めんどくせぇことばかり 本 山
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『日帰り山あるきベスト130』

関東周辺を8エリアに分け、入門から初級、中級者が日帰りで登れる山を紹介したハイキング・登山ガイドの決定版。日本百名山、富士山展望の大パノラマ、花や森と出会える、湿原や湖がある、初心者や子ども連れでも不安なく登れる、駅から駅へと歩ける、ステップアップのために登っておきたい、など、魅力ある130コースをセレクト。登る人のレベルで選べ、年間を通して使えます。これから山あるきをはじめたい人や、久しぶりに山を再開しようという人はもちろん、入門・初心者を同行するリーダーにも必携の一冊。

山岳部で山を始めて、もともとは集団登山に慣れ親しんでいた。訳あって、しばらくやめていた山を56歳で再開した。59歳で仕事をやめて一人で山を歩くようになると、その気楽さにどっぷりつかってしまった。

それ以来、63歳の現在まで、ずっと一人で山歩きを続けている。最近、人にあわないコースを好んで選んでいる自分に、ハッとすることがある。もともと、意識しないと独善に流れやすい性格である。最近ちょっと、まずいと思っている。協調性が、どんどん失われていっている気がする。

地元に登山愛好会がある。入会しようかと考えている。

このブログの名称通り、根っからの面倒くさがりや。だけど、山に行くっていうのは、準備がとても面倒くさいもの。そんなわけで、さして準備のいらない、慣れ親しんだ地元の山を歩くことが多い。でも、ドキドキ感も欲しいから、ついつい変なルートに入り込む。かつて使われていた、古い道を探索するのも楽しい。

それも、地元の奥武蔵だけでは、そろそろ厳しい。歩き尽くした感がある。

この本は、関東周辺を八つのエリアに分けて、日帰りに使えそうなコースを紹介している。たとえばその中で、奥武蔵・秩父からは19のコースが紹介されている。

これを使って、地元をあとにして、新しい登山を見つけよう。


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JTBパブリッシング  ¥ 2,090

関東周辺の山々から、日帰りで楽しむことの出来る130コースを収録
★奥多摩・高尾・陣馬
・御岳山 ・大岳山 ・御岳山・日の出山 ・青梅丘陵 ・高水三山 ・本仁田山 ・御前山 ほか
★中央線沿線・奥秩父・八ヶ岳周辺
・坪山 ・百蔵山 ・高川山 ・菊花山・御前山 ・甲州高尾山 ・弥三郎岳・昇仙峡 ・西沢渓谷 ほか
★丹沢・道志・神奈川
・弘法山 ・大野山 ・大山 ・塔ノ岳 ・鍋割山 ・日向薬師・飯山観音 ・鳶尾山・八菅山 ほか
★富士・箱根・伊豆
・石割山 ・三ツ峠山 ・足和田山(五湖台) ・パノラマ台 ・十二ヶ岳 ・長者ヶ岳 ・富士山宝永山 ほか
★奥武蔵・秩父
・天覧山・多峯主山 ・日和田山 ・大高取山 ・仙元山 ・官ノ倉山 ・大霧山 ・越上山 ほか
★上州・西上州・上信越・尾瀬
・榛名山 ・赤城山 ・玉原高原・鹿俣山 ・尼ヶ禿山 ・谷川岳 ・湯沢高原・大峰山 ・三ッ岩岳 ほか
★日光・那須・南東北
・大平山・晃石山 ・唐沢山 ・吾妻山 ・大小山 ・霧降高原・丸山 ・半月山 ・高山・戦場ヶ原 ほか
★常磐・房総
・筑波山 ・高鈴山・神峰山 ・加波山 ・愛宕山・難台山 ・雨巻山 ・奥久慈男体山 ・鋸山 ほか


上記にある八つのエリア。

私が親しんでいるのは★奥多摩・高尾・陣馬と、★奥武蔵・秩父くらいのもの。その代り、頻繁に出かけているから、このエリアなら、かなり細かいところまで入り込んでいる。それこそ、地図にない道まで。★上州・西上州・上信越・尾瀬にも行っているけど、地図にもない細かいところまでというわけにはいかない。それ以外のエリアでは、誰でも知っている有名なところに登ったことがある程度だな。

「ベスト130」に限ってみたところで、まだまだ未知のコースが半分くらいはある。面倒くさがってないで、出かけてみないと損しちゃうね。

入門コースと初級コースと中級コースのミックスで、厳しいコースは取り上げられていない。入門コースはまず問題ない。初級コースと中級コースは、よく知られた奥多摩でいうと、御岳山が初級コースで、大岳山が中級コースになっている。まあ、この本に取り上げられているコースなら、ちょっと慣れた人なら、どれも安心して歩けるところばかりって感じかな。谷川でいうと、天神尾根が中級で、西黒尾根は取り上げられていないって感じ。

だから、まったくなじみのないエリアでも、紹介されている通りのコースなら、まず間違いない。高速使って出かけるなら、どこかで車中泊して、初級コースと中級コースを歩いて帰ってくるなんてのもいいな。

力量の異なる人と一緒に歩く集団登山でも、この本に載っているコースなら、事故が起こることは、さほどないだろう。まあ、山のことだからね。何があってもおかしくないけどね。

どうしようかな。・・・地元に登山愛好会、・・・入会しようかな。・・・やめようかな。


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テーマ : 山の本
ジャンル : 本・雑誌

『白虹』 大倉崇裕

これより前に、著者である大倉崇裕さんの本を読んだのは、今年に入ってすぐ、『聖域』という本だった。

その時書いたのだが、大倉崇裕さんの本に出会ったのは、一昨年、2021年の8月、『冬華』という本だった。当時、新刊だった。その当時、大倉崇裕さんは、すでに山に関わる小説を、いくつも書いている作家さんだった。

