めんどくせぇことばかり 本 その他
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『三体』 劉慈欣

自治会の仕事に、高齢の会員の方々に声をかけて、月に一度は集まって、体操したり、お茶会をしたり、なにがしかのレクリエーションを楽しんでもらえるように準備することがある。

自治会長になってから、隣近所の人たちに関心を向けることを、ようやく大事なことだと思えるようになってきた。・・・なんて言いながら、この高齢者向けの準備は、ほぼ全面的に連れ合いに任せてしまってるんだけど。

そんな取組の一環として、連れ合いが地元のボランティア団体に大正琴の演奏の鑑賞会を企画した。そんな話を聞いた時、最初に頭にあったのは、お琴の演奏にあるように、自治会館の座敷、上の方に斜に置かれたお琴の向こうに着物の女性が座り、演奏している姿だった。下座には隣近所の高齢者が座ってうっとり鑑賞するというイメージだ。夫婦というのは頭の構造や程度も似てきてしまうもののようで、連れ合いの頭の中にもほぼ同様の様子が描かれていたようだ。

そんなイメージのままボランティアを依頼したところ、先方は快く引き受けてくださり、当日は演者10人で来ていただけることになった。・・・10人で。

その10人の方々に、本日の午前中に来ていただいた。会は10時に始まり、前半1時間が体操の時間、後半1時間が大正琴の時間。私は体操の途中でおいで頂く方々をお迎えする役割だった。いらして頂いたグループの方々は、今日集まっている自治会の方々同様のご高齢の方ばかり。

座卓に大正琴をおいて、プラグでアンプにつなげて演奏するもののようだ。しかも、事前に歌詞カードが配られて、私たち聞く側も一緒に歌を歌う。大正琴の演奏会っていうのはこういうものだった。もちろん大きな声で歌った。

私にとって異次元とも言える、この日の出来事だった。
この、『三体』という本は、次元がどうのこうのという話が出てくるんだが、そういう話が出てくる部分は、どうしても私には退屈で仕方がなかった。コンピューターのプログラミングがどうのこうのという話も同様で、それがために、この『三体』という本の面白みを、おそらく私は半分くらいしか味わえていないだろう。・・・おそらく。


『三体』    劉慈欣

早川書房  ¥ 2,090

三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?
第一部  沈黙の春
第二部  三体
第三部  人類の落日


とっても壮大な話で、構想自体はきわめて興味深い。だから、かなり頻繁に現れる退屈な時間を我慢しながら、全体としての筋立ては楽しむことができた。

地球外知的生命体からのメッセージが送られてくる。かなり、忌々しいメッセージである。このメッセージに最初に接触したのは、葉文潔という女性科学者であった。葉文潔は、文化大革命の激しい内ゲバと壮絶な糾弾集会で、自らの尊敬する父親をなぶり殺されていた。

物語は、いきなり、その糾弾集会の場から始まる。その糾弾集会の忌々しさは、著者劉慈欣の小説家としての力を感じさせる。教え子が恩師を、子が親を糾弾集会の場に追い込むこの文化大革命と呼ばれる時代。物語の中では妻が夫を糾弾した。まさに狂気の時代であるが、1960年代後半から70年代前半を生きた中国人であれば、多かれ少なかれ、この狂気の時代をくぐり抜けた。

毛沢東が死んだからといって、容易にもとに戻れるものでもない。その後遺症は、まだまだこれから“中国”を苦しめることになるだろう。それが物語にも、色濃く反映されている。父をなぶり殺しにされた葉文潔は、人間の世の中に対して復讐を思いとどまることはなかった。それが、地球外知的生命体から送られてきた忌々しいメッセージと、忌々しく絡み合っていく。

文革が一段落ついた後、葉文潔は父に直接手を下した紅衛兵たちを呼び出した。当時、15歳ほどの小娘でしかなかった紅衛兵たちは、葉文潔が思っていたような、自分が過去にしでかした罪の重さに打ちひしがれた加害者たちではなかった。ここにもやはり、忌々しさがつきまとう。

この忌々しさこそが、重奏低音のように、物語全体をまとめ上げている。この『三体』は三部作の第一作で、重奏低音は最後まで鳴り止むことはないだろう。だから、この三部作の結末は、当然忌々しいものになる。

その結末に、文革の忌々しさにはとても耐えられない私は、耐えることができるだろうか。

ずい分前から、最新の科学知識が理解できないなんてことはもちろんのことながら、日常生活で目の前に登場する様々な機器さえ使いこなすことができないようになっている。

これまでのSF小説では、ここまで深刻に感じたことはなかったんだけど、この『三体』を読んで、危機感を新たにしている。今後は、SF小説を読むことが、退屈な長い時間になってしまうんだろうか。





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『たべたいの』 壇蜜

「色々思うところはあるけれど、まずは食べてみようじゃないか。そして思うことや過去の記憶を関連付けて毎週俳句とイラストで記していこうじゃないか。そして執筆代をもらおうじゃないか」

週刊新潮からの“連載のお願い”に、食べ物に対する情熱が低い上に、それほど造詣も深くないと自覚する壇蜜さんが、上記のような、どうも執筆代目当てとしか思われない動機で週刊新潮に連載で綴った《だんだん蜜味》というエッセイを一冊にまとめたのがこの本、『たべたいの」ということです。

干し草が 牛を通して 乳变化

納豆や 糸でも藁でも 縛られて

雨送り 代わりに迎える 水羊羹

ずいぶん前のことになりますが、日光白根に登って、その日は奥日光の、冬はスキー場になるそのゲレンデにテントを張りました。翌日は男体山を往復して、さらには日光東照宮に参拝し、歩いて駅へ向かう道の右側にある店で、水羊羹を買いました。

