めんどくせぇことばかり 本 自然
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『木に学ぶ60の知恵 まっすぐだけが生き方じゃない』 アニー・デビッドソン リズ・マーヴィン

世界14カ国で翻訳!

嵐にも、環境にも負けず、賢く生きる知恵を知る。人間社会に疲れた。自然に触れたいけれどなかなかそうも行かない。そんな方におすすめしたい「読む、森林浴」

☆サンザシは、風に吹かれて曲がって伸びる
☆ヒイラギの、下のほうの葉は、通りすがりの動物にかじられやすいため、低いほうだけがトゲをたくさんつけている
☆ニレの木は、毛虫に襲われると、寄生蜂を呼び寄せるフェロモンを放出する

など、知られざる木の生態から、人間の生き方を学ぶ一冊

装丁も良くて、ずっとそばに置いておきたいような本。

私たちの身近にいる生き物や植物は、みんな、厳しい環境を生き残ってきたものたちばかり。どんな風にして生き残ってきたのか。中でも樹木を取り上げて、その生存戦略を知ることで、今の自分の生き方を見つめ直そうという本。

上記に“ヒイラギ”のことが書いてある。さっそく、うちの丑寅に植えられている柊で確認してきた。本当だった。柊は枝の高さによって、異なるタイプの葉をつけていた。どれくらい日光を受けられるかを見極めて、光を吸収できる細胞の量を決めているという。さらには通りすがりの動物にかじられやすい低い位置の葉には、よけいに棘をつけていた。

「歳を取ると丸くなる」と人間にたとえられるというが、この家を建てたときのものだから、かなりの年数になるが、なぜかいまだに棘が痛い。住人に似るのかも知れない。


『木に学ぶ60の知恵 まっすぐだけが生き方じゃない』 
アニー・デビッドソン リズ・マーヴィン
文響社  ¥ 1,430

しんどい日。人間に疲れた日。気の強さから、パワーをもらおう。
イロハモミジ イチイ ポプラ ニレ アメリカブナ シデ
スピノサスモモ ヤナギ ベイツガ ハンノキ クログルミ
メヒルギ セイヨウトチノキ プラタナス モミ バオバブ
ヒイラギ オリーブ ハクヨウ アカシア グイマツ 
アサイー バルサムモミ セーヴブルー ベンガルボダイジュ
グッタペルカ グアレア リュウケツジュ ヨーロッパクロマツ
ソメイヨシノ ブナ センペルセコイヤ カイノキ ダグラスモミ
ハヒロハコヤナギ イチョウ セイヨウツゲ サトウカエデ
ラクウショウ セイヨウトネリコ カウリマツ バンクシア
オーク スコッツパイン ナナカマド サンザシ ブナ シエラヤシ
ベイスギ セイヨウカジカエデ コルクガシ ヌマミズキ
インドセンダン セイヨウネズ シダレカンバ クックパイン
ハシバミ ライラック ジャラ インドボダイジュ


水辺でよく見かける柳は、根を張り巡らして川岸を補強する。まずは時間をかけて、居心地のいい環境を自分で作り上げてしまう。新しい所場は、居心地の悪いもの。それが当然と一度はあきらめて、柳のように徐々に根を張り巡らせていけばいい。

夏の終わりから色を変えはじめたイチョウの木。徐々に変わっていく色を楽しみにしていたら、先日、突然散り始めた。2億年以上前から同じ姿で存在し、とってもタフで、その上きれい。黄葉で人の目を楽しませてもくれる。完璧に思えるイチョウだが、その実の臭さはちょっと・・・。

ナナカマドのとらえ方が面白い。1年のうちの大半は人目につかず、目立たずに、ひっそり細い葉を茂らせる。ところが秋が来ると、まずは真っ赤な実をつける。鳥たちは好みが大好きで、いろいろなところの運んでもらう。さらには、葉が真っ赤に紅葉する。紅葉の始まった山の中でも、一番赤い。これまで人目につかず、目立たずにいたのがまったくウソのよう。さらには、その葉が散ると、真っ赤な実だけが、その木に残る。

たしかに、春や夏の山に行っても、どれがナナカマドか分からない。でも、紅葉の山に行って、ナナカマドを見違える人はいない。

いろいろな生存戦略があるものだ。

ニレは毛虫に襲われると、寄生バチを呼び寄せるフェロモンを出すんだという。その臭いを嗅ぎつけて、どこからともなく寄生バチがやってくる。毛虫に卵を産み付けて、その被害を最小にするのだという。

これ、NHKの植物を扱った番組で紹介されていたな。植物は何かと騒がしく、会話をしているらしい。それに植物同士、生存競争にかまけるよりも、地下でつながって助け合うことで生き残りを図ってきたことが分かってきたという。

なんだか、そっちの方がうれしい。



テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『武蔵野 わがふるさと 田沼武能写真集』

“九条の会”傘下の、“マスコミ九条の会”呼びかけ人ということで、思想的にはまったく相容れない人。

世間への影響力を持っている分だけ困った人物ということになるのだが、武蔵野を「わがふるさと」として撮り続けた人。武蔵国に生まれて、武蔵野と武蔵の山野を歩いてきた身としては無視できない。少々お高い写真集だが、買ってしまった。