個人的なことだが、私は足の不調で山から遠ざかっていた間、山に行けないことが悔しくて、山に関わる小説からも遠ざかっていた。山岳ミステリー、あるいは山岳アクション、いずれにせよ、「山もの小説」から長く遠ざかっていただけに、これから読める本がたくさん見つかって、とてもうれしかった。

そこから順不同ではあるが、さかのぼるように大倉崇裕さんの本を読んでいって、最後に残ったのがこの『白虹』だった。・・・ああ、読み終わってしまった。


仕組まれた謎、驚愕の真相。北アルプスの山小屋で働く元警官の五木健司はある遭難者を救助したことがきっかけで殺人事件の真相を追うことに…

傑作長篇ミステリー。

この『白虹』の舞台は山ばかりとは限らない。なかでも、緊迫感の高まる後半の舞台は、完全に東京。だけどこの話は、いったん挫折した若者が、一年の半分弱を北アルプスの山小屋で働き、山と、山小屋で働く人たちとの関わりを通して自分を取り戻していく物語。その点、完全に「山もの小説」

山には、人を再生させる力がある。それは私も体感している。


『白虹』    大倉崇裕

PHP文芸文庫  ¥ 時価

舞台は北アルプスから長沢山、東京へ 驚愕の真相が胸を打つ!
一~十八


私、もとは山岳部で山を始めたんだし、山岳部の顧問もしていたんだから、社会性の欠如で困難を感じたことはない。とは言うものの、社会性が豊かとは決して言えない。56歳で足を手術した後、長く遠ざかっていた山歩きを再開した。あんまり嬉しくて、仕事をやめて、人の少ない平日に山歩きをするようになった。

そのせいもあって、一人で山歩きをするうちに、その気軽さにはまってしまった。ふとしたところで見知らぬ道に入り込み、意外なところに祠を発見したり、行き詰まって来た道を戻ったりする。気持ちのいい場所に出れば、ゆっくり時間をかけて休憩を取る。昼寝したり、本を読んだりする。そう、山に本を持っていくようになったのは、ここ数年のこと。

山で事件や事故に遭ったことはない。沢で1mほど落ちた時は、アルマイトの食器が犠牲になってくれた。あまり人の歩かないところで、道を失って歩き回り、へたり込んでいる人に出会ったことくらい。


警察官時代に起きた悲劇的な事件の記憶から逃れるかのように、毎年夏の間だけ山小屋でアルバイトをする五木健司。「辞職しなければ、いい刑事になった」と惜しまれる五木はある時、名頃という男を救助したことから、殺人事件に巻き込まれてしまう。名頃が恋人・裕恵を殺し、自分も死んでしまったというのだ。

事件現場となった群馬県・長沢山を訪れ、そのまま山小屋へと入ることでその事件を忘れようとした五木の元に、裕恵の手帳と、裕恵の父からの「すまなかった」というメッセージが届けられる。1週間の約束で山を下り、東京へと戻った五木は、1枚の山の写真を手掛かりに、5年前に起きた事件へとたどり着くが……。

複数の事件が絡み合い、幾重にも張り巡らされた罠に気づき、事件の真相へとたどり着いた後に、五木が見たものは…。拭い去れない過去にとらわれ続けてきた五木に、救いはあるのか――。

本格ミステリの名手による、傑作山岳ミステリ!

だけど山には、“ここならば、こういう事故がありうる”とか、“ここならば、こういう犯罪はいとも容易い”という場所には事欠かない。酔っ払って「人を殺すなら、絶対、山だよね」なんて言い合ったこともある。そう言いたくなるくらい、山とミステリーは相性がいい。井上靖の『氷壁』もそうだった。

白虹は、主人公五木の見出す光り。しかし、その光りは“凶事の兆し”でもあるという。山岳警備隊の米村の口から発せられた“白虹貫日”という言葉が、“すべてが明らかにされたようでいて、その先に起こる凶事”を、五木に感じさせた。

*「白虹日を貫く」は、白色の虹が太陽を貫いてかかることをいう。臣下が反乱を起こし君主を倒す前兆とされた。


テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

『元祖ワンバーナークッキング』 シェルパ斉藤

2004年発行以来大好評の『シェルパ斉藤のワンバーナー簡単クッキング』が、版型も内容も新たに登場!

ワンバーナーを使った基本は3分、長くても10分で作れるアウトドアレシピを紹介します。その手軽さの秘密は、缶詰などをベースにアレンジしているから。材料カットや味付けの工程はほぼないので、だれでも簡単にキャンプ料理を作れます。メイン食材も手に入りやすいものばかり。お米やパスタなどの主食はもちろんスイーツまで、アイデアレシピをまるっと掲載!

ぜひお手元に置いていただき、テント泊登山やソロキャンプでのレシピの参考にご活用ください。

最初にAmazonで検索してみたとき、2014年2月17日出版の『元祖ワンバーナークッキング』が先頭になっていてビックリ!価格も1,100円。思わず自分が買った本を見直してしまった。この本は“2022年5月23日初版第一刷発行”となっている。うん、マイナビ出版から《新装版》となって生まれ変わったわけだ。値段も1,870円になっている。つまり、770円分だけ偉くなったわけだ。

さらに、上記の本の説明にあるように、もとの本は2004年発行以来大好評の『シェルパ斉藤のワンバーナー簡単クッキング』だという。2004年と言えば、ほぼ20年前。

20年前と言えば、私は山をやめていた。股関節の痛みが徐々にひどくなった頃にあたる。2014年も、山は諦めていた。2016年の10月に手術をして、それ以降、山に戻ってきた。

