めんどくせぇことばかり 2015年11月
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『地球はもう温暖化していない』 深井有

NHK気象予報士森さやかさんの流している情報 2015/11/15
温暖化の危機 このまま続けば世界で水没都市、続々と・・・
http://bylines.news.yahoo.co.jp/morisayaka/20151113-00051405/
(抜粋)
 Climate Centralによると、温暖化がこのまま進み、世界気温が産業革命前と比べて4度上昇すると、海水が8.9メートルも上昇し、現在6億7000万人が住む場所が水没するかもしれないといいます。ただ、温度上昇を2度まで抑えると、2億8000万人まで減らせるだろうとのことです。
 残念なことに、この海面上昇により最も被害の出る上位6カ国はすべてアジア諸国です。その順番は一番目から中国、インド、バングラデシュ、ベトナム、インドネシアで、日本が6番目にランクされています。日本だけで、およそ3400万人に影響が出るおそれがあり、それは、まさに人口の約3分の1に匹敵する人数です。
平凡社  ¥ 820(税別)

えっ❢ もう、時価になってる? 出たばっかりの本だよ。日本ってそういう国なんだ
もう、正規には、この本売られてないようなんです。新品はもう売ってません。一体どこから平凡社に圧力がかかったんでしょうね。だって、第一刷発行が2015年10月15日ですよ。まだ二カ月もたってないんですよ。やはり、「11月30日からCOP21が開催されるのに、邪魔してるんじゃねーよ」ということでしょうか。最初に紹介したNHKのお姉さんみたいな情報のほうがよろしかったんでしょうか。でもね、そんなことやってると日本は大きく国益を損なうし、影じゃ間違いなく笑われてるよ。

頭にくるので、売られてないんだったら、本の内容まで含めて紹介しちゃお。・・・何回かに分けて・・・。

1998年以来、CO2は増え続けているのに温暖化はまったく起こっていない。IPCCは2007年の第4次報告書まで気温の頭打ち現象に目をつぶってきた。しかし、頭打ち現象が20年近く続くことになったため第5次報告書では触れないわけにいかなくなった。IPCCの見解は、『何らかの自然要因で温暖化が「一休み」している』というものであった。

IPCCのこれまでの研究では、CO2の増加は必然的に気温上昇をもたらすことを前提としているため、最近16年間の頭打ちとは完全に矛盾することになるが、そのことに関する言及はない。のみならず、第一部「自然科学的根拠」の簡約版である「政策決定者向け要約」によれば、地球温暖化が人為的要因によるものであることが2007年の第4次報告書よりさらに強調されている。第二部「影響・適応・ぜい弱性」、第三部「気候変動の緩和策」では、この「自然科学的根拠」に基づいて、さらに温暖化の脅威をあおる記述がされている。

トレンバース(第2・3・4次報告書主筆)の2009年10月12日の仲間へのメール
「温暖化が起こらなくなった原因は今のところ説明できない。我々プロにして、こんなことができないとはお笑い草だな」

フィル・ジョーンズ(CO2温暖化論の中心人物)の2005年7月5日のメール
「もし自分が1998年以降、気温低下が起こっていたと言ってしまったら、世間から袋だたきにあうに違いない。その現象は実際に起こっているんだが、まだ7年間だけだから、統計学的には意味がないと言っておけばいいだろう」

温暖化が頭打ちしている状況に何らかの説明を加えざるを得なくなった第5次報告書では、第4次報告書で示されていた緯度・高度分布を示す図としての気候モデルと気球・衛星による観測結果から、観測結果が削除された。「実測データの不正確さが大きいため実測と気候モデルとの不一致を議論することはできない」と、実測と合わなくなった気候モデルの欠陥よりも、何十年にもわたって蓄積された気球と衛星による実測データの欠陥を問題にするに及んだ。

続く







 


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櫛名田姫(覚書)『姫神の来歴』 髙山貴久子

「櫛田神社」
「クシ」は「霊妙な」、「神秘的な」。漢字で書けば「奇し」。だから、「霊妙な力の宿る田」。櫛田神社から思い浮かぶのは、たわわに実った稲穂を持つ女神の姿。

「櫛名田姫」
稲田を守護する神。八重垣神社では須佐之男命と結婚したことにより、縁結びの神、夫婦和合の神。くまくましき谷=熊谷で須佐之男命の子、八島士奴美神(やしまじぬみのかみ)を生んだ。八岐大蛇の伝説から、蛇神と神婚して稲作の豊穣を祈った巫女とされている。

『櫛田明神縁起』によれば、異国征伐の神で、元寇のときにお告げで「われ異国征伐のため博多の津に向かう。わが剣を博多の櫛田に送るべし」とある。合戦の最中に海上に数千万の蛇が現れる。のちに櫛田の神のお告げがあり、「疵はこうむりはしたけれども、蒙古はすでに降伏して国へ帰った」とおっしゃった。博多の櫛田に納めた剣を本社の櫛田宮に遷そうと剣を入れた箱の封を解いたところ、一匹の蛇が体をぐるぐると剣に巻きつけ、頭を鍔に打ちかけており、さながら倶梨伽羅明王のようであったという。

