めんどくせぇことばかり 本 近現代世界
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『一気にわかる!池上彰の世界情勢2021』 池上彰

たしかにそうだ。

中国が世界にばらまいたのは、間違いない。池上さんが「皮肉なことに」と言うとおり、「結果的に中国はうまくやった」という状況になった。国民の権利や人権などを一切無視できる国だから、あの武漢封鎖のような状況も実施できる。議会を通さず、法律に誓い規制を次々に打ち出し、ほぼコロナを押さえ込んだ。結局、有事には、独裁国家が強いと言うことだ。

民主主義国は強制する力が弱い。それでも欧米は、強制力のあるロックダウンを実施した。同じ民主主義の国でも、国の手足を縛っている日本は、その強制力のある政策を実施することができず、自粛を“お願い”した。

感染症が流行し始めたとき、“中国”はいち早くWHOに報告したと言ったけど、あれは嘘。SARSの時、“中国”が隠蔽しようとして事態が悪化したことがある。その時、香港でSARS対策の指揮を執ったのが、前WHO事務局長のマーガレット・チャンだった。SARSにおいては、香港での流行が世界的流行につながった。

マーガレット・チャンはSARS対策の功績により、“中国”から事務局長に推薦されたという、わけの分からないことになっている。

だから、WHOは、“中国”を監視していた。あれは“中国”から報告を上げたのではない。WHOがSNS上で感染症に関わる情報を監視していて、2019年12月に、“中国”の武漢で、肺炎の患者がたくさん出ているという情報をつかんだ。そこで、WHOから“中国”に問い合わせをしたということだ。

WHOと同じ時期に、それに気づいた国がある。SARSが持ち込まれてひどい目にあった台湾。台湾は、“中国”の横やりでWHOに入れてもらえないから、独自の防衛対策を作っていたんだそうだ。

それにしても、“中国”は、どうしてこうも、新しい病気を世界に広めるんだか。14世紀のペストでは、全世界で1億人は死んだそうだが、あれも“中国”だった。

当時、ペストで死んだ人の遺体を掘り出してペスト菌の遺伝子を調べたところ、“中国”の雲南で発生したペスト菌と同じだったって。そこからヨーロッパへの伝播を、池上さんは「シルクロードだというのが有力な説」と言っている。

実際には、モンゴル帝国の時代だから、シルクロードはひとっ飛び。黒海沿岸のカッファ(現フェオドシア)を包囲し、陥落寸前まで追い込んだモンゴル軍が、突然囲みを説いて撤退した。なんとペストの蔓延で、軍を維持出来なくなっていた。

平和の訪れたカッファは、今度はペストに見舞われた。カッファで商売していたジェノヴァの商人が、商品と一緒にペストを4隻の船に積み込んでカッファを出発。船がイタリアに着く頃には、ほとんどが息絶えていたようだ。その後ペストは、1年足らずでヨーロッパ全域を覆い尽した。

モンゴル帝国の時代は、ユーラシアに関しては、グローバルな時代なんだよね。



毎日新聞出版  ¥ 1,100

私たちの生活と国際情勢は切り離せないことを実感した2020年。そして2021年を展望
第1部 新型コロナに翻弄された世界・2021年の展望編
第2部 国際情勢・基本おさらい編
第1章 新型コロナ問題
第2章 アメリカ
第3章 アジア・ヨーロッパ
第3部 各国指導者・資料編

ウイルスの遺伝子は、2週間に1度くらいのペースで、わずかに変異していくんだそうだ。

だから、遺伝子を調べることで、どんな経緯で広がったのか、分かるんだそうだ。アメリカは早い段階で“中国”からの入国を止めた。その後、アメリカで広まった感染症は、ヨーロッパ由来のものだったそうだ。ヨーロッパで変異したものがアメリカに入ったんだな。

日本に広まった感染症は、最初の段階では武漢のものが持ち込まれた。最初のピークの段階だな。それは抑えたものの、春先にヨーロッパから帰ってきた人たちが、ヨーロッパ型、おもにスペイン由来のウイルスを持って来ちゃったんだな。その後、さらに変異して、東京・埼玉型になって地方に拡散された。

つくづく12月、せめて1月の早い段階で“中国”が情報をオープンにしていればなぁ。

在宅勤務、働き方改革、リモート学習等ITの活用が、一気にするんだね。私の姪も、東京の勤務なのに、ほとんど秩父の家で仕事をしていると言っていた。

池上さんは、一気に進んだのはITの活用だけじゃなくて、国際情勢もそうだと言っている。米中の対立は、感染症流行前からのものだけど、感染症をきっかけにして対立が先鋭化してきたと。

感染症を腕力で押さえ込んだ“中国”は、いまだ感染症に苦しむ国々を尻目に、一人経済成長率をプラスに転じている。一人勝ち状態。ヨーロッパのロックアウトで弱った企業を、“中国”企業が買収しているそうだ。

欧米が、“中国”のウイグル民族に対する民族浄化や、香港の民主勢力弾圧に対して、強く抗議するようになった。新疆ウイグル自治区の当局者に対して制裁を行なうようになった背景には、おそらくそういった背景も関係しているんだろう。

池上さんは、「世界経済に中国が占める地位は、一段と高くなった感じです。中国経済がどんどん大きく、強くなると言うことはもう間違いのないこと」と言っている。

たしかに、イギリスのシンクタンクには、感染症対策で一人勝ちしたことで、「中国は当初の予想よりも5年早い2028年までに米国を追い抜いて世界最大の経済大国になる」との予測を示した。しかし、北京大学国家発展研究院のトップは12月17日、「中国の失業率は当局が発表した6%ではなく20%であり、失業者は1億4000万人に達している可能性がある」と指摘した。

ついこの間まで、多くの“中国”の人々が経済成長の恩恵にあずかれるためには、最低8%の経済成長率が必要と言っていた。それが8%を切り、7%を切り、感染症が流行する前の2019年には6%台を維持するのがようやくだった。それも大本営発表。上記でも、当局が発表した失業率6%に対して、実情20%だと言っている。20%の失業率とは、1億4000万人の失業者がいると言うことだ。

そうなると、当局への不満は、だいぶ高くなっているだろう。ここのところの、中国共産党の香港への対策、台湾への対策を見ると、尖閣諸島に中国海警局の船を連日向けてくることも含めて、国民の不満を外に向けようとしているのではないか。

さらには、“中国”は巨大化した不良債権をまったく解消できていない。あれがどうにかなった日には、大変な状況になるはずだな。この本はとても分かりやすい良い本だと思う。だけど、経済状況をもとにして、その国のその後を考える長谷川慶太郎さんのような手法はない。それが一番知りたいんだけどな。


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ジャンル : 本・雑誌

共感力『スマホを捨てたい子どもたち』 山極寿一

人間の女は、どんどん子どもを産む必要があったのか。

生後1年で乳離れする人間の赤ちゃんは、他の霊長類に比べても、授乳期間が短いんだそうだ。ゴリラの乳離れは、なんと4年だって。チンパンジー5年?オランウータン7年?