そうか、だから20年も山に登る人たちから親しまれてきたこの本を、私は知らずにいたんだ。



マイナビ出版  ¥ 1,870

ワンバーナークッキングを楽しめる環境になったし、求められる時代になった
PART 1 ストーブ&クッキングギア
PART 2 基本の朝・昼・夕食メニュー
PART 3 超簡単メニューBEST3
PART 4 ごはんもの
PART 5 麺類・パスタ・粉モノ


高校の時、山岳部のバーナーはホエーブスか、ラジウスを使っていた。高校の教員になって、先輩と山岳部を立ち上げてからは、ずっとEPIのガスバーナー。手術して、山を再開してからも、ガスバーナーを使っている。とにかく軽くていいよね。点火も早いしね。

固定観念に囚われがちな世代だけに、食糧計画は偏りがち。お昼は日帰りならおむすび、行動食は甘納豆かジャムパンだから、バーナーさえ持っていかない。帰りにお腹が空くといけないから、インスタントラーメンと一緒に持っていくときもあるが、車利用の時は車に置いていく。

泊を伴えば、夜はご飯を炊く。最近は、テント場でもご飯を炊く様子を見かけない。だけど、時間があるなら、炊いた方が絶対美味い。昔、山岳部の合宿で一泊なら、ほぼカレー一択だった。二泊目があれば、マーボー豆腐、三泊目があれば、すし太郎でちらし寿司。

この本を読んでいるとワクワクする。お湯を注いでジャガリコをつぶすと、マッシュポテトみたいになるんだって。もともと味がついているからお手軽だね。それを本の中で紹介したら、カルビーの人が訪ねた来たそうだ。松茸のお吸い物で松茸の炊き込みご飯は、私も家でやっている。干し椎茸ではなく、エリンギを使っている。

コンビニのおむすびで雑炊か。おむすびの具は昆布、わさびを添えているね。フリーズドライのカレーなんてあるんだ。100ccの熱湯を入れて溶くだけだって。これは2004年にはなかったろうな。

なんだか楽しいね。今度スーパーに行ったら、面白そうな食材を探して、山で試してみよう。

そうそう、ずっと前のことだけど、山岳部を一緒に立ち上げた先輩と、スーパーで合宿の食料を吟味していたら、店長さんにライバル店のスパイと間違えられたことがあったっけ。わけを話したら、腕章を渡された。


テーマ : 山の本
ジャンル : 本・雑誌

『山は輝いていた』 神長幹雄編

山に登ることとは、何かを表現すること――。田中澄江は高尾の花に亡き父を重ね、串田孫一は闇夜の谷で思索に遊ぶ。深田久弥が死の間際に見せた無念の光景、8000メートルの頂を望み続けた長谷川恒男の熱情と山野井泰史の生還を支えた不屈の原点、そして夭逝したクライマーが書き残した自問の日々……。静かな山旅から、命を削る凍てついたヒマラヤの大岩壁まで、「山と溪谷」元編集長が登山史に刻まれる名著、名文を厳選して探る、それでも人が山に登る理由。

武甲山の、今はない西参道の山麓に、私の生れた家がある。西参道は一番の急登ルートで、たしか、第二丸山まで行くと、武甲山の裏側(北側・・・秩父の人間にとっては裏側)にまわり込む。その後、長者屋敷の頭で浦山からのルートの合流して山頂を目指す。・・・確かそうだった気がする。

大学2年になった年の5月を最後に、武甲山の西参道は廃道となり、表参道も山頂手前の神社までしか入れなくなった。武甲山に最後に登ったのは、その年の3月に帰省した時だった。ずいぶん前のことで、記憶も定かではない。

生まれた家の南に面した縁側は、武甲山の北斜面に正対していて、西参道を登る登山者がよく見えた。子どもの時分には、地面を這う蟻のような大きさに見える人が、丸山あたりを懸命に登る姿を追いかけるのが好きだった。「さっきの人が、やっと第二丸山に行き着いた」なんて、母に話した記憶がある。

小学生の頃は、山頂からずいぶん西に行った北斜面に発破をかけていた。午前中の10時と、夕方の4時だったと思う。縁側で見ていると、最初に爆発の煙が上がり、次に衝撃でサッシに変る前の窓枠がビビビって震え、ドーンと音が響く。

学校の先生は、「そのうち、裏側(北側・・・秩父から見ると裏側)の山が見えてくる」と言っていたが、実際、現在は長沢背稜が見えている。


『山は輝いていた』    神長幹雄編

新潮文庫  ¥ 737

山に魅せられた者たちの魂に刻み込まれた13の光景

第一章 山の薫りを訪ねて
高尾山・フクジュソウ 田中澄江
御嶽山 この世から遠く離れて 立松和平
第二章 山の懐に抱かれて
或る単独行者の独白 田淵行男
島々谷の夜 串田孫一
スコトン岬 山口耀久
第三章 山に思いを募らせてー深田久弥外伝
日本百名山 近藤信行
深田久弥氏のこと 藤島敏男
第四章 山の険しさに挑む
グレポン ─ガストン・レビュファと登った最初の岩峰─ 近藤等
岩と氷と寒気との闘い ついに冬の北壁登攀 小西政継
「チョモランマ」見果てぬ夢 長谷川恒男
第五章 山の魔力に憑かれて
ハクパ・リタ・シェルパへの遺言 加藤慶信
遺稿 中嶋正宏
生還  ギャチュンカン北壁 山野井泰史


