めんどくせぇことばかり 宗教対立と政治闘争が絡まって、宗教戦争ってここまで恐ろしい 『黒王妃』 佐藤賢一
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宗教対立と政治闘争が絡まって、宗教戦争ってここまで恐ろしい 『黒王妃』 佐藤賢一

宗教対立と政治闘争が絡まって、宗教戦争ってここまで恐ろしい 『黒王妃』 佐藤賢一『黒王妃』 佐藤賢一(2012/12/07)
佐藤 賢一                ミィミィ (8)
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その人は黒王妃と呼ばれた。
先年に崩御したフランス王アンリニ世の室、カトリーヌ・ドゥ・メディシスのことだ。
黒王妃と名前があるのは、黒衣を好んだことによる。


佐藤賢一の新刊。『小説フランス革命』を書きながらの仕事、ずいぶん精力的に仕事をしている。

イタリアからフランスに嫁いだカトリーヌ・ドゥ・メディシス。イタリアでは当然メディチ。世界史で習ったフィレンツェのメディチ家。経営する銀行業は、ヨーロッパ一流国家の財政規模を上回ったとか。多くの芸術家のパトロンとなり、イタリア・ルネサンスと聞いてまず思い出すのは、私の場合、レオナルド・ダ・ヴィンチよりもロレンツォ・デ・メディチ。ロレンツォ・イル・マニーフィコことロレンツォ・デ・メディチである。
ロレンツォ・デ・メディチロレンツォ・デ・メディチ1    フランソワ1世1 フランソワ1世
“偉大なるロレンツォ”という異名を持つ ロレンツォ・デ・メディチの曾孫に当たるのがカトリーヌ・ドゥ・メディシス。叔父である教皇クレメンス7世の影響力に目をつけたフランス王フランソワ1世により息子アンリ王子の妻として招かれる。しかし、あてにしていたクレメンス7世の死、アンリ王子の寵妃ディアーヌ・ドゥ・ポワティエの存在が、それでなくても宮廷で孤立する彼女を追い詰める。

夫アンリは兄の急逝によりアンリ2世として王位につき、カトリーヌ・ドゥ・メディシスは期せずして王妃となる。夫の子をもうけ、夫に家庭のぬくもりをもたらしたカトリーヌは、徐々に夫の信頼と愛を勝ち取る。しかし、それもつかの間、アンリ2世は不慮の事故で帰らぬ人となる。フランス王の母としての、彼女の苦闘が始まる。

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それにしてもヨーロッパを揺るがせた“宗教戦争”が、これほどの激震だったとは驚いた。旧教派と新教派。フランスで広まるのはルター派ではなくカルヴァン派、ユグノーである。その登場にはもちろん意味がある。しかし、その本来の意味からは離れた所でフランスは激震に見舞われる。それは新教の生みの親である旧教、ローマ・カトリックが、遥か遠い昔から巨大な権力であったことからやむを得ないことであったろう。新旧の対立は、国家というアイデンティティーを軽々と凌駕し、両者に殺し合いを演じさせることになる。ユグノー戦争、サン・バルテルミの虐殺も、やはり世界史で習った知識である。よもやここまでのこととは思わなかった。
サン・バルテルミの虐殺1

カトリーヌ・ドゥ・メディシスの苦難は続く。夫アンリ2世の跡を継いだ長男フランソワ2世は16歳で病死。次男シャルル9世が22歳の時に、サン・バルテルミの虐殺が起きる。起きるというより、「皆殺しにせよ」という彼の一言により、4千人が虐殺される。

この物語は、ここで終わっている。しかし、これでもカトリーヌ・ドゥ・メディシスの苦難は終わらないのだ。サン・バルテルミが彼の精神を蝕んだのか、シャルル9世はサン・バルテルミの2年後、24歳で病死する。あとを継いだ3男アンリ3世は激しい戦いのなかに身を置き、最後は暗殺されて死ぬ。

ヴァロア朝はこれで絶える。アンリ3世の妹マルゴが嫁いだナヴァール王アンリ・ドゥ・ブルボンがアンリ4世として王位につき、ブルボン朝が始まる。ここから徐々にフランス王家は諸侯に対して相対的な力を大きくし、絶対王政に向かっていく。

大きな時代のうねりに対して、たしかにカトリーヌ・ドゥ・メディシスは無力であったかもしれない。夫も守りきれなかった。子をも守りきれなかった。そしてヴァロア家さえも失われた。しかし彼女は、たしかに妻であり、母であった。妻として、母として家族を、家を懸命に守ろうとした。イタリア女らしく。時代が彼女にそれを許さなかったとしても、イタリア女のそんな生き方は確実にフランス史に刻まれた。

佐藤賢一によって、フランス史が着々と埋められていく。今度は何を書いてくれるのか。楽しみだ。


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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



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高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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