めんどくせぇことばかり 本 近現代世界
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頑張れ!周庭さん『地政学世界地図』 バティスト・コルナバス

この本は、独裁体制を採る、または採っていた国々を、多く取扱っている。

ある国を取り上げた章で、“独裁”を四つの点で定義している。
  1. 強権的な国家元首がすべての権力を握っている
  2. 自由選挙が行なわれず、しばしば反対派が抑圧される
  3. 出版の自由をはじめ、基本的な自由が保障されていない
  4. 法治国家としての形態をなしていない

“ある国”とは中華人民共和国なのだが、“中国”は、見事なまでにすべての定義が当てはまる、典型的な独裁国家だ。

中華人民共和国憲法はこの国を「労働者階級が指導し、労働者と農民の同盟を基礎とする人民民主主義独裁の社会主義国家」と定義している。2018年以来、憲法前文は中国共産党の指導的役割を明確にし、国家の依拠するイデオロギーはマルクス・レーニン主義であると明記している。

具体的には、“中国”を支配するのは中国共産党である。その最高ポストが総書記で、国家元首でもある。立法機関は全国人民代表大会で、中国共産党が実権を握る。最高権力者は国家主席で、主席は中国共産党総書記を兼ねる。行政機関は国務院で、国家主席が指名し、全人代が承認した総理が統括する。最上位の司法機関は最高人民法院であるが、共産党が主導する全人代の支配下にある。

2018年6月、天安門事件の追悼行事を行なったという理由で、11人の活動家が逮捕、起訴された。起訴理由は、「対立を誘発し公共の秩序を乱した」ということだ。人権問題を専門とする弁護士15人が突如行方不明になったのは2015年のことで、家族はそれを1年以上知らされず、本人は拷問を受けたこともあったという。最後の一人が家族の元に帰ることができたのは、2020年、昨年の4月だった。

“中国”における基本的人権のために、長期にわたり非暴力的な取り組みを評価され、2010年にノーベル平和賞を受賞した劉暁波は、2017年5月、獄中にあるまま肝臓ガン末期と診断され、条件付きで釈放されたのち7月に亡くなった。


『地政学世界地図』    バティスト・コルナバス

東京書籍  ¥ 2,420

今、世界で起きている33の国際問題を、仏人歴史教師が平易に読み解く
すべての地図は間違っているのか?
国境線はどうやって引かれたのか?
なぜ欧州連合(EU)の加盟国は変わり続けるのか?
トルコはヨーロッパなのか?
アルザスはフランスなのか、ドイツなのか?
グリーンランドはどこに属しているのか?
BRICSとは何者か?
国連の目的とは何か?
宇宙は誰のものか?
なぜジブラルタルは英国領なのか?
「ロシアの飛び地」カリーニングラードとは何か?
キプロスはどこに属しているのか?
リヒテンシュタインとはどんな国?
マケドニアが「北マケドニア」になった理由とは?
香港は中国なのか>
ナウルは滅びた楽園か?
キューバ、時間が止まった国?
なぜ二つの国家が朝鮮半島に存在するのか?
ミャンマー(ビルマ)は統一できるのか?
インドとパキスタンの間で何が起きているのか?
なぜシリアでは混迷が続くのか?
イスラエル・パレスチナ紛争はなぜ解決できないのか?
ユーゴスラビアはどこに行ったのか?
なぜクリミア半島は緊張状態にあるのか?
アラル海はなぜ消えたのか?
なぜアルジェリア国民は蜂起したのか?
エリトリアには自由があるか?
なぜスーダンは危機に陥ったのか?
なぜイエメンは瀕死の状態にあるのか?
リビアはまだ存在しているのか?
ベネズエラで何が起こっているのか?
中国はどこに向かうのか?







香港返還当時、経済の自由化を進める“中国”に、世界は民主化の道を歩んでいると感じていた。

イギリスは“中国”に返還の条件をつけて香港基本法を施行させ、いずれ政治の民主化が進んでいくまでの間、香港の資本主義的経済システム、香港ドル、司法・行政制度、住民の諸権利と自由が維持されることになった。その期間は、50年と定められた。

返還から50年、つまり、2047年に、香港は中華人民共和国の体制に組み込まれることになる。

どうも、イギリスが考えていたようには、事は進んでいない。中華人民共和国は、きわめて歪んだ状態で自由主義経済の恩恵だけを享受し、経済大国にのし上がった。しかし、政治の自由かはまったく進まず、むしろ独裁体制を強化する方向へと進んだ。

2014年に、香港で発生した民主化運動は、大変大きな規模となった。当局は、デモ隊に対して催涙ガスを使用した。デモ隊が催涙ガスから身を守るため雨傘を使ったことから、この民主化運動は《雨傘運動》と呼ばれた。

8月、中共がある方針を打ち出した。香港の行政長官選挙に関しては、北京政府の方針を尊重する者を候補者とするというものだった。民主化を求めるデモはたちまち巨大化し、香港の中心部を数ヶ月にわたって麻痺させた。これで中国側のもくろみは挫折した。

2019年に、再び香港のデモが激しくなった。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする《逃亡犯条例》の改正案に反対するデモである。今回の改正案が成立すれば、香港住人だけでなく、香港に住んだり渡航した外国人や中国人までもが、中国側からの要請があれば本土に引き渡されることになる。

デモの大規模化に、“中国”よりの林鄭月娥行政長官は法改正を無期延期し、謝罪を表明したが、それでもデモは収まらなかった。人々は、中華人民共和国が、直接、香港に手を伸ばしてきたと感じたのだ。

2020年6月30日、全国人民代表大会常務委員会は、国務院から提出された香港国家安全維持法案を全会一致で可決し、習近平と林鄭月娥により公布され、翌7月1日から施行されることになった。

これにより、以下のこ4つの行為が厳罰の対象となった。
国家分裂―「香港独立」の主張・活動や政党の結党
中央政府転覆―SNSでの中国批判、天安門事件を扱う集会開催
テロ行為―デモでの破壊行為
外国勢力との結託―中国政府への制裁を外国に呼びかけること

11月に有罪判決を下され、12月2日に10ヶ月禁固の量刑を言い渡された、日本でもおなじみの活動家の周庭さんにかけられたのは、「外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えた」という容疑だった。

どの行為が、どんな発言が法に触れたのか、一切明らかにされていない。法の解釈権は全人代常務委にある。

習近平は周庭を解放しろ。頑張れ!周庭さん。



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『世界の歴史はウソばかり』 倉山満

1980年から88年まで続いたイラン・イラク戦争におけるイラクの大義名分は、「重要戦略目標としたフゼスタンという産油地に住む人々はアラブ人であり、アラブ民族主義を掲げるイラクは、その地にいる同胞を助けなければならない」ということだった。たしかにフゼスタンは、歴史的にアラブ人、端的に言えばイラク人が多く住む。なにしろ、平地で、地続きでイラクに接しているのだから。

さらにイラクは、自分たちのイランに対する闘いを、7世紀にアラブ軍がササン朝ペルシャを破った闘いになぞらえている。この本の中では、その闘いを《カーディシーア》と言っている。636年のカーディシーアの戦いと、それに続いて641年のニハーヴァンドの戦いに敗れて、ササン朝ペルシャは滅んでいる。イラクは、あくまで、この戦争をアラブ人対ペルシャ人という民族戦争として戦ったわけだ。

逆に、イランは、この戦争をムスリムの聖戦であることを強調した。「この闘いで死ねば天国に行ける」と。イラン兵は前線でも死を恐れずに戦うので、イラク軍はそれを恐れた。当時のイランは、革命でパーレビ国王が追放されて、シーア派のホメイニーが国を指導していた。彼の信仰は「12イマーム派」というもの。「ムハンマドの血縁者のアリーが初代イマーム(指導者)で、12代目が9世紀にお隠れになった。しかし、世界の終末を前に12代目が救世主として再臨して平和な千年王国を築く」という考え。12イマームが再臨するまでの間、イスラム法学者がムスリム共同体を導くわけだ。