最初に登ったのがいつだか定かではないが、間違いなく父に連れて行ってもらったのだろう。小学校の頃は、年に一度、“歩け歩け”の大会のときに同級生と一緒に登った。

高校では山岳部に入ったが、入部した次の日曜の朝、突然、一つ上の先輩が、家にやって来た。「武甲山に登るから準備しろ」と言う。急いで母にムスビを作ってもらって出かけると、西参道で武甲山に登り、小持、大持、妻坂峠、武川岳、二子山を経由して芦ヶ久保に下りるという、とてもハードなコースだった。それでも、苦しかったという記憶がない。どうやら、今より全然強かったようだ。

高2の正月は、同級生のY君と、武甲山山頂で迎えた。ものすごく寒い新年となった。当時は登山ブームの狭間の時代で、山頂でご来光を迎えたのは、私たちの他には1グループしかなかった。二人で山中に見た不思議な光は、その人たちのものではなかった。

日曜になにもやることがなければ、武甲山に登るような高校時代だったので、何度登ったかは記憶にない。大学に入ってからも、帰省した時は、武甲山の登るか、金毘羅ハイキングコースを歩いた。それも、19歳の3月が最後になった。


私の人生の中で、やはり武甲山は特別だ。生まれた家は今、兄が守ってくれている。年に何度かご機嫌うかがいに出かけるが、もはやかつての武甲山ではない。無残な姿という人もいるが、武甲山を擬人化している私には、秩父を救った恩人に見える。武甲山

自分にとって一番の山を考えると、やはり武甲山をおいて他にない。

この本、花の百名山の田中澄江に始まり、田淵行男、串田孫一、深田久弥、長谷川恒夫、山野井泰史と、章を進めるにしたがって、舞台となる山の険しさが増していく。私はせいぜい第三章までで十分なのだが、第四章、第五章とどんどん厳しくなって、最後は山野井泰史。ギャチュンカン北壁の『垂直の記憶』だ。

残暑厳しい折、ギャチュンカン北壁は、ゾッとした分だけ納涼になった。



テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『尾瀬と周辺の山をあるく』

尾瀬の入り口、戸倉のバス発着所まで、私の家から車で2時間半。

特にスピードを出さなくても、早朝2時半に出れば、制限速度で走っても、十分、戸倉5時のバス始発に間に合う。今年も、水芭蕉の時期に出かけた。沼田インターで高速を下り尾瀬に向かうと、そのうち飛ばす車に追い抜かれる。尾瀬に向かっているのだろう。きっと、気が急いてゆっくり走る車がまどろっこしいのだ。

出かけたのは5月25日だった。その2日前、ニュースで尾瀬の山開きが行われたというニュースを聞いた。23日に山開きが行われ、水芭蕉はすでに見頃、5月末頃まで楽しめそうだというものだった。

昨年は6月中旬に出かけているので、まだまだ先と安心していた。まさに寝耳に水。ちょっとあせって、天気の良さそうな25日に出かけた。

戸倉第一駐車場に着くと、平日にもかかわらず、すでに3分の1は車で埋まっている。すでにチケットを買って並んでいる人もいた。私は日帰りでも衣食住を入れているので、他の日帰りの人よりザックがでかい。その分、バスの中では肩身が狭い。鳩待峠までの30分は、いつも修行のつもりで我慢する。その分、鳩待峠に着いたときの開放感は大きくなる。

水芭蕉の時期は、ここからアヤメ平に向かう道へ進む。大半の人が山の鼻から尾瀬ヶ原に向かうので、静かな山歩きになる。昨年は残雪が多く、木道が埋まっていた。木につけられたテープを頼りに、軽アイゼンをつけて歩いた。今年は雪が少なかった。軽アイゼンをつけるような道はなく、木道で滑る心配もいらなかった。

登りを横田代につくと、水芭蕉が咲き始めていた。どうやら、雪が少なくて、水芭蕉が早くなったようだ。ちょっと進んで振りかえれば、雪を残した至仏山。さらに進めば、前方に燧ヶ岳が見えてくる。横田代からアヤメ平は夢のような稜線歩きだ。

あとは、富士見田代から十字路に下りるか、富士見峠から見晴しに下りる。尾瀬ヶ原を歩いて山の鼻から鳩待峠に戻るのが例年のパターン。


『尾瀬と周辺の山をあるく』

JTBパブリッシング  ¥ 1,650

日帰り、前夜泊、一泊二日・・・入門から上級者まで、花と自然を満喫する
尾瀬の一年
★尾瀬沼コース
・鳩待峠から牛首分岐往復 ・鳩待峠から尾瀬ヶ原回遊 ・竜宮十字路からヨッピ吊橋
・鳩待峠からアヤメ平・富士見峠から見晴・御池から燧裏林道・小沢平から燧裏林道
・山ノ鼻と見本園 ・見晴と三条ノ滝
★尾瀬沼エリア
・沼山峠から尾瀬沼東岸往復 ・沼山峠から尾瀬沼一周 ・沼田街道
大江湿原から小淵沢田代・尾瀬沼から尾瀬ヶ原横断 ・尾瀬沼東岸
★尾瀬の山
・鳩待峠から至仏山・鳩待峠から笠ヶ岳・御池から燧ヶ岳往復・尾瀬沼から燧ヶ岳
・燧ヶ岳と至仏山に登る ・大清水から皿伏山 ・大清水から鬼怒沼湿原
★尾瀬周辺の山
・会津駒ヶ岳 ・田代山・帝釈山 ・七ツ岳 ・大博多山 ・日光白根山 ・武尊山
<巻末特集>
・尾瀬の花図鑑・尾瀬撮影ベストポイント・尾瀬の宿泊ガイド(山小屋&キャンプ場)
<お役立ち情報>
・尾瀬の魅力・コース選択のアドバイス・尾瀬へのアクセスガイド
・尾瀬の登山口ガイド・尾瀬歩きのルールとマナー・服装と準備
<特別付録> 5万分の1登山地図