いよいよ離乳するタイミングは、すでに永久歯が生えて、大人と同じものを自立して食べられるようになってなんだって。人間の子どもも、永久歯が生えるようになるのは、小学校に上がる頃だよね。だったら、それまでおっぱい飲んでてもおかしくないわけか。

それが都合が悪いから、1年で乳離れするようになった。何が都合悪かったのか。

それもやはり、熱帯雨林からサバンナに出たことに関わってくると言う。肉食獣は、捕まえやすい子どもを狙うんだな。“ダーウィンが来た”とかで、肉食獣の狩りの様子を見てもそうだ。インパラの子どもが狙われてた。

サバンナに出てみたら、肉食獣が人間の子どもを狙って襲うようになったんだ。子どもがどんどんやられるから、どんどん産み増やす必要があったわけだな。

肉食獣に狙われやすい動物は、多産によってそれを補うんだそうだ。人間は一度にたくさん生むという性質を備えていないので、出産期間を短くするしかない。お母さんはお乳が出ると排卵が抑制されちゃうので、次の子どもを早く産む必要の生じた人間のお母さんは、離乳を早めることによって乳の出を止め、排卵を促したんだ。

だから、可能かどうかと言えば、人間のお母さんは、毎年子どもを産むこともできるわけだ。10人以上産み育てることも、不可能ではない。私の祖母は10人産んでいる。3人は子どもの間に亡くなったらしい。昭和前半の話だ。そんなに前のことじゃない。捕食されなくても、子どもが病気で死ぬのは珍しいことじゃなかったんだろうな。・・・戦争の時代でもあったしね。

実は私、兄と弟が同じ学年になっちゃうので、誕生日をずらした友人がいた。友人は弟の方。3月最後の生まれなのに、4月生まれになってるの。私は3月下旬の生まれだから、彼とはほぼ1年の差があった。その差を逆転できたのは、第二成長期に入ってからだな。

大人になると200キロにもなるゴリラが、生まれるときは1.6キロくらいしかないんだそうだ。人間は3キロくらい。人間の方が大きく生まれるんだ。だけど、そこからの成長が違う。ゴリラはどんどん大きくなって、5歳にもなれば50キロを超えるそうだ。人間だと、5歳児の平均体重は17キロ。ずいぶん差をつけられる。



ポプラ新書  ¥ 946

京大総長が語る、野生に学ぶ「未知の時代」の生き方、「ヒトの未来」
第1章 スマホだけでつながるという不安
第2章 ぼくはこうしてゴリラになった
第3章 言葉は人間に何をもたらしたのか
第4章 人間らしさって何?
第5章 生物としての自覚を取り戻せ
第6章 未来の社会の生き方


人間の子どもは、身体の成長が遅い。

鹿なんて、生まれてすぐに4本足で立ち上がって、母鹿の乳に吸い付いていくって言うのにね。これは、人間は身体の成長を後回しにして、脳の成長を優先しているからなんだって。

人間は直立二足歩行をしたことによって、骨盤の形が変化し産道の大きさが制限されてしまった。そのため、胎児の状態で脳を大きくしてから生むことができない。だから、生まれてから急激に脳を大きくしなきゃいけなくなった。・・・身体の成長を後回しにしてまで。

成人でも摂取エネルギーの20%が脳に供給されているんだそうだ。赤ちゃんの場合はなんと、45~80%のエネルギーが脳に送られる。すごいな。身体の成長を犠牲にして、脳を発達させているのか。

頭でっかちで、身体の成長が遅い子どもが1歳くらいになると、母親は次の出産のためにその子から離れてしまう。まだ、その子は自力で生きていける状態にはない。だから、おばあちゃんやおじいちゃん、兄姉がいれば兄姉が、あるいはおばさんやおじさんが、みんなで子どもを育てるわけだな。

赤ん坊が泣いたら、みんな放っておけなくて、赤ん坊のところに行って抱っこして、あやしてあげる。自分の時間を犠牲にして、赤ん坊のために奉仕する。

そういう行為を通して、人間は共感力を高めてきたんだな。

でも、今、そういう人間同士の付き合いって、ずいぶん薄くなってしまっている。親類縁者や地域との付き合いも、父母の世代とは比べものにならない。それでも私の世代までは保たれているが、子どもの世代は、かなり限定されたものになってくるはず。

各段階の成長過程で、世間との付き合い方の作法の難しさに、いつも絶望的に悩んでいた。大人になってからだってそうだ。一度、父に聞いたことがある。「いつ頃、人付き合いに自信が持てた?」って。

そしたら、「自分の父親の葬式を出した時だ」と言っていた。これはびっくり。私が22歳の時。父はすでに50代。あの世故に長けた父にして、悩みながら世の中を渡ってきたのか。だけどその分、共感力の高い人だった。

新しい男の思いをつなぎ止めるために、母親が子どもを虐待をしたり、男による虐待を放置したりする事件が起きる。男の行為は思慮のかけらもない生物学的なものだが、母親の行為は思慮深いが生物的母性のかけらもないものだ。

面倒くさい思いをしながら、恥をかきながら、世間との付き合い方を学んでいく道を、人間は多くの犠牲の上に築き上げてきたんだろうに。





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ジャンル : 本・雑誌

『今が分かる 時代が分かる 2021年度版 世界地図』

なぜか、還暦を過ぎた夫婦二人で暮らす家の居間に、世界地図と首都圏広域鉄道路線図が貼ってある。

日本地図もあったのだが、こちらはエアコンの風が当たる場所にあったためにボロボロになって、撤去された。いずれも、子どもたちが小さい時分に貼ったものだが、二人の子どもが家を出て、もうずいぶん経つのに、今でも二つは、そのまま貼ってある。だいたい、こういうのを貼ったのは私で、オリンピックやらニュースやらでいろいろな国名や地名が出るたびに、地図で確認してた。首都圏広域なら、鉄道での行き方までたどったりもした。

今じゃ、パソコンひとつあればことが足りるので、いらないと言えばいらない。だけど、路線図はともかく、世界地図はあった方がいいな。どこかの国の場所を確認する時に、顔を左に向けるだけで見られるし、なにしろ精神安定剤としての役割も大きい。

日本が世界の中心にあって、目立つように赤く塗られていると、なんだかホッとするんだよね。

だいたい、地図がもともと好きなんだ。山岳部だった影響かな。自分がいる場所から、道がつながって、違う場所に行ける。そんなことだけで、なんだか嬉しくなれる。鉄道の好きな人が多いけど、結局そういうことなんじゃないだろうか。

そして、道は、さらに先へ続く。どこまでも、どこまでも、すごく遠いところへだって行くことができる。地図を見ていてそんな思いに駆られたら、もう大変。時間が経つのを忘れてしまう。

高校で社会科の教員をしていたので、地図帳はいくらでも手に入った。本来、地図帳というのは安いものじゃない。だけど、教科書会社が見本として献本していったり、退学する生徒が置いていったりするので、社会科室の書棚には、常時、最新の地図帳が何冊か並んでた。

そこに授業で使う資料を探しに行って、ついつい地図帳を手にしようもんなら、もうダメ。教材研究の貴重な時間を、地図帳に持って行かれてしまう。

2万5000図で山の計画を立てるときも、本来の計画からそれて、稜線伝いにどんどん気持ちが逸っちゃうんだよね。そんな方まで行ったら、その日のうちに帰れないっていうのに。

でも今は、仕事を辞めた隠居の身だから、地図に時間を持って行かれちゃうのも、もう悪いことでもない。


『今が分かる 時代が分かる 2021年度版 世界地図』

成美堂出版  ¥ 1,760

今年も世界は伝えるべきニュースが盛りだくさん。最新の情報地図最新版!
感染症と人間
トピックス
国際政治
産業経済
社会
資源・エネルギー
環境・自然
文化・スポーツ
最新データ集

《今が分かる 時代が分かる》そんなうたい文句に惹かれて購入した。

前からご紹介のところだけど、今がどういう時代なのか、そういうことを考えるとき、渡部昇一さんや、長谷川慶太郎さんの意見や分析を、よく参考にさせてもらっていた。

そんなお二人も、お亡くなりになってしまった。渡部昇一さんは平成29年に、長谷川慶太郎さんは令和元年に亡くなった。

そして今、世の中が急に動き始めているように感じる。流れが速まったように感じるのは、なぜかお二人が亡くなったあとのように思えるのはなぜだろう。二人の意見を聞きたいという思いが強すぎるんだろうか。