「異国征伐の神」と櫛名田姫をとらえた場合、蛇はその眷族か、あるいは姫の化身か。そう考えると、櫛名田姫自身が蛇を神といただく一族の女神ととらえることもできる。

須佐之男命の退治した八岐大蛇とは、蛇を神といただく一族の王と考えることができる。須佐之男命はこの王を倒して一族を服属させ、その証として櫛名田姫を妻としたと考えられる。ここは、「出雲国肥河上、名は鳥髪という地」とあり、斐伊川上流船通山周辺で島根県仁多郡奥出雲町。出雲風土記には仁多郡を治めたのは大穴持命とあり、これは大国主命の別名であるから、櫛名田姫の一族の王であった八岐大蛇とは、大国主命その人であったことになる。

大国主の妻をすべて櫛名田に置き換えて見ると、須勢理比売、瀬織津姫の名が上がる。瀬織津姫は鹿児島県の厳島神社に市杵嶋比売、田心比売(たごりひめ)とともに瀬織津比売として祀られる。勧請元の広島県の厳島神社では市杵嶋姫、田心姫と並んで湍津姫が祀られていて、瀬織津姫が瀬織津姫とも呼ばれていたことがわかる。

大国主とともに幾通りにも呼ばれていた櫛名田の神名を利用して、須佐之男は出雲神話に紛れ込む。一方では大国主を八岐大蛇斗言う怪物に仕立て上げ、それを退治して櫛名田姫を妻とする英雄となる。一方では大国主の正妻に須勢理比売という神名を用いて大国主の父の位置に自分の名を記す。

そんな手の込んだことをしなければならなかった理由は、須佐之男が出雲国の王権を得る正当性がまったくなかったにもかかわらず、大国主から力づくでそれを奪い取ったからである。また逆に、彼が完全に異邦人であるならば、もとよりその正当性に執着する必要はない。ゆえに、彼は外から来た人物ではない。

須佐之男は、乱暴狼藉により高天原を追放となるのだが、一説によれば新羅に国外追放されている。そこから舞い戻り、出雲で大国主を倒して国を奪った。

そこで著者が見つけ出したのが天日槍。新羅の国の王子として日本に渡り、但馬国で子孫を残したと記紀にある。さらに播磨国風土記にその名がある。『葦原志許乎命と天日槍命の二人の神が、この谷を奪い合った』と奪谷の名の起源を説明する。葦原志許乎命は大国主のこと。天日槍を須佐之男と考えれば、上記の説が補強されることになる。

新羅第四代国王脱解尼師今にはいわくがある。『三国史記』によれば、「脱解は、倭国の東北一千里のところにある多婆那国で生まれ、父は多婆那国王、母は女国の王女である」という。つまり日本からやってきて新羅王となった男がいる。しかしその子は王位についていない。
『姫神の来歴』      髙山貴久子

新潮文庫  ¥ 529

古代氏をくつがえす、国つ神の系図
いくら琴奨菊でも、その体制で、その位置からがぶり寄りには入らない。あれだけのがぶり寄りに走ったのは、おそらく著者には結論が見えていたからではないか。その結論とは、・・・もちろん、あの夢。何者かが著者の夢に入り込み、著者の夢の記憶に「あの人は、兄上の妃になるはずの人だったのに、寝取られてしまった。この国の正当な統治者は私たちの方なのに。いまに、あの者たちを追い落としてやる」と言う言葉を残した、・・・あの夢。

絵空事のように思える神話に書かれた物語。著者は、そのことごとくに意味を与えたがるが、人は後付けの物語も作れる。この間も書いたが、太い糸もあれば、細い糸もある。千切れてどこにつながっていたのか分からない糸もある。すでに用意された物語を前提に、すべてを一貫した意味で統一しようとするならば、・・・神話は絵空事として語られた方がふさわしい。

でも、「櫛田神社」の由来から、櫛名田姫を蛇を祀る一族の巫女ととらえていくあたりは興奮して読んだ。この間も書いたけど、この本の真骨頂は、そんなところにあるんじゃないかな。その意味で、この本にはとても大きな意義を感じてるんだけどな。






 


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『大和言葉のこころえ』 山岸弘子

なんだか《大和言葉》が注目されているそうで、ちょっとこんな本を、・・・ペラペラと・・・。なんかのときに、こんなむかしからの日本語をさり気なく使えたらいいなあって本ですね。

ただね、このむかしから使われている日本語って、あらためてこうして口に出してみると、なんかその時点で言葉の持つ効果が発揮されているみたい。

下に、目次に紹介されていた大和言葉だけ、そのまま紹介してみたんだけど、これらの言葉には《意味》によるはたらきの他に、《音》によるはたらきが感じられる。
ギャンビット出版  ¥ 1,296