尾瀬に行くのは、1年に2度ほど。水芭蕉の時期に、プラスもう一度くらいかな。7月の今なら、ニッコウキスゲかな。秋の訪れを尾瀬で感じるのもいいし、草紅葉のなかを静かに歩いてみるのもいい。10月に入れば、紅葉も本格化する。紅葉が終わる11月には、尾瀬も一気に静かになる。

若い頃は、あちこちにテントを張って、一週間ほど居座ったけど、今ならせいぜい一泊だな。一泊すれば、燧か至仏でも登ってくられるか。

・・・なんて考えてしまうんだけど、ちょっと尾瀬の楽しみ方を変えてみようかと、この本を買ってみた。だいたい、便利さ、効率重視で考えているから、どうしたってワンパターンになる。「マイカー登山で戸倉から鳩待峠」を固定してしまっているから、当然、コースも絞られる。

かりに一泊するとしてもテント泊だから、山の鼻、見晴、尾瀬沼に限られる。ここのところ2年連続で、熊の出没により山の鼻のキャンプ場は閉鎖になったとか。その前の年に妻と一緒にテント泊したんだが。小屋に泊まったことがない。山小屋は泊めるところで、泊まるところじゃないって思ってたからな。

こんな本をしっかり読んでみると、毎年尾瀬に行くっていったって、見たのは尾瀬の一部だし、尾瀬にも色々な季節がある。

そんじょそこらの山に登るのは同じでも、尾瀬みたいに良いところに行くなら、今までの貧乏登山はやめて、周辺も含めてしっかり旅として楽しみたい。もう年寄りなんだから、変えていかなきゃいけない。

ちょっとお金を使えば、今まで行けなかったところに行ける。・・・尾瀬を機会にそうしてみようかな。



テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『白い標的』 樋口明雄

山梨県警にとって最大級の凶悪事件! ――甲府市内の宝石店が強盗グループに襲撃された。警備員二名が殺傷され、三億七千万円相当の宝石類が強奪される。犯人たちは追跡する警察官に発砲し、凶器の拳銃を所持したまま、なぜか冬の北岳へと向かった!

犯人らを追いかける刑事たちは南アルプス山岳救助隊に応援を要請。選抜されたのは若き女性救助隊員の星野夏実と神崎静奈、ふたりの相棒(バディ)である救助犬メイとバロン。

そんな彼らの行く手を阻む猛吹雪、突如として襲い来る雪崩。そして高山病。非情な裏切りや果てなき欲望が極寒の冬山に渦巻く中、夏実たちは犯人らを追いつめることができるのか!?

読み始めは大変!

なにしろ、三人の犯人グループのうち、宝石類の換金を任されたはずの主犯が、仲間を裏切って北岳に向かい、残る二人に連絡した上で自ら命を絶とうとしている。裏切られたことを知った二人は、山梨県警の追跡を受けつつも、主犯から宝石類を取り戻そうと北岳を目ざす。

序盤は、犯人二人と山梨県警の攻防が中心となって話が進む。しかし、そこに二つの山行が重なってくる。一つは大学山岳部に所属する二人のクライマーの山行。この二人、無謀にも冬の北岳バットレスに挑戦している。

もう一つは、人生に絶望した男が北岳の山頂を目指している。仕事がうまくいかず、妻との間にも亀裂ができた。妻とは離婚し、仕事も失った。賭け事にのめり込み、もう借金で首が回らない。

そんな二つの山行が語られながら、犯人二人と山梨県警の攻防が動じに描かれていく。その中で、三人の犯人が、それぞれ身を持ち崩してしまった事情が語られていく。

初夏から晩秋にかけて、北岳白根御池にある夏山常駐警備派出所に詰める山岳救助隊員たちも、オフシーズンは地域課の警察官として地上勤務をすることになる。

場面が多すぎて、全体像を把握するのが大変。最初からの“めり込む”というわけにはいかなかった。


『白い標的』    樋口明雄

ハルキ文庫  ¥ 1,012

警備員二名を殺傷し、宝石を強奪した犯人たちは、なぜか冬の北岳へと向かった!
序章
第一部 一月二十一日
第二部 一月二十二日
第三部 一月二十三日
終章


犯人グループを追いかける形で、舞台は北岳に移る。

北岳に舞台が移ってからも、幾つもの山行が交錯する。冬季北岳バットレス制覇を目指す二人の大学生、安西と大葉。人生に絶望し北岳山頂を目指す新田。宝石を持ち逃げした裏切り者を追って北岳にやって来た佐竹と諸岡。諸岡は元警察官で、左利きのピストルの名手。佐竹はヤクザ崩れだが、冬山の経験を持っている。

宝石強盗の捜査を主導する県警本部の永友は、登山経験のある谷口、山岳救助隊の深町、女性隊員の星野と神崎、それぞれのバディーであるメイとバロンの協力を得て、犯人を追って北岳に向かう。

それぞれの行程が入り乱れるように登場するのだが、やがて、準備されたピースが徐々に組み合わさって、北岳をめぐる大きなサスペンスドラマとなっていく。

まず、安西と大葉がバットレスで遭難する。深町と星野が救助に向かう。主犯の須藤を追う佐竹と諸岡が、新田に遭遇する。仲間を探しているという話を聞いたが、その仲間とおぼしき須藤の遺体を新田が発見し、佐竹らに連絡する。

物語全体の真ん中よりもちょっと前、ようやくつながり始めた。もう、ここからは一気に・・・。と思ったら、ちょっと待って。話しはまたまたおかしな方へ。

安西と大葉は、とても良い味を出している。この物語は、“憎悪”が主題の一つになっていて、それを北岳が浄化する話が出てくる。また、絶望に苛まれて、どっちに転ぶか分からない状況下、新田は憎悪に取り込まれてしまう。そんなドロドロした一面がある話しの中で、物語に爽やかさを与えてる役割を、安西と大葉が果たしている。