トランプ大統領の登場であるとか、ブレグジットであるとかという辺りは、自分でも捉えていた。グローバル化とそれに取り残された人たちの虚無感、あるいはブルドーザーのように世界を更地化されて、自分の寄って立つところを失ってしまったかのような不安感。

そこから声を上げた人たちがいたわけだが、それでもグローバル化は止められない。それも理解できる。さて、その先だ。今がまさにその時のように感じるのだが、渡部さんも長谷川さんもいないんだよな。

だから、一生懸命、《今》や《時代》を探している。

そんなわけで、中身を良く確認もしないで買ってしまった。ああ、いやいや、こんな言い方をすると、後悔しているかのように取られてしまう。そういう訳ではない。

この本は、《世界地図帳》だった。そう、《地図帳》。実際に、今の世界情勢を理解するための「国際政治」「産業経済」「社会」「資源・エネルギー」「環境・自然」「文化・スポーツ」その他に関わる、かなり細かいところまでの統計資料が掲載されている。

通常の地図帳であれば、ページの前半に、各地域ごとに、各種の地図が色つきで掲載されていて、後半にちょっと紙質を落して、単色の統計資料が掲載されている。

この本の場合、まず順番が違う。統計資料が前、地図が後ろ。それから、地図もきれいだけど、統計資料も同様に色つきで、きれいにまとめられている。

成美堂出版というところは、年に1度、これを改訂して“当年度版”として出版しているようだ。変化の早い昨今、毎年の違いを比べてみることに意味があるかもしれないが、とりあえず、一冊、こたつに座ったまま手の届く棚に並べて置くことにした。

その棚には、他に、地図帳が2冊ある。二宮書店のものと、帝国書院のものだ。



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『スマホを捨てたい子どもたち』 山極寿一

人間は、他の生き物、人間に最も近い他の類人猿と比べても、共感力が飛び抜けて高いそうだ。

つまり、それが人間の特徴と言うことだ。

この本の著者である京大総長の山極寿一さんは、ゴリラ学者。いやいや、生態環境生物学というのを専門とされる先生で、猿やゴリラの研究を通して、人間の本来のあり方を考えてきた方。

その猿やゴリラへの取り組みというのがすごい。猿やゴリラの仲間に入れてもらうんだって。仲間に入れてもらうって言ってもねぇ。相手は猿やゴリラだからねぇ。

“フィールドワーク心得”というのがあって、それが実はもの凄い。

その1 動物になりきる。たとえば対象がゴリラであるなら、ゴリラになりきる。それは人間であることを忘れることだそうだ。人間であることを忘れゴリラになりきる。

その2 その動物の互換で自然を捉える。つまり、ゴリラになりきって、ゴリラの感覚で自然を捉える

その3 その動物と会話をして、気持ちを通じ合わせる。つまり、ゴリラになりきって、ゴリラの感覚で自然を捉え、ゴリラと会話をして気持ちを通じ合わせる。

何を寝言を言ってるんだと思ってしまうけど、この先生、本当にそれをやってきた。何度も、「これはダメかも」という目にあったそうだ。ひどいときは、前後から雌のゴリラに突進され、頭と足を噛まれて血だらけになったそうだ。

先生のそうした研究は、言葉を話し、文字を駆使し、文明に染まる前の人間は、何を食べ、どれくらいの規模の群れを作り、その中でどのような付き合いをしてきたのかを探るもの。人間を知るための研究だな。

脳の容積大きいのは人間の際だった特徴の一つだけど、それは構成する集団の大きさに関係しているんだそうだ。

700万年前の気候変動で熱帯雨林が減少し、人間の祖先はやむを得ずサバンナに進出した。進出と言っても、森の中の弱者だった人間が、サバンナに押し出されたんだろうけど。

ライオンやチーターといった肉食獣がいたサバンナでは、人間は捕食される動物だった。どれだけのヒトが、喰われただろう。朝、まだ暗い町を走っているんだけど、その暗闇の中、視界のはじを何かが動いたように感じて背筋が震えることがある。あれはきっと、人間が捕食されていた時代の恐怖が遺伝子に刻まれていて、身を守ろうとしているんだろう。




ポプラ新書  ¥ 946

京大総長が語る、野生に学ぶ「未知の時代」の生き方、「ヒトの未来」
第1章 スマホだけでつながるという不安
第2章 ぼくはこうしてゴリラになった
第3章 言葉は人間に何をもたらしたのか
第4章 人間らしさって何?
第5章 生物としての自覚を取り戻せ
第6章 未来の社会の生き方


そんな危険なサバンナでは、集団を大きくした方がいい。数が多ければ、一人が狙われる確率は低くなるし、危険を察知する力が高まる。人間は、危機から自分の命を、仲間の命を守るために、集団の規模を大きくしてきた。

ただし、集団を大きくすると、その分だけトラブルも発生する。仲間の性質や、自分との関係をしっかり頭に入れておかないと、問題をこじらせてしまう。集団内のトラブルは、集団そのものの危機につながる。

集団の構成員同士の関係を良好に保ち、かつ、集団を大きくするために、人間の脳は大きくなった。チンパンジーとの共通の祖先から分かれた700万年前から長らく、人間の脳は小さいままで、その頃の集団のサイズは10~20人くらいだったそうだ。サッカーやラグビーの選手数と同じくらい。

200万円前、脳が大きくなり始めた頃は、30~50人くらい。だいたい、一クラスの生徒数くらいだな。

60万年から40万年前くらいになると、人間の脳はゴリラの3倍の1400cc、現代人の脳の大きさになった。これに見合った集団のサイズが、100~150人だそうだ。

農耕牧畜が始まる数十万年間、人間はこのサイズの集団で、狩猟採集生活を送ってきたわけだ。その時以来進化していない私たち人間は、狩猟採集生活に適した身体を持って、現代社会を生きているわけだ。

サバンナの危機に脅かされつつ、150人サイズの集団の安寧を守るため、人間は共同保育や共食、音楽など、人間にしかないコミュニケーションによって共感力を発達させてきた。

そのコミュニケーションの方法が、インターネットやスマホの登場で、劇的に変わってしまった。インターネットでつながるようになった人間の数は、狩猟採集民だった時代からは想像もできないほどに膨大になった。だけど、その人間性を知り、自分との関係性を把握できる人の数は150人ということだ。

インターネットで世界中の人とつながれるというのは、幻想に過ぎないわけだ。

私には150人なんて、とても考えられない。

実家からの一族で25人。仕事していた頃にできた人間関係で、仕事を辞めた現在もつながっているのが10人。他には特になし。35人か。

おいおい、200万年前のピテカントロプス級だな。



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『日本の論点2021~22』 大前研一

長谷川慶太郎さんが、年に1度、『長谷川慶太郎の大局を読む』というのを出していた。

もちろんそれだけじゃないけど、その『大局を読む』をはじめ、長谷川さんの日本、そして世界情勢について書かれたものを、いつも頼りにしていた。

長谷川さんの見方を検討して、自分なりの考えを構築した。高校の教員をしてたんだけど、その上で生徒に下ろしていた。私が勤務した学校は、読んだままで下ろしたってちんぷんかんぷんになるばかり。だから、長谷川さんの見方を検討し、一旦ばらして、並べ直して、自分の言葉に組み立て直さないと、とても生徒には下ろせない。

だけど、それをしっかりやると、生徒が目を光らせて、私の言葉を聞いた。そんじょそこらの、あんまり勉強好きでもない高校生も、実は今後の世界がどうなっていくのか、とても関心を持っている。その中で、日本がどう動くべきなのか、自分はどうすべきなのか、真剣に考えている。