甘いものは、自分から進んで食べるわけじゃありません。連れ合いが、自分が食べたいもんだから、たまたまその場に居合わせた私を無視できずに声をかけてきます。そんなとき、以前は、「いらない」と言って、連れ合いを喜ばせておりました。どうも最近は維持が悪くなってしまったんでしょうか。それとも舌が変わって、甘いものを受け付けるようになったんでしょうか。「うん、食べる」と言うようになってしまいました。おそらく連れ合いは、ひどく落胆しているに違いありません。

その水羊羹は、ずいぶん前のことなので、私は食べておりません。

願えども オクラ星には 届くまい

冷ややかに 君急ぐなら ポークカレー

サプライズ 焼きナスまさかの カレー味

隠し味 萎びた林檎を すりおろす

さばカレー 極めに極めた 無国籍

サバ缶ブームは、少しは下火になったんでしょうか。火付け役が誰だったのか知りませんが、正直申し上げて、こんなにも迷惑な話はありません。若い頃から、このサバ缶は私にとって、とても安くて栄養価の高いおかずでした。それがなんと、このサバ缶ブームで、価格はおそらく倍になりました。たまに安いのが出てるかと思えば“中国”製。海産物に関しては、日本の海から持ち去った海産物を、なんで“中国”にお金を払って買い求めなくては行かないのかという思いが強く、どうしても買うきになれません。

ちなみに壇蜜さんが「試す勇気が出ない」というさばカレー。やはり缶詰で出ておりますが、私がこれを試さないのは、やはり価格の問題です。



新潮社  ¥ 792

男はざわつき、女は頷く魅惑の壇蜜ワールドへようこそ 中毒性大の食エッセイ!
一 納豆や 糸でも藁でも 縛られて
二 サプライズ 焼きナスまさかの カレー味
三 しばれ夜に グミと孤独を 噛み締めて
四 メキシカン サボテン漬けを 食べていた


壇蜜さんの文章を読むのははじめてです。

とても面白い文章を書くんですね。ものの捉え方が、とても常識的なことに驚いています。今の世の中は、常識的であることがとても珍しいっていう変な時代です。常識的であることは、実は非常識なことになっちゃってるんですね。

《「等身大」「女子力」「エンジンブレーキ」・・・これらは私が「いくら説明を受けても意味が分からないので、理解することを放棄した言葉」の一部である》とおっしゃいます。しかし、同時に、《仮に「女子力高い等身大のエンジンブレーキ」という話題になったら意識を失ってしまいそう》ともおっしゃってるので、その意味はあらかた把握しながらも、そんな世界に身を置きたくないという強い思いが、それらの言葉にアレルギー反応を起こしているんでしょう。

なにしろ、「女子力」に関わる微々たる知識をかき集めると、「はちみつレモン」に直結すると言うんですから、やっぱり分かっていてそういう態度を取るのが、見ていて気持ちいい。

名月の 艶と丸みを トロ見の夜

秋祭り 飴が糸引き 縁結び

半同棲 サンマが好きな ひとだった

女の子とデートをして、必死になってパスタの店に入りました。メニューを見て意外と庶民的な値段であることにホッとしましたが、ホッとした拍子に、そこに書かれていた納豆スパというのが食いたくなってしまったんです。いくらなんでも、まだこれからどうなるかわからないデートで、納豆スパを食べるわけにもいかず、どんな料理かさっぱりわからないスパゲッティを注文した記憶があります。・・・それが何だったかは覚えていませんが。

サンマが好きですが、やはり女の前で塩焼きにされたサンマを箸でさばいて、はらわたの部分を取り出して、そこに大根おろしを乗せ、醤油をちょっとたらして食べるっていうのは、少しスリリングにすぎるように感じます。同棲状態ならまだしも、半同棲という状態であっても、これは勝負どころってことになるでしょう。

そう言えば今年、いったんは一尾150円くらいまでなりましたが、また値段が上がってしまいました。連れ合いと私、二人とも、毎年秋ににサンマを食べるのを楽しみにしているのですが、今年はまだ二度しか食べておりません。目安は一尾150円です。

面白かったです。他にも壇蜜さんが書いたもの、機会があれば読んでみたいです。




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『邂逅の森』 熊谷達也

明治生まれの祖父は、最後は寝たきりの状態になって、介護にあたった祖母と母は大変でした。

自宅介護は何年間続いたんだろう。高校生の時にそういう状態になって、大学6年の時に亡くなったんだから、足掛け6年くらいかな。その多くがまったくの寝たきりでしたからね。

祖母は私が山登りすることに反対でした。遭難でもした日には、身上つぶれるくらいに思っていたようです。「見つかりやすいところで遭難しろ」みたいなことを言ってましたから。祖父はそうでもなかったみたいだけど、やっぱり心配はしていたようです。

高校で山岳部に入って本格的に山登りを始めたんですが、大学に入って上京し、いつだったか帰省した時の話です。一番奥にある祖父の部屋に行くと、祖父は以前にはなかったベッドの上に寝てました。その方が介護しやすいからだったみたいです。

祖父に声をかけて顔を覗き込むと、祖父は目を開けていました。再度、声をかけると、「・・・おう、どうした、・・・山は」と祖父が話し始めました。ちょうどその時、祖母がお茶を持って入ってきました。「山は、もうさみいだんべ」という祖父の言葉に、私はてっきり、山に登る私を祖父は心配しているんだと思いました。“大丈夫だよ”と口を開こうとすると、それよりも早く、「鉄砲撃ちが山にへえってるから、穴から出るな」・・・???

