を悟った子どもは、すでに生存のための戦いから身を引いている。母も敏感にそれを感じ取っている。母の服は喪を想起させる黒、子は死装束の白を身にまとう。

そしてーそれがまたいっそう哀切なのだが、ー半ばもう天使となったこの幼い子は、母の悲しみを少しでも慰めようとして、小さな手でそっと彼女の頬を撫でる。母が子を思う以上に、子はいじらしいまでに母を思いやり、懸命に伝えようとするのだ。ママ、泣かないで。大丈夫だよ。死ぬのは怖くない・・・。》

こんな風に解説されたら、この絵を見たくてたまらなくなってしまいます。・・・うう、オルセー美術館。フランスか。日本でもカリエール展をやってたことがあるようです。二〇一六年ですか。


『欲望の名画』    中野京子

文春新書  ¥ 1,078

隠された意味を紹介し、画家の意図や時代背景を読み解いてきた中野京子の最新刊
第一章 愛欲
第二章 知的欲求
第三章 生存本能
第四章 物欲
第五章 権力欲
欲望の果てに


この絵が描かれた一八八五年、カリエールの第二子で、長男のレオンが三歳で病死しているんだそうです。その子と、その母を、カリエールは描いたんですね。

絵をご覧いただいてもお分かりの通り、やはりこの絵もカリエール独特の靄で、その輪郭はぼやかされています。著者は、この神秘的な靄は、慈雨のように母子を包んでいるといっています。

「抱」という字は手偏に「包」と書きます。「抱く」ということは、手で「包む」こと。さらに「包」という字は、子宮の中に胎児がいる形からできています。子宮の中で「包まれ」て生きてきたいのちは、親たちによって「抱かれ」て育てられます。これももちろん、この本からの受け売りです。

神秘的な靄に、カリエールはそんな思いをかけていたんでしょうか。

長生きすれば、その分だけ悲しい思いをたくさんすることになります。でも、楽しい思いもたくさんすることになります。少しでも楽しいことを増やして、悲しいことを減らしましょう。

子どものことは、今でも心配です。いくつになっても子は子ですからね。その子どもも人の親になって、子育ての大変な様子を見ていると、なんとかしてやりたいと思うんですが、でも、我慢をしています。

おじいちゃんは論外ですが、おばあちゃんが子どもを抱いていている婆子像に人が心を動かされることも、おそらくないでしょうから。




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『ブルボン朝』 佐藤賢一

一七日に、地域敬老会というのがあるんです。

敬老会は、もともとは市役所が、公民館にお年寄りを招いて開催していたんです。だけど、遠方では参加できないとか、座って話を聞いたり、出し物を見てるだけで物足りないという意見があったらしく、地元の自治会単位で開催して、市はそれに助成金を出すという形になったらしいんです。地元自治会で開催するなら、いつものお友達と、ビールでも飲みながら、お昼ごはんをごちそうになりながら、お話に花を咲かすこともできるでしょう。

ただ、役員は、段取りを付けなきゃいけなくてね。助成金は、七〇歳以上の参加者に対して、一人あたり一五〇〇円。弁当に、お茶菓子、飲み物を用意して、ゲームは景品を準備してのビンゴ、あとはマジックのボランティアさんをお願いしてあります。

準備はしたので、あとは皆さんに楽しんでもらえれば、それでいいんです。だけど、参加者全員が私より年長の方だけですから、いろいろと気遣いで、・・・ああ、早く終わんないかな。

八月下旬に、この本を題材にアンリ四世の事をブログに書きました。ホッとして、ちょっと他の本に手を伸ばしたら、この本に戻ってくるのが遅くなってしまいました。新書とは言え四四九ページのボリュームです。書かれているのはブルボン王朝史なわけですから、この読み応えにはゲップが出ちゃうほどでした。

だってそうですよ。このブルボン朝の王様たちは、初代のアンリ四世にしてもそうだけど、あんまりにも濃い人たちばかりなんです。

今、大学入試で世界史を選択する人は減少しているようですが、あたり前のことですね。馴染みというものがありませんから。にもかかわらず、これまでの長い間、世界史が必修で、日本史は必修から外されてたんですよね。これ一つとっても、文科省ってのが、ひいては官僚組織ってのが、なにか根本的な問題を抱えているってことが分かっちゃいますね。

そんな中でも、ルイ一四世は知ってるでしょう。ルイ一六世は知ってるでしょう。マリー・アントワネットは知ってるでしょう。この頃、まさに世界は、・・・世界って言っても西ヨーロッパっていう狭い世界には違いないんですけど、それはフランスを中心に回っていたわけですから。

そのぐらいの期待はしちゃうわけですけど、残念ながら、《ベルサイユのばら》は遠い過去の漫画。それを、再放送ではあってもやってるうちは、たしかにルイ一六世、マリー・アントワネット、フェルゼン様なんて言えば、多くの女子生徒が反応していましたが。今の高校生には通じません。ましてやルイ一四世においておや。

『ブルボン朝』    佐藤賢一

講談社現代新書  ¥ 1,080

フランス王朝史の白眉、 3つの王朝中、最も華やかなブルボン朝の時代を描く

はじめに ブルボン家とは何か
第1章 大王アンリ四世(一五八九年~一六一〇年)
第2章 正義王ルイ十三世(一六一〇年~一六四三年)
第3章 太陽王ルイ十四世(一六四三年~一七一五年)
第4章 最愛王ルイ十五世(一七一五年~一七七四年)
第5章 ルイ十六世(一七七四年~一七九二年)
第6章 最後の王たち
おわりに 国家神格化の物語


ブルボン朝ってのは、フランスをフランス為らしめた時代ということでいいでしょうか。

カトリックとユグノーの間で、血で血を洗うかのように殺し合った時代。フランス人であるよりも、カトリックであるか、ユグノーであるかが優先していた時代。そんな時代にあって、大王アンリ四世は、なによりもフランス人であることを優先しました。フランスのためであるならば、カトリックであろうが、ユグノーであろうが、躊躇はありませんでした。だからこそ、ヴァロア朝の末期を大混乱させた宗教戦争に終止符を打つことができました。

ルイ一三世時代の宰相リシュリューもそう。なによりもフランスを優先しました。それがフランスのためと思うなら、うちにユグノーと戦いながら、そとではカトリックを敵に回しました。

ルイ一四世の幼少期、宰相マザランはリシュリューの戦争を引き継ぎ、そのすべてをフランスにとって有利に終わらせました。しかし、それでもフロンドの乱という内乱は起こりました。古い時代にあぐらをかいた勢力は、すべてのことがフランスという国家に結び付けられていくことを拒んだのです。