品の良い日本語と大人のたしなみ
あいさつ
花笑み/のどやか/花冷え/青嵐/涼風/ひと雨ほしい/しのぎやすい/すすき梅雨/初紅葉/一入/雪を粧う/北颪
もてなす
お運びいただき/あいにくの/お平らに/お気遣い/彩り/おもたせ/粗茶/一献/お口汚し/
水菓子/お粗末さま/よろしい
招かれる
お招き/お心にかける/おかまいなく/心ばかり/しるし/お変わり/いただく/食事を済ます/
お手洗い/のっぴき/お言葉に甘える/あしらい/おいとま/痛み入る/押しかける
お勤め
今しがた/ありてい/あらまし/いかがなさる/おおむね/裏目に出る/かねがね/
折り合いをつける/けんもほろろ/かしこまる/かんがみる/汲み取る
耳を傾ける
持ちつ持たれつ/目鼻がつく/悲喜こもごも/とりつめる/側杖をくう/よんどころない/
腑に落ちない/やるせない/そりが合わない
たしなめる
いたたまれない/しどけない/耳を傾ける/がんぜない/実のない/あだやおろそかに/
なおざり/なまなかな/うまずたゆまず
頼みごと
お見知りおき/生業とする/お手すきのときに/おいそれとは/恥を忍んで/お気に召す/
大人しやか/一方ならぬ
言祝ぐ
縁/二世の契り/言祝ぐ/なれそめ/益荒男/たおやか/むつまじい/見目うるわしい/
たたずまい/いとおしむ/陰になり日向になり/埴生の宿
贈り物
納める/人交わり/敷居が高い/お骨折り/内祝い/お目通りがかなう/本卦帰り/数ならぬ身/いとう
お礼状
ゆくりなし/うれしゅう/心づくし/賜る/笑みがこぼれる/悦に入る/松がとれる/お健やかに/
お気遣いなく
したためる
人いきれ/すずろ歩き/名にし負う/凪ぐ/つづら折り/すずなり/たなびく/入相の鐘/筆の遊び
別れを惜しむ
お悔やみ/胸ふさがる/虫の知らせ/袖を濡らす/みまかる/あまつさえ/しめやか/
野辺の送り/手向ける

それぞれ項目ごとに【大人のたしなみ】というコーナーがあって、ここでは言葉を超えた振る舞いが紹介されている。振る舞いも、やはり《動き》そのものにはたらきがありますよね。

上に紹介した内容に加えて、《季節感のある大和言葉》、《おもてなしの大和言葉》、《美しい響きを楽しむ大和言葉》、《表現を豊かにする大和言葉》が、その用法とともに数多く紹介されています。お休みの日の、なにもすることがない昼下がりあたりに、ゆっくりとお茶でも飲みながら読んでみてはいかがでしょうか。

最後に《言い換え小事典》というのがあって、今風の言い方やカタカナ言葉を大和言葉にするとどんな言い方になるかが紹介されていて、かなり面白い。《マンネリ》は、大和言葉だとなんだと思います。《秋風が吹く》ですって。《スリム》を、痩せ型じゃなくて、《柳腰》ってしてるのには感心してしまった。《秘め事》なんていいですね。《契りを結ぶ》なんてどうでしょう。

・・・私ってまったく・・・





 


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書き換えられた歴史(覚書)『古代史 50の秘密』 関裕二

斉明(皇極)天皇が古代史の鍵を握る一人。・・・そうなんだ。・・・ダメだな。そう言われてもピンとこなかった。
斉明(皇極)天皇は舒明天皇に嫁ぐ前、蘇我系の高向王と結ばれ、漢王を生んでいた。皇位継承権のない「蘇我の漢王」を「蘇我系の天皇候補・漢皇子」に化けさせるために、天皇に担ぎあげられた。

その斉明(皇極)天皇の目の前で、中大兄皇子は蘇我入鹿を殺している。蘇我系の漢皇子が天皇になれば、もはや自分に出番はない。そんな立場の中大兄皇子に中臣鎌足がクーデタを囁いたのではないか。中臣鎌足は蘇我氏の進める律令制導入に対する反改革勢力の情報を持って中大兄皇子に近づいたことだろう。

著者は以前から、この中臣鎌足こそ百済王子豊璋だろうという意見を表明している。大陸に強大な力を備えた統一王朝が誕生し、それにともなって挑戦の状況が流動化している以上、蘇我氏の採用した全方位型の外交はまったく正解である。鎌足の正体が、もしも著者の言うとおり百済王子豊璋であるとすれば、中大兄皇子・中臣鎌足の共闘と、白村江の戦いで日本を滅亡の淵に立たせる無謀な政策にも理屈が通る。

もう一つ、興奮させられたのは、クーデタ後、歴史から姿を消した漢王子こそが大海人皇子ではないかというのだ。白村江の敗戦で政権の維持さえ危うくなった中大兄は、蘇我系の大海人を皇太弟に指名することで政権を持続させた。その後、危険を予知して吉野に隠棲した大海人は、中大兄の死後、大友を壬申の乱で倒し、いよいよ皇親体制を確立して親蘇我派悲願の改革に邁進していく。

新潮文庫  ¥ 529

気鋭の歴史作家が埋もれた歴史の真相を鮮やかに解き明かす。文庫オリジナル
天武崩御ののち、天武の御子ではなく持統が即位する。ライバル大津を粛清して即位させようとした草壁が早逝してしまったとはいえ、六八六年に天武が崩御したのち、持統が即位するのは六九〇年。無難に即位したわけではない。

即位した持統は鎌足の子、不比等を大抜擢する。天智・鎌足の関係が、持統・不比等に置き換えられた。『天武の遺志を継承する』ことが即位の前提だったろうが、この時点で親蘇我派政権は反蘇我派政権に置き換えられた。