ホメイニーの論理にすれば、イラクを世俗化したサダム・フセインはイスラムの正義に反する存在であるので、これを倒す闘いに参加することがムスリムの義務ということになる。

このイラン・イラク戦争の頃、アメリカで話題になったのが、「イラン・コントラ・ゲート」と呼ばれるできごとだった。当時、アメリカとイランは国交断絶状態にあった。テヘランのアメリカ大使館がホメイニー支持派の狂信者集団に急襲され、アメリカ人大使館員ら50人近くが440日にも渡って拘束された。レーガンの時に人質は解放されるが、両国はその後も緊張関係を続けた。

ところが、水面下においては、アメリカは大統領補佐官を通じて、イランに密かに対戦車ミサイルなどの武器を供給していた。同時にアメリカは、イラクの方にも毒ガス工場建設などの支援を行い、両国を争わせ続けて中東の大国を疲弊させようとしていた。この内実が1984年にニューヨーク・タイムズにすっぱ抜かれてスキャンダルになったのがイラン・コントラ・ゲート事件である。

2003年のイラク戦争の口実になる大量破壊兵器の存在は、これに基づいている。イラクはイランとの戦争で使った毒ガス兵器を、戦後、埋めた。それに関わったアメリカは、それを知っていた。イラクに毒ガス工場を作らせたのはアメリカであり、施工したのは西ドイツだった。

2015年の武器輸出額は、アメリカもドイツもイギリスも、前年比で倍増している。



ビジネス社  ¥ 1,210

世界が知られたくない暗黒史を大暴露!もっとも格調高き“ヘイト本”
序章 日本人がまったく知らない国民国家論
第1章 典型的な「国民国家」フランス
第2章 国民国家の理論でナチズムをやっている中国 
主権国家にすらなれていない韓国
第3章 常に異ネーションをかかえた帝国ロシア
第4章 国体と政体の区別がない「人工国家」アメリカ
第5章 「民族主義」のヒトラーに破壊された国民国家ドイツ
第6章 エンパイアから始まった国民国家イギリス
第7章 七世紀には国民国家だった日本
おわりに 史上もっとも格調高いヘイト本


今年も日本は、世界の人たちからいろいろなことを言われた。12月のCOP25で小泉環境大臣は、ずいぶん叩かれた。それが年末にあったもんだから、年明け早々、環境後進国扱いされるようになった。脱炭素の流れの中でも、ヨーロッパは石炭火力発電廃止を既定路線として、走り出しているからね。フランスが2021年まで、イギリスとイタリアが25年、オランダとカナダが30年まで、ドイツが38年までといった具合。

石炭が使われるのは、日本は、石炭火力発電の技術では、世界最先端にあることもある。しかも、経済性でもすぐれているために、海外の新興国を中心に、今後も石炭に依存しなければならない国は多い。それらの国で日本の技術を生かすことができれば、効率的な発電によって二酸化炭素の排出を抑え、大気汚染も防止することができる。

その点においては、じつは日本の一人勝ちという状況にあった。その日本を、環境後進国とののしる人たちは、いったい何をめざしているのか。後ろで糸を引いているのは何者か。

世界の国々の立ち回りは、その場の都合次第。裏で何をやってるかといえば、自国の利益だけを最大限にすることだけ。そのくらいのことを言われても、あんまりまともに考えずに、「そうだね~。40年くらいかな」ってなことを言っておけばいい。

1972年、フセインは、当時のアラブ世界のどこもができなかった「石油資源の国有化」に成功した。中東の石油利権の多くは欧米系企業の支配下にあり、それまでは、算出する石油で得られる利益の4%の手数料しか国の利益にならなかった。それが、国有化後は、96%が国の利益になった。

莫大な国家収入をもとに、フセインは学校を作って教育を整備し、社会の世俗化を進めた。女性の社会進出にも積極的で、チャドルをかぶる必要はなくなり、男性と同様に教育を受け、外で働くことが推奨された。

フセインの属するバアス党はシリア、パキスタン、アフガニスタンにも拡大しており、イラクと同様、女性が普通にオフィスで仕事をしていた。

アラブの春の発火点となったのはチュニジアだった。なけなしの金を投資して許可無しで市場で物を売っていた男が、それを規制していた警察官との間に悶着を起こし、警察官に殴られた。その警察官が女だった。男が女に殴られるというのはイスラム的価値観からすれば大きな屈辱で、男はカッとなって焼身自殺した。これがきっかけで独裁政権への反乱が始まった。

しかし、女性警官がいるということは、チュニジアは世俗化により、女性の解放が進んでいたということだ。

アメリカは、オバマの頃に、そういった中東の政権を次々と崩壊させていった。オバマは、ずいぶん世界に混乱を広げてくれたが、戦争をすると二酸化炭素の排出は、とてつもなく増えるだろうな。


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『世界あたりまえ会議』 斗鬼正一

斗鬼正一さん。“とき”さん・・・で、いいのかな。

“とき”だったら、土岐氏というのが歴史の中に出てくるけど、その関係の方だろうか。“斗”にしろ、“鬼”にしろ、意図的なものと感じるのだが、特に、なぜ、わざわざ“鬼”という字を使ったんだろう。“強さ”を表現するためだろうか。

江戸川大学名誉教授、明治大学大学院・文学部兼任講師の方で、“熱帯ジャングルのヤップ島からコンクリートジャングルの香港、東京まで、旅と街歩きで「人間という人類最大の謎」を探検する文化人類学者”というのが、著者に関わる説明。《文化人類学》という分野を生きてきた人のようだ。

それにしても、文化人類学って、こんなに面白いんか。

人の一生を考えると、当たり前ながら、生まれるところから始まる。いくら何でも、これは“あたりまえ”だろう。それでも、どう生まれるかってところから、もう、“あたりまえ会議”の議題にのってくる。

イスラム教の世界では、一夫多妻が認められているし、逆にチベットやマルサケス諸島では一妻多夫だそうだ。チベットの一妻多夫は、兄弟で妻を共有する形で、遊牧生活で家を留守にする間も、残った兄弟が家族を守る。子どもは、その“家の子ども”って扱いか。

ところが、マルサケス諸島の一妻多夫における“夫”は、その家の家長以外は完全に不特定多数。不特定多数の男たちは、その家の使用人のような扱いになるそうだ。そうなると、子どもはどうなる?・・・この先は、読んでびっくり・・・だな。

世界のいくつかの部族では、同性婚があたりまえで、女同士の夫婦で、夫は妻に愛人の男性をあてがって、子を成すんだそうだ。逆に、男同士の夫婦で、身代わりの女性に子どもを産んでもらうケースもあるという。

タイでは、幼くして死んでしまった子どもは、精霊に連れ去られたと考えるんだそうだ。そのために、子どもを犬、豚、水牛、蛙など変なニックネームで呼んで、精霊の目を欺くという。

だから、人の子どもを「かわいい」と褒めるのは非常識。可愛がって、“なでなで”するのも非常識。そんなことをされると、すぐに顔色が悪くなり熱を出してしまうと考えられているんだそうだ。

豊臣秀吉は、秀頼が生まれたとき、健康な成長を願う当時の祈願として、いったん捨てた形にして、家臣の松浦重政に拾い上げさせた。幼名も拾丸。その考え方に似てるな。




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世界には驚きが溢れている。“仰天あたりまえ”を発表する会議が、今始まる…。
第1部 男と女についてのあたりまえ会議
第2部 人生についてのあたりまえ会議
第3部 コミュニケーションのあたりまえ会議
第4部 身のまわりのあたりまえ会議
第5部 生きるためのあたりまえ会議