「おじいさん、なにゆってるん。**だで、**がけえってきたんだで」と祖母がいうと、祖父は「なんでえ、**けえ、おらあ、たぬきが遊びいきたんだと思ったでえ」と、驚いたような目を私に向けました。

驚いたのは、私の方です。

『邂逅の森』の主人公、松橋冨治は秋田県北部を流れる米代川の支流、阿仁川上流の打当の集落のマタギ。大正3年に25歳だから、私の祖父よりも12歳年上です。まあ、ほぼ同世代ですね。


『邂逅の森』    熊谷達也

文春文庫  ¥ 902

マタギとして成長する冨治は地主の一人娘と恋に落ち、村を追われる。直木賞の感動巨編
第一章 寒マタギ
第二章 穴グマ猟
第三章 春山猟
第四章 友子同盟
第五章 渡り鉱夫
第六章 大雪崩
第七章 余所者
第八章 頭領
第九章 帰郷
第十章 山の神


冨治はマタギという仕事に自信と誇りを抱けるようになった頃、地主の一人娘と恋に落ち、村を追われ、マタギという仕事も失ってしまいます。鉱夫という仕事で生きて行かざるを得なくなる冨治だが、マタギという仕事に自信と誇りを持ってやってきた経験は、鉱夫の世界でも確実に生かされていきます。

鉱夫の世界で悲しい別れや大きな事故を経験し、やがて冨治は、マタギの世界に戻っていきます。そして、村を追われて以来、失われてしまった自分の人生を、取り戻していくことになります。

その冨治も時代の移り変わりの中で、マタギを続けることに疑問を抱くようになります。その問いに答えるように、彼の前に山のヌシである巨大グマが現れます。

一人の人間の仕事人生を考えてみれば、多くの場合、まずは目の前にある仕事を一生懸命にやっていくということだと思うんです。本気でやっていけば、どんな仕事でも誇りを持ってやっていくことができるようになるんだろうと思います。その誇りを持った仕事を生涯通していけるとしたら、これは幸せなことでしょう。

冨治にとってマタギという仕事は、まさにそういう仕事だったわけです。しかし、時代の移り変わりの中で、マタギという仕事も移り変わっていきます。その中で冨治も迷うわけです、迷う冨治を試すように“ヌシ”は現れるわけです。

冨治が村を追われたのは、地主の一人娘と恋に落ちたからですが、冨治が娘に夜這いをかけたんですね。実は、祖父母の話なんですが、祖母は祖父のことが好きで、どうしても一緒になりたかったんだそうです。それが、他の男と一緒にされそうになって、それが嫌で秩父から行田に逃げたんだそうです。

行だと言えば足袋。その頃はとても豊かな街だったんだそうですが、そこに何らかの縁者がいたようです。とにかくよっぽどだったみたいで、無事祖母は祖父に嫁いで、四男三女に恵まれます。

祖母がそこまで祖父にこだわったのは、やっぱり祖父は、祖母に夜這いをかけていたんでしょうか。




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『ガンプラ凄技テクニック』 林哲平

本日発売!

先日、毎月28日に川越の成田山別院で行われる蚤の市に行ってまいりました。

土曜日ということもあって、大変賑わっておりました。半年ほど前、長男のお嫁さんをもらいに大阪に行く機会がありまして、その際、帰りに京都によって、立体曼荼羅を見ようと東寺に行ったんです。三〇年くらい前、一度、それを目当てに寄ったことがあったんですが、期せずしてその日は三月二一日、蚤の市が立つ日だったんですね。

そこで連れ合いは大好きな黄色い着物と、九谷焼の獅子を見つけ、上気した顔で「どう思う?」っていうんです。もはや留めるすべはないじゃありませんか。着物は自分なりに仕立て直して、お獅子は玄関に鎮座ましましてます。

川越で蚤の市が立つ日があるというのは、おそらく連れ合いも知っていたんですが、自分からは言い出しにくかったのかもしれません。私から水を向けると、「じゃあ、行こう」、「すぐ、行こう」ということになったわけです。

会場の成田山別院に着いたのは九時。とりあえず、一〇時に山門で合うことにして中に入りました。私は鉈や魚籠、竹製のかごなんかを見つけましたが、しっくり来るものはなく、三〇分ほどで見終わってしまいました。

ちょうどその頃、連れ合いにあったんですが、すでに丸々膨れ上がったビニール袋をかかえています。着物のたぐいのようです。私に気づくと、「一〇時じゃなくて、一〇時半にしよう」と言って雑踏に消えていきました。



ホビージャパン  ¥ 1,620

週末だけでもカッコいいガンプラが作れる究極テクニックガイド
つくる前に知っておきたい揃えておきたいオススメ工具17選
MGザグ・キャノン×砂漠ウェザリング
MG量産型ズゴック×水垢ウェザリング
MGジム・スナイパーカスタム×宇宙ウェザリング
MG量産型ゲルググVer2.0×バトルダメージ
MG RX-78-2ガンダムVer.2.0×フレームモデル
MGザグⅡVer.2.0×湿地帯
MGギラ・ドーガ×冬季迷彩
RE/100ガンダム試作4号機 ガーベラ×スプリッター迷彩
MGユニコーンガンダム3号機 フェネクス×メッキウェザリング
MGギャン×エングレービング
MGジム・スナイパーⅡ×ガンダムアメイジングレッドウォーリア
MGジム ジオン鹵獲仕様「CMS03Jゲム0082北アフリカ」
RE/100ハンマ・ハンマ×らいだ~Joe風塗装法
MGセカンドVダッシュガンダム
MG RX-78-2ガンダムVer.Ka×セイラマスオ風ディテールアップ&塗装法


そこから一時間、私は少しでも興味の持てるものを探して、市の中をさまよいました。、

歩いてみると、それがあるんですね。昔遊んだメンコやベーゴマ、あとは物置にあったような農機具とかね。唐箕なんかもあって、丹念に見ていくと結構時間を費やすことができました。

