『里山さんぽ 植物図鑑』 宮内泰之
ただ、去年の今ごろも、そんなことを考えていて、同じような本を買ったことも事実なんです。そして、ほとんど何一つ、新しく覚えた花はないんです。
でも、春先のちょうど今頃、梅が咲きだそうかって頃になると、里山だとか、河原の土手だとかに出かけたくなるんですよね。そこで愛らしい花を見つけたりすると、この年になってもその花の名前を知らない自分が、どうしようもなく情けなくなるんですよね。そこで、こういう本に手を出すことになるわけです。
同じことの繰り返し?
それが違うんです。今年の私は少し違うんです。
今までの私は、その名前を知って、できれば食ってやろうと、・・・食おうとしてたんですね。だから選ぶ本も、自然と『おいしく食べる山菜・野草』とか、『食べる野草図鑑』とかに傾いていたわけです。今年の私は、その思いを捨てます。「食おう」としない。
里山や河原の土手を歩いていて、「ああ、お前の名前は・・・だね」と、「昔の名前で出ているんだね」と、純な気持ちで語りかけようと思っているわけです。
『里山さんぽ 植物図鑑』 宮内泰之 成美堂出版 ¥ 1,512 芽吹いたばかりの植物が、やがて花をつけ、さらには実を結ぶ 何度も足を運ぼう |
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素人には、豊富な写真は絶対必要。だけど、それだけじゃあないんだよね。土の質や、日当たり、他の植生によっても、茎の長さや花の大きさ、それから色なんかも微妙に違ってきますよね。だから、写真で見ると、同じものとは思えないような場合もある。
その点、この本には、花や葉の見た目だけじゃなくて、その草花の特徴的な部分をイラストで紹介しているんですよね。たとえば、カラスノエンドウの種のつき方。ヘビイチゴの表面のぶつぶつ。ユキノシタの根の伸ばし方。ツユキサの花の構造。そういうのがイラストで描かれてるから、観察さえすれば間違えようはない。・・・たぶん。
この間、川原の土手を歩いていて、オオイヌノフグリが咲いているのを見つけた。その日はほんの二輪だったものが、二日後に同じ場所を通るとたくさん咲いていて、とてもうれしかった。本当に、種子の形がワンコのタマタマの見た目に似ているから、そういう名前がついたんだって。ワンコの“フグリ”がイラスト化されているのがおかしい。
樹木の方は、いったん覚えてしまえば、その場所を動くことはないですからね。それだけに、毎年決まった季節にその花や実二であえるのは、とっても嬉しいものですよね。
逆に、去年まではあったはずのものが、今年はなくなっていたりすると悲しい。昨年、かつてあったはずの場所にネコヤナギがなくてとても悲しい思いをした。春先に、川っぺりでネコヤナギの冬芽にであえると、なんか暖かそうでね。嬉しくなるのにね。
じっくり見ておいて、今日も河原の土手を歩いてみよう。もしかしたら、昨日は見つからなかった春の気配に触れられるかもしれない。ついでに、そろそろ土筆だの、フキノトウだの、食えるものが出てくるかもしれない。・・・ついで、ついでですよ。

