『一気にわかる!池上彰の世界情勢2021』 池上彰
たしかにそうだ。
中国が世界にばらまいたのは、間違いない。池上さんが「皮肉なことに」と言うとおり、「結果的に中国はうまくやった」という状況になった。国民の権利や人権などを一切無視できる国だから、あの武漢封鎖のような状況も実施できる。議会を通さず、法律に誓い規制を次々に打ち出し、ほぼコロナを押さえ込んだ。結局、有事には、独裁国家が強いと言うことだ。
民主主義国は強制する力が弱い。それでも欧米は、強制力のあるロックダウンを実施した。同じ民主主義の国でも、国の手足を縛っている日本は、その強制力のある政策を実施することができず、自粛を“お願い”した。
感染症が流行し始めたとき、“中国”はいち早くWHOに報告したと言ったけど、あれは嘘。SARSの時、“中国”が隠蔽しようとして事態が悪化したことがある。その時、香港でSARS対策の指揮を執ったのが、前WHO事務局長のマーガレット・チャンだった。SARSにおいては、香港での流行が世界的流行につながった。
マーガレット・チャンはSARS対策の功績により、“中国”から事務局長に推薦されたという、わけの分からないことになっている。
だから、WHOは、“中国”を監視していた。あれは“中国”から報告を上げたのではない。WHOがSNS上で感染症に関わる情報を監視していて、2019年12月に、“中国”の武漢で、肺炎の患者がたくさん出ているという情報をつかんだ。そこで、WHOから“中国”に問い合わせをしたということだ。
WHOと同じ時期に、それに気づいた国がある。SARSが持ち込まれてひどい目にあった台湾。台湾は、“中国”の横やりでWHOに入れてもらえないから、独自の防衛対策を作っていたんだそうだ。
それにしても、“中国”は、どうしてこうも、新しい病気を世界に広めるんだか。14世紀のペストでは、全世界で1億人は死んだそうだが、あれも“中国”だった。
当時、ペストで死んだ人の遺体を掘り出してペスト菌の遺伝子を調べたところ、“中国”の雲南で発生したペスト菌と同じだったって。そこからヨーロッパへの伝播を、池上さんは「シルクロードだというのが有力な説」と言っている。
実際には、モンゴル帝国の時代だから、シルクロードはひとっ飛び。黒海沿岸のカッファ(現フェオドシア)を包囲し、陥落寸前まで追い込んだモンゴル軍が、突然囲みを説いて撤退した。なんとペストの蔓延で、軍を維持出来なくなっていた。
平和の訪れたカッファは、今度はペストに見舞われた。カッファで商売していたジェノヴァの商人が、商品と一緒にペストを4隻の船に積み込んでカッファを出発。船がイタリアに着く頃には、ほとんどが息絶えていたようだ。その後ペストは、1年足らずでヨーロッパ全域を覆い尽した。
モンゴル帝国の時代は、ユーラシアに関しては、グローバルな時代なんだよね。
ウイルスの遺伝子は、2週間に1度くらいのペースで、わずかに変異していくんだそうだ。
だから、遺伝子を調べることで、どんな経緯で広がったのか、分かるんだそうだ。アメリカは早い段階で“中国”からの入国を止めた。その後、アメリカで広まった感染症は、ヨーロッパ由来のものだったそうだ。ヨーロッパで変異したものがアメリカに入ったんだな。
日本に広まった感染症は、最初の段階では武漢のものが持ち込まれた。最初のピークの段階だな。それは抑えたものの、春先にヨーロッパから帰ってきた人たちが、ヨーロッパ型、おもにスペイン由来のウイルスを持って来ちゃったんだな。その後、さらに変異して、東京・埼玉型になって地方に拡散された。
つくづく12月、せめて1月の早い段階で“中国”が情報をオープンにしていればなぁ。
在宅勤務、働き方改革、リモート学習等ITの活用が、一気にするんだね。私の姪も、東京の勤務なのに、ほとんど秩父の家で仕事をしていると言っていた。
池上さんは、一気に進んだのはITの活用だけじゃなくて、国際情勢もそうだと言っている。米中の対立は、感染症流行前からのものだけど、感染症をきっかけにして対立が先鋭化してきたと。
感染症を腕力で押さえ込んだ“中国”は、いまだ感染症に苦しむ国々を尻目に、一人経済成長率をプラスに転じている。一人勝ち状態。ヨーロッパのロックアウトで弱った企業を、“中国”企業が買収しているそうだ。