そういえば母が言ってました。田舎の物置を物色に骨董屋が回ることがあるらしいんです。「アイツラは泥棒みたいなもんだ」

だまって物置に入って物色しているんだそうです。母が見咎めると、お金を渡して目についたものを持っていこうとしていたそうです。隣の“ワケーシ”に声をかけて追っ払ってもらったって。

それを思い出したら、そこにあるものが、同じようにして持ってきたもんに見えてきて、とてもじゃないけど買おうかという気持ちにはなれなくなってしまいました。

メンコのことは、私の在所では“パース”って呼んでいたんです。どういうわけだか知りませんが、ずいぶん持ってたはずなんですが、母がなんかの際に頼んだ職人にせがまれて、みんなくれてやったっていうんです。レコードもくれてやったって言ってました。レコードと一緒にステレオもくれてやったって言ってました。求められるとなんでもやっちゃうんです。だったら、骨董屋に売ったほうが良かったんじゃないでしょうか。

そういう母なんです。もうずいぶん前に亡くなりましたけど。

私が子供の頃には、ガンダムというのはありませんでした。もしもあったら、のめり込んでいたでしょうか。

そんな、ガンダムに謂れも曰くもない私が、なぜこの本を取り上げたのかと言うと、この本の著者、実は私の縁者なんです。それもかなり近しい・・・。そんなわけで、どうぞよろしくおねがいします。

何がお願いしますなのか、よく分かりませんけどね。




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『ガラリ一変! 競馬の見方』 西内荘

京都の淀競馬場には一度しか言ったことがありません。

1992年10月10日のことでした。私と大先輩のI氏、後輩のK氏とともに、生徒を旅館から送り出したあと、いそいそと祇園四条駅から京阪本線に乗り込みました。メインレースまで見られないのは残念ですが、その前に競馬場を出れば生徒の帰着前に旅館に帰れます。旅館は新京極にありましたので、乗換なしの一本で帰れるのが嬉しいですね。

この日は9Rに3歳オープンのもみじステークスってのがあったんです。当時は確か、2歳オープンっていうふうに言ってたと思います。朝日杯の前哨戦みたいなレースですね。

すごい固いレースで、お金持ちのI氏だけが金に物を言わせて的中させました。一着に入ったビワハヤヒデはデビュー二戦目ながら堂々の一番人気で、好位から差し切りの強い勝ち方を身に着けているようなレースでした。この時は、ビワハヤヒデばかりが記憶に残ったんですが、あとから考えると、このレースに出ていた馬たち、その後、大活躍してるんです。

二着に入ったシルクムーンライトは、テレビ西日本北九州記念でG3のレースを制しています。三着のマーベラスクラウンはジャパンカップを制したG1馬。六着のテイエムハリケーンはもみじステークスの前に札幌3歳ステークスというG3を制していて、それ以降のグレード勝ちはないもののオープン馬として活躍しました。八着のマヤノギャラクシーは、障害に転向してグレードレースを制しています。あとから、「おいおい、あの時、淀で走ってた馬だ」ってのがしばらく続きました。

生徒にも競馬の話はたくさんしました。ライスシャワーと的場均騎手の話や、サイレンススズカと武豊騎手の話。どちらも、馬はレース中の故障で予後不良と判断され安楽死処分がとられました。そんな悲しい話の中にある、馬と人の結びつきとかを話した覚えがあります。それから、競馬にかかわって生活している人たちの話なんかですね。中にはそれらの中に、運命的な結びつきであるとか、レースがあるじゃないですか。そういう話です。

世界史の話は眠くなるらしいんだけど、そんな雰囲気が現れると、馬の話だの、山の話だの、怖い話をして、目を覚まさせてましたね。



東邦出版  ¥ 1,620

ディープをはじめ、数々の名馬を支え、救ってきた”カリスマ装蹄師”西内 荘の仕事がここに
第1章 競走馬の装蹄とは
第2章 アメリカ修行と接着装蹄
第3章 装蹄師の1週間
第4章 担当馬たちが教えてくれたこと
ダイユウサク メジロマックイーン フジヤマケンザン シーキングザパール
アグネスワールド ステイゴールド シーザリオ シンハライト 
ヴィクトワールピサ ブラックタイド ディープインパクト
第5章 競走馬のヒヅメの病気とケガ


著者の西内荘さんは、“カリスマ装蹄師”と呼ばれる人だそうです。あの細い足で400キロからの身体を支え、60キロ以上のスピードで走るんですから、馬の足回りを預かる装蹄師っていうのは、競馬界にとっても非常に重要な存在なんですね。

蹄鉄の素材もずいぶん替わったんだそうです。通勤途中に乗馬場があって、よく柵越しに馬を見ていました。「やってみませんか」って声をかけられたんですが、当時は股関節が駄目だった頃で、馬は乗れませんでした。でも、馬には触らせてもらいました。蹄鉄をもらって帰って、重り代わりに学校で使ってました。

素材が良くなったことに加えて、西内さんら装蹄師の努力で、ずいぶん馬の足回りに関わる状況も良くなっていったようです。

そうですねぇ。第四章の馬たちの名前も、とても懐かしいですね。ダイユウサクは装蹄師の仕事のやりがいのある馬だったようです。1991年のあの有馬記念。一番人気のメジロマックイーンを抑えて一着に入ったのは、「あっと驚くダイユウサク」でした。メジロマックイーンも西内さんの担当馬だそうですが、足元の弱いダイユウサクを立て直したのは西山さんだったそうです。私、馬券を買ってました。儲かりました。ありがとうございます。

