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『桜旅』 谷角靖

ずいぶん前のことだけど、春山合宿で仙丈ヶ岳に登った帰り、生徒を帰して上野で花見をした。

楽しかった。いろいろな芸人さんがいて、私たちは流しのおじさんに歌ってもらった。飲み屋でお願いしたときと同じ、3曲1000円だった。飲んでもらったら、いろいろ話してくれた。

3月半ばの九州に始まって、各地の桜祭りを追って、桜と一緒に旅をする。上野は金になるのでギリギリまで稼いで、それから北に向かい、その時の話では弘前までと言っていた。

およそ2ヶ月稼いで、あとの10ヶ月は遊んで暮らすって。・・・弟子入りしようかと思っちゃった。

それよりももっと前、学生の時、学校が外堀の内側にあって、近かったので、よく靖国や千鳥ヶ淵に行った。あそこの桜もきれいだったなぁ。千鳥ヶ淵では、桜の下で、今の連れ合いとボートに乗ったんだ。

秋に葉を落した桜は、まるで枯れているかのよう。それが年を越したあたりから、徐々につぼみをふくらませ、最近は4月を前に一斉に咲き誇る。まあ、桜に限ったことじゃない。何でもない道ばたの、冬には萎れかけた草が、春の到来と共に可憐な花を咲かせる。

四季のはっきりした日本に長く生きていれば、花を見るまでもなく条件反射のように心が浮き立つ。私たちの生活は、四季の移ろいとともにある。心のありようも、また同じ。

さてこの本、表紙も裏表紙も、見たとおりの桜色。

この本を作った谷角靖さんは、サラリーマンをやめ、カナダに渡ってカメラの修行。約7年でプロとして独立したそうだ。2009年の春に帰国した際、満開と聞いて千鳥ヶ淵を訪れて桜を見たのは、10年ぶりのことだったそうだ。

10年ぶりに見る桜か。

その日に決心をしたそうだ。桜を追いかけようと・・・。

その日に撮った千鳥ヶ淵の夜桜が、110-111ページにある。「妖艶幽玄-夜桜」と名付けられている。


『桜旅』    谷角靖

青菁社  ¥ 1,980

昔から多くの人を魅了してきた桜は、日本全国色々な場所で咲き誇ります
1 孤高の存在感「一本桜」
2 旅路の章
3 野山に生きる桜たち「山桜」
4 歴史的建造物と桜
5 暗闇に浮かぶ艶幽玄「夜桜」


先日、「中井精也のてつたび!」というNHKの番組を見ていた。中でも執念の写真があった。夕陽がきれいな海岸の、かなりの高台から撮った一枚。左右両側が山で、その谷間に鉄橋が架かる。中井精也さんのいる高台からは、その鉄橋はずいぶん下の方に小さく見えている。沈みゆく夕陽と、シルエットになって鉄橋を走っていく一両編制の電車を一緒に撮ろうという試みだ。

天候には恵まれた、空が夕焼けに染まりはじめ、太陽はいよいよ海に近づく。そして、海に接する。少し沈んだ。ここまで来ると、いよいよ早い。今ならもう絵になる。いつ来てもいい。・・・まだ来ない。3分の1沈んだ。・・・まだ来ない。半分沈んだ。・・・まだ来ない。だめか。・・・と思ったとき、電車が来た。

このタイミングを、彼はどう知ったんだろう。年に2度しかあり得ないこのタイミング。列車が何らかの理由で遅れれば、ふいになる。天気に恵まれるとは限らない。もし有名なものであれば、撮り鉄が殺到してしまうはず。

それでも、そのタイミングを追いかけるのが写真家。

そうは言っても、谷角靖さんはカナダに住んでいる。思い立って11年。この本が出たのは2021年3月31日だから、昨年春までに撮りためた写真のはず。11年の間、桜の時期は日本に帰ってきて桜を撮っていたと言うことのようだ。

だけど、どこの桜の写真を撮ろうか、それを調べるだけでもかなり大変なはず。しかも、相手が桜だから、1日ズレただけで、その最高の瞬間を逃してしまうことだってある。中井精也さんではないが、電車と一緒に撮っている写真もある。表紙の一枚が、まさにそう。

それを思えば、この本に書けた並々ならぬご苦労が、手に取るようだ。

私にも、1年に一度、訪れたい桜がある。一つは八徳の一本桜。つい先日、行ってきた。この木にあうには山を越えていく。埼玉県の越生町、黒山の先から山道に入り、藤原入という沢沿いに高度を上げ、傘杉峠に至る。そこからは舗装された林道を下っていく。くねくねと曲がりくねる林道の、あの角を曲がれば、・・・ほら見えた。その木には、上から見下ろすようにあいに行く。散り際に、まさに間に合った。感動だった。