親政を始めたルイ一四世は、《フランスの栄光》のもとに人々を結集させる道を進みました。一つには対外戦争を戦い続けました。しかし、それだけでは、なし得なかったのです。対外戦争だけで話し得なかったものを、ルイ一四世は文化を高めることで成し遂げようとしました。ヴェルサイユ宮殿はまさにその象徴で、そこには面白い文学も、最先端の学問も、おいしい食事も、憧れのファッションも、まさに魂を奪われるような文化がありました。「フランス人で良かった。こんな素晴らしい国に生まれてよかった」とフランス人に思わせることになったのです。

ルイ一五世の時代、寵妃ポンパドール婦人の権勢に並ぶものはありませんでした。しかし、そのポンパドール婦人はフランスのために国政をとりました。そして、この時代も、フランスは文化の最先進国でした。ポンパドール婦人が文化を保護し、最高の文化をヴェルサイユに集めたからです。啓蒙思想家の保護にも、彼女は積極的でした。百科全書派の『百科全書やモンテスキューの『法の精神』が発禁になれば、その取消にも尽力しました。『社会契約論』のルソーに逮捕状が出れば、その撤回の運動をしました。たとえ王家の否定に通じるものでも、それが優れた文化として光を放つなら、受け入れなければならない。受け入れなければ、フランスは文化大国としての求心力を維持できなくなり、フランスの輝きが失われると考えたのです。

ルイ一六世時代は、・・・

フランス革命には、・・・あそこまで過激化しない、もっと穏便な道はなかったでしょうか。異常気象による食糧不足ってことが大きく絡んでるんだと思うんですが。

ナポレオン戦争後、王政復古以降、三人のブルボン朝の王が交代しています。著者の佐藤さんは、フランス人が自信を持って共和制を行えるまでの中継ぎ、あるいは一次避難というのが三人の王に求まられた役割だと言っています。・・・まさにそうですね。

近代的な国家が成立していく過程で、多くの試行錯誤が繰り返されました。日本もそうでしたね。かと思うと、アメリカみたいにそうじゃない国もあります。本国イギリスに反抗して独立しただけの話ですから。だけど、かつての試行錯誤が、次の大きな転換点において、それを乗り越えるための大きな力に、きっとなってくれると思います。

アメリカには悪いけど。




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ドイツ『国家と教養』 藤原正彦

アメリカは、自分の意志でヨーロッパを捨てた者たちによって作られました。

ここで彼らが捨てた《ヨーロッパ》には、そのヨーロッパに受け継がれてきた伝統とか知性、教養といったものが含まれていると藤原さんは書いています。アメリカはヨーロッパとともに、それらの伝統とか知性、教養も捨てたんだということです。だからアメリカは、知性を軽視する傾向があると。

この伝統とか知性、教養という部分の多くは中世と呼ばれる時代に形成されてきています。そう考えると符合します。アメリカに中世はありませんから。

アメリカは、そういったヨーロッパ的なものと決別し、新たな未来を開くための指針として、功利性、実用性を重視しました。そこから生まれてくるのが新自由主義、金銭至上主義といった浅ましい経済思想です。

そう、役に立たないものって重要なんですね。ケンブリッジ大学では一九六〇年代まで大学入試にラテン語があったそうです。実生活の役に立たない教養で情緒を養っておかないと、資本主義のもたらす醜悪さに飲み込まれてしまいます。

しかし、近現代に決定的な影響を与えた第一次、第二次世界大戦はヨーロッパを震源として起こった戦争です。第二次世界大戦は第一次世界大戦の余震のようなものですから、なんと言っても第一次世界大戦ですね。アメリカと違って教養の伝統のあったヨーロッパでそれは起こっています。戦争は相手のある話ではありますが、あの時、主役を務めたのは、やはりドイツです。知性と教養の最高峰とも言うべきドイツが第一次世界大戦の主役でした。

ということで、この本の中で藤原さんは、欧州における教養の質を一つのテーマとして取り上げています。その部分がとても興味深かったので、ちょっと取り上げてみたいと思います。

第一次大戦期のドイツは、世界でも有数の文化国家でした。しかし、少し過去を振り返ると、一六世紀の農民戦争、一七世紀の三十年戦争で人口が激減し、国土も荒れ果てました。そのため、他の西欧諸国のような国家形成が進まず、オーストリアとプロイセンの二つの中心軸を持った三〇〇をこえる領邦国家群といった状況でした。

お隣のフランスでは、中央集権化を達成したブルボン朝がフランス革命で倒されていました。周辺の王政国家はこれを許さず干渉戦争を仕掛けます。共和制フランスは祖国防衛に萌えた国民皆兵軍を組織して、対フランス同盟軍を打ち破ります。このフランス国民皆兵軍を率いていたのがナポレオンでした。

ナポレオンに蹂躙されたドイツでは、国家存亡の危機の中で果敢な政治改革、軍政改革、教育改革が断行されていくのです。ドイツの教養主義の根幹には、このときのフランスへの対抗心があったんです。


 『国家と教養』    藤原正彦

新潮新書  ¥ 799

教養なき国民が国を滅ぼす 教養こそが大局観を磨く 大衆文学も教養である
第一章 教養はなぜ必要なのか
第二章 教養はどうやって守られてきたか
第三章 教養はなぜ衰退したのか
第四章 教養とヨーロッパ
第五章 教養と日本
第六章 国家と教養

国家主義を背景に育成されていったドイツの知識層は一%です。一%の知識層が社会の中心となりドイツを率いていきました。その体制は一般大衆にとってもごく当たり前のこととして受け入れられ、一%の知識層が国をリードするばかりか、九九%の大衆を見下す構図ができあがってしまったんだそうです。

ちょうどそれがビスマルクの時代に集約されていきます。普墺戦争、普仏戦争と周辺の大国を打ち破り、統一ドイツが成立していきます。「あの人たちに任せておけば間違いない」と、大衆が思い込むのもわかります。

イギリスの上流階級、貴族とジェントリーは働きません。しかし彼らにはノブレス・オブリージュの伝統がありました。その地位にあるものは、それに応じた義務を追わなければならないわけです。ですから彼らは地方の行政や司法の仕事を無給で引き受けるそうです。慈善事業に取り組んで地方に貢献します。戦争があれば率先して戦場に赴きます。

