『歴史が面白くなる 東大のディープな日本史』 相澤理
![]() | 歴史が面白くなる 東大のディープな日本史 (2012/05/15) 相澤 理 商品詳細を見る |
この本は面白い。東京大学の日本史の入試問題の周辺をわかり易く解説してくれる形式で、その“周辺の解説”が面白い。たとえば「①古代の朝廷はなぜ白村江の戦いに臨んだのか?」では、当時の東アジア情勢と密接に結びついた大和朝廷の様子が分かって面白い。でも、“東京大学の日本史の入試問題”が特別面白いとは思わない。自分がへそ曲がりなせいだろうか。
高校の社会科教師といっても、大学受験を意識した授業を考える必要のない学校での勤務経験しかなく、しかも直近の六年間は定時制勤務。東大どころか、センター試験でどんな問題が出題されているのかも興味を失って久しい。比較対象の材料がないだけに、この本をよんでも、「へ~」って思うだけで終わってしまっているのかもしれない。
私が経験した学校では、社会の授業なんて、面白くなければ誰も聞かない。そうでなければ、成績で絞り上げたり、なだめすかしたり。そんなことばかりにやってると自己嫌悪に陥るから、面白さで聞かせる努力をする。だから自分の授業は面白い(と思っている)。教科書なんか使おうとすると面白くもなんともないから、参考程度にしか使わない。ちなみにこの使わないつまらない教科書を書いているのが東大の先生方(もちろん“だけ”じゃないけど)。
東京大学の日本史の問題を見させてもらって思ったんだけど、“無駄”が多いように感じる。“資料に基づく歴史”というのが東大日本史の信条なのかもしれないけど、無駄な感じがする。たとえば問題⑭。
一八〇四(文化元)年、ロシアの使節レザノフは、長崎に来航して通商を求めたが、翌年幕府はこれを拒絶した。次の文章は、この時レザノフに読み聞かせた申し渡しの最初の部分である。これを参考として、鎖国化の対外関係について一五〇字以内で説明せよ。
我国昔より海外に通問する諸国少なからずといえども、こと便宜にあらざるが故に、厳禁を設く。我国の商戸外国に往くことをとどめ、外国の賈船もまた、もやすく我国に来ることを許さず。しいて来る海舶ありといえども、固く退けていれず。ただ唐山・朝鮮・琉球・紅毛の往来することは互市の利を必とするにあらず。来ることの久しき素より其いわれあるを以ってなり。其国の如きは、昔よりいまだ曾て信を通ぜし事なし。
解答例
幕府はキリスト教の禁教と貿易の統制を目的に日本人の海外渡航を厳禁し、外国船の渡航を制限し、一方で、長崎出島ではオランダ・中国との貿易を認め、朝鮮からは対馬の宗氏、琉球からは薩摩の島津氏を通じて朝貢する使節を受け入れた。このように、幕府は窓口を制限することで海外からの情報と貿易の利益を独占しようとした。 |
無駄でしょ。
元寇で日本が来寇する元軍を退けることができたことに、“高麗の政府や人民”がどのように関わったかをとう問題が出されたこともあるようだが、変な問題だと思った。高麗兵は元軍の一角を担って対馬、壱岐を襲い、住民を殺し、連れ去った。“高麗のおかげで日本が助かった”んですか?なんか変なの!
問題自体を面白いとは思わないんだけど、周辺の解説は面白かったです。

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