めんどくせぇことばかり 本 その他

『和僑』 楡周平

兄が家を継ぐことに何の疑いもなかったから、私が家を出ることにも、何の疑いもなかった。兄は、私が中学生の時に、東北の大学に入学して、家を出た。もちろん、いつか帰ってくる前提で。その下の兄も家を出たあと、両親、祖父母との生活が苦痛で、高校を卒業すると同時に、前のめりになって家を出た。それ以来、家は帰省先になり、祖父母と両親が死んだ今、そこは兄の家になった。珍しくもなんともない話だけどね。

父には弟が三人いて、下の二人は故郷の秩父を出ている。もう、父の世代から、秩父に仕事はなかった。農地解放でボロボロにされ、畑も満足にない家なので、惣領以外は、自然と目が外に向く。

本書の中で、故郷を捨て、アメリカに渡り和僑となった時田さんの立場はよくわかる。ただ、親は、家を出る次男、三男のことを憂慮していたし、長男はそんな両親の思いを汲んでくれていたので、私は故郷と縁を切らずに済んだ。

いま、観光シーズンになると、秩父という名をよく聞く。そのたびに誇らしい思いとともに、なんだか複雑な感情が入り混じる。「もう、そろそろだろう」っていうところかな。兄の代になり、孫もできた今、自分の方から疎遠を旨として行動している。もう、60をまじかにしている私が秩父に暮らしたのは、18まででしかないんだから。今更、故郷を笠に着るのも、うすらみっともなく感じる。

巨人の星の明子姉ちゃんみたいに、電柱の影から見守ってね。訪れるなら、一人の旅人として、思いは秘めるというのが、適当でしょう。

まあ、できることなら、本書の時田さんのように、地元に貢献できる道があるなら、そんなにうれしいことはないでしょうけどね。


『和僑』    楡周平

祥伝社  ¥ 1,728

メイド・イン・ジャパン“ローカル”を引っ提げて、出るぜ、世界へ!示せ日本の底力
「老人を集めて、豊かな老後と、地方再生を」 逆転の発想で大反響を呼んだ『プラチナタウン』刊行から7年。その構想は現実に国が掲げる地方創世の切り札となった。そしていま、この物語はネクストビジョンを示す。

TPPで打撃を受けることが予想される、農林畜産業。減少を続ける人口。増える老人。そして、いつか減る老人。地方には仕事がない。若者は故郷を出て行かざるを得ない。

今の日本が、実際に抱えている様々な問題を、丁寧に描いて、とても上手に問題提起している。それが描かれる前半部分は、読んでいても、重いものを突き付けられている感覚がある。それとともに、主人公の山崎市長が、それにどう対峙するのかと、期待が高まる。

その解決策を模索していく後半の展開は、速度感もあって、心地いい。一次産業を立て直すことが、日本再生につながるという筋立ても面白い。

“日本のあたりまえ”が、海外では“売り物”になるといった展開だけなら、ただの“クールジャパン”で終わる。そこを、“和僑”とつなげることで、展開をダイナミックにしている。

「都合のよすぎる話の展開」というなかれ。実際の人生も、けっこう都合よくできていることもある。

ただのお話しと捉えてもいいが、きっと本気で考えているやつもいる。平成27年の本だから、読んだ人も多いでしょうが、もしまだだったら、おすすめです。




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『アメリカ第二次南北戦争』 佐藤賢一

REUTERS 2017/05/02
トランプ大統領「ジャクソン大統領なら南北戦争回避できた」
http://jp.reuters.com/article/jackson-idJPKBN17Y0A6
(抜粋)
トランプ米大統領は、アンドリュー・ジャクソン大統領の任期(1829─1837年)がもう少し後だったら、南北戦争は回避されたかもしれないと発言した。また、南北戦争がなぜ起きてしまったのかと述べた。1日放送された米衛星ラジオのシリウスXMラジオとのインタビューで語った。

奴隷所有者で、アメリカ・インディアンを米南東部から強制移住させたことでも知られるジャクソン大統領は、南北戦争開始の16年近く前に死去している。

しかしトランプ大統領は、ジャクソン大統領は「南北戦争に関して起きたことに非常に怒っていた」と語った。「彼は『理由がない』と述べた。人々は南北戦争を理解していない。何故だ、という問いを持たない。なぜ南北戦争が起きたのか、なぜそれが解決できなかったのか」と述べた。