1993年の天皇賞で、ライスシャワーがメジロマックイーンを抑えて優勝しましたが、このときも馬券を買ってたんです。・・・ライスシャワーをね。

どうやら、メジロマックイーンは負けるべくして負けたということのようです。メジロマックイーンは、あの頃、小さな骨折をかかえながら走っていたそうです。走ること自体には問題ないという状態だったそうです。柔らかい馬場なら何事もなく走れるけど、パンパンの良馬場だと馬が不安を感じて全力を出せなかったんだそうです。それでも二着に入るんだから、マックイーンはすごいと言ってますが、マックイーンが二着に来たことで、馬券は安くなってしまいました。

それから、ブラックタイドとディープインパクトの関係も面白いですね。ブラックタイドはディープインパクトの全兄で、かつキタサンブラックの父親ですね。種牡馬としてのディープは、すでに盤石の地位を築いてますが、これからはブラックタイド産駒をさらに注目していこうと思います。





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『龍の棲む家』 玄侑宗久

猫のミィミィが死んで、今週土曜日で一ヶ月経ちます。

最初の兆候は、水を器が空になっていることに気づくようになったことです。
「最近、よく水を飲んでない?」
「急に水ばかり飲むようになったら、危ないって聞いてるけど」
そんな会話をしてまもなく、食べる量が減りました。最初は餌にあきたのかと変えてみたり、さらに食が細くなったのでグレードを上げてみたり、今まで考えても見なかった缶詰などの餌を試してみたりしました。そしてそんなことをしているうちに、なんにも食べなくなってしまったんです。

でも、ミィミィは食べる量が減るようになってから、ひと月近く頑張ってくれました。今は、私たち夫婦が一番良く使っている部屋から、窓を開ければ見える場所に眠っています。

夫婦で最後まで看取ると覚悟を決めてからは落ち着きましたが、最初はミィミィの変調を受け入れられず、あたふたしました。死なれてみれば、これは食べないか、あれならどうかと買い集めた猫の餌が残されています。

仕方がないから、目につくものから処分して、あまり使いもしなかった猫タワーも分解しました。最後に残ったのが猫用のケージです。ミィミィはなにかあると、すぐこのケージの三階に逃げ込んでました。

そのケージを、山の道具置き場に使うことにしました。あちこちに点在した山道具をかき集め、猫ケージにまとめることにしました。けっこういい感じになりました。

そんな過程で、押入れだの天袋だのを引っ掻き回す中で、この本を発見しました。認知症になった父親の介護をテーマにした本です。玄侑宗久さんの、すっと心に入ってくるような文章が好きで買いましたが、介護をテーマにした本であることが分かって、身につまされて、読めなくなっていた本でした。


『龍の棲む家』    玄侑宗久

文春文庫  ¥ 時価

呆けた父と暮らすことになった幹夫は介護に詳しい佳代子と出会い、新しい世界を知る
父が痴呆症で徘徊をするようになった。ミサコという人を探しているらしい。記憶が断片になり、ある時は小学生、ある時は福祉課の課長にと次々変身する父に困惑する幹夫。だが介護のプロの佳代子に助けられ、やがて父に寄り添うようになり、ともに変化してゆく。無限の自由と人の絆を、美しい町を背景に描く。


身につまされたと言えば、お分かりですね。うちにも、龍がいたんです。

文庫が出たのは二〇一〇年です。二〇一〇年といえば、私たち夫婦は四人の親のうち三人までを見送っておりました。最後に残ったのが連れ合いの父親です。一四年前に連れ合いの母親が亡くなったときには、すでに認知症の症状が進んでいる状態でした。二〇一〇年といえば、どうにもならない所まで来て、私たち夫婦が追い詰められた思いになっている頃でした。

そんなわけで、押し入れの肥やしのような状態になっていましたが、そんなこの本も今なら読めそうです。連れ合いの父親は、一年半前に亡くなりました。

物語は、主人公の幹夫の父親が認知症が明らかになった頃から始まります。自由な立場の幹夫は、長男の哲也から父親の面倒を見ることを依頼され、それを受け入れます。父親は、時に徘徊をします。生き場所は決まって龍が淵公園。幹夫はただ黙って、その徘徊に付いていきます。そこで、二人は、一人の女声にめぐり逢います。それが、認知症患者の介護に詳しい、介護士経験のある佳代子でした。

幹夫は、父の認知症の症状の変化に戸惑います。それを佳代子が支える形で話が進みます。しかし、佳代子も、介護士としての過去に、大きな問題を抱えていました。

認知症の症状が、少しずつ進んでいく父親。その症状の変化に戸惑う幹夫。幹夫の父親の介護を通して自分の過去と向き合おうとする佳代子。困難に直面しながらも、認知症を人の自然な帰結の一つと二人が受け入れていく様子が心地良い。

身近な者が認知症であることが分かる前にこの本を読んでも、分からないかもしれません。一番のタイミングとしては、身近な者が認知症であることが分かったころに、ちょうどこの本に出会えればいいでしょうね。

私は一度、夜中に便を漏らしたて廊下に佇む連れ合いの父親に、舌打ちをしてしまったことがあります。あの時の父の悲しそうな目が、今でも忘れられません。




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『まつらひ』 村山由佳

《恋愛と官能小説の第一人者》なんだそうです。・・・そう、この『まつらひ』の著者の村山由佳さんという作家さん。

どんな作家さんが人気があるかってことに疎いので、やはりこの本も作家さんで選んだわけではありません。選んだ理由は、『まつらひ』という題名です。

まつらふ 
「奉る・祀る」の未然形に継続の接尾語「ふ」の付いた形。柳田國男はこれを「祭」の語源であるとした。

様々な地方の祭に絡んだ男と女の短編小説集であるこの本の冒頭、物語が始まる前に、上のように書かれています。古い時代の信仰のあり方に興味があったんです。

神に供物や踊りなどの行為を捧げて豊穣を感謝する。または、大地の神、海の神、火の神など、荒ぶる神々を鎮めるために行われますね。そんな祭の夜、男と女が一線を越えるのは、不思議な話ではありません。なにしろ神さまに喜んでもらわなきゃいけないわけですからね。男と女の交わりが嫌いな神さまは、いないでしょ。・・・日本にはね。

