『黄金の日本史』 加藤廣
![]() | 黄金の日本史 (新潮新書) (2012/05/17) 加藤 廣 商品詳細を見る |
歴史の主人公は黄金である。これを手中にするための覇権争いこそが日本史なのだ-金という覗き窓から定点観測すると、歴史教科書の生ぬるい嘘が見えてくる。ジパング伝説がどんな災厄を招いたのか、秀衡や秀吉の金はどこへ消えたのか、なぜ現代日本の金保有量は唖然とするほど低いのか-。歴史時代小説界のエースであり金融エキスパートでもある著者が、為政者への批判を込めて綴った比類なき日本通史。
たまたまではあるが、歴史教科書、歴史教育に強い疑問を投げかける本を連続で読むことになった。
序章 日本で金が発見されるまで
第1章 遣唐使は砂金を持って海を渡る
第2章 金の覇権をめぐる源氏と平家、そして朝廷
第3章 黄金伝説の正体
第4章 金を蕩尽する将軍たち
第5章 信長、秀吉、家康-金の夢は三者三様
第6章 通貨政策トンチンカン時代
第7章 金流出を止めよ-開国派と攘夷派のウラ側
第8章 双子の赤字を戦さで解消
第9章 ハイパー・デフレが導いた十五年戦争
第10章 ジパングの金庫はもぬけの殻
第11章 ドル経済を支え続けるピエロ国家
このように章題を並べただけでも興味をそそられますよね。私もそうでした。“黄金”を通して、見事に通史を語れるし、時には歴史の謎に肉薄することも可能なのですね。同時に、見事に歴史教科書を陳腐化させてしまっています。そして、それこそ著者がこの本を書くことの目的でした。“はじめに”にこうあるのです。
どちらにしても[歴史は]「おぼえる学問」ではないのである。 といったわけで、お節介な老作家は、 「では、面白い歴史を書いてみよう」 と、思い立った次第である。それには- 「何か一柱を立てて、それにまつわる話をしよう。そうすると話の筋が一本通り、物語がよく判るのでは-」 それが「キン」である。
と、こういうことです。 「えっ」と首をひねる部分もありましたが、二百あまりのページの中で通史を語っていますから細部にこだわれないのは当然だし、逆に細部にこだわろうとすれば“通史を一本の筋で簡略に語り切る”という本書最大の魅力が失われることでしょう。
そういった意味で、この本は完成されているし、十分であると思います。通勤途上でも、起き抜けの読書でも、就寝前に一杯飲みながらでも読める。それでいて決して浅くない。いや、より深い、本当の歴史に触れてみたいという興味をかきたてる。
当初の目的は、ほぼ完璧に成し遂げられているようです。加藤先生。

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