親蘇我派と天武天皇の進めてきた中央集権システムへの改革は、律令制の体裁を取りつつも、藤原氏に権力と富が集中されるだけのシステムに書き換えられた。


同時に、歴史の書き換えが行われた。藤原不比等のもとで『日本書紀』が成立する。蘇我氏が聖徳太子以来進められた改革を阻害し、それを中大兄皇子と中臣鎌足が倒した。反改革派の頭目たるソがした倒されたことで、その後改革は一気に進められた。そう語られるようになった。

中大兄皇子と中臣鎌足の実行したクーデタ以降、かつて力を有した豪族たちは、藤原氏の暗躍によって次々と潰されていった。藤原氏は皇族を罠にはめることさえまったく躊躇するところがなかった。異様な残忍さである。

やはり著者の言うとおり、中臣鎌足=百済王子豊璋ってあたりが、そういうところに出ているのかもしれない。
内容的には、二〇一二年に出された『古事記の禁忌 天皇の正体』とほぼ同じ。その時と同じ著者に対する小さな不満を入れときますね。
もちろん私は、“関説”のすべてを受け入れているわけではないし、まだ満ち足りない部分を多く抱えている。中大兄皇子のたびたびにわたるテロ行為がなぜ容認されたのか。持統、不比等の百済路線がなぜ容認されたのか。それを許す、あるいは阻止することに、周辺がいかに関係してくるのか。また周辺は、どこまでが国政レベルに関与できたのか。こういった部分に対する疑問が、著者の説の幾つかを、少々唐突に思わせてしまっている。

やっぱり、さすが関裕二さんの本。《覚書》用のメモとして、けっこう記事に残してしまった。それにしても、藤原氏。まったく天智、持統の親子ってのは、追い詰められたとは言っても、とんでもないやつを舞台に引き上げちゃったもんだな。そのことは間違いないことだろうな。






 


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『出雲と大和 古代国家の原像を訪ねて』『「神社」で読み解く日本史の謎』『古代史 50の秘密』 

岩波新書  ¥ 907

大黒さんとも呼ばれて民間に親しまれてきた大国主神信仰の背景には・・・
序章 三輪山幻想
第一章 出雲王国論
大国主神の分身たち   磐座祭祀をたどる  『出雲国風土記』の地政学 四隅突出墓をたずねて
第二章 邪馬台国の終焉
北九州の古代遺跡を歩く 邪馬台国はどこにあったか  邪馬台国と大和朝廷  邪馬台国の終焉  
「神武東征」説話
第三章 大和王権の確立
「国譲り」とは何だったのか 伊勢神宮の成立 出雲系諸氏族の動向  出雲系葛城氏の動向  
大和王権と吉備
第四章 出雲国造 その栄光と挫折
国造の世界  「神賀詞」奏上  熊野大社  出雲国造の本拠  出雲大社はいつ創建されたか  
国造家の歴史に陰り
終章 再び惣社へ 
なぜ、大国主はじめ、大和朝廷以前の神々が、全国の神社に祀られているのか。本拠地大和においてさえそうである。それが、著者の探求の動機だったそうだ。


PHP文庫    ¥ 756

「清盛出生の謎」、「桶狭間合戦の実相」、「家康が将門を尊崇したわけ」・・・神社からしか知り得ない“真実の歴史”
伊勢神宮は八咫鏡の祀りどころ。八咫鏡は天照大神の御霊代だから、伊勢神宮は天照大神が祀られたということ。この本は『なぜ伊勢に神宮が置かれ、式年遷宮が生まれたのか』と名付けられた第一章で、その辺のところに触れています。

新潮文庫  ¥ 529

気鋭の歴史作家が埋もれた歴史の真相を鮮やかに解き明かす。文庫オリジナル

その36番めの秘密として語られるのが、『天照大神は女神なのか?ー伊勢神宮の謎』

『神話の中で天皇家の祖神天照大神は、最初、大日孁貴(おおひるめのむち)として登場する。これは太陽神を祀る巫女で、いつの間にかこの巫女が天照大神と名を変えて、太陽神そのものに化ける』

著者は他の本でもそう書いているけど、やっぱり持統天皇を天照大神に、孫の文武天皇を天孫ニニギになぞらえて、その系譜の正当性をアピールするものだったのかな。だとしても、面倒なことをしてくれた。悪者は悪者らしく、越後屋は越後屋らしくしといてくれれば、こんな面倒な事にはならなかったのに。

天照大神には斎宮が奉仕する。斎宮は天皇の親族で、未婚の女性が任命され、任を解かれても生涯独身を通すことが原則だったという。これって天照大神の妻になるということだよね。

鎌倉時代の僧、通海が書いた『通海参詣記』には斎宮の寝床には、毎夜伊勢の神が通ってきて、毎朝かならずウロコが落ちているという。

「独り身で寂しい」と泣き言を言う天照大神のために、朝夕の御饌を奉る神として丹波から豊受大神という女神が勧請され、外宮に迎えられた。

いずれも、天照大神が男性神であることを示している。

そう言えば、日本神話の中に、もう一人、蛇の姿になって女のもとに現れた神がいましたね。倭迹迹日百襲姫命は三輪山の神、大物主神の妻になったが、蛇になって現れた夫の姿に悲鳴を上げ、夫に恥をかかせたっていう話。大物主神は大国主神の和魂であるという。