神さまがそれを好んで歓喜してくださるなら、どうして人間の男女が抗うことができるでしょうか。


『まつらひ』    村山由佳

文藝春秋  ¥ 1,620

次々に問題作に挑んできた恋愛と官能小説の第一人者が、多様な〝性〟を描きつくす
夜明け前
ANNIVERSARY
柔らかな迷路
水底の花
約束の神
分かつまで


女の人の書く官能小説か。

最近は、官能小説を読む機会そのものが減少しておりますが、決して嫌いなわけではありません。いや、好きです。すでに中学の頃から、手を変え品を変え、感のいい母親の目をあざむきつつ、みだらなお話を喜んでおりました。

でも、それらは、いずれも男の立場で書かれた官能小説で、この本のような女の目線で書かれた官能小説というのは読んだことがありませんでした。

そうかあ、女はセックスの時、こういう風に感じるものなのか。

そんなことを思いながら読みました。早くこういう立場から書かれた官能小説を読んでおけばよかったです。そうすれば、もう少し女の人を思いやってセックスできたかもしれません。・・・もちろん、連れ合いのことですが。

官能小説がお祭りを背景に書かれるのは、おそらく自然なことなんでしょう。その時、男の血はたぎっているからです。もともと、祭というのは、そういう時間だったんだろうと思います。

たとえば盆踊りというのは、盆帰りした先祖を踊りによって供養し、おそらく先祖も一緒に踊ってるんですね。盆踊りというのは不思議なもので、海外のダンスのように、手足の接続がおかしくなってるんじゃないかというような、複雑な動きを求められることはありません。単純な動作の繰り返しですね。ところが、単純な動作を繰り返すうちに、身体のうちからふつふつと、熱いものが湧き上がってくるんです。

その時、その輪の中に見初めた女が、あるいは男がいれば、その手を引いて、その輪から抜けていくんですね。もともとがぼんぼりくらいの薄明かりの中の話ですから、誰がいなくなったってわかりゃしません。ご先祖さまも、それを喜んでいるに違いありません。いやいや、ご先祖さまも、誰かの手を引いて暗がりに溶け込んでいるかもしれません。

私の故郷の一番のお祭りは、“夜祭”と呼ばれる夜の祭で、山の龍神と神社の妙見菩薩が、一年に一度、お祭りの夜に逢瀬を楽しむという言い伝えがあります。お祭りが近づくと、徐々に血のたぎりを感じるようになります。お祭りの日ともなれば、それはもう抑えの効くものじゃなくなります。夜祭は、逢瀬の瞬間に向けて、関わる人たちの思いを高めていきます。そしてその時を迎える頃、興奮は頂点に達します。

お祭りが終わり、血のたぎりだけが残されます。その時、誰かが隣りにいたら・・・。




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『砂塵の掟 オッドアイ』 渡辺裕之

《“オッドアイ”朝倉俊暉シリーズ》と呼ばれるシリーズ物なんだそうです。

“オッドアイ”というのは、虹彩異色症と呼ばれる疾患のことだそうです。頭部への打撃による後遺症で眼球中の虹彩と呼ばれる組織に含まれるメラニン色素が減少し、つまり、黒目が黒くなくなってシルバーの瞳になってしまうもののようです。それゆえに、異相を抱えることになった男が朝倉俊暉、このシリーズの主人公です。

朝倉は、陸上自衛隊のエリート特殊部隊員として将来を嘱望されながら、“オッドアイ”となってしまった負傷をきっかけに警察官に転身します。そして、折から防衛問題に直結する自衛隊絡みの事件に臨む、特別な捜査組織が結成されます。その経歴から、防衛省と警視庁の双方から選抜されたチームである特別強行捜査班のチームリーダーに抜擢されたのが“オッドアイ”朝倉俊暉という筋立てです。

たまに読みたくなるんですね、この手の痛快活劇ってやつが。読んでみて、やはり“痛快”でした。“痛快”ではあるものの、それだけでは済まされない問題点っていうのを、物語の中に織り込んでいますよね。それだけでは済まされない問題点がなければ、物語にならないのか。

この物語の中では、日米地位協定と言うやつです。

アメリカに流入する麻薬の大半を仕切るメキシコの麻薬カルテルと、アフガニスタンで軍事活動を継続する米軍内部に巣食う麻薬組織が、沖縄で交錯する。筋立てとしては、アフガニスタンで生産される麻薬にアメリカ市場を脅かされることを恐れたメキシコ麻薬カルテルが、沖縄で米軍内部の麻薬組織との戦いを始め、それに日本の特別強行捜査班が関わっていくっていう話になる。

その中で、日米地協定により、事実上、日本がアメリカの属国という地位に置かれているってことが、いろいろな形で明らかにされるんですね。


中央公論新社  ¥ 1,944

元自衛官の警察官が活躍する「オッドアイ」第6弾は、シリーズ最大の問題作!
フェーズ 0 夏至夏風
フェーズ 1 召喚
フェーズ 2 NCIS
フェーズ 3 チーム始動
フェーズ 4 紛争地へ
フェーズ 5 タリバン
フェーズ 6 脱出
フェーズ 7 砂塵の掟
フェーズ 8 第三の男
フェーズ 9 弾薬庫地区
フェーズ10 原生林の死体
フェーズ11 正義の代償
フェーズ12 K島にて

日米地位協定は、かつて、明治の日本が改正を目指した条約と同様に、不平等な条約であることは間違いありません。かつて沖縄は、米軍に直接統治、支配されました。これは、戦争の結果として、アメリカに取られていたわけです。昭和四七年の沖縄返還で、沖縄は日本に返還されました。沖縄県民は、埼玉県民と同じように、日本国民です。米によって差別されている実態は、沖縄県民も埼玉県民も変わりありません。

