電通の支配力 『電通と原発報道』 本間龍
![]() | 『電通と原発報道』 本間龍 (2012/06/19) 本間 龍 商品詳細を見る ![]() 「巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ」 ここまでの情報操作は、“洗脳”としか呼び様がない。 |
マスメディアの主な収入源は、一般企業から広告代理店を通して入ってくる広告料であり、東京電力が支出する広告宣伝費は全企業のトップ10に入る。これは異常な数字である。東京電力は、関東のローカル企業であり、関東圏以外は販売区域外なので、東京電力の広告は関東圏のみで流れる性質のものだからである。著者は「ある意味、信じられない金額」と言う。
実は、東電の広告費は関東圏以外でも使われている。原子力発電所の立地県、福島県や新潟県である。これら立地権における、さまざまな原発PR費が含まれているのである。そういったお金が、マスメディアを支えているのであり、その仲立ちをしているのが電通である。
- 種々の番組スポンサーとなり、東電に対してネガティブな情報を取り上げにくくする。特にキー局、ローカル局双方の夕方のニュース番組の報道番組を操作する。
- 恒常的に巨額の広告費を支払うことで、メディア側が反原発の番組、記事を取り上げることを躊躇するような「空気」を作り上げる。
- 反原発派とされる学者、知識人は出演させない。
これらが実行できるのは、電通の組織力があってこそである。また、背景にはそれができるだけの力がある。「一般社団法人日本原子力産業協会」には電力会社をはじめ東芝、日立製作所、三菱重工業、鹿島建設、竹中工務店といった関連会社、さらに青森県、新潟県といった地方自治体が名を連ねる。その数は、二〇一二年五月十七日現在で四六一の法人からなるという。電通もその中の一つである。その影響力の大きさがうかがえる。福島第一原発の事故が発生した時、それ以降しばらくのあいだ、電通はこのできごとにどう対処していたのか。顧客である企業に何らかの不祥事が発生した時の“アクシデント・マニュアル”からすると次のとおりである。
- トップニュースにはさせない
- 事故報道はしても、責任の所在には言及させない
- なるべく深刻な内容にしない
たとえば、解説者に原発推進派の学者を起用して、事故の深刻さをやわらげて伝えるようにする。たしかにしばらくのあいだの報道はそのとおりであったように思う。それでも隠しおおせない深刻な事態を前に、御用学者は反原発派に席を譲らざるを得なくなった。その後もスッタモンダはあったものの、大衆はもはや気づいてしまった。本書のなかの言葉である。「情報操作というものは、大衆に気づかれずにやってはじめて価値があるのであって、その圧力が満天下に暴露されたのでは、もはやその意味を成さない。」
最近、なぜか“広告代理店につとめる★★は・・・”っていう設定が多いですよね。それだけ、世間の注目を浴びている仕事ってことかな。実質的にはかなりの汚れ仕事に感じられるんだけど・・・。


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