今はもう、仕事を辞めてしまったので、あの快感を味わうことができないのは残念。その前に、その長谷川さんが、2019年の9月に亡くなった。最後に出されたのが、『2020長谷川慶太郎の大局を読む』だった。それが出された2019年10月には、長谷川さんは、もう亡くなっていた。

『2021長谷川慶太郎の大局を読む』は、もちろん出版されることはない。それでも、今でも日本や世界の有り様を、自分の言葉で語れるようでありたい。

長谷川さんに代わる人がいないかな。

そう思っても、そう簡単に、長谷川さんに代わる人が見つかるはずもない。まあ、いろいろな人の本を読んで、その中から見つけていくしかない。

そんな気持ちで、この人の本を読んでみた。


『日本の論点2021~22』    大前研一 

プレジデント社  ¥ 1,760

感染症で大激変する世界! アジアの知性が、鋭く、深く分析する世界と日本の総括!
巻頭言 DX時代に、生き残るスキルを磨け!
日本編
1 20世紀型の経済政策では、新型コロナ危機に対処できない
2 オリンピックと甲子園は大ナタをふるった改革を実行せよ
3 2020年2月時点で予測!新型コロナ拡大で東京五輪の中止はある
4 COVID‐19があぶり出した「危機に弱い国」日本の実態
5 コロナ対策で露呈した地方リーダーたちの明確な実力差 
6 遠隔診療の解禁でこれからの医療はどのように変わるのか
7 9月入学にメリット無し。一番の問題は「長い夏休み」である
8 カジノ主体のIR構想がまったく的外れな理由を述べよう
9 「会社に依存しないキャリア形成」を今すぐ戦略的に実行せよ
10 コロナ禍の仕事と生活をプラスに変えるオンライン学習法
11 ヤフーとLINEの経営統合で予想される”ライザップ化”
世界編
1 「トランプ・マジック」の崩壊によって引かれる株価暴落のトリガー
2 人種差別や抗議運動への対応で見えた「トランプ再選」の赤信号
3 トランプから飛び出した「日米安保見直し」発言の真意
4 終わりの見えない「米中貿易戦争」。本当の勝者は誰か
5 世界が注目する香港デモに対し、中国が一歩も譲らないのはなぜか
6 「現代の皇帝」習近平は今後、中国をどのように導くのか
7 香港を切り捨てたしたたかな中国との付き合い方
8 激化する日韓関係で対立を煽る人物は誰か
9 アメリカとイランの報復合戦から読み取れる裏事情
10 気候変動で対立する「G7対ブラジル」の解決方法
11 フェイスブックの仮想通貨リブラは世界通貨となり得るか








日本編と世界編で、それぞれ11の論点について語られている。

日本に関しては、11項目に巻頭言を含めて、何一つ、明るい気持ちになれる意見がない。

世界に関する11の論点を見ると、ドナルド・トランプに関することだけで5項目を使っている。続いて、習近平で3項目。韓国に1項目。気候変動で1項目。仮想通貨で1項目という具合。

トランプに関しては、よほど腹の立つことでもあったのか、だいぶお怒りである。気持ちは分かる。世界の政治を動かすにしては、知識が足りない。そのくせ、直感的に動いて、どんどんツケをためていったんだから。ただ、トランプが登場した背景に、触れていない。かなり重要なところだと思うんだけど、そこのところが気に掛かる。

「米中貿易戦争」でも、トランプの経済音痴に怒っている。そして、あくまでも、“貿易戦争”として取扱っている。だけど、これは貿易戦争と言いながら、実体は、覇権戦争だ。覇権戦争なら、トランプがバイデンに代わっても、アメリカは引くわけには行かないし、事実引いていない。

習近平に関しては、はっきり書いているわけではないんだけど、その政治的手腕を賞賛しているようにさえ思える。香港のデモに対して、“中国”が一歩も譲らないのはなぜか。その分析は、すとんと腑に落ちた。ただし、香港に対しては、「歴史的使命は終わった」と、冷たい。

一国二制度の約束をやぶって、まさに“中国”は香港に牙を剥いた。一国二制度を持ち出して、イギリスから香港返還を勝ち取り、今まさにその約束を破った“中国”のやり方を取り上げて、“実利主義で香港返還を勝ち取った鄧小平の勝利”と持ち上げるのでは、私には、香港があまりに憐れ。

「今日の香港は、明日の台湾」という台湾人の思いを理解しながら、「日本は許容度が低い習近平政権の手法を冷静に分析して、対中外交の最適解を見出さなければならない」と、すでに突き放している。

政治的な分析に関しては、そういうことになるんだろうと思う。

しかし、経済的に“中国”を分析した意見が書かれていない。それを聞きたい。

『中国は民主化する』は、長谷川さんが亡くなって半年後に出版された、長谷川さんの遺言のような本。生前、長谷川さんがテープに吹き込んだ音声を本にしたものだそうだ。

「世界の工場」として発展してきた“中国”が、「新常態」への構造改革を押し進める中で、「国有企業の倒産」「失業者の増加」「共産党利権の崩壊」は避けられない。当然、強い抵抗にあう。その時、習近平は、その抵抗を抑え込むだけの権力を持たなければならない。

その果てに、「中国は民主化する」と長谷川さんは遺言した。その理由は、すべて、“経済”にあると。


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人災コロナ『日本の論点2021~22』 大前研一

感染症による緊急事態宣言下に、与党の議員がぞろぞろと銀座のクラブに飲みに行ってた。

やめろよ、議員。それで、やめた分を補うのもやめよう。少なくなった方が、日本のためだ。少なくなった方が日本のためなのは間違いないが、国会議員が情けないのは有権者の責任。有権者がしっかりした政治家を育ててこなかったのが悪い。

武漢発感染症に関しては、大前さんは、武漢発感染症は中国共産党政府による人災だと言っている。今、WHOの調査団が武漢を訪れて隔離期間を終え、実質的な調査に入っている。

だいたい中共は、調査団の受け入れに否定的で、なかなか実現しなかった。中共外務省の趙立堅副報道局長は、「WHOの専門家は今後中国で、座談会、市民を訪問、視察などを通じて発生源の調査について交流と協力を展開していく」と、わけの分からないことを言っていた。核心は、隠す気満々だ。

感染者遺族の張海さんはWHOの調査団に対して面会を求めたが、調査団から返答はなかったという。その理由は分からない。どのようにして面会を求めたのか。当局が関与したのかもしれない。

今、張海さんは、「WHOが遺族と面会することも恐れているなら、現地調査は世界各国の人々への欺きに過ぎない」と、WHOにも猜疑心を向けている。

英紙によれば、WHO調査団の入国とともに、中国当局は遺族らに対して締め付けを強めたそうだ。武漢市政府が感染情報を隠ぺいしたと批判し、政府公表の死亡者数を疑問視する遺族数十人が、情報交換のため、
SNS微信で作ったグループチャットグループチャットを、中共当局が閉鎖したという。

国際機関の現地調査を認めず、各国とのウイルス情報の共有を拒んでいるとなれば、これは中国共産党政府による人災が今も続いていると言うことになる。

《2019年12月30日》
眼科医の李文亮氏が、「華南海鮮市場で7人のSARS感染者が確認された」と発信。
《2020年1月1日》
武漢華南海鮮卸売市場閉鎖。
《1月11日》 
中国共産党政府が、新型ウイルスの検出を発表。
《1月20日》
中国共産党政府が、「ヒトからヒトへの感染」を公式に認める。ウイルスに変異の可能性があり、感染が広まる恐れがあると警鐘を鳴らし、一気に緊張感が高まる。
《1月23日》
公共交通をストップするなどして、発生源の武漢市を封鎖した。春節元旦に当たる1月25日直前の措置だったが、大型連休を前に、500万人以上が武漢を脱出していたと言われる。