この放送後、トランプ大統領はツイッター上で、ジャクソン大統領が南北戦争の16年前に死去したことは知っているが、彼は「それが起きると予想して怒っていた。2度と起こしてなならない!」と述べた。

1861─65年に起きた南北戦争を、ジャクソン大統領が回避できたとトランプ大統領が考える根拠は明らかではない。

南北戦争については広範な研究が行われ、「奴隷制」が根本原因のひとつと考えられている。

「びっくりしたな~、もおう」・・・三波伸介風に・・・。いえいえ、トランプ大統領の些細な間違いにではありませんよ。その些細な間違いを指摘して、「奴隷制」を“根本原因”と言ってはばからない人たちに。

そんな人たちに読んでもらうなら、・・・やっぱりこの本かなぁ。

光文社  ¥ 時価

2006年に出た本 直木賞作家が鋭い批判眼と歴史観を以て描いたアメリカの本質

奴隷制を基礎としてプランテーションを経営する南部の悪い奴らを、北部の奴隷制に反対する人たちが成敗したわけか? それが第一に原因ではないとしても、原因の一端となっていると、それがアメリカの常識と、そう言っているわけか。

あの戦争の前は、アメリカってのは現在のEUみたいなもので、統一度の高い、・・・少なくとも集権国家ではなかった。ただ、覇権国家イギリスの工業力に張り合おうとしていた北部諸州は、それを目指していた。イギリス工業に原料の綿花を提供していた南部諸州は、ワシントン以来の、統一度の低い連合体に満足していた。野心を持って、南部諸州に変化を求めたのは北部諸州である。

北部諸州の利益を代表するエイブラハム・リンカーンが大統領選に勝ったことで、南部諸州は合衆国からの離脱を選択する。たしかに、奴隷制は問題化されていたが、それ自体は国を割るような問題ではない。事実、アメリカは、ラテン系ヨーロッパ人、スラブ系ヨーロッパ人、アイルランド人と、移民後発ヨーロッパ人の低賃金労働が工業の発達を支えた。とどめは、シナ人の苦力だ。あれは、準奴隷労働だろ。南京条約のあと、まもなく苦力狩りが始まるから、北部諸州が奴隷制を“道徳的誤り”として、南部人の人間性を攻撃し始める頃には、もう、新たな奴隷は準備されていた。だから、戦争なんかするまでもなく、南北が折り合いを付けることは、さほど難しいことじゃなかったはずだ。

「なぜ止められなかったのか」と疑問を呈したトランプ大統領の発言が、そのことを指しているなら、彼は全く正しい。60万を超える死者を出す戦争だ。白人同志がそれだけ殺し合う理由として、奴隷制ってのはねぇ。ありえないよ。

アメリカは、この南北戦争を、《American Civil War》って、呼んでるよね。アメリカの人の悪さがよくわかるネーミングだな。

分離を図った南部諸州、いや、アメリカ連合国を破ったアメリカ合衆国は、連合国を絞り上げて、90年代の工業の大発展期を迎える。米による日本占領のモデルケースは、南部占領だった。




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『鴨川食堂 おまかせ』 柏井壽

ちっとも順番に読んでないけど、これが最新作の第四弾。第二弾と第四弾を読んだんだな。今のところ・・・。じゃあ、このあとは、第三弾、第一弾って感じかな。・・・まったく順序に意味は無いけどさ。

人情を語るのに、やはり、料理はいい材料になるね。やはり、第二弾を読んだときと同じように、いずれの話も、自分に置き換えてしまって、ただただ、切ない。料理は、思う人に食べさせるものだからね。だから、食べ物のことを語ることそのものが、お話になるんだね。

そこに交錯する思いは千差万別で、おそらく人の数だけ物語はある。ただ、普通、人はそれを胸に秘める。秘められたものだからこそ、力を持つ。口に出しちゃあ、いけないんだ。口にした途端、その力は失われちゃうからね。ただ、何年も、何年も経って、かつてそこにあったさまざまな関係性や、強すぎた思いや、そういった色々なものが解きほぐされて、新たな装いに移り変わったとしたら・・・。秘められた思いは、明かされることで、大きな力になりうる。