欧米では、赤ちゃんを、すぐに別室に寝かせる。同じ部屋に寝かせるのは、せいぜい3ヶ月までだそうだ。日本人は、ずっと添い寝する。別室に寝かせるなんて、ずいぶん経ってから。そうだな。私の家でも、小学校の頃は、ずっと一緒に部屋だったな。

ニジェールの親は、子どもにオモチャを買い与えることがないそうだ。子どもは何でも自分で考えて遊ぶ。必要な物があれば、自分で工夫する。

日本人は、子どもと一緒にお風呂に入る。多くの場合、お父さんの役割だったりする。うちでもそうだった。その間に母親がごはんの準備をしていた。娘とも、小学校の高学年になるまで、一緒に入っていた。

世界の多くの地域では、これは非常識なんだってね。

赤の他人の子どもを可愛がったり、泣いている子どもをあやしたり、笑わせようとしたり、何かとお節介を焼きたがるのは、世界に多い例らしい。必要があれば、他人の子どもでも遠慮なく叱り飛ばす。ベトナムでは、子どもを叱るのは大人の役割とされているという。

日本でもそうだったよね。それも、私が子どもの頃までか。子どもは国の宝、社会の宝だったからね。今は、他人から声をかけられても答えないで逃げるように、親が子どもに教えているって言うんだからね。

でも、この間、山に登ろうと、子どもの登校時間にときがわ町を歩いていたら、中学生の女の子に「おはようございます」って挨拶された。とっても、うれしかった。

ドイツ北部のいくつかの地域では、いい歳をして独身って言うのは、困ったもんだと考えられているそうだ。ブレーメンでは独身のまま30歳を迎えると、大聖堂の掃除をさせるという罰が与えられるという。これは、男も女も。

しかも、男性は未婚女性から、女性は未婚男性からキスしてもらわない限りやめられないって。「早く結婚して子どもを持て」という願いや圧力が込められた通過儀礼だという。

ロシア正教のマスレニツァと言う祭りは、一週間続く婚活の場で、相手を見つけて結婚したカップルは、翌年の祭りで祝福されるという。逆に結婚しなかった男女は、足や肩に重たい枷をつけられるんだそうだ。

結婚して、子どもを作るってことは、社会に対する大事な責任なんだな。

今の日本では、そんなことを求めるのは、男に対しても、女に対しても、ハラスメントと受け止められてしまう。文化人類学的に、今の日本は、かなりおかしな状態ということになる。


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『地政学世界地図』 バティスト・コルナバス

社会科の教員をしていた頃、教科書会社の人が、よく学校を廻ってきた。

うちの会社の教科書を使ってくれってね。新しい教科書を持って、アピールポイントを説明して、売り込みして学校を廻るのが、その人たちの仕事だ。私の専門は世界史だったんだけど、戦後日本の歴史教科書は、東京裁判を前提に書かれているからね。「そうじゃない教科書ができたら、採用するよ」って言うと、「また、また~」ってね。

お茶入れてあげて、仕事で色々と大変な話を聞いてあげるんだ。中には、そのために、わざわざ私の空き時間を調べてくる人もいた。お茶菓子を持ってきちゃうんだよ。「賄賂?」ってね。話を聞くと、嫌な思いをすることもあるらしい。上司からだったり、学校の教員からだったりね。

会社が出している面白い資料なんかあると、持ってきてくれたな。特に、地図帳を出している会社の人が持ってきてくれた白地図帳は、実際に授業でずいぶん使わせてもらった。

マッカーサー地図って言うやつ。ごく当たり前のメルカトル図法の地図なんだけど。南極が上で、北極が下になってる地図ね。若い時に、神田の古本屋街を歩いていて、たまたま手に入れたんだ。

私が勤務した4つの高校は、学力の面で、いずれも県内で真ん中よりも下の学校だった。そういう学校だと、専門が世界史だからといって、結局はどんな科目でもやることになる。「どんな科目でも」っていうのは、世界史の他、日本史でも、地理でも、現代社会でも、倫理でも、政経でもね。

どんな科目をやることになっても、1年の授業の最初には、その地図を見せて、「何を見ようとするかによって、使う地図が変わる」ってこと、「地図が変わると、世界の見え方が変わる」ってことを話した。

この本の序文を書いたバンジャマン・ブリヨーさんは、「地図は権力の道具だ」という。自分の国が世界の中心にあるならば、自分の国はきっと世界の注目の的であり、政治と経済の中心であるに違いないと、心地よい幻想に浸ることができる。フランス人にとって、ヨーロッパを世界の中心に置くことは、精神的な安定につながるのだという。

しかし、残念ながら、地球の中心は、地球の地表にはない。心地よい幻想に浸るのはかまわないが、どのような地図をとってみても、地球の一定の地点は歪んで表わされることになる。

また、そこに暮らしている人たちの生活を知れば、地図をのぞくことがもっと面白くなる。ところが、日本のようなわずかな例外を除いて、世界はあまりにも複雑な歴史を繰り返してきた。その地域に、なぜ現在のような生活が存在するのか。実は、これはきわめて難しく、かつ重大な問題なわけだ。




『地政学世界地図』    バティスト・コルナバス

東京書籍  ¥ 2,420

今、世界で起きている33の国際問題を、仏人歴史教師が平易に読み解く
すべての地図は間違っているのか?
国境線はどうやって引かれたのか?
なぜ欧州連合(EU)の加盟国は変わり続けるのか?
トルコはヨーロッパなのか?
アルザスはフランスなのか、ドイツなのか?
グリーンランドはどこに属しているのか?
BRICSとは何者か?
国連の目的とは何か?
宇宙は誰のものか?
なぜジブラルタルは英国領なのか?
「ロシアの飛び地」カリーニングラードとは何か?
キプロスはどこに属しているのか?
リヒテンシュタインとはどんな国?
マケドニアが「北マケドニア」になった理由とは?
香港は中国なのか>
ナウルは滅びた楽園か?
キューバ、時間が止まった国?
なぜ二つの国家が朝鮮半島に存在するのか?
ミャンマー(ビルマ)は統一できるのか?
インドとパキスタンの間で何が起きているのか?
なぜシリアでは混迷が続くのか?
イスラエル・パレスチナ紛争はなぜ解決できないのか?
ユーゴスラビアはどこに行ったのか?
なぜクリミア半島は緊張状態にあるのか?
アラル海はなぜ消えたのか?
なぜアルジェリア国民は蜂起したのか?
エリトリアには自由があるか?
なぜスーダンは危機に陥ったのか?
なぜイエメンは瀕死の状態にあるのか?
リビアはまだ存在しているのか?
ベネズエラで何が起こっているのか?
中国はどこに向かうのか?





著者のバティスト・コルナバスさんは、30代前半のフランス人だそうだ。中学校で歴史と地理を教えるかたわら、YouTubeで現在の世界で起きているさまざまな問題の歴史的、地政学的背景を発信するようになったもののようだ。んん、たとえば中東、紛争が絶えないパレスティナ、ロシアによるクリミア併合、緊張をはらむ朝鮮半島って、そんな感じ。

まあ、目次に呈示されているようなテーマも、もともとはYouTubeで取り上げたテーマで、それをふくらませたのが本書だという。

《アルザスはフランスなのか、ドイツなのか》は、ずいぶん深く掘り下げられている。第二次世界大戦、第一次世界大戦、普仏戦争、30年戦争。このあたりまでは、なんとなく分かるんだけど、メルセン条約まで行くのか。そうか、メルセン条約で、アルザスは東フランクの領有になるのか。ドイツのもとだな。

ところが、もっとさかのぼる。クローヴィス?・・・メロヴィング朝の創始者じゃないか。そこまで行くのか。クローヴィスがアルザスを奪取してフランク王国に編入した。そうだ。じゃあ、もとはローマ帝国に支配されたはずだ。ということは、ユリウス・カエサルがスエヴィ族からアルザスを奪ったんだ。スエヴィ族は、ゲルマンとも、ケルトとも言われているらしいけど、まあ、これがアルザスの初出だという。