北岳におけるクライム・サスペンスあり、バットレスにおける遭難救助あり、バットレス上部の雪庇崩壊による大雪崩れあり、その大雪崩れギリギリのところからの救助ヘリの活躍あり。最悪の高山病症状も出てくる。

もう、面白いんだけど、盛り込みすぎ。


テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『奥多摩・高尾500km』 佐々木亨

“中国”が武漢のウイルス研究所から流出させてしまったコロナウイルスが、世界を巻き込むパンデミックを起こした。

あれから三年の間、山に行くのも、何かと気を使った。埼玉県民だが、群馬に行くにしても、長野に行くにしても、最初の頃は《県をまたいだ移動は控えましょう》という看板に、少し怯んだ。まあ、山登りの人に向けたアピールではなかったとは思ったが。それから、もともと土日は避けているが、人とあった時のために、スポーツマスクを用意した。

一番大きな変化は、公共交通機関を使わないコースを歩いたことだ。車で行って、無料、あるいは有料の駐車場に車を置き、そこから登山を開始して、そこに帰ってくる登山ばかりになった。そうなると、コースの選択肢がうんと狭くなる。

奥多摩や高尾に行くことも多かったのだが、地元を離れると、公共交通機関を使わずに車に戻るコースを作るのが難しい。いくつかそういうコースをひねり出したが、面倒くさくなって足が遠のいた。

もともと車で山に向かうことがほとんどなのだが、それに公共交通機関を組み合わせる登山をしていた。公共交通機関を組み合わせることで、車だけに比べコースの選択肢が大きく広がる。もともと、奥多摩や高尾では、そんなコースを歩いていた。そういうコースをまた歩けるようになった。

そんな折りに、『奥多摩・高尾500km』という本が出された。2016年の『 奥多摩・高尾384km』の増強判だ。2016年版も持ってるけど、買っちゃった。


『奥多摩・高尾500km』    佐々木亨

山と渓谷社  ¥ 2,200

全45コースは、すべてベテラン山岳ライターである著者が綿密に実踏取材したもの
青梅線エリア
五日市線エリア
高尾・中央本線エリア


じゃあ、とりあえず、奥多摩に行こう。

鳩ノ巣駅近くの観光駐車場に車を置けば、青梅線沿線と、奥多摩駅からのバス路線もカバーできる。とりあえず、当たり前のコースだけど、ロープウェイ使って、御岳、大岳。鋸山を回ってこようかな。

ベテラン山岳ライターの著者が全45コースを綿密に実踏取材。

スマホの地図だけではなく、紙の地図も持っておくことが道迷いを防ぎます。分岐の拡大表示など道迷いを防ぐための工夫をこらした「奥多摩・高尾」ガイドの決定版!ハイキングだけではなく、トレイルランニングにも最適です。

「奥多摩・高尾」エリアのコースを詳しく紹介して人気を博した『詳しい地図で迷わず歩く! 奥多摩・高尾384km』(2016年刊行)に、さらに新規コース15本を追加し、話題のハセツネCUPのコースマップも含めて全面的にアップデートした『詳しい地図で迷わず歩く 奥多摩・高尾500km』。

収録した全45コースは、すべてベテラン山岳ライターである著者が綿密に実踏取材したもの。特にコースマップについては、道迷いを防ぎ、無理なく安心して歩くための情報とアドバイスを充実させています。

登山口や分岐をはじめ、登山道とほかの道路が交差する地点などは拡大して表示。拡大図ではわかりやすさを優先し、道やランドマークを省略または誇張して「迷わず歩ける」情報になっています。

トレイルランナーやウォーキング愛好家にも使い勝手のいいガイドブック!


テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『牧野富太郎と山』 牧野富太郎

NHKの朝ドラでやってる《らんまん》、主人公は槙野万太郎。

モデルになったのが、日本植物学の祖とも言うべき牧野富太郎という方。私は朝ドラ《らんまん》で興味を持って調べてみるまで、この人物のことは知りませんでした。万太郎役の神木隆之介は、ずいぶん演技がお上手ですね。子役から、うまい具合に、大人の俳優になりました。

その神木隆之介が、地面に這いつくばって、植物に語りかける姿が、何度もドラマの中に登場します。まあ、「ドラマとしての演出なんだろう」と思っていたのですが、本当にそういう人だったようですね。冒頭のエッセイ、「なぜ花は匂うか?」を読んでみたら、牧野富太郎さんが地面に這いつくばって植物に語りかける様が、頭に思い浮かんできました。

そう思わせたのは、以下のようなくだりです。


「合歓木は夜になると葉をたたんで眠ります。ヒツジ草の花は夜閉じて昼に咲きます。豆の蔓は長い手を伸ばして付近のものに巻き付きます。一枚の葉も無駄にくっついてはいないのです。八つ手の広い大きい葉は葉脈にそって上から下へと順々に、なるべく根の方に雨水を流していきます。チューリップのような巻いた長い葉は幹にそって水が流れ下りるように漏斗の仕事を務めます。日が当たると葉は、充分に身体を伸ばして一杯に太陽の光を吸い込んで植物の生きていくのに必要な成分である炭酸ガスを空気の中から吸収します。根から水分と窒素とが集められます。そうして植物は元気よく生きていくのです」