秘められた思いは、物語として大きな力を持った時、人の生死を止揚する。


小学館文庫  ¥ 616

憶い出の食を捜していただけなかったら、私はずっと過去ばかりを追いかけてしまっていたと思います
第一話  味噌汁
第二話  おにぎり
第三話  豚の生姜焼き
第四話  冷やし中華
第五話  から揚げ
第六話  マカロニグラタン

夢をあきらめて故郷に帰るか、それとも挑戦を続けるか。憶い出の味噌汁を味わって、それを決めようとする、18で故郷をあとにしたきりの司法浪人。

「4年待って欲しい」と、一流になることを目指して、料理の道に邁進した恋人。その4年目の今年、別れの日に彼が食べさせてくれたおにぎりを依頼。そして、この4年間に決着をつけ用とする女。

別れた女が作ってくれた豚の生姜焼き。自分は、あの女にとって特別だと思いたい男。

冷やし中華。なぜ私は、あの冷やし中華を食べたいのか。それがわからない女。

そのから揚げを食わせてくれた男は、自分の過ちを恥じつつも、まっとうに生きる人だった。若者は、その思いをしっかり受け止められるのか。

自分の浮気がもとで、我が子と別れた女。別れる日、女は、自らの思いをマカロニグラタンに託した。それを、美味しく食べた子は、今。
取材だけでも、本当に大変だと思うんだけど、ぜひ、頑張ってほしいなあ。もっと読みたいよ。私、心の底から思ってるんです。強い人って、物語を持っている。たくさんの物語を持っている。本を読むって、疑似体験だけど、読むほど人は強くなれる。さまざまなパターンの悲しさや切なさを、読むことで体験して、心が鍛えられる。もしそれを、自分のものとして考えられるならね。

「旨さを感じ取ったんは舌でもなければ胃袋でもない。心なんですわ」・・・これ、《第五話 から揚げ》に出てくる、流れのセリフです。
GWには、滋賀県で働いている息子が帰ってくるし、娘家族もやってくる。息子や娘も、何かしら、思い出の味って持ってるのかな。まあ、せいぜいうまいものでも食わせてやろう。さて、包丁でも研ぎますか。・・・今、夜中の12時だけど・・・。



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『果てしなき追跡』 逢坂剛

逢坂剛の《イベリアシリーズ》をワクワクしながら読んでいた。1999年に始まったシリーズで、完結の第7巻が2013年。間があくので、本屋に行くたびに確認した。新しいのを見つけた時の、あの気持が懐かしい。あの時は、《第二次大戦中のスペイン》という特定の舞台があって、そのなかで架空の人物、北都昭平を活躍させた。

今度は、ちょっと様子が違う。主人公は、“函館で死んでなかった”土方歳三だ。・・・そうか、“函館で死んでなかった”という時点で、この土方歳三も、架空の人物であることには違いないか。

函館で負傷した土方歳三は、気を失ったままで、沖合に停泊中のアメリカ船に運ばれ、アメリカに渡ることになる。本人の意志も何も関係ない。なにしろ、アメリカ船のなかで目を覚ました土方は、記憶を失ったいたのだから。

その土方の面倒を見るのが、同郷の娘、時枝ゆら。しかし、二人は、船を降りるやいなや、密入国者として追われる身となる。右も左も分からないアメリカで、たちまち追われる身となる二人。追うのは、初対面の土方に目を潰された因縁を保つシェリフ、マット・ティルマン。

舞台は、アメリカ西部。登場するのは、船乗り、カウボーイ、インディアン、KKKから派生したQQQ、それを追う国境警備隊。逢坂剛ならでは、と言った感じだな。「面白くないはずがない」という意味です。



中央公論新社  ¥ 2,052

函館で死んだのは、土方歳三ではなかった。本物の土方は、沖で停泊中のアメリカ船に担ぎ込まれた


土方は、案内役のピンキーをさらったQQQの行方を追う。その土方を、シェリフのティルマンが追う。ティルマンの行先に土方が居るはずと、別れ別れになってしまったゆらが追う。ゆらが追ってくることを承知して、ティルマンが由良に罠を張る。