アルザスはあっちに行ったり、こっちに行ったりするだけの、価値のある場所だったと言うことか。屈しなければならないときは身をかがめるが、決して完全に屈服することはない。そういう気性なんだそうだ。つまり、ドイツ人でも、フランス人でもない、アルザス人だと言うことだな。

著者のバティスト・コルナバスさんは、10年を超えてアルザスに住み、アルザス人になりきってしまった、非アルザス人なんだという。

一つ一つの地域を深く掘り下げて、なぜ、この地域で、こんな問題が発生しているのかを追求していくっていうのは、とても困難で、とても大切なこと。

おもしろい本なんだけど、アジアに関する理解が薄い。

「日本の支配下の朝鮮では日本語のみが使用を許され」、「日本にとって朝鮮は資源と農産物の供給源」、「朝鮮の農業生産の40パーセントは日本向けのものだったが、朝鮮では栄養失調が蔓延していた」、「日本に動員・徴用された者も多く、日本の工場や炭鉱で厳しい条件で働かされる場合もあった」

フランスにとっての植民地とは違うんだけどな。

まあ、それは、ヨーロッパを世界地図の中心に置くことは、精神的な安定につながるというフランス人。日本は、その世界地図の右の端に、おまけのように描かれている国。その世界地図を広げた壁の都合によっては、後ろ側に織り込まれてしまって、世界から消えることもあるかも知れない。

フランス人にとっての日本は、あくまでも、その地図に書かれている通りの日本なんだろう。

著者のバティスト・コルナバスさんの、とても困難で、とても大切な取り組みにとって、世界の近代史を見つめ直すことが、とても重要なのではないかと、極東の私は思うわけだ。



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EU『地政学世界地図』 バティスト・コルナバス

ヨーロッパを1つにする?

ローマ帝国がやってたよね。あの頃のヨーロッパっていうのは、今とはまったく状況が違って、今のヨーロッパとはとても同じ土俵で語れるもんじゃない。そのうち、ゲルマン人の中でもフランク王国のカール大帝が、現在のフランス・ドイツ・イタリアの領域をまとめていったこともあった。

その後を考えると、カール5世時代のハプスブルク帝国もかなりだよね。あとは、ナポレオンの時かな。ヨーロッパの大部分がフランスの支配するところになった。それが、フランス革命の理念と一緒に広まっていって、それによって高まったナショナリズムが、逆にナポレオンを駆逐することになる。

第一次世界大戦の経験は、ヨーロッパにとってはとてつもなく大きい。ヨーロッパは殺し合い、荒廃と破壊を競った。おまけに、この戦いに終止符を打ったのは、かつてヨーロッパ諸国の植民地であったアメリカ合衆国の介入だった。

ヒトラーだってかなりのところまで行っていた。ヒトラーは他の民族よりも優秀な第三帝国によって統治されるヨーロッパ帝国の建設を目指した。実際、イギリスを残すヨーロッパを手中にし、バトル・オブ・ブリテンに打って出ていた。・・・そこで止まっちゃったけどね。

結局、ヨーロッパが1つになったことはなかった。そして第二次世界大戦後にEU、ヨーロッパ連合が生まれる。EU  はどうかな。これは、ヨーロッパが1つになったと言えるのかな。

第一次世界大戦がヨーロッパの曲がり角になったのは間違いないが、第二次世界大戦も、その影響はきわめて大きい。ヨーロッパ白人社会が世界を支配する体制そのものが、崩れ始めた。極東の黄色人種の国、日本のせいで。

インドネシアから、ミャンマーから、ベトナムから、インドから、オランダも、イギリスも、フランスも、出て行かざるを得なくなっていく。日本軍に駆逐された植民地軍の弱々しい姿に勇気を得て、アジアの人々が独立を勝ち取っていった。

その勢いは、アフリカにも波及した。ヨーロッパは、金のなる木を、つぎつぎと失っていく。



『地政学世界地図』    バティスト・コルナバス

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すべての地図は間違っているのか?
国境線はどうやって引かれたのか?
なぜ欧州連合(EU)の加盟国は変わり続けるのか?
トルコはヨーロッパなのか?
アルザスはフランスなのか、ドイツなのか?
グリーンランドはどこに属しているのか?
BRICSとは何者か?
国連の目的とは何か?
宇宙は誰のものか?
なぜジブラルタルは英国領なのか?
「ロシアの飛び地」カリーニングラードとは何か?
キプロスはどこに属しているのか?
リヒテンシュタインとはどんな国?
マケドニアが「北マケドニア」になった理由とは?
香港は中国なのか>
ナウルは滅びた楽園か?
キューバ、時間が止まった国?
なぜ二つの国家が朝鮮半島に存在するのか?
ミャンマー(ビルマ)は統一できるのか?
インドとパキスタンの間で何が起きているのか?
なぜシリアでは混迷が続くのか?
イスラエル・パレスチナ紛争はなぜ解決できないのか?
ユーゴスラビアはどこに行ったのか?
なぜクリミア半島は緊張状態にあるのか?
アラル海はなぜ消えたのか?
なぜアルジェリア国民は蜂起したのか?
エリトリアには自由があるか?
なぜスーダンは危機に陥ったのか?
なぜイエメンは瀕死の状態にあるのか?
リビアはまだ存在しているのか?
ベネズエラで何が起こっているのか?
中国はどこに向かうのか?







第二次世界大戦後、ヨーロッパに一体化の動きが現れてくる。二度の大戦を経て、国家間の平和の維持に必要な組織の構築が求められたのだ。

まずは、石炭と鉄鋼に関して、仏独の資源を一体化し、他のヨーロッパ諸国にも門戸を開放する仕組みだった。ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体という。さらに他の経済分野に関してはEEC、ヨーロッパ経済共同体が作られ、さらに新しいエネルギー産業分野としてヨーロッパ原子力共同体が成立した。これをまとめてEC、ヨーロッパ諸共同体、あるいはヨーロッパ共同体と呼んだ。

経済共同体が設立される前に、ヨーロッパには防衛共同体、政治共同体設立の動きがあった。それらはいったん頓挫したが、経済共同体によってヨーロッパ単一市場が創設されていく中で、通貨統合が浮上し、さらに政治分野の協調が視野に入るようになる。

これが、マーストリヒト条約によるEU、ヨーロッパ連合の創設につながる。

それで最初に戻るけど、ヨーロッパは1つになったのか。まあ、今の状態で、ドイツとフランスが戦争をするなんていうのは、ちょっと考えられない。EU内における安全保障に関しては、たしかにヨーロッパは変わった。経済に関して見てみると、世界のGDPの22パーセント、世界の農業生産の10パーセント、世界の工業生産の20パーセントを占めているという。EUと言うまとまりを持ったことで、世界経済の中で存在感を示している。

政治的にまとまっているとは言えないようだ。加盟国それぞれの思惑があって、EUとしての統一された政治見解を示すことはできていない。そりゃそうだ。だって違う国なんだもの。

結局のところは、安全保障と経済的な利益で結びついた地域連合というところか。この本では、《融通無碍》という言葉を使っている。便利な言葉だな。訳者がすごいのかも知れない。

イギリスが抜けたことで加盟国は27カ国になった。そのうちで、単一通貨ユーロを採用している国は19カ国。採用していないのは、イギリスは抜けたから、デンマークとスウェーデン。この2カ国はユーロ導入を拒否している。イギリスが加盟国だったときは、イギリスも拒否していた。それ以外の、ブルガリア、チェコ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、クロアチアは、自国の経済事情が基準を満たしていないため、ユーロを使っていない。

