この歴史を学校で教えよう 『誰も教えないこの国の歴史の真実』 菅沼光弘
![]() | 『誰も教えないこの国の歴史の真実』 (2012/12/08) 菅沼 光弘 商品詳細を見る 日本を侵略国と断じた東京裁判の有罪判決でこの国の伝統文化はことごとく否定され、大東亜戦争をめぐる真実は封印された。 |
著者は、公安調査庁で対外情報活動部門を中心に旧ソ連、北朝鮮、支那の情報収集に三十五年間従事。対外情報の総責任者である調査第二部長を最後に一九九五年に退官した。ご高齢であるが、公安調査庁の入庁が一九五九年というから、戦争時の日本社会を動かしていた人たち、日本に関係していた外国人たちとも時代を共有している。つまり、東京裁判や検閲によってズタズタにされた“あの時代”の真実がまだ生きて、息をしている時代に、高度の情報に接してきたわけである。
「はじめに」で著者が次のように書いている。『我が国ではこれだけメディアが大きく発達し、毎日色々な国からいろいろな情報が入ってくるにもかかわらず、我々日本人自身の立ち位置がはっきりしないがために、歴史認識もあちらに流れ、こちらに流れと、行方が定まらない。歴史のなかで、本当は何が起きていたのか、そして、それに対して我が国はどう対処しようとしてきたのか、なにが誤りだったのか、ということの判断すらできない。』そのとおりである。
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第1章 アメリカはいまだに日本を恐れている
第2章 本当は恐ろしいTPP問題の本質
第3章 明治維新から大東亜戦争敗戦まで
第4章 アメリカの呪縛を解くために
といった構成で、日本近代史認識の重要な部分が非常に要領よくまとめられている。しかも嬉しいことに、その多くが私の認識と一致していることだ。あっ、そうだ。なんか偉ぶるつもりはないけど、一つこの本に気に入らないことがあったんだ。それは題名の『だれも教えないこの国の歴史の真実』だ。これは間違い。私は昨日、そう、ちょうど昨日、日本史を担当しているクラスでこの本とほとんど同じ内容を教えてきた。だからこの本の題名は『ほとんどだれも教えないこの国の歴史の真実』となる。ハハハ・・・。
敗戦までの日本がたどった道をすべて肯定する本ではない。事実、当時の日本はまだまだ多くの“社会的稚拙”を抱えてきた。貧しい北の農民たちを救うに有効な手立てを打つことができなかった。世界的地位の向上におごって非合理な社会制度を放置した。本書の中でも語られているが、いかに法や条約で規定されようが、この国には時にそれを超えて成り立つ国民的感情というものがある。社会にふさわしい情報を提供しなければ、それは本来あるべき政策の大きな障害となる。日本が支那事変を集結できなかった理由がまさしくそれだ。そこに“ドイツの東アジア戦略”、“ソ連のインテリジェンス”が複雑にからみ合っていたことが平易に説明されている。本来どうあるべきであったかを考えるのためにも、真実を知らなければならないというのが、この本の立ち位置である。
日本史の教科書には「ポツダム宣言を受け入れ、日本は無条件降伏した」と書かれている。私はその部分を生徒に読ませたあと、印刷したポツダム宣言を読ませる。
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読ませた上で質問する。「ポツダム宣言の受け入れは、日本の無条件降伏か?」そう質問されて、気づかない奴はいない。5条と13条だ。にも関わらず、教科書には「ポツダム宣言を受け入れ、日本は無条件降伏した」と書いてある。次に、なぜそうなっているのか考えさせる。公職追放と検閲に言及する。そして教科書裏表紙の執筆者一覧を見る。日本の学問世界が、いかに公職追放と検閲の影響のもとにおかれているかを考えさせる。


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