イギリスの上流階級はドイツと違って、一般大衆との間に分断がないんですね。そして高い品性と教養は、上流階級には当たり前のことで、しだいにイギリス人一班の手本になっていったようです。

イギリスの上流階級は、ドイツの知識層と同様、国民を寡頭支配し高い教養を持ち合わせていました。しかし彼らは、ドイツの知識層のように大衆から遊離していたのではなく、むしろ大衆のお手本となっていた点で大きな違いがあったんですね。そして彼らの品性と教養を支えるのが、バランス感覚とユーモアです。

ドイツはなにか美しい原理や原則に陶酔すると、国を上げてその方向に突っ走ってしまいます。第一次世界大戦、第二次世界大戦、戦後の贖罪、シリア難民の受け入れ、いずれも一種の陶酔が感じられるというのですが、たしかにそうかも知れません。

その点、イギリスは何かあっても、その状況を俯瞰してみようとしますね。EU離脱も、イギリス人のそんな物の考え方、バランスのとり方が影響していると、藤原さんは言ってます。

「現実を見てバランスを取る、ということができないドイツと同じ船に乗っていては、生きた心地がしないと考えたからです」

歴史を振り返れば、イギリス人のドイツに対する、そんな恐怖感、・・・なんだか分かりますね。





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アンリ4世『ブルボン朝』 佐藤賢一

もと神奈川県民だった連れ合いに言わせると、“秩父顔”というのがあるようです。これは私が父や祖父、また兄弟たちとにているというレベルの話ではなく、秩父生まれの、特に男たちの顔には特徴があるというのです。眉毛がはっきりしていて眼光が強く、目尻は歳とともに垂れるんだけど、柔和になるどころが険しくなるというものなんです。まあ、秩父は山国ですから、その中で通婚が繰り替えされていけば、何らかの特徴が現れておおかしくありません。

《ベアルン男》って、そういう呼び方があるんですね。

ベアルンはフランス南西部、もうスペイン国境に近いというピレネー山麓にあるそうです。後の大王アンリ四世は、ここベアルンで生まれました。

ベアルンは、もう少し広い括りで言えばガスコーニュ地方、そのガスコーニュに暮らす人々ガスコーニュ人をフランス語でガスコンと言うそうです。山がちな厳しい自然環境、いくさの絶えない過酷な政治環境にあって、このガスコンの猪突猛進の熱血漢は有名なところだそうです。

底なしの勢力で疲れを知らずに動き回り、頭の中まで例外でなく、狡知に長けた食えない連中というのは、やはり後ろに回って囁かれる悪口というところでしょう。

このガスコーニュ、語源はバスコニアという言葉だそうです。バスコニアと言えば、バスク人の国。バスク人がここに住み着いたのは六世紀のことだそうで、ゲルマン民族の移動以来の西ヨーロッパにおける民族のシャッフルが終わりかけた頃でしょうか。

言語も文化もスペインともフランスとも起源が違うそうで、ずっと大国に挟まれた山中にあって、独自の文化を失わずに現代に至るんだそうです。ベレー帽、あれの起源はバスクのものだそうです。

日本にも縁があって、日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルはバスクですね。「以後よく広まるキリスト教」、一五四九年のことです。だから、アンリ四世よりも二世代ほど前の人。なにしろ、ザビエルが海外への宣教活動に乗り出したのは、宗教改革に対するローマ教会の巻き返しですね。対抗宗教改革の主役になったのが、イエズス会を設立したイグナティウス・ロヨラにフランシスコ・ザビエル。二人ともバスクだったっていうんだからすごいじゃありませんか。その力の原動力はガスコン、猪突猛進の熱血漢というところでしょうか。

彼らは一様に、頭髪も眉も黒々と、目鼻の作りもあくが強く、いうところのバスク顔をしていたようです。


『ブルボン朝』    佐藤賢一

講談社現代新書  ¥ 1,080

フランス王朝史の白眉、 3つの王朝中、最も華やかなブルボン朝の時代を描く

はじめに ブルボン家とは何か
第1章 大王アンリ四世(一五八九年~一六一〇年)
第2章 正義王ルイ十三世(一六一〇年~一六四三年)
第3章 太陽王ルイ十四世(一六四三年~一七一五年)
第4章 最愛王ルイ十五世(一七一五年~一七七四年)
第5章 ルイ十六世(一七七四年~一七九二年)
第6章 最後の王たち
おわりに 国家神格化の物語


ただ単にヴァロア朝の血筋が血筋が絶えたから、さかのぼって分家の血筋に当たる中でもその筆頭の、ブルボン家にお鉢が回ってきたという話じゃないんですね。

なにしろフランスを真っ二つに割ったユグノー戦争の真っ只中。親の影響で新教徒となったアンリ・ド・ブルボンだったが、生き抜くためには何度も宗旨変えをしています。
なにしろ、サン・バルテルミの大虐殺は、アンリ・ド・ブルボンとマルグリット・ドゥ・ヴァロアとの結婚を期に発生したもの。マルグリット・ドゥ・ヴァロアといえば、あの“王妃マルゴ”のこと。

この渦中に、まさしくアンリ・ド・ブルボンがいたわけです。
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カトリック派によるユグノー虐殺は宮廷にも及び、若夫婦の部屋も血まみれの様相だったそうです。それでもマルゴの部屋にいれば安全なところ、あえてアンリは国王シャルル九世に保護を求めています。王がアンリに改宗を迫ると、さもなくば虐殺の現場に放り出すと迫ると、アンリは陛下の仰せに従いますと、あっさり改宗を受け入れています。

アンリにはどちらでもいいのです。アンリは旧教であるとか、新教であるとかの前に、フランス人でなければならないという意識がなによりも大事なことだったんです。

アンリに改宗を迫ったシャルル九世が亡くなり、あとを継いだアンリ三世が跡継ぎを残さずに亡くなった時、アンリ・ド・ブルボンは再度再度ユグノーに戻っていました。ユグノーの国王など迎えられないと、パリを始めとするカトリックの抵抗は凄まじく、フランスは分裂したままでした。ここから先が、アンリ四世の八面六臂の大活躍。

カトリーヌ・ド・メディシスの嫡孫イザベルをフランス国王にと介入してくるスペインを向こうに回して、もしもアンリ四世というガスコンでなければ今のフランスはなかったでしょう。