題名は『果てしなき追跡』。たしかに果てしない。追い、そして、逃げる彼らがさまようのは、アメリカ西部の大地。そう、まだこの国が一つの国家になって間もないころの話。この国が一つになった南北戦争の傷跡が、あちらこちらに残る時代。

この時代に、インディアンは消されていき、黒人は“解放”という名のもとに放置されていく。それでも、トムソーヤや、ハックルベリー・フィンが走り回るには、少し時間がかかる頃。

そんなアメリカに、日本は関わりを持っていくんだよね。さまざまな追跡のはてに、すべての解決が最後に描かれる。しかし、それは、予想したものとちょっと違うようだ。んんん?・・・そこで終わっちゃったんですよ。続きは次巻ということ。また、本屋でため息をつく日々が始まる。
幕末維新の頃、アメリカに渡ってカウボーイと関わった話が、昔あった。三船敏郎と、チャールズ・ブロンソンと、アラン・ドロンの共演というスゲー映画だった。『レッド・サン』だったかな。秩父の革新館っていう革新的な名前の映画館で見たぞ。



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『鴨川食堂 おかわり』 柏井壽

NHKのドラマで見ました。面白かったです。ショーケンが食堂の主、流役をやってました。まだまだ元気で、とても嬉しかったです。・・・で、「いまさら、なんでこの本?」と思われるでしょうが、特別わけはありません。ちょっと、気持ちが疲れていたんでしょう。人情の世界に触れてみたかったんです。

ドラマを見たのも、たまたまのことなんですが、この本を読んだら、ドラマの元になったお話がここにありました。内容は、下の目次に示した6編なんですが、冗漫になることを避け、脂身を削ぎ落として、淡白な味に仕上がってますね。その点は、ドラマ以上と言っていいでしょう。

他の本と一緒に積んでおきましたが、先程言ったとおり、世界情勢の本とか読んでたら、ちょっと気持ちが滅入って、この本を取ってペラペラめくってたら、1日、他の本に戻ることができなくなりました。日曜のお休み。孫が遊びに来ていましたが、テレビに釘付けになっている間、お昼寝の間に読みました。とてもいい休日を過ごすことができたような、ありがたい本でした。



小学館文庫  ¥ 616

お気持ちに見おうた分を、こちらに振り込んでもらえますか

第一話  海苔弁
第二話  ハンバーグ
第三話  クリスマスケーキ
第四話  焼飯
第五話  中華そば
第六話  天丼


《食を探す》、そうこの本では言っているけど、《思い出の味を再現する》っていうことですよね。鴨川食堂の主人である鴨川流は、料理人としての力量と、かつての職業である刑事としての犯罪捜査の経験、何より持ち前の人間味で依頼人の期待以上の料理を提供する。

“いついつ、どこどこの店で食べた”という話であれば、依頼人本人がそこへ行けばいい。“すでに店を閉じてしまっている”って言う時に、はじめて元犯罪捜査員の腕が意味を持つことになる。とは言え、これってかなり難しい捜査だよね。本当に見つけられるだろうか。さらに、“昔、死んだ母が作ってくれた”ってレベルの話になるとね。・・・そんなこと、考える必要ないか。ただただ、人情話に心を潤すことができればね。

幼いころの思い出の味の多くは、試行錯誤しながら、自分で再現した。って言ったって、土台が大した料理じゃない。ポテト、きゅうりもみ、ねぎみそ、たらし焼き、しゃくし菜炒め。素材+一手間だけだな。そういうの作って、しんみりしながら一杯やるのっていいよね。そういや最近、やってないな。ここ数年、心の余裕をなくしてたかな。

ただねぇ。本当に切なくなるほど再現したい味って、それとはまた違うんだよね。「野球の試合の日、ニワトリ小屋の前で、祖母に飲ませてもらった産みたて生卵」とか、「日曜日の昼に、母親が作って、家族みんなで食べたカレー」とか、「大学受験前日の夜に、井の頭公園に下宿してた兄貴が食わしてくれたとんかつ屋のとんかつ定食」とかって、その状況自体が“味”なんだよね。

その状況は、二度と再現することはできない。だから、切なくて涙が出る。

鴨川流は、それをやるわけだよね。そうそう、で、その味が、食べた依頼人に、実は本人でさえ忘れていたその時の状況を思い出させるわけだ。その時、依頼人が感じる切なさは、それは絶対に取り戻せないってことを思い知らされるから。・・・でも、だからこそ、人生は素晴らしい。

