『ネジと人工衛星 世界一の工場町を歩く』 塩野米松
![]() | 『ネジと人工衛星 世界一の工場町を歩く』 塩野米松 (2012/09/20) 塩野 米松 商品詳細を見る 金属加工、プラスチック、ゴム、表面処理、メッキ、溶接、板金、鍛造、製鋲、紙工、印刷、製缶、薬品、伸線、研磨、熱処理 日本経済を支える町工場。背景にあるのは技術に対する信頼。 |
世界一の工場町と呼ばれる東大阪。その工場町を著者が歩き、工場主(おっちゃん)から話を聞いた。それを一冊にまとめたのがこの本。


“おっちゃん”たちの話には、不思議と共通する点がある。創業者である“おっちゃん”たちの祖父や父は、多くが地方から出てきた。親類縁者を頼って大坂で働き、技術を磨いて家族を養い、工場を立ち上げて独り立ちした。それができる下地がこの町にはあった。多くの創業者が安い値で借りられる「貸工場」で自立した。人と腕が確かなら、それを見守る世間が、ここにはあった。
地道な仕事が信頼を生む頃には、努力は人を通して自分に返ってきた。競争相手がいるから、一層努力した。鎬を削るから腕が上がった。製品には自信がある。自信があるから客には媚びない。安値で媚びるから、素材を下げ手を抜く事になる。淘汰される条件はいくらでも転がっている。絶え間ない決断と勇気を問われた。
“おっちゃん”たちは町のため、子供達のため、新産業の模索と、様々な分野での社会貢献を惜しまないという。自分たちもそうして助けられたという思いもあってのことだろう。著者はそれを、“他所では感じられない少し古い時代の人の体温”と呼ぶ。
「起業の環境を整える」というが、それを法や制度の整備と考えるなら大きな間違いだ。
東大阪の“おっちゃん”のお話し
多くの方が、大坂職人気質っていうのはわからないって言いますね。
最初、心開かないんです。金の話したり、ちゃらんぽらんなこと言うてますわ。しばらく付き合って、信用できるとわかれば、よし協力したろと。そう思たらこいつの為だったら一肌脱いだろとか、そういうのは大阪の方がつよいんちゃいますかね。その分人に信用されるまで時間がかかります。
古くさい言い方ですが、仕事は信用ですわ。
『世界のオンリーワン技術はこれだ! 日本の町工場』


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