前出の感染者遺族の張海さんは、お父さんを感染症で亡くされた。1月17日に、お父さんを骨折で病院に入院させた張海さんは、感染拡大はすでに制御できたとの当局の発表を信じていたという。

つまり、12月の早い段階で、異常な事態は起こっていたんだな。大前さんも、12月の初めの頃、クラスターによって感染者が急速に拡大する状況になったいただろうと言っている。




『日本の論点2021~22』    大前研一 

プレジデント社  ¥ 1,760

感染症で大激変する世界! アジアの知性が、鋭く、深く分析する世界と日本の総括!
巻頭言 DX時代に、生き残るスキルを磨け!
日本編
1 20世紀型の経済政策では、新型コロナ危機に対処できない
2 オリンピックと甲子園は大ナタをふるった改革を実行せよ
3 2020年2月時点で予測!新型コロナ拡大で東京五輪の中止はある
4 COVID‐19があぶり出した「危機に弱い国」日本の実態
5 コロナ対策で露呈した地方リーダーたちの明確な実力差 
6 遠隔診療の解禁でこれからの医療はどのように変わるのか
7 9月入学にメリット無し。一番の問題は「長い夏休み」である
8 カジノ主体のIR構想がまったく的外れな理由を述べよう
9 「会社に依存しないキャリア形成」を今すぐ戦略的に実行せよ
10 コロナ禍の仕事と生活をプラスに変えるオンライン学習法
11 ヤフーとLINEの経営統合で予想される”ライザップ化”
世界編
1 「トランプ・マジック」の崩壊によって引かれる株価暴落のトリガー
2 人種差別や抗議運動への対応で見えた「トランプ再選」の赤信号
3 トランプから飛び出した「日米安保見直し」発言の真意
4 終わりの見えない「米中貿易戦争」。本当の勝者は誰か
5 世界が注目する香港デモに対し、中国が一歩も譲らないのはなぜか
6 「現代の皇帝」習近平は今後、中国をどのように導くのか
7 香港を切り捨てたしたたかな中国との付き合い方
8 激化する日韓関係で対立を煽る人物は誰か
9 アメリカとイランの報復合戦から読み取れる裏事情
10 気候変動で対立する「G7対ブラジル」の解決方法
11 フェイスブックの仮想通貨リブラは世界通貨となり得るか









前にも書いたけど、感染症対策では、安倍政権は、完全に後手を踏んだ。

2月末になって、唐突に国民に対してイベントの自粛、さらには全国の小中高校に、春休みまでの臨時休校を呼びかける異例の要請を行なった。

遅かったよな~。台湾やアメリカが、すでに1月中に、“中国”に対する旅行中止や入国阻止と言った行動を起しているのに、日本がそれに踏み切ったのは、3月に入ってからだからね。あれは、ひどかった。

それも含めて、結局、持病の潰瘍性大腸炎が悪くなったことで辞任した安倍政権7年8ヶ月へ大前さんの評価は、とてもきびしい。

評価のポイントは3つ。「戦後レジームからの脱却」、「日本人拉致問題」、「アベノミクス」。

そう、評価ポイントを限定してみると、きびしい評価も仕方がないか。

「戦後レジームからの脱却」、「日本人拉致問題」に関しては、残念ながら、今、顔を見知っている日本の政治家では、無理だ。どちらも、憲法の改正と大きく関わるが、責任は与党の政治家、特に自民党の政治家にある。

「戦後レジームからの脱却」にしても、「日本人拉致問題」にしても、政治生命どころか、場合によっては、自分の命をかけるくらいの気構えがなくて、成し遂げられるはずがない。

憲法改正なら、命をかけろとは言わない。せめて、政治生命くらいはかけてくれよ。そんなこともできずに、憲法改正を党是とする自民党所属の国会議員になるなよ。

「アベノミクス」に関しては、根本的な間違いがある。マイナス金利政策を押し通して、国債を日銀が買い上げるインフレターゲットで2パーセントのインフレを目指したが、結局達成できなかった。

亡くなった長谷川慶太郎さんのおっしゃっていたとおりで、21世紀はデフレ基調の時代に入っている。それは大きな戦争の時代が終わったからだ。“中国”と戦争でもする気で軍備拡張をするために、国家予算の10年分くらいを世の中にばらまくのでもなければ、何も動かない。

無理やりインフレに持っていくのでは、もはや現実的ではない。作る側、売る側にとっては厳しい時代だが、デフレを前提にして、新たな商品やアイデアを消費者に提供できなければ、市場から退場するしかなくなったんだ。結局は、それを続けていける、新たな人財を育てていくことに、力を入れるべきだった。安倍政権は、その点でも間違っていたと思う。

大前さんは、感染症の蔓延に対しての考え方が、悲観的に過ぎると思う。読んでいると暗い気持ちになる。だけど、一つ明るい話題があった。安倍政権が後手を踏んで、菅総理の声がなかなか国民に届かない。そんな中、緊急事態宣言発令で権限が強化された都道府県知事たちの中に、リーダーシップを発揮して、存在感を高めている人たちがいる。そんなことが、本書の中でも取り上げられている。

北海道の鈴木直道道知事、大坂の吉村洋文府知事、和歌山の仁坂吉伸県知事、鳥取の平井伸治県知事などだ。さらに、市町村長段階でも、目立つ活躍を示している人たちがいる。都道府県知事の6割は中央省庁の官僚出身で、そのつながりで、国の支援を引き出してくるタイプの知事であるようだ。その人たちは、緊急事態下に目立ったリーダーシップを発揮できている状況にない。

なんだか、政治にも、希望がないわけでもない。


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頑張れ!周庭さん『地政学世界地図』 バティスト・コルナバス

この本は、独裁体制を採る、または採っていた国々を、多く取扱っている。

ある国を取り上げた章で、“独裁”を四つの点で定義している。
  1. 強権的な国家元首がすべての権力を握っている
  2. 自由選挙が行なわれず、しばしば反対派が抑圧される
  3. 出版の自由をはじめ、基本的な自由が保障されていない
  4. 法治国家としての形態をなしていない

“ある国”とは中華人民共和国なのだが、“中国”は、見事なまでにすべての定義が当てはまる、典型的な独裁国家だ。

中華人民共和国憲法はこの国を「労働者階級が指導し、労働者と農民の同盟を基礎とする人民民主主義独裁の社会主義国家」と定義している。2018年以来、憲法前文は中国共産党の指導的役割を明確にし、国家の依拠するイデオロギーはマルクス・レーニン主義であると明記している。

具体的には、“中国”を支配するのは中国共産党である。その最高ポストが総書記で、国家元首でもある。立法機関は全国人民代表大会で、中国共産党が実権を握る。最高権力者は国家主席で、主席は中国共産党総書記を兼ねる。行政機関は国務院で、国家主席が指名し、全人代が承認した総理が統括する。最上位の司法機関は最高人民法院であるが、共産党が主導する全人代の支配下にある。

2018年6月、天安門事件の追悼行事を行なったという理由で、11人の活動家が逮捕、起訴された。起訴理由は、「対立を誘発し公共の秩序を乱した」ということだ。人権問題を専門とする弁護士15人が突如行方不明になったのは2015年のことで、家族はそれを1年以上知らされず、本人は拷問を受けたこともあったという。最後の一人が家族の元に帰ることができたのは、2020年、昨年の4月だった。

“中国”における基本的人権のために、長期にわたり非暴力的な取り組みを評価され、2010年にノーベル平和賞を受賞した劉暁波は、2017年5月、獄中にあるまま肝臓ガン末期と診断され、条件付きで釈放されたのち7月に亡くなった。