写真家として初めて文化勲章を受章。生涯現役を貫き、昨年2022年に93歳で逝去された写真家・田沼武能氏。ライフワークでもあった武蔵野の作品群は、現在の東京都西部をはじめ、北は埼玉県、南は神奈川県の北東部まで、古くは武蔵の国と呼ばれた地域を対象に、1964 年から2022 年までのおよそ半世紀を越えて撮影されたものです。田沼氏のこころのふるさとともいえる武蔵野の四季折々の風景は、時代の流れと共に激しく変貌しましたが、残された原風景とそこに生きる人びとの姿を描きとりました。

武蔵野は、野武士の生まれたところ。荒れ地を開き、泥まみれになって、一所懸命に土地を守って生きてきた人々の文化の息づくところ。田沼さんは1964年に武蔵野を取り始めたという。私はまさに、洟垂れ小僧だった頃。たしかに、まだその頃、武蔵野は往時の様相を濃厚に残していた。すくなくとも、生まれ故郷の秩父はそうだった。

現在、住んでいる街から、武蔵の山がほど近い。よく登る山の一つに関八州見晴台がある。標高771mの山頂で、近くにある高山不動の奥の院でもあるのだが、標識にも関八州見晴台とあって、山名表記がない。由来は安房、上総、下総、常陸、下野、上野、武蔵、相模が、すべて見渡せることに寄る。

これは現在でも可能で、空気が澄んだ晴れた日ならば、南東の方角に東京湾が光っていて、その向こうに房総半島が見える。つまり、関八州見晴台が聳える越生町から先、東京湾まで、ほぼ真っ平らということだ。

この山頂から見ても、国木田独歩の雑木林が美しい武蔵野は今はない。さらにその昔、武蔵野を覆っていたという原生林でも思い浮かべようものなら、気が遠くなるような、平らな空間だ。


『武蔵野 わがふるさと 田沼武能写真集』

株式会社クレヴィス  ¥ 3,300

昨年93歳で逝去した写真家が半世紀を越えて写し続けたライフワーク
安らぎ与える武蔵野           田沼武能
変わりゆく武蔵野に昔を求めて      川本三郎
《写真篇》
第1章 芽吹きを待つ(12月~2月)
第2章 あふれるいのち(3月~5月)
第3章 輝く夏の陽(6月~8月)
第4章 さわやかな風(9月~11月)
《資料編》
1 大陸より見たる武蔵野   鳥居龍蔵
2 荒野から東京時代へ    前島康彦
3 武蔵野の統治       土田直鎮


資料編に、武蔵野を読んだ幾つかの歌が紹介されている。

「露置かぬ 方もありけり 夕立の 空より広き 武蔵野の原」・・・これは太田道灌の歌だそうだ。「武蔵野は 月の入るべき 山もなし 草より出でて 草にこそ入れ」と読んだ人も入るそうだが、これは言いすぎだ。武蔵野の西は、奥武蔵や奥多摩の山にぶつかって果てる。たいてい月は、そこに入る。

また、「逢ふ人に 問えど変らぬ 同じ名の 幾日になりぬ 武蔵野の原」という歌もあるそうだが、これは実際にそう。日本武尊が筑波山あたりで秩父の奥に特徴のあるギザギザした山を見つけ、その山を八日間見続けて、ようやく行き着いたことから「ようかみさん」と名づけたという話がある。両神山の由来の一つである。日本武尊もその間の多くを、行けども尽きぬ“武蔵野の原”を歩き続けたわけだ。

「……私はそんな四季折々の武蔵野で生きる人びとと暮らしを写真に収め続けています。そこにはコンピューター万能の時代風潮から離れた昔ながらに連綿と続く人のこころのつながりがあります。厳しい農作業、そして収穫の後の祭りや祝い事など、私が訪れるたびに、まるで「ふるさと」に帰るような安らぎを与えてくれるのが武蔵野です。」
目次にあるように、ほぼ旧暦に合わせるようにして、写真が季節ごとにまとめられている。冬、春、夏、秋という順だ。そう、もともと私たち日本人は、この時間感覚で一年を過ごしていた。12月3日に行われる秩父夜祭りは、いよいよ厳しい冬の始まりだった。

雪、芽吹き、田んぼ、新緑、花、すすき、紅葉、季節ごとに移り変わる美しい風景。自然に結びつけられて行われる人の営み。畑、農作業、農村の風景。祭り。石仏。

懐かしい風景ばかり。ごまが天日干しされている写真があった、うちの小屋の壁に、ごまを立てかけて干してあるの様子が思い出された。カラッカラに干してから、むしろの上で叩いてごまを出すんだよね。手伝わされたことがあるけど、気の遠くなるような作業だったな。

失われたものを思い起こされて、切なさをかき立てられる。そんな本だった。時々、ぺらぺらめくってみよう。


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ジャンル : 本・雑誌

『野鳥図鑑350』 植村慎吾

監修は日本野鳥の会の会長さん。

冒頭に、監修の言葉を書いている。著者の植村慎吾さんは気鋭の鳥類研究者で、最先端の研究成果がちりばめられていて、これまでの図鑑にない味を出しているという。また、普通、研究者はバードウォッチャーと違い、鳥の識別はあまりできないらしい。それが植村さんは、その両方を兼ね備えているという。

つまり、鳥の研究への情熱に加え、バードウォッチャーとしての鳥好きが両立しているんだという。

ほう、そんなもんか。でも、私にはあまり関係ない。山に行くと、鳥の集まる、らしいところに、バズーカ砲のようなカメラを持った善男善女を見かけることがある。彼らのような辛抱強さは、残念ながら私にはない。もちろん、最先端の研究は、私には遠すぎる。