もう一つは龍ヶ谷の山桜。龍ヶ谷川沿いの林道を小一時間も歩く。その林道の奥から山道に入る。最初はそれ程でもないが、山桜まで最後の200mはとてつもない急登となる。視線を急斜面に据えて、ひたすら耐えて登れば、地面に花びら。見上げれば、視野に入りきれないほどの山桜。

谷角さんが書いている。「それまでは、世の中で一番きれいな自然のものはオーロラだと思っていた」と。



テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『悠久の時を旅する』 星野道夫

新設の公立高校の教員になって、先輩と一緒に、翌年からの山岳部立ち上げの準備をしている頃に、植村直己が当時はマッキンリーと呼んでいたデナリで死んだ。いや、帰ってこなかった。

帰ってこなくても、しばらくは、「きっとそのうち帰ってくる」って、どこかで思ってた。自分がそう思う前に、植村直己の周囲の人たちが、みんなそう言ってたから、そういうもんだと思っていた。

その年の4月に山岳部を立ち上げて10年、34歳の時に、山をやめることになった。「自分は生涯、何らかの形で山に関わって行くんだろうな」って思ってたんだけどね。もともとあった股関節の痛みが、かなり頻繁に起こるようになって、山で、人に迷惑をかけることになってしまって。・・・山岳部の顧問を降りた翌年、山岳部のない学校に転勤した。

星野道夫がヒグマにやられたのは、それからまもなくだったな。植村直己が死んだときは、そのことに自分の気持ちを素直に動かすことができた。なのに、星野道夫が死んだときは、なんだか、自分に関係があることのように受け止める資格がないような気がした。だから、その衝撃や悲しみを、ないもののように心の中に閉じ込めた。

じつはこの年の夏の終わり頃、母が亡くなった。星野道夫が死んだのは、まもなく亡くなるであろう母の最後の看病に、すべての気持ちを注いでいる頃だった。だから、星野道夫が死んだことを意識したのも、ずいぶん経ってからだったんだ。そんなこともあって、憧れの旅人の死に、自分ながらの決着をつけることができないまま、ここまで来てしまったような気がする。

なにしろ、山をやめてからは、山に関わる一切と縁を切ったような状態になったからな。下界では役に立たない装備も、多くは捨てたし、本も廃棄した。廃棄した本の中には、植村直己や星野道夫の本もあったはず。

高校で担当した部活は、弓道部にJRC、付き添い要員としてのサッカー部と柔道部。テントで子どもをキャンプに連れて行ったことはあるけど、シュラフなんかは、おでんの鍋を包むのが一番の仕事。

あれから22年と半年。

56歳で足の手術を受けて、少しずつ山を歩くようになった。最初は、コロコロ転んで、酷いもんだった。山の中で大転倒をして、痛い目にもあった。最近ようやくまともに歩けるようになった。


クレヴィス  ¥ 2,750
極北の自然に見せられた写真家の旅を一冊に! 大切なことは出発することだった
プロローグ 一九七三年、シシュマレフへ―アラスカとの出会い
第1章 生命の不思議―極北の動物たちとの出会い
第2章 アラスカに生きる―人々との出会い
第3章 季節の色―自然との出会い
第4章 森の声を聴く―神話との出会い
第5章 新しい旅―自然と人との関わりを求めて
エッセイ


今年、一番印象に残っている山は、三ツドッケかな。

一杯水避難小屋に泊まった。感染症流行下だから、他に宿泊する人がいれば譲れるようにテントを担いで行った。日が落ちるまで、小屋の前で一人宴会をしてたんだけど、誰も来ないから、一人で小屋に寝た。

周辺は鹿の密度が高くて、宴会中も目の前の尾根上を飛び越えていったし、夜は小屋の前までやってきて、キュンキュン鳴いてた。星野道夫だったら、良い写真を撮ったんだろうな。

先日、目的もなく本屋を徘徊していて、この本を見つけた。久し振りに、星野道夫の名前を思い出した。そうだ。同時に、ヒグマにやられて亡くなったんだってことも、思い出した。

考えてみれば、私が山岳部の顧問をしていた頃が、星野道夫が写真家星野道夫として生きていた時期に重なる。私はこの人に憧れていた。この人の写真にも憧れていた。

同じような旅人になりたいとか、冒険家になりたいとか、そんなことは到底考えられない。考えられないから、憧れていた。その亡くなり方は痛ましいものであったけど、志半ばではあっただろうけれども、おそらく星野道夫の後ろを歩いて行こうとする者は少なくないだろう。

私も、ようやく星野道夫に、もう一度憧れることができた。

『悠久の時を旅する』という本は、2012年に出版されている。この本は、その“新版”ということになる。一粒種の翔馬さんは、お父さんのことは、全く覚えていないんだそうだ。そんな翔馬さんがデナリ国立公園でであった日本人大学生は、お父さんの書いた『旅をする木』を携えての旅の途中だったそうだ。

それにしても、星野道夫の写真はすごい。


テーマ : 読んだ本
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イーグルス16

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こんな本、あんな本
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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。

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中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。

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高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。

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今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本
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