『地政学世界地図』    バティスト・コルナバス

東京書籍  ¥ 2,420

今、世界で起きている33の国際問題を、仏人歴史教師が平易に読み解く
すべての地図は間違っているのか?
国境線はどうやって引かれたのか?
なぜ欧州連合(EU)の加盟国は変わり続けるのか?
トルコはヨーロッパなのか?
アルザスはフランスなのか、ドイツなのか?
グリーンランドはどこに属しているのか?
BRICSとは何者か?
国連の目的とは何か?
宇宙は誰のものか?
なぜジブラルタルは英国領なのか?
「ロシアの飛び地」カリーニングラードとは何か?
キプロスはどこに属しているのか?
リヒテンシュタインとはどんな国?
マケドニアが「北マケドニア」になった理由とは?
香港は中国なのか>
ナウルは滅びた楽園か?
キューバ、時間が止まった国?
なぜ二つの国家が朝鮮半島に存在するのか?
ミャンマー(ビルマ)は統一できるのか?
インドとパキスタンの間で何が起きているのか?
なぜシリアでは混迷が続くのか?
イスラエル・パレスチナ紛争はなぜ解決できないのか?
ユーゴスラビアはどこに行ったのか?
なぜクリミア半島は緊張状態にあるのか?
アラル海はなぜ消えたのか?
なぜアルジェリア国民は蜂起したのか?
エリトリアには自由があるか?
なぜスーダンは危機に陥ったのか?
なぜイエメンは瀕死の状態にあるのか?
リビアはまだ存在しているのか?
ベネズエラで何が起こっているのか?
中国はどこに向かうのか?







香港返還当時、経済の自由化を進める“中国”に、世界は民主化の道を歩んでいると感じていた。

イギリスは“中国”に返還の条件をつけて香港基本法を施行させ、いずれ政治の民主化が進んでいくまでの間、香港の資本主義的経済システム、香港ドル、司法・行政制度、住民の諸権利と自由が維持されることになった。その期間は、50年と定められた。

返還から50年、つまり、2047年に、香港は中華人民共和国の体制に組み込まれることになる。

どうも、イギリスが考えていたようには、事は進んでいない。中華人民共和国は、きわめて歪んだ状態で自由主義経済の恩恵だけを享受し、経済大国にのし上がった。しかし、政治の自由かはまったく進まず、むしろ独裁体制を強化する方向へと進んだ。

2014年に、香港で発生した民主化運動は、大変大きな規模となった。当局は、デモ隊に対して催涙ガスを使用した。デモ隊が催涙ガスから身を守るため雨傘を使ったことから、この民主化運動は《雨傘運動》と呼ばれた。

8月、中共がある方針を打ち出した。香港の行政長官選挙に関しては、北京政府の方針を尊重する者を候補者とするというものだった。民主化を求めるデモはたちまち巨大化し、香港の中心部を数ヶ月にわたって麻痺させた。これで中国側のもくろみは挫折した。

2019年に、再び香港のデモが激しくなった。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする《逃亡犯条例》の改正案に反対するデモである。今回の改正案が成立すれば、香港住人だけでなく、香港に住んだり渡航した外国人や中国人までもが、中国側からの要請があれば本土に引き渡されることになる。

デモの大規模化に、“中国”よりの林鄭月娥行政長官は法改正を無期延期し、謝罪を表明したが、それでもデモは収まらなかった。人々は、中華人民共和国が、直接、香港に手を伸ばしてきたと感じたのだ。

2020年6月30日、全国人民代表大会常務委員会は、国務院から提出された香港国家安全維持法案を全会一致で可決し、習近平と林鄭月娥により公布され、翌7月1日から施行されることになった。

これにより、以下のこ4つの行為が厳罰の対象となった。
国家分裂―「香港独立」の主張・活動や政党の結党
中央政府転覆―SNSでの中国批判、天安門事件を扱う集会開催
テロ行為―デモでの破壊行為
外国勢力との結託―中国政府への制裁を外国に呼びかけること

11月に有罪判決を下され、12月2日に10ヶ月禁固の量刑を言い渡された、日本でもおなじみの活動家の周庭さんにかけられたのは、「外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えた」という容疑だった。

どの行為が、どんな発言が法に触れたのか、一切明らかにされていない。法の解釈権は全人代常務委にある。

習近平は周庭を解放しろ。頑張れ!周庭さん。



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『世界の歴史はウソばかり』 倉山満

1980年から88年まで続いたイラン・イラク戦争におけるイラクの大義名分は、「重要戦略目標としたフゼスタンという産油地に住む人々はアラブ人であり、アラブ民族主義を掲げるイラクは、その地にいる同胞を助けなければならない」ということだった。たしかにフゼスタンは、歴史的にアラブ人、端的に言えばイラク人が多く住む。なにしろ、平地で、地続きでイラクに接しているのだから。

さらにイラクは、自分たちのイランに対する闘いを、7世紀にアラブ軍がササン朝ペルシャを破った闘いになぞらえている。この本の中では、その闘いを《カーディシーア》と言っている。636年のカーディシーアの戦いと、それに続いて641年のニハーヴァンドの戦いに敗れて、ササン朝ペルシャは滅んでいる。イラクは、あくまで、この戦争をアラブ人対ペルシャ人という民族戦争として戦ったわけだ。

逆に、イランは、この戦争をムスリムの聖戦であることを強調した。「この闘いで死ねば天国に行ける」と。イラン兵は前線でも死を恐れずに戦うので、イラク軍はそれを恐れた。当時のイランは、革命でパーレビ国王が追放されて、シーア派のホメイニーが国を指導していた。彼の信仰は「12イマーム派」というもの。「ムハンマドの血縁者のアリーが初代イマーム(指導者)で、12代目が9世紀にお隠れになった。しかし、世界の終末を前に12代目が救世主として再臨して平和な千年王国を築く」という考え。12イマームが再臨するまでの間、イスラム法学者がムスリム共同体を導くわけだ。

ホメイニーの論理にすれば、イラクを世俗化したサダム・フセインはイスラムの正義に反する存在であるので、これを倒す闘いに参加することがムスリムの義務ということになる。

このイラン・イラク戦争の頃、アメリカで話題になったのが、「イラン・コントラ・ゲート」と呼ばれるできごとだった。当時、アメリカとイランは国交断絶状態にあった。テヘランのアメリカ大使館がホメイニー支持派の狂信者集団に急襲され、アメリカ人大使館員ら50人近くが440日にも渡って拘束された。レーガンの時に人質は解放されるが、両国はその後も緊張関係を続けた。

ところが、水面下においては、アメリカは大統領補佐官を通じて、イランに密かに対戦車ミサイルなどの武器を供給していた。同時にアメリカは、イラクの方にも毒ガス工場建設などの支援を行い、両国を争わせ続けて中東の大国を疲弊させようとしていた。この内実が1984年にニューヨーク・タイムズにすっぱ抜かれてスキャンダルになったのがイラン・コントラ・ゲート事件である。

2003年のイラク戦争の口実になる大量破壊兵器の存在は、これに基づいている。イラクはイランとの戦争で使った毒ガス兵器を、戦後、埋めた。それに関わったアメリカは、それを知っていた。イラクに毒ガス工場を作らせたのはアメリカであり、施工したのは西ドイツだった。

2015年の武器輸出額は、アメリカもドイツもイギリスも、前年比で倍増している。



ビジネス社  ¥ 1,210

世界が知られたくない暗黒史を大暴露!もっとも格調高き“ヘイト本”
序章 日本人がまったく知らない国民国家論
第1章 典型的な「国民国家」フランス
第2章 国民国家の理論でナチズムをやっている中国 
主権国家にすらなれていない韓国
第3章 常に異ネーションをかかえた帝国ロシア
第4章 国体と政体の区別がない「人工国家」アメリカ
第5章 「民族主義」のヒトラーに破壊された国民国家ドイツ
第6章 エンパイアから始まった国民国家イギリス
第7章 七世紀には国民国家だった日本
おわりに 史上もっとも格調高いヘイト本