欧米が、“中国”のウイグル民族に対する民族浄化や、香港の民主勢力弾圧に対して、強く抗議するようになった。新疆ウイグル自治区の当局者に対して制裁を行なうようになった背景には、おそらくそういった背景も関係しているんだろう。
池上さんは、「世界経済に中国が占める地位は、一段と高くなった感じです。中国経済がどんどん大きく、強くなると言うことはもう間違いのないこと」と言っている。
たしかに、イギリスのシンクタンクには、感染症対策で一人勝ちしたことで、「中国は当初の予想よりも5年早い2028年までに米国を追い抜いて世界最大の経済大国になる」との予測を示した。しかし、北京大学国家発展研究院のトップは12月17日、「中国の失業率は当局が発表した6%ではなく20%であり、失業者は1億4000万人に達している可能性がある」と指摘した。
ついこの間まで、多くの“中国”の人々が経済成長の恩恵にあずかれるためには、最低8%の経済成長率が必要と言っていた。それが8%を切り、7%を切り、感染症が流行する前の2019年には6%台を維持するのがようやくだった。それも大本営発表。上記でも、当局が発表した失業率6%に対して、実情20%だと言っている。20%の失業率とは、1億4000万人の失業者がいると言うことだ。
そうなると、当局への不満は、だいぶ高くなっているだろう。ここのところの、中国共産党の香港への対策、台湾への対策を見ると、尖閣諸島に中国海警局の船を連日向けてくることも含めて、国民の不満を外に向けようとしているのではないか。
さらには、“中国”は巨大化した不良債権をまったく解消できていない。あれがどうにかなった日には、大変な状況になるはずだな。この本はとても分かりやすい良い本だと思う。だけど、経済状況をもとにして、その国のその後を考える長谷川慶太郎さんのような手法はない。それが一番知りたいんだけどな。
中国が世界にばらまいたのは、間違いない。池上さんが「皮肉なことに」と言うとおり、「結果的に中国はうまくやった」という状況になった。国民の権利や人権などを一切無視できる国だから、あの武漢封鎖のような状況も実施できる。議会を通さず、法律に誓い規制を次々に打ち出し、ほぼコロナを押さえ込んだ。結局、有事には、独裁国家が強いと言うことだ。
民主主義国は強制する力が弱い。それでも欧米は、強制力のあるロックダウンを実施した。同じ民主主義の国でも、国の手足を縛っている日本は、その強制力のある政策を実施することができず、自粛を“お願い”した。
感染症が流行し始めたとき、“中国”はいち早くWHOに報告したと言ったけど、あれは嘘。SARSの時、“中国”が隠蔽しようとして事態が悪化したことがある。その時、香港でSARS対策の指揮を執ったのが、前WHO事務局長のマーガレット・チャンだった。SARSにおいては、香港での流行が世界的流行につながった。
マーガレット・チャンはSARS対策の功績により、“中国”から事務局長に推薦されたという、わけの分からないことになっている。
だから、WHOは、“中国”を監視していた。あれは“中国”から報告を上げたのではない。WHOがSNS上で感染症に関わる情報を監視していて、2019年12月に、“中国”の武漢で、肺炎の患者がたくさん出ているという情報をつかんだ。そこで、WHOから“中国”に問い合わせをしたということだ。
WHOと同じ時期に、それに気づいた国がある。SARSが持ち込まれてひどい目にあった台湾。台湾は、“中国”の横やりでWHOに入れてもらえないから、独自の防衛対策を作っていたんだそうだ。
それにしても、“中国”は、どうしてこうも、新しい病気を世界に広めるんだか。14世紀のペストでは、全世界で1億人は死んだそうだが、あれも“中国”だった。
当時、ペストで死んだ人の遺体を掘り出してペスト菌の遺伝子を調べたところ、“中国”の雲南で発生したペスト菌と同じだったって。そこからヨーロッパへの伝播を、池上さんは「シルクロードだというのが有力な説」と言っている。