じゃあなんで、この本に手を出したか。個々の鳥には、さほど興味はなかったのだが、山を歩いていて色々な音が気持ちいい。川のせせらぎ、風の音、春せみの声、カジカガエルの声、鳥の声。いつからか、録音機を持ち歩いている。

この野鳥図鑑は、鳥の声を聞くことができるという。「山で聞いたあの鳥の声、なんていう鳥だったんだろう」なんて思っていたら、この本を見つけた。

この本の特徴の一つとして、認定NPO法人バードリサーチの「鳴き声図鑑」とリンクしていて、QRコードからその鳥の鳴き声が聞ける仕組みになっている。たとえばP256の「ヤマガラ」のページに行くと、ヤマガラの写真があって、その下にヤマガラを見ることができる月が表示されている。その下に、「生息地」「全長」「特徴」と、それとは別にヤマガラの話題が書かれている。

QRコードはヤマガラを見られる月の表示の右手にある。QRコードを読み取ると、ヤマガラの声が聞けるページのURLが表示され、そこに入ると、バードリサーチの該当のページに移動する。



『野鳥図鑑350』  植村慎吾

世界文化社  ¥ 1,980

野鳥の会推奨。日本で見ることのできる野鳥を1ページ1種類を基本として紹介
キジ目          カモ目
カイツブリ目       ハト目
アビ木          ミズナギドリ目
コウノトリ目       カツオドリ目
ペリカン目        ツル目
カッコウ目        ヨタカ目
アマツバメ目       チドリ目
タカ目          フクロウ目
サイチョウ目       ブッポウソウ目
キツツキ目        ハヤブサ目
オウム目         スズメ目


うちは、埼玉県のへそを自称する、東松山市。関東平野はこの辺りから少しずつ起伏が始まり、やがて奥武蔵の山につながっていく。ゴルフ場に山を削られてはいるが、周囲は緑に囲まれ、丘陵地帯は市民の森と呼ばれている。

朝、明るくなると、早速、鳥が鳴き始める。あまり気にしないでいると、うぐいすやカラスを除き、「鳥がたくさん鳴いている」で済ませてしまうのだが、この本で色々な鳥の声を聞いてみたら、少し認識が変った。

うちの近くでは、けっこう色々な鳥が鳴いている。台所の外でギャーギャー鳴いているのは、あれはオナガだ。時々、ガビチョウの無遠慮な声も混ざる。雨戸を開けると、雀が警戒して耳障りに鳴く。電線に留まるキジバトも鳴いている。変な鳴き方をする雀だと思っていたのは、アオジという鳥のようだ。そうそう、はす向かいの家に巣を作っているツバメの声も混ざっている。

自分の家にいても、けっこう、色々な鳥が鳴いているもんだな。

バードリサーチのHPを開いてみたら、鳥の世界も、何かと問題を抱えているんだという。絶滅したり、数を減らしてしまっている鳥。逆に増えすぎて、人間さまから煙たがられている鳥。鳥たちの分布や生態といった基礎的な情報を収集して現状を把握し、有効な対策を検討して、人間が自然と共存する道を探っていくために、バードリサーチは、アマチュア観察者からも情報を集めて、それを集約していこうとしているらしい。

それと同時に、人々の鳥に対する関心を高めるため、さまざまな工夫をしている。《鳴き声図鑑》も、その一つと言うことらしい。

QRコードで飛べるから、山に本を持っていって、鳴き声を聞きながら確認することもできるな。明日は久しぶりに山に行く。この本を持って行ってみよう。



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ジャンル : 本・雑誌

『きらわれ虫の真実』 谷本雄治

この本に出てくる“きらわれ虫”たちを考えてみると、私はそんなに虫嫌いではないようだ。

子どもの頃、脚が悪かったこともあって一人で遊ぶことの多かった私は、人よりも虫で遊ぶことが多かったような気がする。もちろん私にとってはただの遊びでも、虫にとっては命がけ。・・・私の部分をあなた、虫の部分を女に替えれば、演歌の歌詞になりそう。

アリの行列、蟻地獄の作ったすり鉢、木の根元などに作られた腹切り蜘蛛の巣、サソリの仲間じゃないだろうなと疑っていたハサミムシ、なぜか草むらではなく小屋で見つけることが多かったカマドウマ、コオロギも、ギッツと総称していたバッタ類も、私は遊びの対象にしていた。冬になっても、冬枯れした林に入って、隠れている虫を探して、無理やり遊んだ。

虫たちを相手に、どんな遊びをしていたのかは、言えない。教員をしていた頃、私が子どもの頃にしていた、小さな生き物たちとの遊びを、生徒に話したことがある。最初は面白がって聞いていた生徒が、次第に静かになり、おかしな雰囲気になって授業がやりづらくなってしまった。

虫遊びをしていない世代に本当のことを言ったら、人格を疑われてしまうことが分かった。一番興奮した虫遊びは、話さないでおいた。あれを話していたら、教師生命に関わったかもしれない。あぶないところだった。