今年も日本は、世界の人たちからいろいろなことを言われた。12月のCOP25で小泉環境大臣は、ずいぶん叩かれた。それが年末にあったもんだから、年明け早々、環境後進国扱いされるようになった。脱炭素の流れの中でも、ヨーロッパは石炭火力発電廃止を既定路線として、走り出しているからね。フランスが2021年まで、イギリスとイタリアが25年、オランダとカナダが30年まで、ドイツが38年までといった具合。

石炭が使われるのは、日本は、石炭火力発電の技術では、世界最先端にあることもある。しかも、経済性でもすぐれているために、海外の新興国を中心に、今後も石炭に依存しなければならない国は多い。それらの国で日本の技術を生かすことができれば、効率的な発電によって二酸化炭素の排出を抑え、大気汚染も防止することができる。

その点においては、じつは日本の一人勝ちという状況にあった。その日本を、環境後進国とののしる人たちは、いったい何をめざしているのか。後ろで糸を引いているのは何者か。

世界の国々の立ち回りは、その場の都合次第。裏で何をやってるかといえば、自国の利益だけを最大限にすることだけ。そのくらいのことを言われても、あんまりまともに考えずに、「そうだね~。40年くらいかな」ってなことを言っておけばいい。

1972年、フセインは、当時のアラブ世界のどこもができなかった「石油資源の国有化」に成功した。中東の石油利権の多くは欧米系企業の支配下にあり、それまでは、算出する石油で得られる利益の4%の手数料しか国の利益にならなかった。それが、国有化後は、96%が国の利益になった。

莫大な国家収入をもとに、フセインは学校を作って教育を整備し、社会の世俗化を進めた。女性の社会進出にも積極的で、チャドルをかぶる必要はなくなり、男性と同様に教育を受け、外で働くことが推奨された。

フセインの属するバアス党はシリア、パキスタン、アフガニスタンにも拡大しており、イラクと同様、女性が普通にオフィスで仕事をしていた。

アラブの春の発火点となったのはチュニジアだった。なけなしの金を投資して許可無しで市場で物を売っていた男が、それを規制していた警察官との間に悶着を起こし、警察官に殴られた。その警察官が女だった。男が女に殴られるというのはイスラム的価値観からすれば大きな屈辱で、男はカッとなって焼身自殺した。これがきっかけで独裁政権への反乱が始まった。

しかし、女性警官がいるということは、チュニジアは世俗化により、女性の解放が進んでいたということだ。

アメリカは、オバマの頃に、そういった中東の政権を次々と崩壊させていった。オバマは、ずいぶん世界に混乱を広げてくれたが、戦争をすると二酸化炭素の排出は、とてつもなく増えるだろうな。


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『世界あたりまえ会議』 斗鬼正一

斗鬼正一さん。“とき”さん・・・で、いいのかな。

“とき”だったら、土岐氏というのが歴史の中に出てくるけど、その関係の方だろうか。“斗”にしろ、“鬼”にしろ、意図的なものと感じるのだが、特に、なぜ、わざわざ“鬼”という字を使ったんだろう。“強さ”を表現するためだろうか。

江戸川大学名誉教授、明治大学大学院・文学部兼任講師の方で、“熱帯ジャングルのヤップ島からコンクリートジャングルの香港、東京まで、旅と街歩きで「人間という人類最大の謎」を探検する文化人類学者”というのが、著者に関わる説明。《文化人類学》という分野を生きてきた人のようだ。

それにしても、文化人類学って、こんなに面白いんか。

人の一生を考えると、当たり前ながら、生まれるところから始まる。いくら何でも、これは“あたりまえ”だろう。それでも、どう生まれるかってところから、もう、“あたりまえ会議”の議題にのってくる。

イスラム教の世界では、一夫多妻が認められているし、逆にチベットやマルサケス諸島では一妻多夫だそうだ。チベットの一妻多夫は、兄弟で妻を共有する形で、遊牧生活で家を留守にする間も、残った兄弟が家族を守る。子どもは、その“家の子ども”って扱いか。

ところが、マルサケス諸島の一妻多夫における“夫”は、その家の家長以外は完全に不特定多数。不特定多数の男たちは、その家の使用人のような扱いになるそうだ。そうなると、子どもはどうなる?・・・この先は、読んでびっくり・・・だな。

世界のいくつかの部族では、同性婚があたりまえで、女同士の夫婦で、夫は妻に愛人の男性をあてがって、子を成すんだそうだ。逆に、男同士の夫婦で、身代わりの女性に子どもを産んでもらうケースもあるという。

タイでは、幼くして死んでしまった子どもは、精霊に連れ去られたと考えるんだそうだ。そのために、子どもを犬、豚、水牛、蛙など変なニックネームで呼んで、精霊の目を欺くという。

だから、人の子どもを「かわいい」と褒めるのは非常識。可愛がって、“なでなで”するのも非常識。そんなことをされると、すぐに顔色が悪くなり熱を出してしまうと考えられているんだそうだ。

豊臣秀吉は、秀頼が生まれたとき、健康な成長を願う当時の祈願として、いったん捨てた形にして、家臣の松浦重政に拾い上げさせた。幼名も拾丸。その考え方に似てるな。




ワニブックス  ¥ 1,210

世界には驚きが溢れている。“仰天あたりまえ”を発表する会議が、今始まる…。
第1部 男と女についてのあたりまえ会議
第2部 人生についてのあたりまえ会議
第3部 コミュニケーションのあたりまえ会議
第4部 身のまわりのあたりまえ会議
第5部 生きるためのあたりまえ会議


欧米では、赤ちゃんを、すぐに別室に寝かせる。同じ部屋に寝かせるのは、せいぜい3ヶ月までだそうだ。日本人は、ずっと添い寝する。別室に寝かせるなんて、ずいぶん経ってから。そうだな。私の家でも、小学校の頃は、ずっと一緒に部屋だったな。

ニジェールの親は、子どもにオモチャを買い与えることがないそうだ。子どもは何でも自分で考えて遊ぶ。必要な物があれば、自分で工夫する。

日本人は、子どもと一緒にお風呂に入る。多くの場合、お父さんの役割だったりする。うちでもそうだった。その間に母親がごはんの準備をしていた。娘とも、小学校の高学年になるまで、一緒に入っていた。

世界の多くの地域では、これは非常識なんだってね。

赤の他人の子どもを可愛がったり、泣いている子どもをあやしたり、笑わせようとしたり、何かとお節介を焼きたがるのは、世界に多い例らしい。必要があれば、他人の子どもでも遠慮なく叱り飛ばす。ベトナムでは、子どもを叱るのは大人の役割とされているという。

日本でもそうだったよね。それも、私が子どもの頃までか。子どもは国の宝、社会の宝だったからね。今は、他人から声をかけられても答えないで逃げるように、親が子どもに教えているって言うんだからね。

でも、この間、山に登ろうと、子どもの登校時間にときがわ町を歩いていたら、中学生の女の子に「おはようございます」って挨拶された。とっても、うれしかった。

ドイツ北部のいくつかの地域では、いい歳をして独身って言うのは、困ったもんだと考えられているそうだ。ブレーメンでは独身のまま30歳を迎えると、大聖堂の掃除をさせるという罰が与えられるという。これは、男も女も。

しかも、男性は未婚女性から、女性は未婚男性からキスしてもらわない限りやめられないって。「早く結婚して子どもを持て」という願いや圧力が込められた通過儀礼だという。

ロシア正教のマスレニツァと言う祭りは、一週間続く婚活の場で、相手を見つけて結婚したカップルは、翌年の祭りで祝福されるという。逆に結婚しなかった男女は、足や肩に重たい枷をつけられるんだそうだ。