謡曲『三輪』は、三輸山の麓に庵室をかまえている玄賓僧都のもとに女姿の三輪明神が現われ、三輪の妻問いの神話を語り、天照大神の岩戸隠れの親和を物語って神楽を奏で、夜明けと共に消えてゆくという話。その最後に歌われるのが次の歌。
天乃岩戸を、引き立てて神は跡なく入り給へば、常闇(とこやみ)の世と、はやなりぬ。八百萬の神達。岩戸の前にてこれを歎き、神楽を奏して舞ひ給へば、天照大神その時に岩戸を、少し開き給へば、また常闇の雲晴れて、日月光り輝けば、人乃面しろじろと見ゆる 。おもしろやと、神の御聲乃妙なる始めの、物がたり。
思へば伊勢と三輪の神、思へば伊勢と三輪の神。一體分身乃御事今更何と磐座や。
その関の戸乃夜も明け、かくありがたき夢の告。覚むるや名残なるらん、覚むるや名残なるらん。

「天照大御神と大物主大神は本来一体の神で、そんなことは言うまでもない」・・・ですってさ。



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『地球はもう温暖化していない』 深井有

本のカバーに、『物理学者からの警鐘❢気候変動の主役は、CO2ではなく太陽だ』という言葉とともに、以下のように書かれている。
日本では疑う余地はないと思われている二酸化炭素による人為的な地球温暖化。未だに温暖化による危機が声高に叫ばれているが、驚くべきことに、データ上は20年近くも温暖化は進んでいない。さらに、太陽学や古気候学の最新知見から予測すると、今後太陽の活動が弱まり、「地球寒冷化」の可能性すらあるのだ。

CO2濃度は年々増加しているが、ここんところ一八年間気温は上がっていないってさ。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)も『第五次報告書』でそれを認めてるらしい。・・・にも関わらず・・・だ。にも関わらず、IPCCは恥知らずにも「気温上昇は確実になった」とうそぶいたという。報告書は数千ページに及ぶ報告書。

読まないって・・・。おそらくは専門家でさえ、・・・そんなもの。それをいいことに、このIPCCの奴らときたら。

平凡社  ¥ 820(税別)

えっ❢ もう、時価になってる? 出たばっかりの本だよ。日本ってそういう国なんだ
第1章  CO2温暖化論が破綻するまで
第2章  太陽が主役、新しい気候変動の科学
第3章  あまりに政治化された「地球温暖化」
第4章  今後とるべき政策を考える
さっき、税込の値段を載せようと思ってamazonで調べようと思ったんだ。そしたらね。もう、正規には、この本売られてないようなんですよ。新品はもう売ってません。時価は出てた。amazonだと、1,299円からだそうです。一体どこから平凡社に圧力がかかったんでしょうね。官邸でしょうか。だって、第一刷発行が2015年10月15日ですよ。まだ二カ月になってないんですよ。

CO2排出量を減らすための国連主導のキャンペーンに毎年数十兆円のお金が使われているという。日本は温暖化防止のために四兆円もの支出をしているそうだ。この四兆円の浪費でGDPを年間一~二%、金額にして五~一〇兆円押し下げているという。それを加えると本来私たちが自分のために使えるお金が年二〇万円もすっ飛んでいるという。


JCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)-http://www.jccca.org/info/2015/11181207.html-の報告によれば、『日本は2030年度に2013年比で温室効果ガスを26%削減する約束草案を提出しています。なかでも、私たちの暮らしに関係する家庭部門CO2 については約40%の削減目標を掲げています』ということです。JCCCAはこれを、「日本国民の果たす責任」と言ってます。

私はそんな約束をした覚えはないぞ❢・・・ないぞ、ないぞないぞ・・・ 

いったい私は、誰に騙されてるんだ。
  • 年々暑くなっていると我々が感じるのは、都会の「ヒートアイランド現象」というローカルな理由による。狭いところに集まって、大量の熱を放出するためだ。そもそも、気温測定が正しく行われているか?という基本的な測定環境の問題がある。夏の暑い日、芝生の上で、25度である時に、コンクリートの上では、10度以上も高くなる。アメリカの観測ステーションを調べたところ、測定誤差が1度以下のもの、わずか10%。
  • 一九八二年~二〇一〇年の二九年間に、CO2増加一四%の影響で、世界の植生の被覆率は一一パーセント増加している。
  • サハラ砂漠の緑化も進んでいる。
  • 二〇〇九年、クライメートゲート事件を受けて、十一月には豪で、十二月には仏で、温暖化対策法案が否決。
  • 二〇一〇年六月、米でも法案実現せず、下院地球温暖化特設委員会解散。
  • 二〇一〇年十一月、加で下院を通過した法案が、上院で否決。
  • 二〇一三年、豪で気候変動・エネルギー省が廃止。二〇一四年にはCO2排出削減を目的にした炭素税を廃止。
  • 二〇一四年、英で気候変動関係の組織改編、関連予算四一%カット。
  • 二〇一四年五月、欧州議会選挙で懐疑派が大躍進。
  • 二〇一四年の気象サミットで、潘基文国連事務総長の呼びかけに対して、独、印、英、加、豪、露、中の首脳が欠席して事務総長と開催国のオバマ大統領を慌てさせた。
  • 二〇一五年三月、スイスで炭素税導入案が国民投票で否決。