そんな私にも、苦手な虫がいる。

スズメバチとヒルだ。



『きらわれ虫の真実』    谷本雄治

太郎次郎社エディタス  ¥ 1,980

家庭菜園に、納戸に、室内に・・・気づけばそこにいる侵入者の言い分
1章 田畑でバッタリ
2章 家でバッタリ
3章 レジャーでバッタリ


子どもの頃、東京の知らないおじさんが、私たちの遊び場にやって来た。おじさんは、私たちが捕まえてきたカブトムシを買ってくれた。いくらで買ってくれたか覚えていないが、東京のデパートでは、高い値段で売れるという話だった。

カブトムシよりも、スズメバチの巣の方が高いという話しを、誰かから聞いた。山姥の住む小屋のような家があって、そのうちにスズメバチの巣があった。それをとりに行って、もろくも返り討ちになった。スズメバチは、それ以来のトラウマだ。その後も数回さされているが。

ヒルには、三国峠で襲われた。地元では、そこにヒルが出るのは有名な話しらしかったが、私はまったく知らなかった。その日は、苗場山に登った翌日で、越後湯沢側から三国峠を経て三国山に登り、峠に引き返して猿ヶ京に下山する予定だった。

確かに、山の中に注意を喚起する看板があった。

《ヤマ○○生息地。注意!》

○○以外のところは黒い文字で書かれていた。○○のところだけ、違うインクで書かれていたのだろう。そこだけが消えてしまっていた。おそらく赤で強調してあったのだろう。

私は、高校山岳部時代の友人と二人だった。前日は梅雨にもかかわらず天気が良かったのだが、その日は霧が深かった。三国山周辺では楽しみにしていたニッコウキスゲも見ることはできなかった。三国峠から猿ヶ京に向かい、途中の東屋で霧に濡れた体をタオルで拭いた。そこにも、その看板があった。

「なんだろうな。ヤマがついて、2文字の名前」「ヤマクマ、ヤマたぬき」「ヤマザルだ」「わざわざヤマをつけるか?」「ヤマンバ!」「ヤマンバが生息していたら怖い」「ヤマビル・・・」

足を見ると、登山靴には数匹のヒルが・・・。周囲には、私たちに向かって体を伸ばすヒルがたくさん。すぐに荷物を背負って、猿ヶ京に走った。駆け下った。猿ヶ京の舗装道路に出たところで靴を脱ぐと、もう脚は血だらけ。裸同然になって、あちこちにくっついているヒルを、ライターやたばこの火で焼いて落とした。

以来、山歩きに塩は欠かさない。


テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『日帰り絶景ウォーキング 関東周辺』

来年は63歳になる。

妻も一緒。私が3月で、妻が4月。だから1ヶ月の違いしかないが、学年は私が一つ上。話を聞くと、小学生の頃、4年生くらいまでは、なにをやっても良くできるグループだったらしい。私は正反対。小さくて、ひ弱で、何をやってもうまくできない。この頃のほぼ一年の差というのは、やはり大きいよね。おまけに私は、先天性の股関節脱臼で、外遊びできるようになったのが、だいぶ遅かったようなので、尚更。

なんだか最初から不利を背負わされたようで、世間はともかく、妻に対して腹が立つ。腹は立つが、昔はかわいかったんだから仕方がない。コロナは収まりつつあるようだけど、妻は血圧が高くて、たまに不整脈が出るという持病がある。かといって、お出かけを先延ばしにしていると、いつ出かけられない状況になるか知れない。あまり人の出るところは避けて、静かに歩けるところを選んで出かけよう。

この間も、関東周辺の絶景を紹介する本を読んだ。今日紹介する本は、その絶景ポイントを含む、ウォーキングコースを紹介している。《日帰りでこだわりの「歩き」を楽しむための案内所》とある。ウォーキングコース途中にあるお土産や銘菓も紹介されている。


『日帰り絶景ウォーキング 関東周辺』

JTBパブシッシング  ¥ 1,650

関東周辺の一度は見たい絶景と、その周辺を楽しく歩ける45コース。
<春>
竹林公園(東京)/国営昭和記念公園(東京)/塩船観音寺(東京)
吾妻山公園(神奈川)/小田原城址公園(神奈川)/大山千枚田(千葉)
あしかがフラワーパーク(栃木)/鶴生田川(群馬)/四万川ダム(群馬)
小室山(静岡)/那賀川沿いの桜並木(静岡)/河口湖(山梨)
新倉山浅間公園(山梨)
<夏>
川越氷川神社(埼玉)/佐倉ラベンダーランド(千葉)/大波月海岸(千葉)
岡本桟橋(千葉)/館山崖観音(千葉)/屛風ヶ浦(千葉)
水郷潮来あやめ園(茨城)/石切山脈(茨城)/月待ちの滝(茨城)
霜降高原キスゲ平園地(栃木)/華厳の滝(栃木)/白糸の滝(静岡)
夢のつり橋(静岡)
<秋>
光が丘公園(東京)/飛龍の滝(神奈川)/仙石原すすき草原(神奈川)
巾着田曼殊沙華公園(埼玉)/養老渓谷(千葉)/国営ひたち海浜公園(茨城)
竜神大吊り橋(茨城)/もみじ谷大吊橋(栃木)/河口湖天上山公園(山梨)
碓氷峠(群馬)/保渡田古墳群(群馬) /吹割の滝(群馬)
<冬>
払沢の滝(東京)/芦ノ湖(神奈川)/宝登山蝋梅園(埼玉)/神磯の鳥居(茨城)
赤城大沼(群馬)/爪木崎(静岡) 西湖樹氷祭(山梨)