彼自身が自らカトリックに改宗してナントで戴冠し、すべてのフランス人の父たるフランス王になりました。さらにナントの勅令でフランスを一つにしました。

ベアルンは、歴史の大きな転換点に、極めて重要な人物を送り出してくれます。

アンリ四世が生涯に抱えた愛人、一定期間続いた女だけで、七三人を数えるそうです。私なんかじゃ、ゾッとするばかりです。





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『王家の遺伝子』 石浦章一

言語による歴史というのは、勝者のみに、綴るのとが出来るものです。敗者には、言語で歴史を綴ることはできません。でも、遺伝子は、勝者であっても、それに手を加えることはできません。

捻じ曲げられてしまった歴史を、遺伝子を研究することで解き明かすことが出来るケースって、どんだけあるでしょうね。

この本の中でも多く扱われているのは、エジプトのファラオを対象に行われたDNAの解析です。確かに、復活を信じて自らをミイラ化したファラオたちであれば、数千年の歳月を経て現代にDNAを提供してくれることもあるでしょう。ファラオたちの墳墓の多くは盗掘に合い、多くの財宝が失われたそうですが、研究者にとって最高の“財宝”であるファラオのミイラは持ち去られていなかったんですね。

物質としてのDNAが残っている限り、それに記録されている過去は、飛躍も欠落もなく現代に伝わるわけです。著者の言葉ですが、「遺体の残された王家の遺伝子こそ、言語で記された歴史からだけでは見えない史実を、今に伝えてくれる」ということです。

おお、面白そうですね。

二〇一二年に、英国のレスター市の駐車場から掘り出された人骨、「駐車場の王様」はリチャード三世の遺骨とされ、世界から注目されたそうです。シェイクスピアはお好きですか。私はそんなに好きというわけではないんですが、『ヘンリー六世』と『リチャード三世』は読みました。

シェイクスピアの描くリチャード三世は、体のバランスが悪く、背中に瘤を抱えたせむしで、顔は見にくく歪み、びっこを引き、不具と笑われ、そばを通れば犬が吠えかかるような哀れな存在でした。

リチャード三世は、長兄王エドワード四世の後継者と目されたエドワードとその弟のリチャードを殺し、次兄クラレンス公と自らの妻である王妃アンまで手にかけた極悪非道な王。

・・・ああ、シェイクスピアが書いたように、私も思ってました。

リチャード三世は薔薇戦争の終末に戦士し、遺体は辱められて修道院に埋葬されたそうです。ところが、ここが、自分の女関係の都合から宗教改革を断行したヘンリー八世によって解体され、墓の正確な一も分からなくなってしまったんだそうです。そこが駐車場になってたんですね。



ブルーバックス  ¥ 1,080

!?「勝者の歴史」が覆い隠した「王家の真実」を、最新生命科学が解明する!
プロローグ 欺かれたシェイクスピア
第1章 駐車場から掘り起こされた遺体 行方不明だった国王の秘密
第2章 DNAは知っている 遺伝子で何がわかるか、何ができるか
第3章 リチャード3世のDNAが語る「身体改造」の未来 デザイナーベイビー
第4章 「ツタンカーメンの母」は誰か? ミイラに遺されたDNAからわかった
第5章 「エジプト人」とは何者か? DNAが語る人類史
第6章 ジョージ3世が患っていた病 歴史は科学で塗り替えられる
第7章 ラメセス3世殺人事件 DNAによる親子鑑定の可能性とその限界
第8章 トーマス・ジェファーソンの子どもたち DNAだけがすべてか?


遺骨からは、戦いが激しいものであることがわかるそうです。頭蓋骨、上顎骨や骨盤に外傷があり、全身の傷は一一箇所を越えたそうです。ただし、リチャード三世は鎧を着ていたはずなので、鎧を脱がされたあとに付けられた可能性もあるそうです。

何れにせよ、それだけの激しい戦いを指導するだけの、強靭な身体を持った人物だったようです。


《トット・アンク・アメン》って、誰のことか分かりますか。

これ、世界史の授業での、生徒への問いかけでよくやりました。まず、分かりません。次の問いかけは、「じゃあ、これを何度も何度も繰り返し、だんだん早く言ってごらん」となります。

そのうち、誰か一人くらいは気がつくんです。・・・「ツタンカーメン?」

ところが、近年は、その《ツタンカーメン》という言い習わされた名前すら聞いたこともないっていう高校生が増えてしまってね。そういう場合は仕方がありません。漫画の遊戯王の方向に持っていきます。

遊戯王に持っていった場合、仮にオシリスとイシスとかの方に行っちゃって、エジプト神話になっちゃうと、授業の一時間や二時間は吹っ飛びます。そっちに行かずに、遊戯王という漫画の中の王家と神官団の抗争を題材にできれば、アメンホテプ四世の宗教改革、あるいはアマルナ革命に引っ張っていければ、そこからさらにツタンカーメンに戻ってこれるかもしれないですね。

最終、第八章《トーマス・ジェファーソンの子どもたち》も微妙な話ですね。ジェファーソンは正妻が死んだあと、サミー・ヘミングスを実質上の妻としたが、サミー・ヘミングスはジェファーソンの奴隷だからね。もちろん、この本にはその顛末も欠かれているけどね。

んんん、DNAによる解析というのは、いろいろなことを明らかにしちゃいそうですね。




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遺骨『王家の遺伝子』 石浦章一

遺伝子もまた、歴史を紡いでいるんですね。

言語による歴史というのは、勝者のみに、綴るのとが出来るものです。敗者には、言語で歴史を綴ることはできません。でも、遺伝子は、勝者であっても、それに手を加えることはできません。

シベリアや南洋でなくなった戦没者の遺骨収集も進みません。二四〇万人の戦没者のうち、今でも一一二万人分の遺骨が現地に残されているそうです。これまでの遺骨収集では、細かすぎて身元が判明できない遺骨は、現地で焼却した上で持ち帰り、千鳥ヶ淵に埋葬されるんだそうです。最近のニュースで、焼却した遺骨はDNA鑑定ができなくなってしまうという話を聞きました。

アメリカが共同の作業を日本に呼びかけているそうですね。アメリカは焼かずに調べるそうですよ。そして、遺骨を家族のもとにかえす。今も世界で戦争を続け、戦死者を出し続けるアメリカは、それが絶対に必要なんでしょう。このアメリカの呼びかけには、乗っかるべきではないでしょうか。

戦争が終わって七四年ですよ。これは、やる気が無いとしか言いようがないんじゃないでしょうか。やはり、避けては通れないんじゃないでしょうか。あの戦争でなにがあったのか。戦争になってしまったことは、残念ではあるが、やむを得ない。なにしろ相手のあることですから。どうしても日本と戦争しないと収まらないというアメリカのことだからね。