かと思うと、EUじゃないのにユーロを使っているところがある。モナコとサンマリノとバチカン、それにアンドラ。これらの国は、フランス、イタリア、スペインとの関わりがきわめて強く、フラン、リラ、ペセタを流通させていた。そんなわけで、EUと取り決めを結んでユーロを流通させている。

コソボとモンテネグロでも、ユーロが流通しているが、これは協定を結んだ上のことではないようだ。特にコソボでは、政治的な理由からセルビアのディナールを廃したために、ユーロを流通させざるを得ないという事情がある。

EU市民がEU圏内を自由に移動し、居住できるというシュンゲン協定に関しても似たようなところがあるようだ。26の加盟国がシュンゲン協定に加盟しているらしい。どこだ、残りの1国は?探してみたらアイルランド。イギリスとアイルランドは、EU非加盟国と加盟校に分かれちゃったけど、もともと両国の間には“共通旅行区域”という取り決めがあったんだそうだ。それにどちらも島国だから、シュンゲン協定に関する意識が大陸の国々とは違ったらしい。

それからEUには入っていないのにシュンゲン協定には加盟しているのが、アイスランド、ノルウェー、スイスの三国。アイスランドは、イギリスやアイルランドよりもっと遠い島国なのにね。EU加盟国なのにシュンゲン協定への参加を拒否されているブルガリア、ルーマニアみたいな国もあるみたい。

《融通無碍》という言い方が適当かどうか判断つかないが、イギリスは、やっぱり窮屈で嫌だったんだろう。あんまり考えの違う連中に引っ張り回されるのはね。さらに今、加盟申請をしているのがアルバニア、北マケドニア、モンテネグロ・セルビア、トルコ。

トルコはずいぶん、EU加盟を巡って鼻面を引っ張り回されたようなところがあったけど、それでもまだ、加盟を希望しているのか。

トルコを入れたら、キリスト教文化圏という共通性すらなくなってしまう。


テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『イタリアの引き出し』 内田洋子

最初のイタリアはなんだったろう。

中学の時に読んだアレクサンダーを世界史の入り口にして、なんとそのあとミケランジェロに飛んでいったんだ。理由は、羽仁五郎の書いた『ミケランヂェロ』が家に置いてあったから。何でもよかったんだな。人より先に、人が思いも寄らない知識を持てることに喜びを感じていたから。

誰が読んだ本だったんだろう。祖父母は絶対にない。生まれと頭の中が明治の人だったからな。父もない。古いしきたりにとらわれる人ではないが、反共の姿勢は固い人だった。母には、本を読むような時間はない。叔父も考えづらい。・・・叔母だろうか。二人の叔母のうち、上の叔母なら、なんだか『ミケランヂェロ』を読んでいる姿も想像がつく。

『ミケランヂェロ』を読んで、・・・まあ、内容を覚えているわけではないが、印象に残っているのは、ミケランジェロよりも彼が活躍したフィレンツェという町についてだった。

フィレンツェをはじめとする独立自由都市では直接選挙で代表を選び、警察や司法を年が管轄。弱者の救済も行なわれていて、ブルネレスキが設計したというヨーロッパ最古の孤児院は「罪のない子らの家」と呼ばれていたというようなことが書かれていたような・・・。羽仁五郎さんはどうやら、親のない子を“孤児”なんて寂しい呼び方しか出来ない日本が好きではなかったようだ。

その後は、古代ローマから入って、ルネサンス時代のイタリアだな。当時は、中学の歴史でも、世界史に簡単に触れていた。これから授業で出てきそうな内容を、百科事典で調べて全部書きだした。分からないことは、始業前に学校に行って、先生に聞いた。先生も嫌だったらしい。

そんな世界史オタクにとって見れば、イタリアは本当に特別だな。

あまりいい思い出ではないんだけど、若い頃にフィレンツェでお金を巻き上げられた。開いたばかりの店でビールを飲みながら地図を見ていたら、お姉さんに声をかけられて、なんだか分からないけど、案内してくれるということらしい。当然のようについていき、わけが分からないまま引き回された。

それなりに楽しかったんで、夕方、ご飯をおごったら、なんだか続きがありそうな様子。鼻の下を伸ばして後を追うと、彼女は小走りに地下の店の扉の向こうに消える。私がそこに入ると、すでに彼女の姿はなく、私の目の位置に肩が盛り上がるお兄さんが二人いた。




朝日文庫  ¥ 792

イタリアの街角で著者が出合った鮮やかな一瞬一瞬を季節の彩りと共に
紙つぶて
トマトとジノリ
ある日曜日、骨董市で
ベゴニアが咲く頃
三十七個目の気持ち
夢を作る兄弟
奇数年のヴェネツィア
楽譜を焼く名人
雪山とワイン
冬の海
笑って、一年
お祝い尽くし
花屋からの贈り物
おいくつですか?
〈ほか〉




この本、『イタリアの引き出し』文庫版は、2013年に刊行されたものに加筆修正して、今年の9月に出されたものだ。

著者の内田洋子さんは、長くイタリアを拠点に活動を続けてきたジャーナリストだそうだ。この本を書いた頃は、ミラノにいたらしい。ジャーナリストといっても、政治・経済・社会・文化に関する特別な出来事を取材して、それを日本の報道機関に提供するようなジャーナリストではないようだ。

また、一般に、組織に所属するジャーナリストは、組織の都合で任地を変える。その点、内田さんはフリーのジャーナリスト。長い年月をイタリアで過ごし、イタリアに根を下ろして、内田さんの目に映ったイタリア人の日常を綴ったエッセイが多い。

登場するのは有名人でも何でもなく、内田さんの身の回りの人たち。そういう人たちとの交わりや、日々、内田さんが感じたことが、60編のエッセイに綴られている。

時には、向かいの通りに住む小学生。内田さんは、小学生に声をかけられるのか。還暦の私より、1年年長なのに。その子はね、親が不在な間、幼稚園に通う妹の世話をしなきゃいけないんだけど、友達が遊びに来たらしいんだ。それで内田さんに、「私たちが宿題をする間」妹を見て欲しいと頼むんだ。

内田さんのアパート前の広場は5本の通りが走っていて、突っ切るだけでも横断歩道を5本、往復すれば10本渡ることになるという。ある日、最初の横断歩道を渡ろうとしたとき、見知らぬ老女から声をかけられたという。「一緒に渡って下さい」って。

公園にやってきた移動パン屋でサンドイッチを買って、日当たりのいいベンチでそれを食べていたんだそうだ。すると15・6歳の女の子が来て、そこに座ってもいいか聞くんだそうだ。内田さんがお尻をずらしてあげると、そこに座って女の子は泣き始めたそうだ。内田さんはアイスクリームをおごってやったそうだ。後日、彼女がその日失恋したことが分かる。その女の子、ヴァレリアという名前なんだけど、一番登場回数が多い。

2012年の2月、空港に向かう途中のタクシーで旅行先を訪ねられ、内田さんは東京と応えた。空港行きの駅に着こうかというとき、「もうすぐ1年ですね」と運転手が言ったという。震災のことだった。タクシー運転手となる前に消防士をしていた彼は、居ても立っても居られない思いだったそうだ。そんな自分の思いを日本まで運んで欲しいと、内田さんを下ろした後、運転手はわざわざ車から降りて、無言のまま深々と日本風にお辞儀をしたそうだ。

いずれも短いエッセイだけど、そこには内田さんの見た、イタリアの日常がある。新聞やテレビのニュースで紹介されるイタリアもイタリアに違いないが、イタリア人がどんな日常を過ごしているかを知るのだったら、内田さんの書いたものを読むのが良さそうだ。


テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『上級国民/下級国民』 橘玲

《自分の人生は、自分が自由に選択する》

第二次世界大戦後、特に1960年代に入り、アメリカを中心とする自由主義諸国は、とてつもない豊かさを手にすることになる。その豊かさを背景にして、価値観の大きな転換が起こる。