12キロ、13キロ、14キロというのもあったが、10キロもあれば長い方。

所要時間は1キロ15分程度で計算しているようで、10キロとしても2時間半ということになる。お土産や名産を見てまわったり、絶景に見惚れてしまえば、時間はもっとかかる。

うちからは圏央道も近いので、いろいろと便利がいい。だけど、下田や館山に行こうと思えば3時間を楽に越えてしまう。まあ、車で2時間近いところなら、泊まってゆっくり楽しみたいね。それこそ、下田や館山まで行って、日帰りじゃもったいない。

それにしても、この本には埼玉県の絶景が圧倒的に少ない。三つしかない。この間の本には結構載ってたんだけどな。

ええと。〈夏〉の氷川神社。これは川越だね。氷川神社の縁結び風鈴が絶景として取り上げられている。確かに氷川神社を含めて、小江戸と呼ばれる川越には歩いて回れる面白い場所が各所にある。だけど、夏の川越は暑いぞ。

続いて〈秋〉の巾着田。日高市巾着田の曼珠沙華ね。きれいだよー。八高線の高麗川駅から巾着田を含めて西武線の高麗駅まで、7キロを1時間40分で歩くことになっている。どうぞ、日帰りで訪れて下さい。

最後は〈冬〉の宝登山蝋梅園。これは長瀞ね。いいところだよ。秩父線の上長瀞の駅から、宝登山を含めて長瀞まで、7キロを2時間20分で歩くことになっている。巾着田と同じ7キロだけど、こっちは宝登山に登ってるからね。蝋梅園は山頂近くにあるんだけど、ここからの景色はいいよ。どうせ長瀞まで来るのなら、ライン下りも体験して貰いたい。

川越は、やはり夏を除いた、季候のいい時期にゆっくり歩いて貰いたいな。

それにしても埼玉が少ない。また誤解されちゃう。いいところ、たくさんあるんだよ。

さて、どこに出かけよう。妻は日光に行きたがってるんだけど、寒い時期になっちゃったな。


テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『ご当地絶景 関東甲信越』

最初に言っとかなきゃならない。《関東甲信越》とあるが、《関東甲信越静》だ。

“三十槌の氷柱”も選ばれている。知ってるよ。秩父の生まれだからね。大したもんだよ。一度だけ、見に行ったことがある。友人に連れて行ってくれと言われて、やむを得ず案内した。私は、もういいや。地元の“絶景”にケチをつけるつもりはないんだけど、ここは寒いんだ。見に行こうという人は、防寒対策をしっかりして行ってね。

秩父の冬は寒い。芯まで冷える。ここのところ、子どもの頃のような寒さはないとはいうが、それでも十分寒い。秩父夜祭りの行なわれる十二月上旬あたりから、秩父はぐんと冷え込んでいく。しかも“秩父市大滝”とあるが、そこはちょっと前まで“秩父郡大滝村”だったところ。周囲はほとんど奥秩父。そこにわざわざ“つらら”を見に行こうっていうんだから、寒さに寒さを重ねるようなもの。

その”大滝”の厳しい自然環境を、見事に観光資源に変えたのが、“三十槌の氷柱”というわけだ。私は寒いのが嫌だから行かないけど、皆さん、是非お出かけ下さい。

そうそう、中学生の頃、サッカー部に入っていて、時々、大滝中学校に練習試合に出かけた。そういう時、祖母からいつも、名物のまんじゅうを買ってくるように言いつかった。あれ、うまかったなぁ。調べたら、今でもあるらしい。大滝名物の“弥平まんじゅう”という。是非どうぞ。



『ご当地絶景 関東甲信越』

昭文社  ¥ 990

「開放感あふれる大パノラマ」「近くにあるけど知らなかった」一度は訪れてみたい絶景の最新版
犬吠埼灯台       たんばらラベンダーパーク  三十槌の氷柱
清里テラス       那須フラワーワールド       霧降高原
大山千枚田       大洗磯前神社           塩船観音寺
根本海岸        花貫渓谷           巾着田
美の山公園       澗満滝            さきたま古墳公園
大淵笹場        宝徳寺            白糸の滝
横浜ランドマークタワー 東京ゲートブリッジ      石切山脈
本栖湖         あしかがフラワーパーク    嬬恋高原キャベツ畑
嫗仙の滝        清津峡パノラマステーション  鹿野九十九谷展望公園
ほったらかし温泉    アートビオトープ那須     首都圏外郭放水路
鋸山          荒川河川敷麦なでしこ畑    湯西川温泉かまくら祭
渡良瀬遊水池      伊豆の国パノラマパーク    吹割の滝
小貝川ふれあい公園     英勝寺             堂ヶ島天窓洞
石神菜の花畑      小田原文化財団江之浦測候所  奥多摩湖
オランダ風車リーフデ    清水渓流広場          丹生のひまわり畑
新島          アプトの道


関東の絶景を集めた本。

調べたら、同じように《中部・東海・北陸編》、《東北編》、《中国・四国編》、《北海道編》、《関西編》も出ている模様。あれ、《九州編》はどうした。これから出るのかな。

関東編を見ると、さすがに行ったことのある“絶景”がいくつも選ばれていて、親近感が湧く。身近なところって、“行き慣れている”、“見慣れている”だけに、返ってその良さを見失ってしまいがちなところがある。