 


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『姫神の来歴』 髙山貴久子

面白かったな。

丹念に資料をあたって敏感に材料を嗅ぎ分け、材料と材料を比べ合わせて吟味し、全国に残る伝承や神社に伝わる話をつなぎあわせて大胆に推理を展開する。さらにその推理を裏付けるものはないかと、記紀を始め古今の文献をひっくり返したり、さらに戻って伝承をあたったり・・・。

学者先生の史料絶対主義では絶対に辿りつけない境地だな。『逆説の日本史』の井沢元彦さんもはげしく攻撃していた部分でもあるけどね。

それにしても、著者の髙山貴久子さん。ある程度狙いを定めてから、その焦点に迫っていく勢いはものすごい。まるで、絶好調時の琴奨菊の怒涛のがぶり寄り並だ。

『姫神の来歴』      髙山貴久子

新潮文庫  ¥ 529

古代氏をくつがえす、国つ神の系図
櫛名田姫  上之巻
櫛名田姫  下之巻
丹生都姫  上之巻
丹生都姫  下之巻

本当に面白かった。「自分でもこういうことやってみたいな」なんて、できもしないことを考えてしまった。まあ、出来ないまでも、時間ができたらアチラコチラと歩いてみて、神社があったら由緒を調べて、人がいたら聞いてみて・・・、なんかとても楽しそう。

読んでいて面白かった。だけど、それを受け入れるかどうかといえば、それは別のこと。道理が引っ込みたくなるくらいに無理を通してしまってるところがあるように思う。

求めようと思っても、伝承すら途絶えてしまっているものは、世の中には数知れない。・・・伝承などというものは、残されていることが奇跡。そう思うのが当然。太い糸も細い糸もある。著者にはつながっているように見えるようだけど、傍から見れば途切れているとしか思えない糸もある。そんな糸をつかんだつもりでがぶり寄っても、みじめに土俵に転がるのは自分の方。

ここで著者がとりかかったのが、櫛名田姫と丹生都姫。いずれ劣らぬ人気の姫神。それが都合よく実体にまで行き当たるなんて、あんまりにも出来過ぎ。出来過ぎると頭を捻っちゃうのは、私みたいな天邪鬼の真骨頂。

かと言って、この本の価値は疑わない。上に書いたけど、『丹念に資料をあたって敏感に材料を嗅ぎ分け、材料と材料を比べ合わせて吟味し、全国に残る伝承や神社に伝わる話をつなぎあわせて大胆に推理を展開する』って手法は、古代のみならず、これからの人が歴史を検証していく大きな武器になるんじゃないかな。

推論を立証できず、かりに形に残せない場合でも、推論まで行きつけたことに価値があると思うし、推論まで行きつけなくても今まで眠っていた伝承の掘り起こしきつながるケースも有ると思う。だいたい私くらいもの知らない人間は、結果なんか求めない。 ・・・私、この本を腐しているわけじゃないんですよ、本当に・・・。
・・・著者の方、亡くなってしまったんだそうです。私より二歳下なのに・・・。

“はじめに”に、「夢を見た」とある。著者が若かりし日、自らが女神となり、兄が男神となって夢に現れ、「この国の正当な統治者はわたしたちの方なのに・・・」と。目を覚ますとともに、《姫神の来歴》という声が聞こえたという。

そして後に、あの夢は、自分に《姫神の来歴》を書けと言うことかという思いに促されて、これを書いたと・・・。十年の月日をかけてようやく書き上げたと・・・。二〇〇二年に取材を開始し、完成までに十年の月日を費やし、発刊にこぎつけたのち二〇一三年に急逝したそうです。

なら、この本は、著者の人生そのものか。





 


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律令制の衝撃(覚書)『古代史 50の秘密』  関裕二

マイナンバーは届きましたか。うちは届きました。
政府広報オンライン
特集 社会保障・税番号制度<マイナンバー>
http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/mynumber/faq/
《クイズ》
  1. マイナンバーは、あかちゃんでももらえる?
  2. マイナンバーが通知されるのは日本国籍の人だけ?
  3. マイナンバーの数字は、希望すれば好きな番号をもらうことができる?
  4. 平成27年10月から、住民票の住所に届くのは通知カード? 個人番号カード?
  5. 申請すると交付されるマイナンバーが記載されているカードとは通知カード? 個人番号カード?
  6. 個人番号カードは、レンタルショップやスポーツクラブで身分証明書として使うことができる?
  7. 個人番号カードには、有効期限はありますか?
  8. マイナンバーを民間企業に提示することはない?
  9. マイナンバーを使って企業が社員や顧客の管理をすることができる?
  10. 株式会社などの法人がもらえる番号はマイナンバー? 法人番号?
答えは上のアドレスで政府広報オンラインをあけてみてね。