実際には、モンゴル帝国の時代だから、シルクロードはひとっ飛び。黒海沿岸のカッファ(現フェオドシア)を包囲し、陥落寸前まで追い込んだモンゴル軍が、突然囲みを説いて撤退した。なんとペストの蔓延で、軍を維持出来なくなっていた。
平和の訪れたカッファは、今度はペストに見舞われた。カッファで商売していたジェノヴァの商人が、商品と一緒にペストを4隻の船に積み込んでカッファを出発。船がイタリアに着く頃には、ほとんどが息絶えていたようだ。その後ペストは、1年足らずでヨーロッパ全域を覆い尽した。
モンゴル帝国の時代は、ユーラシアに関しては、グローバルな時代なんだよね。
毎日新聞出版 ¥ 1,100 私たちの生活と国際情勢は切り離せないことを実感した2020年。そして2021年を展望 |
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ウイルスの遺伝子は、2週間に1度くらいのペースで、わずかに変異していくんだそうだ。
だから、遺伝子を調べることで、どんな経緯で広がったのか、分かるんだそうだ。アメリカは早い段階で“中国”からの入国を止めた。その後、アメリカで広まった感染症は、ヨーロッパ由来のものだったそうだ。ヨーロッパで変異したものがアメリカに入ったんだな。
日本に広まった感染症は、最初の段階では武漢のものが持ち込まれた。最初のピークの段階だな。それは抑えたものの、春先にヨーロッパから帰ってきた人たちが、ヨーロッパ型、おもにスペイン由来のウイルスを持って来ちゃったんだな。その後、さらに変異して、東京・埼玉型になって地方に拡散された。
つくづく12月、せめて1月の早い段階で“中国”が情報をオープンにしていればなぁ。
在宅勤務、働き方改革、リモート学習等ITの活用が、一気にするんだね。私の姪も、東京の勤務なのに、ほとんど秩父の家で仕事をしていると言っていた。
池上さんは、一気に進んだのはITの活用だけじゃなくて、国際情勢もそうだと言っている。米中の対立は、感染症流行前からのものだけど、感染症をきっかけにして対立が先鋭化してきたと。
感染症を腕力で押さえ込んだ“中国”は、いまだ感染症に苦しむ国々を尻目に、一人経済成長率をプラスに転じている。一人勝ち状態。ヨーロッパのロックアウトで弱った企業を、“中国”企業が買収しているそうだ。
欧米が、“中国”のウイグル民族に対する民族浄化や、香港の民主勢力弾圧に対して、強く抗議するようになった。新疆ウイグル自治区の当局者に対して制裁を行なうようになった背景には、おそらくそういった背景も関係しているんだろう。
池上さんは、「世界経済に中国が占める地位は、一段と高くなった感じです。中国経済がどんどん大きく、強くなると言うことはもう間違いのないこと」と言っている。
たしかに、イギリスのシンクタンクには、感染症対策で一人勝ちしたことで、「中国は当初の予想よりも5年早い2028年までに米国を追い抜いて世界最大の経済大国になる」との予測を示した。しかし、北京大学国家発展研究院のトップは12月17日、「中国の失業率は当局が発表した6%ではなく20%であり、失業者は1億4000万人に達している可能性がある」と指摘した。
ついこの間まで、多くの“中国”の人々が経済成長の恩恵にあずかれるためには、最低8%の経済成長率が必要と言っていた。それが8%を切り、7%を切り、感染症が流行する前の2019年には6%台を維持するのがようやくだった。それも大本営発表。上記でも、当局が発表した失業率6%に対して、実情20%だと言っている。20%の失業率とは、1億4000万人の失業者がいると言うことだ。
そうなると、当局への不満は、だいぶ高くなっているだろう。ここのところの、中国共産党の香港への対策、台湾への対策を見ると、尖閣諸島に中国海警局の船を連日向けてくることも含めて、国民の不満を外に向けようとしているのではないか。
さらには、“中国”は巨大化した不良債権をまったく解消できていない。あれがどうにかなった日には、大変な状況になるはずだな。この本はとても分かりやすい良い本だと思う。だけど、経済状況をもとにして、その国のその後を考える長谷川慶太郎さんのような手法はない。それが一番知りたいんだけどな。