じつは子どもの頃にこんな経験がある。小学校の高学年の頃だ。秩父はまだ、さほど観光地化されていなかった。知る人ぞ知るって感じだろうか。夏休みのある日、浦山川で釣りをして帰る途中、影森の駅の近くで車に乗ったお兄さんから声をかけられた。「この先に、どこか良いところはないか」というようなことだった。秩父には“良いところ”があると思ってきたらしい。

影森より先となると、浦山、荒川村、大滝村しかない。“三峯神社”くらい思いつけば良かったんだけど、それが出てこなかったため、私は「ない」と答えた。お兄さんは怒ったような声で、「ないのかよ。どこで釣りして来たんだよ」という。川でいいのかと思い、私は浦山川のキャンプ場と、その近くの鍾乳洞の場所を教えやった。

それまで、そんなものが東京の人が言う“良いところ”だとは思っていなかった。案外、“絶景”というのも、そんなものなのかも知れない。

埼玉県から選ばれている巾着田と美の山。巾着田は曼珠沙華の時期、美の山は秩父が雲海に沈む時の美しさから選ばれている。その瞬間の“絶景”というものもある。それならば、私の行動範囲だけでも、まだまだ幾つでもあげられる。

“絶景”って、それが素晴しいことに気づけるかどうかってところもあるみたい。

さて、これらご当地の絶景は、いずれも一時間、二時間くらいで行き着けるところ。月に一度くらいは、連れ合いを誘って出かけてみるのもいい。帰りに団子でも食べてね。


テーマ : 日帰りお出かけ
ジャンル : 旅行

『カモフラージュ』 スティーブ・パーカー

すごい本だな。

高い本だけど、孫が来たときに喜ぶだろう。気に入れば持って帰らせようと思って、買ってしまった。ここのところ図鑑ブームだと聞いている。本屋に行くと、確かにいろいろな図鑑が棚に並ぶ。

美しいインクルージョンの鉱物図鑑、「感じがいい人」の行動図鑑、世にも美しい変形菌、最高の髪型解剖図鑑、最新版 ディズニー全キャラクター大事典、星ひとみの天星術超図鑑。・・・題名を見ても、なんの図鑑なんだか分からないようなものまである。

この本は生き物の図鑑の中でも、カモフラージュに長けたものたちを集めた図鑑。それを定義してみれば、「まわりと一体になったり、まわりに溶け込んだりすることで、遮蔽物がないところでも自分の存在が探知されるのを防ぎ、気づかれずにいること」ということになるそうだ。それは弱者の生き残り術。・・・とは限らない。強者が弱者を待ち伏せするために、その術を使う場合もある。

北米大陸に、チューリップツリービューティーというきれいな名前を持つシャクガがいる。尺取り虫が成虫になったガのことだが、これが樹木に止まって花を広げると、樹皮の模様と同じになってしまって、そこにいることさえ認識するのが難しい。写真で見てもそうなのだ。

ヨーロッパのバフチップというのもガの仲間なのだが、バフチップとは「折れた小枝」という意味だそうだ。このガは単に模様や色を模してカモフラージュするだけでなく、途中で折れた小枝になっている。

アフリカのゴーストマンティスは「逆さまの葉っぱの頭」という意味を持つカマキリ。カマキリの擬態といえばアジアのハナカマキリは知られたところだが、こちらは何枚もの枯葉が折り重なっているようにしか見えない。

ナナフシは世界中にいて仲間のこの羽虫を合わせると三〇〇〇種を超えるという。オーストラリアではチルドレンズスティックインセクトという名で呼ばれる。



『カモフラージュ』    スティーブ・パーカー

東京書籍  ¥ 3,630

様々な生物が生きるために“隠れる”様子を、すばらしい写真で紹介する
北アメリカ
中南アメリカ
ヨーロッパ
アフリカ
アジア
オーストラリア
海洋


目次に示したように大陸や地域ごとの章立てとなっている。さらに各章の中では、無脊椎動物、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類と類型ごとに整理されている。各大陸や地域ごとの、様々な生き物のカモフラージュを見ることができる。

もちろん驚嘆するのは昆虫ばかりではない。ヨタカの仲間の中には、朽ちた木と区別がつかない擬態をするものがいる。南米のハイイロタチヨタカが紹介されているが。この種は木にとまった状態で異変を察知すると、瞼を閉じて目を覆い、顎を伸ばす。するとただの折れた幹の姿になって硬直する。

色や形は変異と適者生存が重なったものと理解したとしても、その行為はどのようにして修得されたものなんだろう。不思議でならない。

すごいのは写真。どの一枚を取ってみても、写真として、それぞれが驚きの一枚。

雪原の雷鳥。ちらつく雪の中に翼を広げるシマフクロウ。流氷の上のホッキョクグマ。目玉模様で威嚇するユカタンビワハゴロモ。木の葉に潜むコノハヒキガエル。密林に潜むジャガー。複雑な模様が薄暗い自然界に融けてしまうスペインオオヤマネコ。変幻自在パンサーカメレオン。岩山をトラバースするヌビアアイベックス。水しぶきを浴びる日陰の土手沿いにはぶつぶつのコケガエル。高地の雪と岩に紛れるユキヒョウ。棘だらけの悪魔モロクトカゲ。形状変化の天才ミミックオクトパス。岩礁と調和する輪郭タイマイ。