結婚して、子どもを作るってことは、社会に対する大事な責任なんだな。

今の日本では、そんなことを求めるのは、男に対しても、女に対しても、ハラスメントと受け止められてしまう。文化人類学的に、今の日本は、かなりおかしな状態ということになる。


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『地政学世界地図』 バティスト・コルナバス

社会科の教員をしていた頃、教科書会社の人が、よく学校を廻ってきた。

うちの会社の教科書を使ってくれってね。新しい教科書を持って、アピールポイントを説明して、売り込みして学校を廻るのが、その人たちの仕事だ。私の専門は世界史だったんだけど、戦後日本の歴史教科書は、東京裁判を前提に書かれているからね。「そうじゃない教科書ができたら、採用するよ」って言うと、「また、また~」ってね。

お茶入れてあげて、仕事で色々と大変な話を聞いてあげるんだ。中には、そのために、わざわざ私の空き時間を調べてくる人もいた。お茶菓子を持ってきちゃうんだよ。「賄賂?」ってね。話を聞くと、嫌な思いをすることもあるらしい。上司からだったり、学校の教員からだったりね。

会社が出している面白い資料なんかあると、持ってきてくれたな。特に、地図帳を出している会社の人が持ってきてくれた白地図帳は、実際に授業でずいぶん使わせてもらった。

マッカーサー地図って言うやつ。ごく当たり前のメルカトル図法の地図なんだけど。南極が上で、北極が下になってる地図ね。若い時に、神田の古本屋街を歩いていて、たまたま手に入れたんだ。

私が勤務した4つの高校は、学力の面で、いずれも県内で真ん中よりも下の学校だった。そういう学校だと、専門が世界史だからといって、結局はどんな科目でもやることになる。「どんな科目でも」っていうのは、世界史の他、日本史でも、地理でも、現代社会でも、倫理でも、政経でもね。

どんな科目をやることになっても、1年の授業の最初には、その地図を見せて、「何を見ようとするかによって、使う地図が変わる」ってこと、「地図が変わると、世界の見え方が変わる」ってことを話した。

この本の序文を書いたバンジャマン・ブリヨーさんは、「地図は権力の道具だ」という。自分の国が世界の中心にあるならば、自分の国はきっと世界の注目の的であり、政治と経済の中心であるに違いないと、心地よい幻想に浸ることができる。フランス人にとって、ヨーロッパを世界の中心に置くことは、精神的な安定につながるのだという。

しかし、残念ながら、地球の中心は、地球の地表にはない。心地よい幻想に浸るのはかまわないが、どのような地図をとってみても、地球の一定の地点は歪んで表わされることになる。

また、そこに暮らしている人たちの生活を知れば、地図をのぞくことがもっと面白くなる。ところが、日本のようなわずかな例外を除いて、世界はあまりにも複雑な歴史を繰り返してきた。その地域に、なぜ現在のような生活が存在するのか。実は、これはきわめて難しく、かつ重大な問題なわけだ。




『地政学世界地図』    バティスト・コルナバス

東京書籍  ¥ 2,420

今、世界で起きている33の国際問題を、仏人歴史教師が平易に読み解く
すべての地図は間違っているのか?
国境線はどうやって引かれたのか?
なぜ欧州連合(EU)の加盟国は変わり続けるのか?
トルコはヨーロッパなのか?
アルザスはフランスなのか、ドイツなのか?
グリーンランドはどこに属しているのか?
BRICSとは何者か?
国連の目的とは何か?
宇宙は誰のものか?
なぜジブラルタルは英国領なのか?
「ロシアの飛び地」カリーニングラードとは何か?
キプロスはどこに属しているのか?
リヒテンシュタインとはどんな国?
マケドニアが「北マケドニア」になった理由とは?
香港は中国なのか>
ナウルは滅びた楽園か?
キューバ、時間が止まった国?
なぜ二つの国家が朝鮮半島に存在するのか?
ミャンマー(ビルマ)は統一できるのか?
インドとパキスタンの間で何が起きているのか?
なぜシリアでは混迷が続くのか?
イスラエル・パレスチナ紛争はなぜ解決できないのか?
ユーゴスラビアはどこに行ったのか?
なぜクリミア半島は緊張状態にあるのか?
アラル海はなぜ消えたのか?
なぜアルジェリア国民は蜂起したのか?
エリトリアには自由があるか?
なぜスーダンは危機に陥ったのか?
なぜイエメンは瀕死の状態にあるのか?
リビアはまだ存在しているのか?
ベネズエラで何が起こっているのか?
中国はどこに向かうのか?





著者のバティスト・コルナバスさんは、30代前半のフランス人だそうだ。中学校で歴史と地理を教えるかたわら、YouTubeで現在の世界で起きているさまざまな問題の歴史的、地政学的背景を発信するようになったもののようだ。んん、たとえば中東、紛争が絶えないパレスティナ、ロシアによるクリミア併合、緊張をはらむ朝鮮半島って、そんな感じ。

まあ、目次に呈示されているようなテーマも、もともとはYouTubeで取り上げたテーマで、それをふくらませたのが本書だという。

《アルザスはフランスなのか、ドイツなのか》は、ずいぶん深く掘り下げられている。第二次世界大戦、第一次世界大戦、普仏戦争、30年戦争。このあたりまでは、なんとなく分かるんだけど、メルセン条約まで行くのか。そうか、メルセン条約で、アルザスは東フランクの領有になるのか。ドイツのもとだな。

ところが、もっとさかのぼる。クローヴィス?・・・メロヴィング朝の創始者じゃないか。そこまで行くのか。クローヴィスがアルザスを奪取してフランク王国に編入した。そうだ。じゃあ、もとはローマ帝国に支配されたはずだ。ということは、ユリウス・カエサルがスエヴィ族からアルザスを奪ったんだ。スエヴィ族は、ゲルマンとも、ケルトとも言われているらしいけど、まあ、これがアルザスの初出だという。

アルザスはあっちに行ったり、こっちに行ったりするだけの、価値のある場所だったと言うことか。屈しなければならないときは身をかがめるが、決して完全に屈服することはない。そういう気性なんだそうだ。つまり、ドイツ人でも、フランス人でもない、アルザス人だと言うことだな。

著者のバティスト・コルナバスさんは、10年を超えてアルザスに住み、アルザス人になりきってしまった、非アルザス人なんだという。

一つ一つの地域を深く掘り下げて、なぜ、この地域で、こんな問題が発生しているのかを追求していくっていうのは、とても困難で、とても大切なこと。

おもしろい本なんだけど、アジアに関する理解が薄い。

「日本の支配下の朝鮮では日本語のみが使用を許され」、「日本にとって朝鮮は資源と農産物の供給源」、「朝鮮の農業生産の40パーセントは日本向けのものだったが、朝鮮では栄養失調が蔓延していた」、「日本に動員・徴用された者も多く、日本の工場や炭鉱で厳しい条件で働かされる場合もあった」

フランスにとっての植民地とは違うんだけどな。

まあ、それは、ヨーロッパを世界地図の中心に置くことは、精神的な安定につながるというフランス人。日本は、その世界地図の右の端に、おまけのように描かれている国。その世界地図を広げた壁の都合によっては、後ろ側に織り込まれてしまって、世界から消えることもあるかも知れない。

フランス人にとっての日本は、あくまでも、その地図に書かれている通りの日本なんだろう。

著者のバティスト・コルナバスさんの、とても困難で、とても大切な取り組みにとって、世界の近代史を見つめ直すことが、とても重要なのではないかと、極東の私は思うわけだ。



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イーグルス16

Author:イーグルス16

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ポスト・コロナの新たな世界において日本の歴史と国民性を基盤とした「日本独自の戦略」とはなにか。
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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本






























































































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