だけど、日本が国家なら、犠牲になった国民の骨くらいは拾ってくれなきゃおかしい。つらい思いをした女の人はそれを言い出さないから、好都合で知らんぷりじゃ国じゃない。戦災孤児は一二万人もいたそうだ。戦争が終わったあの段階で親がないなんて。

焼いてしまうとDNA鑑定ができないとすると、DNA鑑定によって遺伝子が綴ってくれた歴史を読み解いていくという方法は日本では難しいということになるんでしょうか。それこそ天皇家だって、持統天皇依頼、ずっと火葬してるでしょう。

火葬しちゃいますからね。



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!?「勝者の歴史」が覆い隠した「王家の真実」を、最新生命科学が解明する!
プロローグ 欺かれたシェイクスピア
第1章 駐車場から掘り起こされた遺体 行方不明だった国王の秘密
第2章 DNAは知っている 遺伝子で何がわかるか、何ができるか
第3章 リチャード3世のDNAが語る「身体改造」の未来 デザイナーベイビー
第4章 「ツタンカーメンの母」は誰か? ミイラに遺されたDNAからわかった
第5章 「エジプト人」とは何者か? DNAが語る人類史
第6章 ジョージ3世が患っていた病 歴史は科学で塗り替えられる
第7章 ラメセス3世殺人事件 DNAによる親子鑑定の可能性とその限界
第8章 トーマス・ジェファーソンの子どもたち DNAだけがすべてか?


ちょっとこの本の趣旨からは外れますが、《日本人はどこから来たのか》ってのは、やっぱり興味があります。この本でも、分量は少ないんですが、そのことに触れてくれています。

まずは、四万~四〇〇〇年前、旧石器時代から縄文時代にかけて、日本列島にさまざまなルートから人が渡ってきています。北から、南から、あるいは朝鮮半島を経由しての流入のようです。この人たちは、現在の東ユーラシアに住んでいる人たちとは異なる民族だそうです。

続いて四〇〇〇~三〇〇〇年前、朝鮮半島を経由して別の民族が渡ってきているそうです。この人たちとそれ以前に渡ってきた人たちとの混血は、琉球を除く西日本だけで起こったそうです。

さらに続いて三〇〇〇年前以降、朝鮮半島から稲作民族が渡ってきたそうです。この人たちは、現在の東アジア人と殆ど同じ遺伝子を持った人々で、しだいに先住民と混血して現在の日本人を形成してきたと考えられるそうです。

・・・ちょっと簡単過ぎて、興味深いところまでいかないな。

私たちが、どこから渡ってきたものであったは、たしかに興味深いし、出来ることなら知りたいもんです。だけど、今をしっかりやっていくってことは、それよりももっと大事です。戦争が終わって七四年。でも、八〇年からろうが、一〇〇年かかろうが、付けるべきけじめは、やっぱり付けないとね。




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『世界史の新常識』 文藝春秋編

つい先日、県の教育局から〈再任用制度説明会の開催〉のお知らせをいただきました。今にしてみると、三月まで、自分が高校の社会科の教員で、世界史を専門にしていたなんてことが、まるで夢のような思いがします。

今年度いっぱいで退職する人か、定年の年齢を迎える前に退職してしまったものの、いざ退職してみると取り立ててやることもなく、家を居場所と定めることもできず、早期退職を「早まったかな?」と後悔している人向けの案内のようです。ついでのこととは言え、いまだに私のことなんぞ気にかけていただいて、ありがたい話です。

退職するやいなや、四月から自治会長を任されて、好きか嫌いかにかかわらず、いまだに社会との強いつながりを感じながら生活をしています。かりに自治会長をしていないとしても、決して社会とのつながりがなくなるわけではありませんが、実感として感じるものは、だいぶ薄まることでしょう。社会とのつながりが薄まると、再任用とは言え、仕事に戻りたくなる人もいるようなんです。

お誘いは、「令和二年に再任用で働きませんか。給料はだいぶ安くなるけど」ということのようです。当自治会の自治会長の任期は一年ですので、令和二年度といえば、ちょうど自治会長の任期が終わることになるわけですが、再任用のお誘いに応じるつもりはありません。

先程も書きましたように、退職しようが、自治会長でなくなろうが、社会との関わりがなくなるわけではありません。だけど、心の持ちようとしては、社会からも超然とした存在でありたいのです。超然とした存在でいられるわけもないんですが、まあ、気持ちだけでも。

隠遁といいますか、出家して仏門に入りたいわけだはないのですが、これまでとは違う責任と無責任を持って、外側から世間を笑い飛ばしてやりたいんです。

さて、『世界史の新常識』っていう本なんですが、以前この手の本を読めば、“これは授業で使える”とか、“使えない”とか、不純な価値判断が優先してしまうことがありました。でも今は違います。もう教壇に立つ事のない私は、ひたすら本を、自分の知的好奇心を満足させるためだけに読むのです。

ある意味でそれは、純粋な読書の楽しみであるはずです。・・・ですが私は、ふと気がつくと、その本の面白みを授業で使おうと算段しているのです。本当に、純粋な読書の楽しみに浸るには、もう少し、時間がかかるかもしれません。



『世界史の新常識』     文藝春秋編

文春新書  ¥ 950

世界史のエッセンスがこの一冊に! 知っているようで知らない世界史のエッセンス
第一章 古代
古代ギリシャはペルシャ帝国に操られていた
どうして釈迦は仏教を開いたか
カエサルはなぜ殺された?
「キリスト教」はイエスの死後つくられた
ローマ帝国を滅ぼした難民と格差
第二章 中世・近世
預言者ムハンマドのリーダー・シップ
中世グローバル経済を作ったのは遊牧民とムスリム商人
異民族を活用したチンギス・ハン
ルネサンスは魔術の最盛期
明を揺るがした日本の火縄銃
戦争と疫病がニュートン、ライプニッツを生んだ
第三章 近現代
産業革命がイギリス料理をまずくした
保護貿易が生み出した産業資本主義
アヘン戦争 大清帝国vs大英帝国
インド グローバルな亜大陸
世界大戦の負債が起こした大恐慌
独裁の秘術 ヒトラー、スターリン、毛沢東
共和党対民主党 日本人が知らないアメリカ史
第四章 ブックガイド
グローバル・ヒストリーとはなにか
評伝・自伝で人物の内面に迫る
共産中国の深層には今も伝統的な中国社会が息づいている
第五章 歴史の教訓
史上「最も幸せな国」はどこだ?
世界史から何を学ぶか