その仕事に応えようとする依頼人に流れが放つセリフが、「お気持ちに見おうた分を、こちらに振り込んでもらえますか」ということになる。そこまで言っちゃあ、カッコつけ過ぎってもんでしょう。




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『天地明察』 冲方丁

2009年の本か。ずいぶんと眠らせておいたもんだな。下に写真で紹介しているのは文庫本なんだけど、これは単行本。じつは、まだ入院中のベットの上で読みました。その時に、ベットの上でメモしておいたものを見ながら、この記事を書いてます。入院前に用意した本がなくなっちゃって、あわてて連れ合いに図書館から「何でもいいから借りてきて」ってのは、やっぱり無茶なこと。読みたい本は、ほとんどない。切羽詰まって思い出した。買っただけで読んでない本が、かなりあるはず。

そんなわけで、連れ合いに、押し入れに頭を突っ込んでもらいました。・・・いけない。その時の連れ合いのお尻を思い浮かべてしまった。大きいからなぁ。

すごい話題になったから買ったのに、この本、読んでなかった。面白かったー! よかった。読む機会に恵まれて・・・。あれだけ話題になった本が、ずいぶん時間が経過した分だけ、とても新鮮な気持ちで読めた。

もし、まだ読んでない人がいたら、絶対オススメ。

『天地明察』    冲方丁

角川文庫  ¥ 596.596

四代将軍の治世 日本独自の暦を作るという難題に挑んだ男がいた
主人公は渋川春海。またの名を、安井算哲。・・・“またの名”が渋川春海の方か。物語は、冒頭で、算術の天才、関孝和の影を登場させる。

渋川春海は碁打ちの家系で、それを以って将軍家に仕える。これが春海の表の姿で、その表の名が安井算哲。ところが春海には歳の離れた義兄があり、安井の名を継いでいる。渋井姓を名のるのは、他に生きる道を求める気持ちの現われでもある。実際、春海は碁の他に、神道、朱子学、算術、測地、暦術に心得があり、中でも算術への思い入れは強い。これが冒頭で関孝和の影を登場させたいわれである。

まあ、ともかく、そんな渋川春海が、なんやかんやと、改暦という大事業に携わっていく。

最初はなんか、まるで新しく始まったNHKの時代劇第一話冒頭のよう。かと思えば、まるで落語の語りをそのまま頭の中へ映像として送り込まれているような、はたまた、あの漫画『おーい、竜馬』を思わせるようなドタバタぶりでした。ストレスは、途中で読むのを中断しなければならないという、こちら側の都合だけ。・・・例えば、注射だとか、検温だとか。

時代は、徳川第4代将軍家綱の治世。3代家光以来、将軍家の厚い信頼を受けた腹違いの弟、保科正之が幕政に重きをなし、戦国の気風を残す世を太平に導こうと命をかける時代。その正之の命を受け、改暦に乗り出して、武によって統一された社会に、今度は文による一石を投じる役割を担うのが渋川春海の役回りというお話。

のちに制度疲労を起こし、新たな流れに対応できなくなる幕府ではあるが、この時代においては、なにしろ若い。物語は、渋川春海を中心とした、青春歴史小説とでも言えばいいだろうか。なんにしても、時代に若さがあることもあって、物語そのものをはつらつとしたものにしている。




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『生還せよ』 福田和代

思いっきり題名だけで入手してしまいました。“・・・しまいました”なんて言い方で始めれば、わたしがここに、その後の後悔のほどを書き示すようにしか聞こえませんよね。そう考えるのが当たり前ですよね。だけど、《怪我の功名》という言葉もあります。ということで、「この本は怪我の功名」。面白かったです。

ここのところ、山の本なら、それだけの理由で選んじゃってるからね。この本についても正直なところ、疑いはあったんですよ。山の本で遭難物。戦争物。警察物。山の本であることを期待していたのは本当なんだけど、戦争物なら“どんとこい”だし、警察物でも仕方ないくらいの気持ちでいた。