最近このことで騒がれてるのは通知の不手際ばっかりですね。情報の流出、なり済まし犯罪とかって問題もあるけど、今あんまり言うと隠し資産に課税されるのが怖いんだとか思われかねないからかな。「〈管理されるのがいや〉って言ってるやつは怪しい」ってね。私もそう思うよ。律令以前に戻りたいって言うんなら分かるけどさ。
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気鋭の歴史作家が埋もれた歴史の真相を鮮やかに解き明かす。文庫オリジナル

《律令》ってのは、これは大変だよ。制度上、公地公民制。つまり、それまで豪族たちが私有してきた土地と民を天皇が吸い上げ、戸籍を作り、耕地を民に公平に分配するって新しいシステム。これは大変。天皇が豪族たちから「と・り・あ・げ・る」ってことだからね。

豪族にかわって天皇が各地の民を把握し、民に平等に耕地を下賜してそこから得られる収穫の一部を税として徴収する。そのために戸籍が作られる。だから戸籍っていうのは国家権力そのものってことだな。この本の中ではこういう言い方をしている。『戸籍作成とはすなわち、律令整備の下準備であり、豪族たちの既得権益を収奪する作業にほかならなかった』

マイナンバーでもいろんな意見が出されているけど、それはシステム上の問題に過ぎない。律令の導入にともなう衝撃には遠く及ばない。なにしろ豪族たちは自分の力の背景である土地と民をすべて失うことになるんだから。

改革派と反改革派の抗争もすさまじかったはず。改革派が中大兄皇子と中臣鎌足で、反改革派が蘇我蝦夷・入鹿親子。教科書にはそう書かれているわけだけどね。これまで著者が書いてきたことからも明らかだけど、正反対だね。改革派が蘇我本宗家で、反改革派が中大兄皇子と中臣鎌足。

いやそうじゃないか。中大兄皇子と中臣鎌足は、当時、権力を握って改革の先頭に立っていた蘇我本宗家を滅ぼすために、反動勢力を利用した。反改革派ですらない。そして鎌足の子、藤原不比等が権力を握った時代に『日本書紀』が記され、改革を捻じ曲げた中臣鎌足が蘇我氏の手柄を横取りして英雄に化け、改革者として歴史に名をとどめた。

しかも藤原不比等以降、律令制は藤原氏のもとで整えられ、運営されていく。その過程で藤原氏はこの制度を藤原氏だけが広大な領地を獲得していくシステムとして利用していった。

『民に平等に土地を分け与える』という改革派の理想は、いつの間にか“クソ”のような現実に置き換えれれてしまった。




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米は支那の危機に備えている(覚書)『2016年 世界に真実』 長谷川慶太郎

NEWSポストセブン 2015/11/21
中国大物経済学者「成長率5%でも上出来」 実態それ以下か
http://www.news-postseven.com/archives/20151121_364326.html
(抜粋)
中国共産党政権は10月の党中央委員会総会で、第13次経済5カ年計画(2016~2020年)期間中の年間の経済成長率目標を6.5%に定めたが、中国の経済界の大御所である励以寧・元北京大学教授は「5%でも上出来だ」と発言し、実体経済は5%以下であることを示唆した。
・・・実態は3%、あるいは2%でもおかしくないってさ。

だから、もうずいぶん前からアメリカは、その準備を始めてるんだな。“その準備”って、もちろん、まもなく支那に発生する大混乱に対応する準備。たとえば、オスプレイの沖縄配備もそう。

航続距離が長くてヘリコプター同様の小回りがきく。アメリカ軍も、必要もないものをわざわざ反発を招く目的で日本に配備するなんてことありえない。オスプレイの日本配備って、近い将来その必要が生まれるってことだよね。大陸奥地にいる邦人(アメリカ人)救出だ。

そう思っていたが、次の本には、ちょっと違う事情が書かれている。そっちはけっこう深刻な問題だな。
WAC BUNKO  ¥ 972

これは単なる予測ではない、すでに見えている現実だ❢


アメリカの懸念は、支那の保有する核兵器にあるというのが、この本に書かれているオスプレイ沖縄配備の理由だ。支那は一千発近い核兵器を所有しており、それは四川省の成都軍区が握っているという。支那の共産党政権が崩壊した時、支那の核兵器を抑えようとするなら、四川省の核兵器を抑えなければならない。そのために、沖縄から無着陸で往復できるオスプレイが必要となる。

沖縄配備の二四機は海兵隊の所属。その他に空軍が横田基地に十機持ってくるという。これは特殊作戦用に胴体が装甲され、燃料タンクは二重になっているという。・・・アメリカは本気のようだ。

東日本大震災の時、米航空母艦ロナルド・レーガンは、米軍の実施した「トモダチ作戦」の一環として、本州東海岸に展開された。三月一三日のことである。ロナルド・レーガンがサンディエゴを出港したのは三月九日。

実は、ロナルド・レーガンは、他の理由で日本に配備されることになり、九日にサンディエゴを出港して日本に急いでいたのである。二〇一一年の一月一一日、胡錦濤国家主席とロバート・ゲーツ国防長官が会談した。国防長官が、その日の昼に人民解放軍が行ったステルス型戦闘機の試験飛行の話を持ちだすと、胡錦濤はこの一件を知らなかったそうだ。