ったく、よく言われましたよ。「歴史の先生は、楽でいいよね」って。「最初は大変かもしれないけど、とりあえず一通りやっちゃえば、毎年同じことをやってればいいんだろ」っていうんですよ。まったく冗談じゃありません。

社会の教員っていうのは面倒な人が多いです。面倒な奴らなんで、そのうち地歴と公民に分けられちゃったんです。まあ、一般の方からすれば、今でも“社会の先生”って感じでしょうけど。それでね。社会の教員とは言っても、本来なら、世界史の専門家が世界史をやるべきなんです。日本史は日本史、地理は地理ってね。

だけど教科目の指導よりも生徒指導のほうが優先されるようになって、受け持ちの学年によって科目が変わっちゃう学校が多くなってきちゃったんです。例えば、一年現社、二年世界史、三年日本史って感じです。自分の担任クラスの授業がないとしても、世界史が専門だったら世界史を教えるべきだってのが私の考えなんですが、そういう学校はだんだん無くなっていってるみたいですね。

かりに、毎年、世界史だけを繰り返し教えているとしても、教材研究、授業の下調べをして準備をすることですが、それなしに授業に望むなんてありえません。教材研究以前に、歴史だけじゃなくて、いろんな本をむさぼるように読んで、いざ、教科書にあたってみれば、「・・・まだ、こんなことを書いてるよ」なんてことは、ざらにあるんです。

目次がスペースを取ってますが、全部載せておきました。“なんとなく”でも、この本の内容を分かってもらおうと思って。いろいろな人の、いろいろな研究の集積で、以前に考えられていた・・・

①歴史は間違っていた。
②歴史とは、少しイメージが違ったようだ。
③歴史には、誤解があった。
④歴史に、付け足さなければならないことがあった。
⑤歴史から、差し引かなければならないことがあった。

色々なケースがあります。もちろん、それを修正していく必要がありあます。しかし、その修正ができないとしても、これはやむを得ないところがあります。第一、教科書が修正されてないんですから。この本に書かれている“新常識”も、大半がそれにあたります。

それ以外に、“やむを得ない”では済まされない問題があります。正しいとされる歴史に紛れ込んでいる意図的な嘘、あるいは意図的に無視されている真実です。この意図的な嘘を見抜いて、または意図的に無視されてきた真実を授業の中で問題提起することはとても大事です。

この本の各項目は、それぞれ別のさまざまな先生方によって、“新常識”が披露されてますが、それらの中で、歴史の中に紛れ込んでいる意図的な嘘を指摘しているのは一つだけ、第三章の“近現代”の中で、渡辺惣樹さんが書いている《共和党対民主党 日本人が知らないアメリカ史》のみです。

今後は、自分の知的好奇心を満足させるために、そして外側から世間を笑い飛ばしてやるために、本をよめるようになれたらいいなと思います。

*毎年、同じ授業をして、同じ問題でテストをする歴史の先生は、けっこうたくさんいます。




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米民主党『世界史の新常識』 文藝春秋編

《砂の器》の和賀英良こと本浦秀雄は、らい病の父と放浪した過去を捨て、戦争の混乱に紛れて戸籍を詐称し、和賀英良として新たな人生を歩んでいました。彼の犯した殺人は、彼の過去を知るものを消すために行われたものでした。

天才ピアニスト和賀英良の役を演じたのは、加藤剛でした。かっこよかったですねぇ。ラストの三〇分、捜査室で事件の顛末を語る捜査員の丹波哲郎、リサイタル会場で自ら作曲したピアノ協奏曲《宿命》を演奏する加藤剛、そして千代吉と秀雄が寄り添うように放浪を重ねる映像が、《宿命》をBGMに場面転換を繰り返します。

掻きむしりたくなるほど、胸に迫りました。

その後、テレビドラマでリメイクされたものを、二回ほど見ました。どちらも、らい病の発病により村を追われて放浪したという前提を、違う理由に置き換えていました。

『砂の器』に関しては、「らい病で村を追われた」という前提を違えては、この物語の本質を描くことなどできないと思います。日本という貧しい国では、村という社会を維持するための犠牲は、時にはやむを得ないものだったのです。それを見つめることが、映画作成当時の日本にできたことが、今は逆にできなくなっているんでしょうか。

ちなみに、差別を助長する恐れがあるという観点から、らい病という言葉は使われなくなってきているそうです。

和賀英良は、本浦秀雄であった自分の過去を完全に捨て去り、違う人間になりすましました。しかし結局、彼の犯した犯罪は暴かれ、本浦秀雄である正体が暴かれることになります。

その点、アメリカの民主党という政権のほうが、自分の過去を捨て去り、違う政党になりすますということにおいて、はるかに巧妙です。


産経新聞 2019/07/02
米大統領選で民主党女性候補2人の支持率上昇
https://www.sankei.com/world/news/190702/wor1907020017-n1.html
(全文)
米CNNテレビは1日、来年11月の大統領選に向けた民主党候補者の最新の世論調査(6月28~30日)を発表し、カマラ・ハリス上院議員(54)と、エリザベス・ウォーレン上院議員(70)の2人の女性候補の支持率がそれぞれ上昇した。依然としてジョー・バイデン前副大統領(76)が支持率首位だが、その差が縮まっている。

CNNの最新世論調査には、6月26~27日に行われた民主党の初のテレビ討論会の結果が反映された。候補者の支持率は、首位のバイデン氏が前回調査(5月28~31日)から10ポイント減の22%。2位はハリス氏で前回比9ポイント増の17%、3位はウォーレン氏で前回比8ポイント増の15%となった。続いてバーニー・サンダース上院議員(77)が前回比4ポイント減の14%だった。支持率を伸ばした女性候補と、減少した男性候補で明暗がくっきり分かれた形だ。

討論会では、黒人女性のハリス氏が、バイデン氏に対し過去に人種差別主義の上院議員と協力した問題などをめぐり厳しく追及。ウォーレン氏は国民に公的医療保険を拡充する急進的な政策を訴え、支持を広げたとみられる。他の世論調査でもバイデン氏が首位を維持しているが、討論会を受けて支持率が減少した結果が出ている。


黒人女性のハリス氏は、バイデン氏が過去に人種差別主義の上院議員と協力した問題を追求しているんだそうです。それがどれくらい過去のことか知りませんが、あまり過去に遡ると、人種差別政党であった頃の民主党の過去を、自ら暴き立てることになるんじゃないかと、ちょっと心配です。
『世界史の新常識』     文藝春秋編