そのように差別されるのは、戦争でアメリカに負けたということの代償です。でも、同じように第二次世界大戦で敗北したイタリアやドイツは、アメリカや周辺国から差別されているわけではありません。

その違いは、やはり人種を持ち出すしかないでしょう。日本は、二〇世紀初頭まで盤石であった白人支配の世界秩序を、完全に崩壊させてしまったんです。そんな日本を、自分たちと同じ地平で平等に扱うなどありえない。日本は世界で唯一、アメリカに差別されて当然の国家なんです。

沖縄は、米軍の戦略上、多くの基地が残されました。そのため、日米地位協定の不平等性が、あからさまに見えてしまっています。アメリカによる差別が、基地を見るたびに思い知らされるわけです。そのことに埼玉県民が鈍感であるならば、「何だそんなに鈍感なんだ」と沖縄県民は、当然のように思うでしょう。

アメリカによって差別されているという実態は、本来、沖縄県民と埼玉県民の間で共有できるはずのことです。


この間、北方領土を戦争で取り返したい国会議員の方がいましたね。軽薄で、周囲に迷惑をかけるだけの発言であるけれど、腹の中にそのくらいの気概がなくて、北方領土は絶対帰ってこないです。拉致被害者も帰ってこないです。経済でも政治でも軍事でも文化でも、力のないやつの話なんか、誰も聞いてくれないです。それはアメリカに対してもそう、変わりませんよね。




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『月とコーヒー』 吉田篤弘

朝ごはんを食べたあと、しばらくしてからコーヒーを淹れるんです。そして、コーヒーを傍らにおいて、パソコンに向かいます。そう、今まさに、私の向かうパソコンの傍らから、コーヒーのいい香りが漂っているんです。

アマゾンの紹介によれば、この本の著者吉田篤弘さんは、人気の作家さんだとか。私は本を読むことが好きですが、それに関わる周辺の情報っていうのは、本当に疎いんです。今、どんな作家さんが人気だか知ってれば、その分だけ面白い本に巡り会える可能性が高くなるのにね。

もちろん、追いかけた、あるいは追いかけている作家さんもいるんですよ。面白い作家さんを、そうと認識するまでに、ちょっと時間がかかっちゃうんですね。ボーっとしてるから。

だから、この本も、作家さんの人気で選んだんじゃありません。選んだ理由は、もっと単純です。本の見た目が、とても素敵だったからです。

やっぱりそうじゃないですか。素敵な女の人だなあ。ついて行っちゃおうかなあ。なんて、そんなことを考えるときって、女の人の見た目に惹かれているわけで、その段階で内面がどうのなんて、わからないじゃないですか。

つまり、この本は“素敵な女の人”だったんです。その素敵な女の人に、私はついていきました。すると、素敵な女の人は、小さな喫茶店に入っていきました。ほんの少し間をおいて、私もその喫茶店に入りました。ところが、さっと店内を見回しても、素敵な女の人が見当たりません。私はやむを得ず、道路に面した窓際の席に座りました。私は、今日もなにも起きなかったことに少しがっかりし、少し安心しました。この喫茶店でコーヒーを飲んで帰ろう。

「いらっしゃいませ。何になさいますか」と、注文を取りに来たのは、素敵な女の人でした。


徳間書店  ¥ 1,944

寝る前の5分間、この本をめくってみてください。必ずお気に入りの1篇が見つかるはずです
甘くないケーキ
黒豆を数える二人の男
白い星と眠る人の彫刻
ジョーカーのサンドイッチ
ミヤンザワ・キートン
バナナ会議
鳴らないオルゴール
美しい星に還る人
熊の父親
三人の年老いた泥棒
セーターの袖の小さな穴
マーちゃんの眼鏡
映写技師の夕食
アーノルドのいない夜
隣のごちそう
青いインク
カマンザの朝食
世界の果てのコインランドリー
空から落ちてきた男
青いインクの話の続き
つづきはまた明日
冬の少年
二階の虎の絵
ヒイラギの青空


予定調和しか収まりようがないならば、なにかに意味を持たせる必要はないでしょう。もちろん、私だって調和を求めますよ。だけど、それが予定されたものっていうのはつまりません。何でもかんでも予定調和に筋道を持ち込むために、本当はもっと身近にいた神さまは、とてつもない創造神、唯一神にまで祭り上げられてしまいました。

だったらいっその事、調和しないことも恐れない。いや、調和してほしいけど、すべては神様の思し召しなんて言われるくらいなら、調和しないこともやむを得ない。

この本に収められている二四の短編は、いずれも終わらない物語です。「これで終わりなの?」っと、ちょっと首を傾げたくなるような話ばかりなんです。あとがきを見て、ようやくわかりました。著者は、“そういう話”を書いていたのです。

《一日の終りの寝しなに読んでいただく短いお話を書きました。先が気になって眠れなくなってしまうお話ではなく、あれ、もうおしまい?この先、この人達はどうなるのだろうーと思いをめぐらせているうちに、いつのまにか眠っているというのが理想です。》

残念ながら私は、“あとがき”は、あとから読んだので、昼間、この物語の大半を読んでしまいました。あれ、もうおしまい?この先、この人達はどうなるのだろうーって考えているうちに、昼寝をしてしまいました。

そして今、私の心の中には、二四の“あれ、もうおしまい?この先、この人達はどうなるのだろう”が、それぞれの輪郭がぼやけて、なんだかぼんやりした大きな総体になって、私の心を温めてくれているような気がします。