一ページを使った大きな写真なのに、そのどこに生き物の姿が写っているのか遠近両用眼鏡を動かしてみたり、外してみたり。写真に目を近づけてそれを発見したとき、あまりにも近づきすぎたことを後悔するような生き物もいる。

ヘビの中でも最大級というビルマニシキヘビは、野生の魚類、カエル、トカゲ、小型のワニ、鳥類のほか、子羊や山羊といった大きさの家畜や、ヒトの子どもにも襲いかかるという不穏な逸話を持つ。

カモフラージュ能力も驚異的なのだそうだ。ヒトの目、おそらくたの動物の目も、規則的な反復パターンを読み取ることで多様な生き物を識別する。ところがビルマニシキヘビは暗褐色の不規則なまだら模様。ランダムなこの模様が他の動物の識別能力を妨げるのだそうだ。

写真で見ても、こんな大きなヘビを見落とすことはないと思うのだが、現地のニシキヘビ・パトロールレンジャーでも、つい踏みつけそうになることがあるんだそうだ。

私も学生の時は、教授の識別眼を妨げるために様々な擬態を施したものだ。しかし年寄りになって、分かり安い色で自分をアピールしないと、車に轢かれてしまいそうになることがある。

早く孫たちが来ないかな。一緒にこの本を読むのが楽しみだ。


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ジャンル : 本・雑誌

『本能』 小原嘉明

ルリノジコの渡りは夜に行なわれる。ただし、夜空に雲がかかっている場合、ルリノジコはただしい方角を目指すことができない。プラネタリウムを使った実験で、ルリノジコは北極星近くの複数の星が作る星座パターンを手がかりに、方位を確定していることが分かっている。

ホシムクドリは、渡りの方位を決める際に、太陽を羅針盤にしている。太陽は時間と共に位置を変えるので、それを補正しながら跳ぶことができる。鳩やミツバチの帰巣でも、同じ事が行なわれている。

太陽を、あるいは北極星を渡りの羅針盤にしている鳥がいる。いや、大半の渡りが、そうなのだろう。

この夏、何度か高原を訪れて、蝶を見た。なかでも、アサギマダラに惹かれた。あの、ふうわりふうわり、浮かぶように飛ぶ姿がいい。九州以北で成虫が見られるのは五月から一〇月くらいまでだが、南西諸島では逆に秋から冬にかけて見られる。


このアサギマダラ、春には南から北へ移動し、秋には北から南へと移動する「海を渡る蝶」「旅する蝶」として知られている。

夏場、高原に姿を現わすのも、下界の暑さを逃れてのことなのだろう。
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どうやら、アサギマダラは本州と南西諸島の間を移動しているようだ。長年のマーキング調査で、秋に日本本土から南西諸島・台湾へと渡る個体が多く発見され、または少数だが初夏から夏にその逆のコースで北上している個体が発見されている。

約二,五〇〇kmも移動する。一日に二〇〇kmを移動したという記録もあるという。あのアサギマダラが、・・・にわかには信じられない。海を渡るのか?波に乗って休むという話もある。

まさか、太陽や北極星を羅針盤にしているわけでもないだろう。移動のコースは黒潮に重なるという。黒潮の生み出す上昇気流にのって移動するという説もある。

アサギマダラの寿命は、羽化後四ヵ月だという。その四ヶ月を、旅に費やす蝶。不思議だなぁ。旅そのものが、本能なのか。



『本能』    小原嘉明

中公新書  ¥ 946

本能に基づく驚くべき行動の数々を紹介し、その本能の成り立ちを解説する
序章 動物の行動を支える本能
第1章 本能の深遠なる奇計
第2章 餌取り行動の収支決算
第3章 奮闘するオス
第4章 したたかに操り、選ぶメス
第5章 オスとメスの立場と都合
第6章 行動を組み立てる多様な組織期間
第7章 行動の司令塔
第8章 人間の本能


ゴキブリ目シロアリ科を本籍とするシロアリの中には、自らの排泄物で育てたきのこを食べる。さらにその上に排泄物を重ねて、継続的にきのこを栽培している。

セアカゴケグモのオスはすごい。漢字で書くと「背赤後家蜘蛛」と書く。メスが二五六ミリグラムの体重があるのに対し、オスはたったの四ミリグラム。著者は、大きなメスに比べて小さいオスは見つかりにくく、メスはいつも一人でいる夫のない後家さんと誤解され、この名前になったのではないかと言われている。

このクモのオスは、オスを食べるメスの隙を見てメスの腹部に取付く。そして自分の腹部の末端にある精子注入器官をメスの精子受容器官に差し込み、精子をメスに送り込む。その際、精子注入器官はオスの身体から離脱してその場に残り、メスの精子受容器官を塞いでしまう。そのため、このあとしばらく、メスは他のオスと交尾することができない。その間、精子注入器官は精子を送り続ける。

このあと、オスはなんと、その場で前転をしてメスの大顎の間に入ってしまう。つまり、メスに食べられようとする。実際、多くの場合オスはメスに食べられる。

食べるから後家になっちゃうんじゃないか。

この前転の意味は、二つ考えられているという。一つはメスがオスを食べる場合、オスを食べる時間も合わせて交尾全体の時間はおよそ二五分で、食べない場合の一一分に比べて倍になる。もう一つは、メスの再交尾の阻止。メスがオスを食べなかった場合、メスの再交尾率は九六%。それに対して食べた場合は三三%。三分の一に減る。オスの決死の前転は、自分の子を産ませるという点で、オスの利益になっているという。

