めんどくせぇことばかり 支那の貧困 『ほんとうの中国の話をしよう』 余華
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支那の貧困 『ほんとうの中国の話をしよう』 余華

失業生活を長く続けている夫婦が幼い子供を連れて、帰宅途中に露天の果物屋の前を通りかかった。

息子は多くの果物のうち値段の安いバナナに目をつけ、両親に一本だけでいいから買ってくれと頼んだ。

しかし貧しい両親は有り金を全部はたいても、バナナ一本買うことができなかった。

子どもを強引に露店の前から連れ去るしかない。

子供は大声で泣いた。

もう長いことバナナを食べていないので、どんな味だったかも忘れかけていた。

両親に家まで連れ戻されても、子供の悲しげな泣き声は止まらなかった。

泣き止まないことに腹を立て、父親は子どもを殴打した。

母親が駆け寄って父親を押しのけ、夫婦喧嘩が始まった。

次第に言い争いが激しくなり、子どもは「バナナ」と泣き叫んだ。

突然、父親は悲哀を感じ、悲哀はすぐに憎悪に変わった。

父親は自分を憎悪し、自分の無能さを憎んだ。

仕事も収入もなく、バナナを食べたいという息子の願いをかなえることすらできないのだ。

憎悪の気持ちが彼をベランダに導いた。

彼は振り返ることもなく身を躍らせ、マンションの十数階から飛び降りた。

妻は大声を上げてドアから飛び出し、階段を駆け下りた。

夫はコンクリートの上の血だまりの中に横たわっていた。

妻はひざまづいて、夫を抱き起こそうとした。

夫の名前を呼んだが、なんの反応もない。

しばらくして、妻は夫の命が尽きたことを知った。

突然、冷静さを取り戻し、もう泣き叫ぶこともなく、夫をそのままにして立ち上がり、マンションの方へ引き返した。

家に戻ると、幼い息子は何が起こったのかわからず、なおもバナナを欲しがって泣いていた。

母親は息子が泣きながら見ている前で、一本の縄を探し出し、踏み台を部屋の中央に運んだ。

踏み台の上に立つと、落ち着いて縄を室内灯の釣り鉤に結びつけ、縄の輪の中に自分の首を入れた。

息子は泣きながら、当惑した様子でこちらを見ている。

母親は縄から首を出し、踏み台から降りて、息子のところへ行った。

そして息子と息子が座っている椅子の向きを逆にして、背中を向けさせた。

その後、母親はまた引き返し、踏み台に上がり、あらためて縄を首にかけた。

泣いている息子の後ろ姿を悲しそうに見つめながら、踏み台を蹴り、首吊り自殺を遂げたのだ。

両親が亡くなったあとも、子供は泣き続けた。

子供はもはや、バナナが欲しくて泣いているのではなかった。

余華氏の『ほんとうの中国の話をしよう』に出てくる、現在の支那の貧困を語る物語である。この本の中には、他にも現在の支那の、そのままの姿が紹介されている。ぜひ読んでいただきたい本です。


『ほんとうの中国の話をしよう』 余華『ほんとうの中国の話をしよう』 余華
(2012/10/13)
余 華                  ミィ21 

商品詳細を見る
余華氏は1960年生まれ。文革の中に少年期を送り、青年として天安門事件を経験。今まさに、責任ある年齢で支那に生きる文学者。


   



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テーマ : 支那
ジャンル : 政治・経済

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No title

以前、私の友人もマンションから飛びました。自殺はふせられてる事が多く、案外まわりにいますね、更に厳しい世の中になるのではと感じています。

仲吉正広さま

> 以前、私の友人もマンションから飛びました。自殺はふせられてる事が多く、案外まわりにいますね、更に厳しい世の中になるのではと感じています。

コメントありがとうございます。
彼の国ではニュースにさえならずに片付けられてしまうケースが大半だといいます。実際の自殺者数ってどれくらいになるんでしょう。

ありがとうございました



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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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