《月とコーヒー》という題名の短編は含まれていません。なぜ、この本の題名が、《月とコーヒー》なのか。二四の短編を読んだあと、“あとがき”で納得できるでしょう。




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『敗者の生命史38億年』 稲垣栄洋

息子が理工学部、しかも物理学科を選んだときは、私は本当に驚いた。

なにしろ私は根っからの理科音痴。面の皮を何枚めくってみても、理系の取っ掛かりさえ出てこない。「なんで?」って聞いたら、彼が中学生の頃、私が買ってきて読んだ本が面白かったって。そこから理科に興味が湧いたってことらしい。
う~ん、なんだろう。私が理系の本なんか読むはずがない。内容を聞いてみたところ、「どうも、この本のようだ」ってのが思い当たった。『空想科学読本』・・・私は決して理系の本として読んだわけではなかったんだけど。
この本に触発されて科学に興味を持った息子は、今は自動車部品メーカーの技術屋として働いている。きっとそのうち、夢も希望もある自動車が世の中を席巻することになるだろう。

さて、この本。『敗者の生命史』と、歴史の“史”がついているものの、著者の稲垣栄洋さんは農学部の先生で植物学が専門みたい。つまり、理系の先生。[近現代日本]、[近現代東アジア]、[近現代世界]、[日本 思想]、[世界 思想]とかって、いろいろと本の分類を作ってあるんだけど、この手の本にふさわしいものはない。仕方がないので、[本 その他]に分類。[理系]とか作ってみたところで、この本が最初で最後になる可能性もある。

とは言うものの、面白かったな~。もちろん、理系音痴を悩ませる言葉が並ぶところは読み飛ばしてしまったけどね。読み飛ばしておいてこういう言い方もなんだけど、読み飛ばしても、ちゃんと面白く読めるんだからすごいね。

原始的な生命体が、植物と動物に分かれていくところなんかすごかった。共生っていうの、本当にすごいね。もとは独立した生命体だったものが、他の生命体の細胞に取り込まれて、その中で生きるってね。葉緑体を取り込んだのが植物として進化していって、ミトコンドリアを取り込んだのが動物になっていく。植物は自分で栄養を作り出せるから、動物みたいにチョロチョロ動き回る必要はなかったって、そういう物の考え方、したことがなかった。



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悠久の生命の歴史の中では、最終的に生き残ったのは常に敗者の方であった
プロローグ 敗者が紡いだ物語‒‒‒‒‒38億年前
競争から共生へ‒‒‒‒‒22億年前
単細胞のチーム・ビルディング‒‒‒‒‒10億~6億年前
動く必要がなければ動かない‒‒‒‒‒22億年前
破壊者か創造者か‒‒‒‒‒27億年前
死の発明‒‒‒‒‒10億年前
逆境の後の飛躍‒‒‒‒‒7億年前
捲土重来の大爆発‒‒‒‒‒5億5000年前
敗者たちの楽園‒‒‒‒‒4億年前
フロンティアへの進出‒‒‒‒‒5億年前
乾いた大地への挑戦‒‒‒‒‒5億年前
そして、恐竜は滅んだ‒‒‒‒‒1億4000万年前
恐竜を滅ぼした花‒‒‒‒‒2億年前
花と虫との共生関係の出現‒‒‒‒‒2億年前
古いタイプの生きる道‒‒‒‒‒1億年前
哺乳類のニッチ戦略‒‒‒‒‒1億年前
大空というニッチ‒‒‒‒‒2億年前
サルのはじまり‒‒‒‒‒2600万年前
逆境で進化した草‒‒‒‒‒600万年前
ホモ・サピエンスは弱かった‒‒‒‒‒400万年前
進化が導き出した答え
あとがき 結局、敗者が生き残る


だいたい、題名、この『敗者の生命史』っていうのが、けっこう理系音痴の心をそそる。見事なもんだ。敗者こそが旅に出るんだね。負けたからさ、そこでは生きていかれないわけだ。だから旅に出る。

鮫みたいな強いのは、旅には出ないのさ。ただ、君臨していればいいからね。負けた魚は強い奴らが行かない場所に旅に出る。そこが川の河口、汽水域だったんだそうだ。浸透圧で体の中が薄まっちゃうから、ウロコを持ったんだって。ウロコで水が入ってくるのを防いだんだって。さらに腎臓を発達させて体内の塩分濃度を適性に保って真水の中でも生きられるようになったいったんだそうだ。つまり川魚になっていくんだ。

そして次の大きな変化は骨。ミネラル豊富な海から川に登るには、カルシウムなどのミネラル分を体内に蓄積しなければならない。それを蓄積する機関が骨なんだそうだ。この骨が魚たちに敏捷性を与えた。

川に行けば行ったで、そこにも戦いはあって、負けたやつはまた上流へ登る。なかには、どこに行っても食われるなら、いっそ海に戻って食われてやるとばかりに海に戻ったやつもいる。でも、川の、それも上流で生存競争を戦った彼らは、海のライバルにはない俊敏性を身に着けていた。

面白い。

さらには、その上流に追い詰められていった奴らの中から、陸上に上がるやつまで出てくることになる。

ううっ!ご先祖さま!

もはや、ここまで来ると、涙なしには語れない。だってさ。人間はアフリカで生まれて、旅に出たわけでしょう。旅に出たのは、生き残るためでしょう。生存をかけて敗れたものは、生き残るために旅を続ける。遠く離れた、この日本列島に生きるものとしてはさ、やっぱり涙なしには語れない進化の歴史だな。


面白かった。こういう本は読み慣れていなかったけど、自分には無理って敬遠するのはやめにしよう。自分の中の新しい興味が引き出されるかもしれない。うちの息子みたいなパターンもあるしね。とんびが鷹、瓢箪から駒、塞翁が丙午。なにがどんなことに繋がるかは、それこそ私なんかの想像の外のこと。



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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本
































































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