かつて、「人生を自由に選択する」などという思想は、存在しなかった。長男なら家を継いだ。次男や三男は軍人になるか、仕事を求めて都会に向かった。娘は親の決めた相手と結婚するか、家のために身を売る場合もあった。

新しい価値観を身につけた若者は、好きな職業を選び、好きな相手と結婚して、自由に生きることを選ぶようになった。自由に自分の人生を選択する者たちは、自分の自由な選択を守るためにも、他者の自由も認められるべきだと考えた。

自由がリバティ、自由を求める思想がリベラル。リベラルにおいては、人種や民族、国籍、性別、宗教などで人が差別されること強く非難する。なぜなら、本人の意思や努力とは関係の無いところで自己実現が阻害されるから。

逆に考えれば、個人の意思や能力で格差が生じることは、やむを得ないことになる。高い能力が評価されて、その人が高い地位や収入を得ることが出来ることは良いことだ。同じように、能力が低いがゆえに地位や収入が低いのも、仕方が無いことになる。

誰もが自己実現が可能となるリベラルの理想は、究極の自己責任の世界でもある。そこでは人は誰も、個として思うように生き、その責任を取る。あらゆるアイデンティティが外されてしまうから、アイデンティティを同じくする者の間でまかり通っていたことが通用しなくなる。

保守主義的な考え方の私には、これは恐ろしい。私はいつも、現在や未来の問題を考えるときに、過去を参考にする。伝統の中に意味を見出そうとする。しかし、人が経験したこともない現代社会の豊かさがリベラルを生んだのならば、過去に答えを見出すことは出来ないことになる。リベラルにしてみれば、伝統なんて何の意味も持たない。それが必然であるなら、人の未来はグロテスクに過ぎる。

相手の国籍に関係なく、年齢に関係なく、性別に関係なく、社会的背景に関係なく、常に差別的ではない、政治的に正しい言行が求められる。これが最近よく言われる、ポリティカル・コレクトネスというやつだな。これまた、性に合わない。

“政治的正しさ”は、さまざまな人たちが共生する社会での振る舞い方だそうだ。それが正しいかどうかにかかわらず、人が共生する社会に生きる者の約束事なんだそうだ。

“人が共生する社会”と言うのも、なんだか新しいアイデンティティになってしまいそうな気がするな。



小学館新書  ¥ 902

「下級国民」に落ちてしまえば、「下級国民」として老い、死んでいくしかない
1 「下級国民」の誕生
平成で起きたこと
令和で起きること)
2 「モテ」と「非モテ」の分断
日本のアンダークラス
「モテ」と「非モテ」の進化論
3 世界を揺るがす「上級/下級」の分断
リベラル化する世界
「リバタニア」と「ドメスティックス」
エピローグ 知識社会の終わり


豊かな社会は技術革新によってもたらされた。技術革新は日々続けられていく。これが知識社会化である。人々は、自分の人生を自分で選択していく中で、これまで人を縛っていたさまざまな共同体のくびきから自由になった。これがリベラル化である。進化した技術は、国境を越えたヒト、モノ、カネの移動を可能にした。これがグローバル化である。

知識社会化、リベラル化、グローバル化は三位一体の現象で、止めることの出来ない流れである。

世界のいろいろな地域で、日々進行する知識社会化の流れに乗れず、社会に適応できなくなっている人がいる。知識社会が高度化するにつれて、仕事に要求される知識のハードルが上がる。同時にグローバル化の進行で、工場を人件費の安い国に移転したり、給料の安い移民に仕事を奪われることもある。工場の機械化・ロボット化も、従業員から仕事を奪う。要求される知識のハードルをクリアできないと、たちまち仕事を失い、社会の底辺に沈むことになりかねない。

私が仕事をするようになったのは1980年代の前半。印刷はボールペン原紙の原稿を焼いて、取っ手をぐるぐる回す輪転機で行なったな。そのほんの少し前、大学の時のコピーは青焼きというやつだった。

ワープロなんていうのが現れ、パソコンに変わって、苦労したな。パソコンは悔しかったね。若造たちは最初からそれを使ってるから慣れたもんだけど、違う方法で仕事をしてたこっちにとってはね。頭下げて教えてもらわなきゃいけない。

ともあれ、トランプ大統領を支持するプア・ホワイトと呼ばれる人たちは、そうやって仕事にあぶれていったんだ。そういや、プア・ホワイトの他にも呼び方があるという。“ホワイトトラッシュ”、「白いごみ」っていう意味だそうだ。倒産した工場が放置されるラストベルト(錆びた地域)に吹きだまり、仕事を失い、アルコールやドラッグに溺れ、自殺や身体を壊して死んでいく白人たち。

仕事も家族も有人も、何もかも失った彼らが、最後にすがりつくアイデンティティが、“白人”であるということ。白人はアメリカのマジョリティであるけれど、プア・ホワイトは意識の上では弱者であり、被害者だと思っている。

マジョリティの中流階級が、上層と下層に分断されたわけだな。

人類史上未曾有の繁栄によって自己実現が可能になった社会の影で、ホワイトトラッシュとしてポイ捨てされることになった人々はは、廃棄物処理場にい送られ、リサイクルされ、ごみの山にポイ捨てされる。

これがリベラルという、自己実現と自己責任の世界の完成形。この本にも日本の高校教師の経験が報告されているが、私も定時制高校にいたので、すでに下層に沈んだ社会がどんなものかは、多少は見てきた。大半の生徒にとって定時制高校に通うということは、何とかもう一度、もとの社会に戻ろうという再チャレンジの試みだった。

そしてそれにも失敗し、顔を見せなくなるものが多い。彼らは、誰によって受け入れられるのか。

それを自己責任といって放置するなら、そんなおぞましい社会をリベラルは本当に望むのか。そんなリベラルに、将来があるとは思えない。

なんだか恐ろしいな。


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ジャンル : 本・雑誌

『アジアの国民感情』 園田茂人

菅首相が2012年の野党時代に刊行した単行本、「政治家の覚悟」が改訂され、刊行された。

この中で、当時の民主党政権とその公文書管理の在り方を批判し、「国家を運営しているという責任感のなさが如実に現れています」と主張していた単行本中の記述が削除されており、話題を呼んでいる。

当時は菅直人首相、それに続く野田佳彦首相の時で、2011年の東日本大震災時に、会議の議事録を十分に残していなかったなどと指摘したもので、菅よしhさんは野党の立場で「政府がどう考え、いかに対応したかを検証し、教訓を得るために、政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為であり…」と攻撃していた。

その部分を、改訂版ではバッサリ削ってしまったことに対して、民主党の蓮舫議員や枝野幸男議員が攻撃しているという。だけど、蓮舫さんも枝野さんも、震災時の会議録を残してなかった菅直人政権、野田佳彦政権、両方とも閣僚を務めている人物だ。

どれだけやり込めたところで、目くそ鼻くそレベルにしかならない。

菅首相の、初の外遊が終わりましたね。

菅首相が初の外遊先に選んだのは、ベトナムとインドネシアでした。第二次安倍内閣が初の外遊先に選んだのも、ベトナムにインドネシア、それにタイを加えたものだった。

「安倍政権を継承する」というのは、菅首相が最初から言っていることで、これはうまいなと思った。つまり、そこまでは、・・・いや、その延長線上にある政策については、説明不要と言うことだ。これはうまい。

この外遊に関して、安倍政権を継承するっていうのは、「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現と言う立場で、東南アジア諸国と連携して、“中国”の海洋進出に対応しようと言うことだろう。

そういうことを考えるときに、この本は参考になるかもしれない。どうも、従来の国際関係の認識の仕方とは、ちょっと違うやり方のようなんだ。

従来、国際関係を考えていくときに、たとえば関連する国々相互の経済力、政治力、軍事力、文化力等からなる総合した国力を推しはかり、それに今日に至る歴史、その背景にある国民性等を関連させて行く手法が採られてきた。