文民統制が機能していない危険性を報告されたオバマ大統領は第七艦隊の増強を決定した。具体的な施策が航空母艦ロナルド・レーガンの再就役であった。
冒頭の記事からすれば、支那はいよいよ危ない。訪米中、さらにはASEANでの習近平の影の薄さは一体何なんだ。








 


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『カンディード』 ヴォルテール

おもしろい。おもしろい。おもしろい。おんもしろ~い。ヴォルテールがこんな本を書いていたなんて、ちっとも知らなかった。

それにしても翻訳って難しいもんなんだな。言葉や筋の説明があるんだけど、本当にその時代をしっかり勉強しておかないと翻訳なんてできないんだね。《プロテスタント=不寛容》、《プロテスタントは教皇を“反キリスト”とみなす》、《フランシスコ会の修道士は好色》、《イエズス会の神父は同性愛者》、《「ぶどう園で働く」とはイエズス会士にとって全世界に福音を伝えること》。・・・大したもんだな。

この本の最後にヴォルテールの年譜がおまけされてるんだけど、二三歳でバスティーユに投獄されてるんですね。理由は、摂政オルレアン公を風刺した詩を発表したからだって。最初っからフランス革命にも多大な影響を与えた啓蒙哲学者ってふうに頭に入っちゃってるから、それ以外の情報をシャットアウトしちゃってたかも。

こんな面白い本を書いているなら、もっと早く読みたかった。
光文社古典新訳文庫  ¥ 1,058

お前たちは虚弱なのだから、互いに助け合わねばならない
姫は、押し込んできたブルガリアの兵士たちに強姦され、さんざん辱められたあげく、腹を切り裂かれたのだ。姫を守ろうとなさった殿も、頭を叩き割られた。奥方はあの体をぶつ切りにされた。私のもう一人の生徒、あの若殿もかわいそうに妹と同様、兵士たちに辱められて殺された。

書かれていることはこんな話ばかりで、絶望の連続。絶望から絶望に旅をするカンディード。でもなぁ。ヴォルテールが書いたって頭があるから、どうしてもこの絶望に意味があると思ってしまうところなんだけど、とりあえず最後まで面白おかしいカンディードの冒険譚として読んだ。

とは言っても考えさせられてしまう。だって、『すべては最善となるため整えられている』って、男爵のところの侍女とちょくちょくエッチなことをして梅毒を移されたパングロス先生が言うんだもの。そのたびごとに、「なにが最善だよ」ってつぶやいてしまう。

神さまは完璧だからね。失敗なんかするわけないんだからね。その神様が作った世界だから、こちらは最善なわけだね。ただし諸般の事情から、世界は最初から最善に作られたのではなく、“最善となるよう整えられている”というわけなんだな。

そんなことを考えてりゃ、なにもヴォルテールが『ガンディード』を書いて社会を風刺するまでもなく、当時、現実に起こっていたことの一つ一つがことごとくバカバカしいまでの“コント”に見えたんじゃないかな。結局、最後は「つべこべ言ってないで、自分の畑をたがやしましょう」ってことになるんだもんね。

あとから解説を読んだらね。上に書いたことを、解説の人は〈形而上学的・神学的な考えを批判している〉と書いていた。でもやっぱりヴォルテールは啓蒙思想家の時代の人だからね。『カンディード』にも神に対する疑いの萌芽は感じるけど、攻撃の対象は“迷信”であり、“不寛容”ってことでしょうね。

解説の最後に『寛容論』の一節が紹介されてましてね。ずっと以前に読んでるはずなんですが、とても新鮮だったので、最後に紹介しときます。
自然は、人間たちの全員に向かって、こう語りますー

 私はお前たち人間を、そろって虚弱で無知なるものとして生み出した。それは、お前たちをこの地上でほんの短い間生きさせて、そして、お前たちの遺体をこの大地の養分とするためである。お前たちは虚弱なのだから、互いに助け合わねばならない。お前たちは無知なのだから、互いにものを教え合い、我慢しあわねばならない。
 お前たちがそろって同じ意見になった場合、と言ってもそういうことはけっしてありえないのだが、もしもそうなった場合、そこで反対の意見をいう者がたった一人しかいなくても、お前たちはその人を許さなければならない。なぜなら、彼にそのような考えを抱かせたのは、ほかならぬこの私だからだ。
 私はお前たちに、土地を耕すための二本の腕を与えた。私はお前たちに、自分で行動できるよう理性のかすかな光を与えた。私はお前たちの心のなかに、人への思いやりを芽生えさせた。それは、お前たちが互いに助けあい、頑張ってこの世で生き抜くためである。この芽を枯らしてはならない。腐らせてはならない。この芽は神聖なものである。そう心せよ。そして、宗派同士のおぞましい怒鳴り合いで、こうした自然の声がかき消されないようにせよ。
・・・なんか、ヴォルテールがすぐ近くまで来てたように感じる。だけど、ヨーロッパは結局“理性”に神のお墨付きまで与えて、“自然”を組み伏せて言っちゃうんだよね。・・・もったいなかったな。



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こんな本、あんな本
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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。

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中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。

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高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。

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今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本
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