プロローグに出てくるのが、終戦時の、陸軍中野学校生たち。山の本ではなかった。しかも、なおかつ戦争物でもない。話の舞台は現代。

いつもながら私は、何の先入観もなしに読んだ。読み終えて、最後の著者紹介のところに書いてあった。そこではじめてわかったことなんだけど、《本作は、『迎撃せよ』、『潜航せよ』nに続く“国際謀略シリーズ”。読んでいる途中に、“前作”があることは確信していたが、そのとおりだった。

前2作を読んでいないのでなんのかんの言えないけど、日本にもいよいよ本格的諜報機関を設立する動きが水面下で進められていく中で、話は展開されているようだ。


『生還せよ』    福田和代

KADOKAWA  ¥ 1,944

航空自衛隊から内閣府に出向した安濃は、シンガポールで諜報員として潜入捜査に入る


その諜報機関は、内閣府内に設置された遺骨収容対策室。上官は内閣総理大臣で、有事には、総理の直接の指示で動く。平時は内閣官房長官が指示をとり、実際上の連絡は内閣府大臣政務官が行う。

さて、本作での話。日本のゲームメーカーが開発した軍事転用が懸念される航空機操縦シュミレーターをめぐる誘拐事件が発生。ドローンで炭疽菌を無差別頒布するっていう過激グループの計画も絡んで、諜報員としての初仕事に臨む安濃将之が過激グループを追う。

その、日本に本格的諜報期間を設立する話と、かつて諜報員を要請していた陸軍中野学校が絡んでくる。

面白いんですけど、ただ、著者の第二次世界大戦への認識が残念。真剣に自分の脳みそであの戦争と向き合うところまで言ってないみたい。ならば、あえて陸軍中野学校を持ち出すような真似しなきゃよかったのにと思っちゃったけど、それに気づくってことも、自分で向き合わないと気が付かないだろうからね。

それとも、この題名のために陸軍中野学校を持ち出したのかな。中に、《謀略は誠なり。諜者はシナず死なず。石炭殻のごとくに》という陸軍中野学校の教えが出てくる。“諜者は死なず”から『生還せよ』。・・・なるほど、いいアイデアだ。




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『ラストレシピ』 加藤経一

2014年6月刊行の、『麒麟の舌を持つ男』の改題バージョンだそうです。もう、2年も前に出てた本なんだ。
第二次世界対戦中に、天才料理人直太朗が完成させたという究極の料理を蘇らせてほしいと依頼された“最後の料理請負人”の佐々木充。彼はそれを再現する過程で、そのレシピが怖ろしい陰謀をはらんでいたことに気づく。直太朗が料理に人生をかける背景で、歴史を揺るがすある計画が動いていたのだ。料理に導かれ、70年越しの謎に迫る、感動の傑作ミステリー。
・・・、というのが、裏表紙に書かれたふれ込みなんだけど、ちょっともったいない感じ。

著者は、田中経一さん。フジテレビで、《料理の鉄人》のディレクターをしてた人だって。その番組のなかで、田中さんは出場する料理人の人生に触れる経験をされたそうだ。この本にも登場する料理人の習性や、パトロンとの付き合い、リアルな人間関係は、それらの料理人との深い関わりのなかで体得されたことのようだ。


幻冬舎文庫  ¥ 745

絶対味覚を持つ佐々木充。ひょんなことから歴史をも揺るがす、ある計画に関わる

さっき、裏表紙のふれ込みにケチを付けた。少し安売りし過ぎかなって感じたからで、もちろんそれを目にしたのは読み終えたあとなんだけど、この内容の物語なら、“満州”と、あえてその名を出すだけで、言わなくても伝わる数々のことがある。“満州”を扱いながら、もったいないと感じたことは、物語の中にも、実はあった。

“満州”とまでいかなくても、この時代の日本人であれば、誰でも共通する気負いのようなものがあって、おそらく今より、遥かに物語になりやすい題材にあふれていた。ましてや、膨れ上がった気負いを世界中から袋叩きにされて、潰された。・・・物語の宝庫だ。にも関わらず、ほとんど書かれていない。ひとえに、あの時代がいまだに消化されていないことに原因がある。みんな、なにも語らなかった。周辺に、よく語る人たちがいる。彼らがあそこまで語るのは、日本人が一切語らないからだ。

