アメリカに潰された政治家たち
![]() | アメリカに潰された政治家たち (2012/09/24) 孫崎 享 ![]() 商品詳細を見る 岸信介。田中角栄、小沢一郎・・・ 日本の自主自立を目指した政治家たちは、なぜ、どのようにして潰されたのか。 戦後政治史“最大のタブー”に挑み、この国の「かつてない危機」を明らかにする。 |
“どこかで呼んだことがあるような・・・”なんてもんじゃない。この本の著者、孫崎享氏が七月に創元社から出している『戦後史の正体』と全く同じ。著者はこの本のまえがきで“この本には『戦後史の正体』と重複する記述が多々あります。現状を理解するためには歴史の理解が必要です。まだ『戦後史の正体』をお読みになっていない方にも、歴史の大きな流れを把握していただきたいと考えました。”と書いているんだけど、ちょっとこの重複はひどい。正直に読後の感想を言います。私は『戦後史の正体』を読んでからほんの僅かに日数をおいて、この『アメリカに潰された政治家たち』を読みましたが、重複なんてもんじゃありません。ほぼすべて『戦後史の正体』と内容が同じです。
真新しい内容はといえば、第三章と終章の間におかれている、正味十四ページほどの『特別鼎談 2012と1960国民の怒りが政権を倒す日』という著者の孫崎享、ジャーナリストの長谷川幸洋、嘉悦大学教授高橋洋一、三氏の対談です。他に、真新しいものはありません。このような形で本を出版することがありえのか。まぁ、あるんだろうな。現にこうして出版されてるんだから。
同じ内容に同じ感想書いても仕方がないから違う視点から書こうと思うんだけど、“重複”したらごめんなさい。
戦後日本の政治は、アメリカに牛耳られてきた。著者の言うとおりです。特に60年安保以降、対米追随の傾向が強くなり、それは時間とともに甚だしさを増す一方である。その中で自主路線を貫こうとした幾人もの政治家が、アメリカの力により、またその意を受けた国内諸勢力により、政治的に、著者に言わせれば人として葬られてきた。こういった視点で書かれた戦後日本史からは、教えてもらったことも多々あった。読むに値する本だと思います。ただし『アメリカに潰された政治家たち』と『戦後史の正体』の両方を読む必要はありません。書いてあることは一緒ですから。
*なんか『戦後史の正体』の時も同じようなことを書いた気がするなぁ*
そこまではいいんですが、その後がいけません。“じゃあ、どうするのか”ってことですよ。アメリカを克服しなければならないってことはそのとおりなんだけど、ぎゃあぎゃあ騒いでたってどうにもならないでしょ。騒ぐにあたって、著者にとっては“自主路線”ならなんでもいいみたいで、鳩山由紀夫まで“自主路線の雄”として持ち上げてしまう始末。著者はブレーンの一人として鳩山由紀夫を支える立場にあったってわけで、鳩山氏の人格的危険性になんとなく言及しているものの、日本をより危険な状況に追いやるところであったことへの自責は感じられない。
あ~・・・。
わかりました。その鳩山首相に始まる民主党政権の時代の終わりが見えた段階で、著者は自分がどのような立場で民主党政治に関わってきたかを、声高に叫んでおく必要があったのではないだろうか。つまり、弁明の書として・・・。二冊も・・・。
なんかそう思ったら、書くのがめんどくさくなってきた。
『戦後史の正体』をすでに読んでしまった人にとっての本書、唯一の読みどころ、『特別鼎談 2012と1960国民の怒りが政権を倒す日』なんですが、ほんの十四ページほどを呼んだ印象なんだけど、なんか高橋洋一氏に、孫崎享氏と長谷川氏があしらわれているように感じるんだけど・・・。
両方読む必要はありません。どちらか一冊を選ぶんなら、『戦後史の正体』の方が充実していていいです。
![]() | 『戦後史の正体』 孫﨑享 「戦後再発見」双書① (2012/07/24) 孫崎 享 商品詳細を見る 占領期以降、日本社会の中に「自主派」の首相を引きずり降ろし、「対米追随派」にすげかえるためのシステムが埋め込まれている。 |



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