それが本能というのも、なんだか悲しい。



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『本能』 小原嘉明

人間を含め、哺乳類の新生児は、生まれてすぐに乳を吸う。メダカの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに泳ぐ。草食動物の新生児は、生まれてまもなく四本足で立ち上がる。アカウミガメの新生児は、砂浜で孵化した直後から四本の足を適切に使って、一斉に、まだ行ったことのない海を目指す。いずれも、学習して獲得した能力ではない。

人間は乳を吸うだけだが、実は、なかなか難しいことなんだそうだ。それが最初から出来る。それが本能。逆に考えれば、人間も、本能から自由になることは難しい。

アメリカに生息するある蛍の雌は、驚くべきテクニックを使って獲物を狩る。蛍は光の信号でオスとメスが出会う。オスがオス特有の発光で生息地の上を飛ぶ。地上にいるメスは同種のオスの発光パターンを知っていて、これを感知すると、この種のメス特有の発光パターンでオスに応える。オスとメスは、これを繰り返して近づき、やがて出会って交尾する。

交尾したメスは、同種のオスの発光には返答しない。しかし、この種のメスは、同種のオスには応えないが、異種のオスの発光には、その種のメスの発光パターンで返答する。異種のオスは、自分と同種のメスからの返答と思い、そのメスに近づく。そのメスは異種のオスに、オスと同種のメスを装って誘うのである。異種のオスが交尾を期待して目の前に現れたとき、メスはその異種のオスをつかまえて食べてしまう。

ちょっと怖い本能だな。

オーストラリアの乾燥地帯に住むキリギリスは、同じような方法で、せみをつかまえて食べる。キリギリスがせみの鳴き真似をして、オスを誘うのだ。音の出し方もまったく違うのに、キリギリスはせみのメスの鳴き真似をし、せみのオスが接近すると、これを肢で捕まえて食べる。

生き残り、種を残すことを目的とした本能っていうのは、すさまじいもんだな。




『本能』    小原嘉明

中公新書  ¥ 946

本能に基づく驚くべき行動の数々を紹介し、その本能の成り立ちを解説する
序章 動物の行動を支える本能
第1章 本能の深遠なる奇計
第2章 餌取り行動の収支決算
第3章 奮闘するオス
第4章 したたかに操り、選ぶメス
第5章 オスとメスの立場と都合
第6章 行動を組み立てる多様な組織期間
第7章 行動の司令塔
第8章 人間の本能


ライオンは一夫多妻で繁殖する。そのため、メスとの生殖の機会に恵まれないあぶれオスがでる。あぶれオスは放浪し、生殖の機会をうかがう。あぶれオスは一夫多妻の群れを見つけると、そのオスに挑みメスをかけて戦う。あぶれオスが勝った場合、彼は多くのメスとの生殖できることになる、

しかし、そのメスが子育てに従事している場合、メスの発情は抑止されていて、メスは生殖を拒む。その拒絶期間は二年近くに及ぶ。新たな挑戦者はいつ現れるか分からない。

このようなケースで、乗っ取りオスによる前夫の子の殺害が行なわれる。子を殺されたメスは、二・三日後には発情し、子殺しを断行したオスを受け入れる。

同じ事を、群れを作らない熊もやっていた。熊のメスは冬眠中に子どもを産んで、野草の新芽が芽吹く春に冬眠をあける。体力を回復するためにたくさん食べて、六~七月といった初夏に交尾の時期を迎える。

この時、メスが子育てをしていると、メスの発情が抑止されてしまう。だから、この時期に子育て中のメスに出会ったオスは、メスの連れている子を殺す。

メスも子を殺す場合がある。ヨーロッパのイエスズメは、基本的には一夫一妻だが、一夫二妻で繁殖するオスもいるという。オス全体の一一%が一夫二妻になるそうだ。二羽のメスを得たオスは、妻が子を産んだあと、一羽のメスの子の子育てしかしない。オスは早く雛を孵したメスの巣に留まり、そこの子育てを手伝う。第二のメスはオスの協力を得られないため、苦境に立たされることになる。

そのため第二のメスは、隙を見て第一のメスの巣に忍び込み、そこの雛を突き殺してしまう。第一のメスの雛がすべて突き殺されたとき、オスは第一のメスの巣を去り、第二のメスの巣にやってきて、そこの子育てを手伝う。

幼児虐待、幼児殺人の犯人が、母親の交際相手だというのは、よくある話だ。その背景に、交際相手である女性の連れ子を養育することに、専心できないオスの本能が垣間見える。

子の父親であるオスがいない、メスと子だけの家に発情した他のオスがいること自体が、人間にとって不自然な状態だと考えなければならない。肉食獣に狙われて数を減らす人間は、たくさん生んで集団を維持しなければならなかった。集団生活をする人間は、生まれた子を周囲の女たちが面倒をみることで、母親はすぐに次の妊娠をすることが可能になった。

“周囲の女”とは女の血縁であることが多いだろう。母、姉、妹が身近に暮らしていたということだ。一族で暮らしてきた時代とは違う。今は、母、姉、妹に代わる存在が、子を産んだメスには必要になる。その集団を、上手につくることが、今の私たちには必要なんだろう。


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こんな本、あんな本
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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。

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中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。

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高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。

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今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本
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