ところが最近、このような現実主義的、即物的な側面からのアプローチではなく、その地域の人々の理念や価値観、真理や認識といった要素を取り入れて国際関係を考えていく必要性が強調されているという。社会構成主義と呼ばれるそうだ。

たとえば、“中国”の経済的台頭をどうとらえるか。軍事的台頭をどうとらえるか。“中国”の国力向上への評価。そういったことを、周辺国の、なかでも次代を担うエリート層がどうとらえているか。それを数値化し、分析して国際政治を展開していく上での参考にしようというもののようだ。



中公新書  ¥ 968

好きな国、嫌いな国? いやいや、まだまだ、問題はさらにその先に
序章 なぜ国民感情なのか―対外認識を可視化する
第1章 台頭中国への錯綜する視線―何が評価を変えるのか
第2章 ASEANの理想と現実―域内諸国への冷めた目
第3章 東アジア間の心理的距離―厄介な近隣関係
第4章 アジア各国・地域の特徴とは
第5章 影の主人公アメリカ―米中摩擦とアジアの反応
第6章 日本への視線―アジアからの評価、アジアへの目
終章 国民感情のゆくえ


今の日本では、“中国”の台頭に対する警戒が、日々強まっている。経済に関しては、ほぼ数億人の国内奴隷を抱えているようなもんだから、とにかく強い。善悪の基準よりも強弱の基準が優先するので、およそ手段を選ぶと言うことがない。政治においては、共産党一党独裁体制で、国民の人権に遠慮する必要がない。軍事においては、近代に入ってから戦争で勝ったことがないが、それ故に核をはじめとする飛び道具を質量ともにととのえ、その気になれば、日本を瞬殺する力がある。文化的な底力は大きいが、それよりも今は、強弱の基準を優先させ、手段を選ばない道をたどる。

隣国との関係をめぐる歴史を見れば、“中国”は常に興亡の繰り返される場所であった。そして、新たにその“場”の支配者になったものが、そこに生まれる巨大な富を吸い上げ、やがて枯れ果てさせていった。今、その“場”の支配者の立場にあるのが、中国共産党で、その指導者が習近平である。

中国人は、恩義と身内を大切にし、命がけで守ろうとするが、他人は信用しないし、手を貸そうともしない。強いものを重んじ、弱いものを軽んじる。自信過剰で、調子に乗ると止めどがない。プライドが高く、人と衝突することがあっても、自分に非があるとは、まず考えない。人に気を遣うと言うことをしない。声の大きいことは場所を選ばず、社会的なマナーが悪い。そのくせ注意を受ければ、メンツをつぶされたと考えて、すごい剣幕で怒り出すこともある。

近代における日本との関係は、最悪と言うしかない。

日本にしてみれば、当時の国際法に則った行動をとっただけのことであるが、どちらにせよ、あの時代の“中国”に係わったのが身の不運というしかない。

本当なら、当時の“中国”の人々の苦痛の責任を負うのは、当時の“中国”の政治指導者のはずであるが、運悪く、彼らこそ戦争に勝ったものとなり、日本は戦争に負けたものとなった。そのことで、欧米の蛮行もひっくるめて、あらゆる責任を押しつけられた。

さらに中国共産党の宣伝により、“中国”の人々は、善良な自分たちの祖先を、日本人が侵略して苦しめたと考えている。つまり、道徳的上位にあるのが中国人で、日本人は道徳的に劣っていると考えられている。

これはまずい。

“中国”の、対日政治が好転することがあるとすれば、中国共産党にまずいことが起こったケースだ。それはこれまでもそうだった。それを待ってるだけって言うわけにも行かないから、だから、主将が東南アジアに出かけることになる。

中でも、“中国”に対する考え方では、今回、菅首相が訪問したベトナムとインドネシアは対照的なんだな。ベトナムは日本に似ているところがあって、どうも“中国”を嫌うことにおいては日本以上だな。経済的台頭にしても、軍事的台頭にしてもね。やっぱり、戦争をしていることが大きいかな。南シナ海をめぐっても、直接利害関係にあるしね。

その点、インドネシアは、ちょっと違う。インドネシアでは、「中国は興隆しても、アジア諸国と平和な関係を保つだろう」と考えている人がとても多い。他の国々の人以上に、「中国の台頭は、私たちに多くのチャンスをもたらしてくれている」と考えている。

そんな対照的な二つの国を、最初の訪問先に選んだという点にも、すでにこの本のようなものの考え方が生かされているのかも知れない。


テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『世界「新」経済戦争』 川口マーン惠美

EUは、温暖化対策を、日本や新興アジア諸国の経済を抑える手段としようとした。

技術革新は、常に歴史を動かしてきた。蒸気機関車の登場は、それまで使われてきた馬車を不要のものとした。電車が登場して、蒸気機関車は観光用として走るだけになった。

電気自動車が登場すると、ガソリン車やディーゼル車は消えるのか。電気自動車がすぐれているなら、そうなるんだろう。川口さんも言ってるんだけど、今の自動車産業に興っていることを考えると、どうもすっきりしない。そう、電気自動車への切り替え。

これまでの技術転換は、あくまでも自由市場を舞台にして進められてきた。今、進めれている内燃エンジンから電気モーターへの転換は、なんとも胡散臭い。企業がイノベーションを進める動機は、利益の向上にある。市場の意思を的確に把握し、開発し、価格を下げる努力をする。この部分が、電気自動車へのシフトの場合、・・・どうなんだろうか。

市場の意思とは無関係に、補助金による誘導と、税金の圧力で強引に進めれようとしているこのシフトを、人々が受け入れざるを得ないのは、それが地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出を、これで抑えることが出来ると考えるからだ。

だけど、違う。現在、二酸化炭素の排出による地球温暖化が進行中であり、国連に招かれて演説し、絶賛されたグレタ・トゥンベリさんが考えているように、「2100年までに南の島は沈み、沿岸の都市は消えてしまう」と、EUのお偉いさんたちが吹き込んだ嘘が、すべての始まりにある。

つまり、私がこの転換を胡散臭いと思うのは、市場の意思の段階で、すでに操作されていると感じるからだ。いや、ちょっと違う。市場の意思は、決して上からの洗脳を受け入れきっているわけではない。洗脳が完全ではないからこそ、洗脳に躍起になっているように感じるんだ。

たとえば、年端もいかないスウェーデンの娘を、国連に呼んでまで持ち上げ、まるでジャンヌ・ダルクの再来を迎えるかのような大騒ぎ。そうして“惑星はあと10年持たない”とか、“南の島が沈む”とか、“勉強しても地球がなくなっていたらどうしようもない”とか、ぼーっと生きてるとしか思えない少年少女の戯言に相づちを打って、嘘を重ねる。



『世界「新」経済戦争』    川口マーン惠美

KADOKAWA  ¥ 1,650

新型コロナウイルスの先にある経済の形を自動車という「窓」を通して探る一冊
第1部 自動車の産業化に欠かせない国家の力
第1章 それは二人の「夢」から始まった
第2章 大衆化に成功したアメリカの戦略
第3章 世界から日本のGDPが羨まれた時代
第4章 ドイツにとって自動車とは自由の象徴
第5章 冷戦の終結は世界経済をどう変えたのか
第2部 「電気自動車シフト」の裏側を見抜く
第6章 ディーゼルゲートをめぐるドイツの事情
第7章 「地球温暖化を止める」という理想主義
第8章 電気自動車が世界に広がらない理由
第9章 電気自動車は本当に「地球にやさしい」のか
第3部 「新」経済戦争はどの国が制するのか
第10章 ITシフトした大国・アメリカの野望
第11章 激化する米中戦争と変わる世界地図
第12章 ITと自動車が新たな巨大市場を生む
第13章 「新しい生活」は自動車革命から始まる
終章 熾烈な「新」経済戦争を日本は勝ち抜けるか