きっとこれ、みんな、植物の所に目線を寄せて語りかけて、植物の側から教えられているようではありませんか。


『牧野富太郎と山』    牧野富太郎

山と渓谷社  ¥ 990

愛する植物を求めて山に分け入り、山に遊ぶ。山にまつわる天衣無縫のエッセイ集
▲北海道から東北
▲関東甲信越から中部
▲近畿から中国・四国、九州


それにしても、北から南まで、ずいぶん山に登ってますね。もちろん私は、そちらの興味から、この本を購入したわけです。

だけど、私だって好きな高山植物くらいありますから、そういう花のエッセイは興味深く読みました。ときがわ町の椚平に咲く秋海棠はジャワや支那原産で、清朝時代の陳淏の書いた『秘伝花鏡』には、「秋色中ノ第一ト為スー花ノ嬌冶柔媚、真ニ美人ノ粧ニ倦ムニ同ジ』と賞賛しているそうです。

駒草のことは、「花梗は葉よりは高く出で、末に数花をつけて開くが、それがちょうど鯛でも釣っているような姿をしており、紅色ですこぶる優しく美しい」と書いています。あれは“鯛を釣っている”姿なんですね。

秋田蕗は、牧野富太郎さんの頃でも、大型のものは、そう多くなかったそうです。それが北海道に行くと徐々に大型化し、樺太で巨大化するらしい。浪曲に《秋田蕗》というのがあります。殿様が他藩の殿様にした巨大な蕗の話しを、藩士がそれを命がけで証明する話ですね。江戸時代には、大きかったみたいですよ。

アケビの話しは、ちょっとエッチでしたね。

日本の植物学の父・牧野富太郎氏は植物を観察・採集するために日本各地の山々を訪れ、そのときの様子をエッセイに残した。幼少期の佐川の山での出来事を綴る「狐の屁玉」、植物を追い求めるあまり危うく遭難しかけた「利尻山とその植物」、日本各地の高山植物の植生と魅力を存分に語る「夢のように美しい高山植物」など山と植物にまつわる39のエッセイを選出。

さらに歴史に触れる話もありました。後方の羊蹄山の話しです。松浦武四郎の書いた本に『後方羊蹄日記』というのがあって、これを「シリベシ」日記と読むんだそうです。“後方羊蹄”で「シリベシ」です。この読みの始まりは、日本書紀なんだそうです。斉明天皇五年のところに「後方羊蹄ヲ以テ政所ト為ス可シ」とあるんだそうです。これ、“後方”を「シリヘ」、“羊蹄”を「シ」と読んでいるんだそうです。

「シリヘ」は良くても、「シ」が問題ですね。これ、「シ」と呼ばれる草の、支那名なんだそうです。万葉集にも、「毎年(トシノハハ)梅者開友(ウメハサケドモ)空蝉之(ウツセミノ)世人君羊蹄(ヨノヒトキミシ)春無有来(ハルナカリケリ)」という歌があるんだそうです。

いや、この方、とんでもなく博学ですね。

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ジャンル : 本・雑誌

『関東周辺 美味し愛しの下山メシ』 西野淑子

越生の山に登って、車で帰ってくる途中だった。

黒山三滝から梅林を通り過ぎて左折し、バス通りから一本奥の道に入ったあたりだった。若い女性が一人、前方から歩いてくる。梅林に向かっているのだろうか。小さなリュックを背負い、帽子をかぶっている。近くの山に登るのかもしれない。

このあたりは梅林に限らず、あちこちに梅の木が見られるが、そのうちの一本の枝に手を伸ばし、自らも背伸びをするようにして、花びらを顔に近づけている。

私はスピードを落として、ゆっくり女性のそばを通過した。すれ違う直前、梅の花の香りを胸の奥まで吸い込んだ彼女は、とても気持ちよさそうな笑顔を作った。

少し前から、一人で行動している女性を見かけるようになった。以前にはあまりなかった、いや、あり得なかったことだ。男性に依存しない、それどころか、同性にも依存しない女の人の過ごし方。いいもんだな。

さて、『美味し愛しの下山メシ』というこの本、著者は西野淑子さん。『ゆる山歩き』の人だな。決して“ひとり”を強調した本ではないが、読んでいると、「あっ、この時はひとりだったんだな」って感じるものも少なくない。

男の私でも、・・・このようなものの言い方をする私を、どうぞ相手にしないでね。まあ、ひとりで店に入ろうとすれば、それなりの緊張感を伴う。それも旅先であれば尚更。でも、山に登って、お風呂に入って、一杯飲んで、ご飯を食べて帰るという全行程を楽しめたときの満足感は、言葉にしようもないほどのもの。

それを躊躇する必要は、どこにもない。

以前は、“山に登って、お風呂に入って、一杯飲んで、ご飯を食べて、電車で帰る”ということに貪欲だった。帰りの電車の中でも、酒を飲んでいた。松本だろうが、水上だろうが、一杯飲んでいると、アッという間だった。

今はすっかり淡泊になったな。


『関東周辺 美味し愛しの下山メシ』    西野淑子

ヤマケイ新書  ¥ 1,100

歩かず、待たず、食べられる。下山後に居心地のいい店60軒
奥多摩
高尾・富士五湖周辺・中央線沿線
秩父・奥武蔵
丹沢・箱根・三浦半島
茨城・千葉・群馬・栃木


相棒が山をやめてからは、“ひとり”ばかりになった。そうなると、生来の面倒くさい病が出て、車で行って、店にも寄らずに帰ってくる。この本を読んで、少し反省した。

登山後の楽しみの1つが山麓にある美味しい料理、すなわち下山メシ。下山メシ選びのポイントは2つ。「歩かず=登山口や駅、バス停から近い」と「待たず=すぐに入れる」。

登山ガイドでフリーライターの著者が、ご当地食材を使った料理や小さな食堂の何気ない一皿、そしてカフェのスイーツまで、下山後に味わったとっておきの60店を紹介します。

