『イギリスの歴史【帝国の衝撃】―イギリス中学校歴史教科書― (世界の教科書シリーズ34)』
![]() | イギリスの歴史【帝国の衝撃】―イギリス中学校歴史教科書― (世界の教科書シリーズ34) (2012/02/29) ミカエル ライリー、ジェイミー バイロン 他 商品詳細を見る |
正直、この本で自国史を勉強できるイギリスの子弟は幸福であると思える。成熟した“大人の書いた歴史”である。
第一章 サー・ウォルター・ローリーの北米移民計画の挫折
第二章 東インド会社のインド支配
第三章 七年戦争における二人の英雄 ジェームズ・ウォルフとロバート・クライヴ
第四章 イギリスにおける奴隷貿易
第五章 囚人植民地に始まるオーストラリアの歴史
第六章 1857 インド大反乱
第七章 アフリカ争奪戦 ベナン大虐殺
第八章 ヴィクトリア時代を頂点とする大英帝国
第九章 アイルランド
第十章 中東への進出とパレスチナ問題
第十一章 インドからの撤退
第十二章 コモンウェルズからの移民と等身大のイギリス
本来の章題は違うのですが、ここでは、その内容から私が勝手につけた章題を並べました。“イギリスの近代史”である以上、「かつて世界を支配したイギリス」を書くのは当然だし、「支配されるものの目から見たイギリス」も書かれる必要がある。しかし、本書の優れたところは、現代人の目でもってたやすく歴史に判決を下そうとはしないところだ。その中から、今のイギリス、これからのイギリスのためになにを教訓として行かなければならないかを、この教科書を使って勉強する者たち自身に考えさせようとする姿勢だ。
この本には「終章」がある。その中でこの本が取り上げなかった歴史が明示されている。
ゴードン将軍やセシル・ローズといった帝国の英雄
アメリカ独立革命
タスマニア
支配された人々の目から見たイギリス史
女性にとってのイギリス史
アヘン戦争
もちろん他にもあげられる。だからといって、本書はそれを詫びるわけでもない。まるで、「興味を持ったのなら自分たちで勉強してごらん」とでも言わんばかりだ。でも、たしかにその通り。この本で歴史に接する態度と姿勢を身につけた者なら、もはやどんな歴史に立ち向かおうと、簡単に打ち負かされることはないだろう。しっかりと「今の、そしてこれからのイギリスのためになる教訓」を引き出すことに成功するだろう。
内容に対しては、多々不満はある。イギリスにやってこられた側からすれば、あまりに簡単に書かれすぎていると感じる部分は多い。しかし、これはイギリス人が使うイギリスの教科書だ。他から文句をいう筋合いのものでもない。その責を負うのは将来のイギリス国民なのだから。
つくづく、今の日本の歴史に、大きな不備を感じさせられる一冊だった。

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