どうして、そこまで躍起になるのか。

答えは一つじゃないだろう。政治や経済を動かす立場にいるいろいろな人たちの思惑が、「脱石油」の方向で一致しちゃったんだろう。世界はすでに、「脱石油」に舵を切ったと言っていいそうだ。

通常のガソリン車、ディーゼル車の販売に規制をかける国が出てきた。EV車に限るとか、EV車かHV車とか、とにかく何らかの帰省をかけようというのが、ノルウェー、オランダ、インド、“中国”、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ。時期も、禁止の内容もいろいろだけど、どうも流れは出来てしまっているみたい。

国際エネルギー機関の報告によれば、石油需要の56パーセントが、輸送に使われているそうだ。先進国でガソリン車やディー是エル車の販売が出来なくなれば、石油の需要は大きく減る。

アメリカのようなシェールガスというエネルギーを持ち、ガソリン車の製造技術があって、しかもテスラなど電気自動車で先行している国は、鬼に金棒って状態だそうだ。フランスも原子力による電力もあり、日産を通じて電気自動車技術を持っている。“中国”は、ガソリン車ではいつまで経っても先進国の後塵を拝すばかり。その点、電気自動車なら先進国に先行できる可能性もある。だからこそ、政策としては、すでにそちらにシフトしている。日本には電気自動車もあれば、ハイブリッド車も、プラグイン・ハイブリッド車も、水素燃料車もある。電気自動車の要であるバッテリーに関する技術も高い。なにより、物作りに関する、高い信頼がある。

問題は、アラブ諸国やロシアといった産油国だ。これらの国は、石油という巨大資源に恵まれてゆえに、モノカルチャー体制から抜けられなかった。石油収入が半減すれば、そのまま国家予算が半減する。

サウジアラビアの石油鉱物資源相を20年以上務めたアハマド・ザキ・ヤマニの言葉がおもしろい。「原油はまだまだ地下に眠っている。だが、時代は技術で変わる。石器時代は意思がなくなったから終わってのではない」

電気自動車への移行の理由の一つは、資源を握るものの国際政治への影響力を、相対的に低くするところにありそうだ。

やはり背景には政治、あるいは経済がある。

だからといって、嘘をついて良いということにはならない。いや、政治であり、経済であるからこそ、嘘は排除すべきだ。フランクリン・ディラノ・ルーズベルトは、アメリカを戦争に持ち込むために嘘をついた。嘘をついて、日本をおいつめた。そして戦後に残ったものはなにか。共産主義が半分を支配する地球だ。


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ジャンル : 本・雑誌

『知らないと恥をかく世界の大問題11』 池上彰

長谷川慶太郎さんが亡くなって1年が過ぎた。

最後に読んだのは、長谷川さんが亡くなったあと、生前にテープに吹き込んでおいた音声を編集して一冊にまとめたものだった。その本の題名は、長谷川さんの遺言と言っていいだろう、なんと、『中国は民主化する』だった。あまりの驚きに、還暦の私がシェーの姿勢のまま5mは飛んだ。

いつも、いろいろな角度のニュースに触れるようにはしているが、一個人で持続的に分析していくのは難しい。だから、それが可能な人の書いたものを読ませてもらう。なかでも、一番の指針にしていたのが長谷川さんだった。ここ20年ほどは、そうしていた。

その長谷川さんが亡くなったので、仕方がない。まずは、できるだけ継続的にいろいろな角度のニュースを確認し、できるだけ持続的に分析していく。自分でやる。もちろん、それが可能な人の書いたものも読む。読みながら、一番の柱に出来る人を見つけたい。

そんなことを思って、この本を読んでみた。

『知らないと恥をかく世界の大問題11』

こういう題名の本を、池上さんが出しているのは知ってたけど、それにしても“11”とはビックリだ。このシリーズは、どうやら1年に1冊のペースで出されているらしい。そういう点では、長谷川慶太郎さんの『大局を読む』シリーズと一緒だ。

そういう意味で、じつはちょっと期待していた。



角川新書  ¥ 990

独断か協調か。リーダーの力量が問われる中、世界が抱える大問題とは?
プロローグ 二極化する世界、深刻化する世界の大問題
第1章 トランプ再選はあるのか?アメリカのいま
第2章 イギリスEU離脱。欧州の分断と巻き返し?
第3章 アメリカが関心を失い、混乱する中東
第4章 一触即発。火種だらけの東アジア
第5章 グローバル時代の世界の見えない敵
第6章 問題山積の日本に、ぐらつく政権?
エピローグ 2020年の風をどう読むか


じつは、この本を読むまで、池上彰さんの本は、ほとんど読んでない。

最近、佐藤優さんとの対談ものをいくつも出しているようだけど、それは読んだ。『新・戦争論』と、『大世界史』だったと思う。池上さんがお一人で書かれたものは、読んだかも知れないけど、記憶には残ってない。

理由の一つは、題名にある。

それは、NHKの時代に原因の一端があるように思う。池上さんの一番の特徴は、分かりやすさにあるんだと思う。・・・ちなみに、その著書は読んでいない私でも、テレビではよく見ているので知っている。NHK時代、池上さんは、自分でニュース原稿というのは、分かりづらくてつまらないと感じていたそうだ。

池上さんは、その原稿を分かりやすく書き直していたそうだ。さらには、《週刊こどもニュース》では、1994年から退職する2005年まで、ニュースに詳しいお父さんっていう立ち位置で、ニュースの解説をしていたそうだ。この時、お母さん役を演じていたのが柴田理恵だった。

だから、対象に対する働きかけが、“お父さん”になってしまったんだろう。それが、私のような天邪鬼には、ダメなんだな。『知らないと恥をかく・・・』なんて持ちかけられると、「そんなの知ったことか」となってしまう。

他にも、『子どもにも分かる・・・』なんて、もうダメね。「オレが子ども以下だとでも言いたいのか、偉そうに・・・」ってなっちゃう。『・・・はむずかしくない』なんて言われると、「それが分からないオレは、馬鹿だってことか」っと、こうなる。

『・・・ よくわからないまま社会人している人へ』、このシリーズ、たくさんあるけど、これもダメ。
『池上彰の講義の時間 高校生から分かる・・・』シリーズ、これもダメ。

天邪鬼になってる間に、池上さんの本は読まなくなってしまった。そんなわけで、記憶に残る中では、この本が、池上さんの最初の本。

たとえば、2020年、“中国”発の感染症が大問題に浮上したけど、これがなくても、問題山積の1年だっことは間違いない。アメリカ大統領選挙。イギリスのEU離脱。混乱する中東情勢。香港への圧力を強化し、台湾に迫る“中国”。相変わらずの韓国・北朝鮮・ロシア。

とりあえず、抑えるところは抑えてるように見えるんだけど、“中国”問題への切り込みが浅いような気がする。昨年あたりまでは“貿易戦争”という言葉が使われたけど、この確執は、貿易をめぐるものではなく、明らかに“覇権”をめぐるもの。“覇権戦争”と言っていい。

東アジアに関して、一つの章を割いているにもかかわらず、“中国”の動きへの分析を欠いては、私たちがどうあるべきかも見えてこない。この点に関しては、決定的だな。

それから、温暖化の問題や、グレタ・トゥーンベリさん、安倍政権の取り上げ方は、やはりNHK目線が色濃く残っているような気がする。

今、ニュースで取り上げられていることの解説としては、ふさわしい本だな。ただ、この先どうなっていくのか。日本はどうすべきなのか。それを考える一番の指針というわけには、なかなか・・・ね。


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Author:イーグルス16

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極北の自然に見せられた写真家の旅を一冊に! 
大切なことは出発することだった
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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本
























































































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