目次にあるとおり、おなじみの秩父・奥武蔵・奥多摩も紹介されている。知っている店も出ていて、なんだか自分のことのように嬉しい。

紹介されている店は多種多様だけど、西野淑子さんが選んでいるのは、帰りの駅から近いことと、待たないこと。確かにこれは大切だな。電車が来るまで、バスが来るまで飲んでいることも、かつてはあったな。それから、「食通が唸るような名店」じゃなくていいということだけど、これもその通り。唸りを上げる食通を隣にして食べたくはない。

例外も確かにあるな。奥武蔵の子の権現から吾野駅方面に下山して、舗装道路に下りたってすぐのところにある“浅見茶屋”は、「食通が唸るような“うどん”の名店」だし、注文してから茹でるからそれなりに時間がかかるし、なにしろ食べてから駅まで小1時間歩かなきゃならない。選考基準を外しても、取り上げる価値があるということだろう。

私の選考基準では、浅見茶屋は外れる。だけど、甘味がしゃれているという評判を聞き、妻を連れて行ったことがある。喜んでもらえたが、私には居づらかった。

この本を読んでいても、心引かれるのはそば屋、それから大衆食堂に中華料理屋だ。それも昭和の雰囲気を残したところがいい。そば屋に関しては、鉄板だ。軽いつまみ、卵焼きでも頼んで一杯飲んで、そばをすすると相場が決まっている。大衆食堂も同様、豆腐で一杯飲んで、親子丼。中華料理屋なら、餃子で一杯飲んで、ラーメンか。

井の頭五郎さんのように、あれこれ考えるのは性に合わない。

車を使っても、運転しなきゃいいんだから、店に入ろう。そういう山登りをしよう。



テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『還るべき場所』 笹本稜平

そうか。笹本さんが亡くなって、もう一年以上経ってたんだ。

笹本さんの本は、山岳小説ばかり読んできた。2016年に脚の手術を受けて、山登りを再開するまでは、二十数年間にわたって、山の本から離れていた。だから、新田次郎以降、どんな人が山の小説を書いているのか知らなかった。わずかに、山を離れる時期に、すでに話題になっていた、夢枕獏の『神々の山稜』を知っているくらいだった。

手術するときには、すでに脚の痛みが消えたら山に登る気満々で、病院にも『神々の山稜』を持ち込んだ。退院後、探し当てた山岳小説家が、笹本稜平だった。

以来、『その峰の彼方』、『大岩壁』、『春を背負って』、『ソロ SORO』、『分水嶺』、『駐在刑事』、『駐在刑事 尾根を渡る風』、『天空の稜線』、『K2 復活のソロ』、『山岳捜査』、『希望の峰マカル-西壁』、『アイスクライシス』、『山狩』と読んできた。新刊の本を読んで、次の新刊までの間に、山を再開する前に出版された本を読んだ。

山の小説では、『山狩』が最後になった。それも出版されたのは、笹本さんが亡くなったあとだった。

今日、紹介する『還るべき場所』は、山の小説を書くようになった最初の頃の作品。2002年の『天空の回廊』に継いで、2008年に出版されたもの。

『天空の回廊』は、核弾頭が搭載されたアメリカの軍事衛星がヒマラヤに落ちてくるという、とても怖い話しだった。それが、この『還るべき場所』、さらに2009年の『未踏峰』、2011年の『春を背負って』と、山と向き合って、真摯に生きる人たちの話になっていく。

それは笹本稜平さんの書く山岳小説の大きな特徴になっていくわけだが、その始まりが、この『還るべき場所』だった。


『還るべき場所』    笹本稜平

文春文庫  ¥ 968

登攀中に恋人を遭難で失った矢代翔平が、「悲劇の現場」K2に再び戻ってきた
第一章
第二章
第三章
第四章
第五章
第六章
第七章
第八章
第九章


山だけでなく、人生でもパートナーであった女性をK2で失うという、重苦しい状況で、この物語は始まる。

主人公の矢代翔平の時計は、その時、止ったまま、動こうとしない。もう、4年、そんな状況が続いている。誰も翔平を責めない。それなのに、翔平だけは、自分を責め続けた。話しは、しばらくの間、過去を振り返る。パートナーを失うところへ向かう話しは、やはりつらい。つらいな~っと思う頃、翔平は、ようやく動き始める。

スケールの大きな冒険小説で定評のある笹本稜平氏の新境地。登攀中に恋人を遭難で失った主人公・矢代翔平。過去の悲しみを乗り越えるため、登山ツアーのガイドとして「悲劇の現場」K2に再び戻ってきた。圧倒的な迫力で描く感動の山岳小説。

前半のつらさを翔平と共に我慢した分、彼が山に向かい合ってからの展開には、引きつけられてしまう。

かつての山仲間である板倉良太は、公募登山の会社を立ち上げていた。その会社が、ブロードピークへの公募登山を企画した。その企画に登山ツアーのガイドとして参加して、そのあと、そのままK2に登ろうという誘いだった。

ブロードピークに向けた公募登山にツアーガイドとして参加し、翔平はK2を目前にする。翔平がトップを務める登攀中、宙づりになったパートナーの聖美は、なぜ自らロープを切ったのか。それとも、他に理由があったのか。

翔平がその謎に手を伸ばしたとき、K2は新たな事実を、翔平の前に示した。

この『還るべき場所』の文庫版の帯に、亡き読書家の児玉清さんが、以下のような感想を寄せていたようだ。

《これほど心をしめつけられ、しかも、これほど熱き勇気、生きる勇気を与えてくれる小説がかつてあっただろうか。ぼくは涙し、号泣した!》

まさに、絶賛だな。・・・私も泣いた。


テーマ : 読んだ本
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こんな本、あんな本
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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。

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中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。

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高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。

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今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本
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