文春新書  ¥ 950

世界史のエッセンスがこの一冊に! 知っているようで知らない世界史のエッセンス
第一章 古代
古代ギリシャはペルシャ帝国に操られていた
どうして釈迦は仏教を開いたか
カエサルはなぜ殺された?
「キリスト教」はイエスの死後つくられた
ローマ帝国を滅ぼした難民と格差
第二章 中世・近世
預言者ムハンマドのリーダー・シップ
中世グローバル経済を作ったのは遊牧民とムスリム商人
異民族を活用したチンギス・ハン
ルネサンスは魔術の最盛期
明を揺るがした日本の火縄銃
戦争と疫病がニュートン、ライプニッツを生んだ
第三章 近現代
産業革命がイギリス料理をまずくした
保護貿易が生み出した産業資本主義
アヘン戦争 大清帝国vs大英帝国
インド グローバルな亜大陸
世界大戦の負債が起こした大恐慌
独裁の秘術 ヒトラー、スターリン、毛沢東
共和党対民主党 日本人が知らないアメリカ史
第四章 ブックガイド
グローバル・ヒストリーとはなにか
評伝・自伝で人物の内面に迫る
共産中国の深層には今も伝統的な中国社会が息づいている
第五章 歴史の教訓
史上「最も幸せな国」はどこだ?
世界史から何を学ぶか


なにしろ、南北戦争を前にして、州の権限を抑制してでも連邦政府手動で工業化を進めるべきという北部工業地帯を代表する共和党に対して、民主党は州の権限を尊重すべきだという南部奴隷州を代表する政党だったわけですから。

南部諸州のコットン生産は、当時世界の消費量の三分の一に相当していたそうです。その生産量を支えていたのが奴隷労働です。黒人奴隷の数は一八〇〇年に九〇万人だったものが、一八五〇年には三二〇万人に増えていたそうです。イギリス綿工業に原料を提供する南部諸州は、当然イギリスとの結び付きを強め、イギリスからの工業製品に高い関税をかけて工業を育成しようという北部との対立を深めます。

北部と南部の対立は、本来、経済的なものです。しかし、その対立の過程で北部の新興資本家の利益を代表する共和党のリンカーンが大統領に選出され、南北の対立が先鋭化します。

戦いが始まり、イギリスの南部支援を牽制するため、リンカーンが奴隷解放宣言を出します。イギリスは金縛り状態となり、南部の敗北を容認することになります。

その後も、連邦政府レベルでは、共和党が黒人の法的権利の改善を進めます。ところが、この頃、ほぼ時を同じくして、南部諸州に強い影響力を持つ民主党が、黒人差別政策を進めているんですね。一八六六年にはKKKが結成され、黒人擁護派の白人をターゲットとするテロが行われていきました。さらに民主党は、州議会を通じて黒人隔離を合法とする州法を次々に成立させていきました。

南北戦争後、南部から取り上げた富を源泉にして、北部を中心とする工業化が進められていきました。大陸横断鉄道が開通するとプアーホワイトが西部に押し寄せます。そこでまずは“中国”人移民と、つづいて日本人移民と対立し、これらアジア系の移民を排斥することに積極的だったのも民主党です。

一九一二年の大統領選挙は、長らく敗北を続けた民主党の好機になりました。共和党の分裂につけ込んで、民主党のウッドロー・ウィルソンが勝利するのです。ウィルソンの父は、「奴隷制度は神が作り給うた」と語る長老派の牧師で、ウィルソンはワシントンにも黒人隔離を持ち込みました。

さらに、ヨーロッパの大戦に積極的に参戦し、戦後のパリ講和会議では一四か条を打ち出して戦後世界を混乱させました。国際連盟規約に人種差別撤廃を謳おうという日本の提案をしゃにむに潰しにかかったのもウィルソンです。

ウィルソンに呆れたアメリカ国民は、その後、共和党大統領を続けましたが、一九二九年の世界恐慌で、民主党のフランクリン・ディラノ・ルーズベルトに政権を奪われます。ミドルネームにもある母方のディラノ家は、“中国”にアヘンを持ち込んで一財産を稼ぎあげた家柄です。日本を戦争に追い込み、日系人だけを強制収容所に追い込みました。

終戦間際に死んだFDRに代わって、副大統領だったトルーマンが大統領になります。もとはKKKのメンバーで、強烈な人種差別意識を持った人物です。ポツダム会談からの帰途の大西洋上、一九四五年八月七日に広島への原爆投下の成功の報告を受け、「艦長、まさに史上最高の瞬間ではないか」と叫んだそうです。

戦後、アメリカは豊かになりました。民主党の主たる支持層であった南部の貧しい白人層は、相対的に豊かになり、あえて黒人を差別しなければならない経済的な理由はなくなりました。民主党は人種差別によって票を集めることができなくなりました。

以後、民主党は、党是を一八〇度回転させ、黒人を含めたマイノリティーの人権を守る政党、弱者に優しい進歩主義の政党にイメージを転換させていきます。この時、過去の自分の行状を隠すための見事なレトリックがあります。それは、人種差別の主体を「アメリカ人すべて」にしたことです。「アメリカという国全体が人種差別的であった」ことにして、黒人や他のマイノリティ人種から圧倒的な支持を集めるようになりました。


*後半は、《第三章 近現代 民主党対共和党 日本人が知らないアメリカ史》の内容を使わせてもらいました。



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ローマ滅亡『世界史の新常識』 文藝春秋編

中日ドラゴンズの応援団が、“おまえ”という言葉が入る応援歌の自粛を決めたそうですね。

これにはびっくりです。「“おまえ”などという乱暴な言葉は、子どもの野球ファンの前で使うべきではないのでは?」という球団の意見を受けてのことだそうです。

こんなことから、“おまえ”論議が始まるんでしょうか。始まる前からうんざりです。

野球ファンではありませんが、保育園児の私の孫は、平然と“おまえ”という言葉を使っています。これがまた、世話のかかる奴で、もう可愛くて、可愛くてね。知らない間に、いくつか字を覚えたみたいで、一生懸命私に披露してくれます。もう少し大きくなったら、一緒に寅さんのビデオでも見ようと思います。あっ、“おまえ”が悪い言葉ってことで定着したら、寅さんなんか見てたら大変な目に合わされそうです。