だから、語ろうとすると、ついつい大上段に振りかぶって構えてしまう。大上段に振りかぶられて書かれた“満州”を読むのは、正直なところ、疲れるのだ。

あえて言ってしまえば、《歴史認識》に関しても、恐れなくていい。どんどん書いてもらいたい。どんどん書いていくなかで、問題にもなり、習性もされていくだろう。かと言って、責任を問うような真似はやめよう。表に出してくれたことを評価しよう。重ねていうが、あの時代はまだ、消化されていないのだ。

この本だって、ひどいもんだった。満州は中国人の国土で、日本は他人の地で好き勝手なことをして、中国人にひどいことをしたって。日本人にとって他人の地なら、シナ人にとってだって他人の土地。ひどいことなら、日本人も我慢に我慢を重ねた。あまつさえ、ストーリーに、取り立てて関係ないのに石井部隊の話を持ち出してくる始末。

でも、物語として面白かったし、そういった“認識”も、・・・大歓迎だ。口をつぐんでいるよりも、よっぽどいい。あの、“物語の宝庫”をもっともっと、表舞台に立たせることこそ、今はもっとも大事なことだと思う。

ぜひ、多くの方に、この本を読んでもらいたい。大変価値のある本だと思う。




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『わくわく昆虫記』 丸山宗利

この本の表紙の飾る虫、・・・なんだか分かる? ホラホラ、葉っぱの上で体を立てて、・・・これって、ゴマダラカミキリだよね。前方の田んぼ上空に広がる空間の向こうの森まで一気に飛ぼうと、羽を広げる寸前なんじゃないかな。・・・たまんねぇな。

兄が二人いるんだけど、足が悪くてのろまな私は、いつも兄たちにおいて行かれた。集落のみんなで遊ぶときはいいんだけど、兄たちが学校の友達と遊ぶときはダメ。たまに連れて行ってもらっても、私は兄たちをがっかりさせるだけでね。

一人でできるのは、納屋にある怪しい道具や書籍を相手にするか、木っ端集めてなんか作るか、虫を相手にするかかな。“昆虫好き”とは言えないかもしれないけどね。夏休みに昆虫採集なんてやったことないし。だけど、虫相手でも時間は忘れたな。

虫の名前を周りの大人に聞いても、大人たちも適当な知識しかなかったからね。たとえばてんとう虫に区別はなかったし、緑色でよく飛ぶやつはみんな“ギッツ”。当時はなかなか調べようがないから、あとで先生に聞いたりしてね。それを友達に広めて、たとえば《オケラ同盟》を結成し、金魚鉢に土を入れてオケラ帝国を作った。《ハナアブ隊》としての活動は、ハナアブを大量に集めて休み時間の教室に離したりした。

講談社  ¥ 2,160

子供の頃に昆虫好きだっや人 あの頃の気持を思い出させてくれる本


やっぱり私、“虫好き”っていうのとは少し違うみたいだ。ゴキブリと毛虫とスズメバチがまったくダメだ。見ることさえ嫌だ。子供の頃の、ゾッとする経験によるものであるのはわかっている。ゴキブリは、木の隙間にクワガタいるのかと間違えて、数匹いっぺんに握りしめてしまった。茎に毛虫がびっしりとくっついたふきの群生に頭から飛び込んでしまった。金に目がくらんでスズメバチの巣を採りに行き、失敗してひどい目にあった。

この本にもアシナガバチの巣を取った著者の経験が書かれているが、同じことをやってた。それが通じると思ったのが甘かった。今考えれば、おそらく死ぬところだった。
どこか地方の方に女郎蜘蛛どうしを戦わせる“蜘蛛相撲”っていうのがあるそうだけど、蜘蛛どうしを戦わせるのはよくやってた。同じ種類に蜘蛛でも、自分の巣じゃないと戦えないんだね。女郎
kumo.png地蜘蛛っていうんですか。私は腹切り蜘蛛って読んでた。上手に土の中から袋を抜き出して、腹を切らせて遊んでた。
(写真借りちゃいました)
kumo2.png
虫があふれる夏。秋は虫の声。だけど、冬の雑木林が格好の遊び場所。来年の夏まで、暖かいベッドのなかでゆっくり過ごそうとしている彼らを見つけ出すのが、冬場の私の興奮する遊びだった。・・・本当にごめんなさい。