ニグロは差別だそうで、ブラックも言いづらくなって、アフリカ系アメリカ人? ハハハ、俺はアフリカ生まれじゃねぇよって言ってるアフリカ系アメリカ人もいっぱいいるでしょうね。ルーツがアフリカにない、ただの色黒はなんて呼ばれるんでしょう。

子どもの世界にはいろいろな問題があります。そういう問題の、どこに“おまえ”が引っかかってますか。“おまえ”は相手を低く見る意味合いを含んで使われることがありますね。だからいけないんですか。相手を低く見る言葉、行為、仕草はいくらでもあります。人と比べて自分が上か下かって価値判断は、社会生活を営む人間の本質に触れる問題でもあります。本質に触れずに、言葉だけ隠したがるのは、どんなもんでしょう。

相手を低く見る意味合いを含んで使われる“おまえ”は、“おまえ”という言葉で表されるさまざまな意味合いの一側面でしかありません。応援歌の“おまえ”が相手を低く見て使われているのかどうか知りませんが、そうであろうがなかろうが、自粛です。

ローマというのは、一都市の名前です。それは文字通り、一つの都市国家、ポリスの名前だったわけです。たしか、最初のころは、近隣のエトルリア人の作っていた都市国家群のほうが圧倒的に優勢で、王政ローマの最後の王様もエトルリア人の王様でしたよね。

エトルリア人の王を追放して共和制に移行したローマは、ガリア人の侵入を受けるなどの苦難にも出会うが、前四世紀に入るとエトルリアの都市国家軍を併合し、徐々に安定した成長をたどるようになります。それでも“ローマ”なんですね。

さらに前三世紀に入り、イタリア半島を統一しても、“ローマ”。ポエニ戦争でカルタゴを葬り、北アフリカに拡大して地中海を制覇しても“ローマ”。オリエントを制しても“ローマ”。ガリアを従えてヨーロッパを制覇しても“ローマ”。

のちの、ベネチアなんかもそうだけど、やっぱり、都市国家、ポリスの伝統ってもんなんでしょうか。

さて、ここで滅亡としているのは、五世紀末の西ローマ帝国の滅亡です。地中海を内海とし、ヨーロッパの大半を支配したローマも、特に、のちの西ヨーロッパにおいて、帝国の政治組織の終焉とともにローマの文明そのものが、同時に崩壊してしまっています。

従来の世界史においては、それを“ゲルマン民族の大移動によって”と片付けてきたわけですが・・・。


『世界史の新常識』     文藝春秋編

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世界史のエッセンスがこの一冊に! 知っているようで知らない世界史のエッセンス
第一章 古代
古代ギリシャはペルシャ帝国に操られていた
どうして釈迦は仏教を開いたか
カエサルはなぜ殺された?
「キリスト教」はイエスの死後つくられた
ローマ帝国を滅ぼした難民と格差
第二章 中世・近世
預言者ムハンマドのリーダー・シップ
中世グローバル経済を作ったのは遊牧民とムスリム商人
異民族を活用したチンギス・ハン
ルネサンスは魔術の最盛期
明を揺るがした日本の火縄銃
戦争と疫病がニュートン、ライプニッツを生んだ
第三章 近現代
産業革命がイギリス料理をまずくした
保護貿易が生み出した産業資本主義
アヘン戦争 大清帝国vs大英帝国
インド グローバルな亜大陸
世界大戦の負債が起こした大恐慌
独裁の秘術 ヒトラー、スターリン、毛沢東
共和党対民主党 日本人が知らないアメリカ史
第四章 ブックガイド
グローバル・ヒストリーとはなにか
評伝・自伝で人物の内面に迫る
共産中国の深層には今も伝統的な中国社会が息づいている
第五章 歴史の教訓
史上「最も幸せな国」はどこだ?
世界史から何を学ぶか


ゲルマン民族の大移動は、フン族に圧迫され、ゴート族がなんかを始めた三七五年が始まりとされています。フン族の攻撃で住処を終われローマに流入したゴート族は、今で言う難民です。続いてヴァンダル族が、同じくフン族の圧迫で難民化します。ヴァンダル族がフランスに入り、四〇九年にイベリア半島に突入すると、“ローマ”の国境が崩壊したのを目にしたブルグンド族、フランク族も移動を開始します。

ローマは、これらの大量の難民を、《同盟部族》と名付けて受け入れざるを得なくなります。これは事実上の領土の割譲だったようです。ほんの僅かな間は従順を装ったようですが、やがてはそのたがが外れ、ローマの領土はゲルマン系難民部族に次々に奪われていきます。

最後の皇帝はロムルス。奇しくもローマ建国の王と同じ名前なのが皮肉ですが、そのロムルスが傭兵隊長オドアケルによって廃位されたのが、帝国としての西ローマ滅亡とされています。四七六年、大移動の始まりから一〇〇年目のことです。

ローマの強さは、支配者層の高い義務意識にあったと思います。戦いのときには先頭に立つし、平時にあっては社会貢献を欠かしません。貴族や富裕者はインフラ整備などの建設に進んでお金を出しました。出資者の名前のついたアッピア街道なんかが有名ですね。この義務意識はノブレス・オブリージュと呼ばれます。有事の軍事的貢献は、まさに命がけ。ローマはとにかく強かった。ローマの強さの源は、支配者層が先頭に立って戦うことにあったと思います。

平時の社会貢献は、お金を出すこと。アッピア街道もそうですが、帝政期に入ってからの社会福祉的貢献、いわゆる”サーカスとパン”を支えたのは、富裕層の出資でした。これを、エヴェルジュティズムと言うそうです。舌を噛みそうですね。

ローマは格差社会です。しかし、貴族層のノブレス・オブリージュ、富裕層のエヴェルジュティズムがある限り、民衆は貴族層、富裕者層を自分たちの支配者と認めていたわけです。

しかし、それが、三世紀の終わりあたりから、機能しなくなっているんだそうです。これにより格差が顕在化し、両者がローマの価値観を共有できなくなっていたらしいんです。そこにゲルマン民族の大移動があり、流れ込んでくる難民を吸収し、同化する力がなくなっていたんですね。

今また、シリア、アフガニスタン、イラク、そしてアフリカから、ヨーロッパに大量の難民が押し寄せています。受け入れる側のヨーロッパでも、排外主義が持ち上がり国論を二分する状況にあります。

難民を同化できず、吸収しきれなかったローマは滅びました。かつての文明は跡形もなくなり、新たにゲルマン人の中世が始まります。一〇〇年後のヨーロッパっていうのが、イスラム教徒の領域になってるってことも、あるかもしれません。





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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本
































































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