今度足を直したら山に行くんだけど、その時カメラを持っていこうかなって。いろいろな写真を撮って、ブログやなんかで紹介してさ。・・・虫の写真も撮ってみようかな。だって、この本の写真。ほら、表紙のゴマダラカミキリとかさ。そう、思わせるような写真がいっぱいなんだよ。




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『ほかほか蕗ご飯-居酒屋ぜんや』 坂井希久子

ずいぶんと遠ざけておいたけど、やっぱり時代ものは肌に合う。私は、口もそうだけど、頭の方も雑食性で、なんでも読む。地図帳や時刻表なんか与えられた日にゃあ、それこそ時間を忘れてしまう。地図帳、時刻表に近づくときは、最初から用心が肝要です。

だけど、雑食性と言いながら、もとを正せば歴史なんだよね。商売に関連しているしね。真正面から歴史研究に取り組んだ労作もそうだけど、古今東西、時の流れの中に埋もれた歴史を手間ひまかけて発掘したものとかを好んで読んだね。発掘ものとまで行かなくても、広く知られていないことに取り組んだり、一般に知られているものでも見方や視点を変えた新解釈で新装開店なんて、胸が躍るよね。

たとえお話に走ったものであっても、商売に反映できるように、より歴史に根差した話の方が都合がいい。その程度は守って行かないと、自分の読書はただの暇つぶしとは違うから・・・。恰好つけて、ずいぶん長い間そう思っていた。苦労もしたけど、それはそれで得るものも多かった。おかげで、人の知らない変なことまで知ってるし。もちろん程度問題だけどね。実際、背景に裏付けのない話に偏見を持っていたのは確か。だけど、案外そうでもないんだよね。

それがこの手の時代もの。歴史的事実がどうのこうのって話じゃないけど、考証がしっかりしていれば、知らず知らずのうちに時代が身の内に染み込んでくるって言うか。馴染んでくるって言うか。まなじ、歴史と大上段から組み合ってみても、机にかじりついたっきりの学者肌の先生じゃ、人間通の作家さんには敵わない。所詮、歴史は人の営み。
角川春樹事務所  ¥ 626

美味しい料理と癒しに満ちた連作時代小説、新シリーズ開幕

『ほかほか蕗ご飯-居酒屋ぜんや』という題名が、私にとってはすでに卑怯。時代もので、なおかつ料理ものときては、私は手にせざるを得ない。話の中心にいるのが、〈居酒屋ぜんや〉の女将。この女将が、謎めいている割には可愛げたっぷりの若後家という設定。これまた卑怯。それを卑怯と口にした段階で、こちらはすでに虜にされている。作家さんの手のうちで転がされるのを快感とするようじゃ、今後は“変態おやじ”を看板に加えないと。

読むものに多少の変化があっても、受け取る側の私の肌が時代ものになじみやすい傾向にあるのか。それとも、作家の坂井希久子さんの書いたものだからそう思うのか。

ぜひ作家さんの腕に責任を押し付けたいところ。でなきゃ、この手の本を片っ端から読む羽目に追い込まれることになる。

〈ぜんや〉の常連の一人に又三がいる。本書最終章で語られる、又三の生い立ちが痛ましい。貧乏ゆえに、摘み菜をして飢えをしのいだ幼少期。それが理由の摘み菜嫌い。なかでも蕗はダメ。ま~るい葉をかき分けて摘み取ろうとすると、その茎に毛虫がびっしり。それ以来、蕗はどうも・・・。という又三。・・・それはまったく私のこと。何故か同じ記憶。蕗はまさしく毛虫の味。これを知ってるって、作家の坂井希久子さん、いったいおいくつなんだろう。

*青菜のお浸し
小松菜、春菊、三つ葉をさっと茹で、しょうゆで洗って、しょうが汁と柚子皮の風味でまとめる。

*のっぺい汁
かつお節の出汁で、大根、人参、里芋、ごぼう、油揚げ、干椎茸と戻し汁を入れてぐつぐつ煮込む。しょうゆで味を調え、葛でとろみをつける。わさびを添えて、溶かしながら・・・。

*蕗飯
蕗の茎を細かく刻んで炊き込む。胡麻塩で




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国連やNGO、他国による中途半端な「人道介入」が、戦争を終わらせるのでなく、戦争を長引かせる。

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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