めんどくせぇことばかり こんな韓国人がいるってことはうれしい。ただしそれだけじゃ終われない 『涙と花札: 韓流と日流のあいだで』 金惠京
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こんな韓国人がいるってことはうれしい。ただしそれだけじゃ終われない 『涙と花札: 韓流と日流のあいだで』 金惠京

『涙と花札: 韓流と日流のあいだで』 金惠京『涙と花札: 韓流と日流のあいだで』 金惠京
(2012/12/18)
金 惠京
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韓国の葬式では、遺族は人前もはばからず身悶えして泣くという。ところが隣室の会葬者は花札に興じ、酒も入って騒々しい。その賑やかさは、悲しみと共に死者を送る遺族への慰めであるという。

著者金惠京さんは、一九七五年ソウル生まれ。子供の頃から日本に憧れ、韓国の高校を卒業後、日本に留学。明治大学に入学して司法試験を目指すが、国籍条項に阻まれて挫折。国際法を専攻して明治大学卒業。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で研究生活に入る。修士号を取得した後の渡米し、ジョージ・ワシントン大学、ハワイ大学で専任講師、客員教授を務める。二〇一〇年に早稲田で博士号を取得し、二〇一一年の東日本大震災を期に、アメリカでの生活を切り上げて、現在は明治大学法学部で助教授を務める。
明治大学旧校舎1 早稲田大学1 金惠京1
私より一五歳年下なんだけど、舌を巻く。日本語、英語と、外国語を習得しつつ、異国での学問に打ち込み、常に周囲の予想を上回る成果を上げてきた。おそらく彼女は並外れた集中力を持った人物なんだろうと推察する。本のなかに出てくる彼女の学問に打ち込む姿には、なにか鬼気迫るものまで感じる。

戦前、東京帝大や早稲田で法学を修めた祖父を持つ環境のせいか、彼女の周囲には、日韓にありがちな偏見を感じない。高校生までの彼女を見ると、逆に“日本へのあこがれ”が過剰である。その過剰さが、後に彼女を苦しめることになったんだろう。

最終章で述べられているのであるが、東日本大震災後、ハワイ大学に務めていた彼女に再び日本に行くことを進めたのは、彼女の母親であったという。「あなたはいつも『日本のために何かがしたい』『日本に対して役に立つ人間になりたい』って言ってたでしょう。きっと、今がその時なんじゃないの?アメリカに居ないで、日本に行くべきよ」・・・子が子なら、親も親・・・と言ったところか。(感動してます)

この本は著者金惠京さんの半生が書かれたものである。日本に憧れ、失望し、再び“日本”を取り戻し、家族とともにアメリカに渡って学識を高め、そして傷ついた日本に帰ってくる。そんな様子が、彼女を支え続けた家族愛とともに描かれている。

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最終章の最後に彼女の心情が語られている。

私はその愛する日本と韓国のために、これからの歩みを進めていきたい。もり、両国が争うならば、どちらに付くのではなく双方を繋ぐ人になりたいし、それ以前に、両国がお互いを深く理解するために自らの歩みを生かして貢献したい。両国はお互いの事情や事実はよく知っているが、実は心持ちに関しては誤解も多い。相手の行動を自らの尺度で見ると、理解不能に陥ってしまう。そんな心のもう一つ奥を伝えられるように、私は生きて行きたく思うのだ。
こんな韓国人がいるってことだけでうれしい。

韓国人が“恨”という心の持ち方に行動原理を置いているというのは分かった。韓国人が子どもの教育に熱心なこともそれで説明できるということも。養育、教育に最適な環境を求めるためなら、海外に出ることも厭わないというのも理解できないわけではない。韓国の国土、経済、社会的制約から海外に出るものがいるというのも分からないではない。でも、数が多すぎるだろう。

そこには韓国人の国家観が影響していないだろうか。本書のなかの記述でもそれを感じさせる部分があるのだ。金惠京さん自身、まったくそんなことを意識せずに書いているが。それは九.一一同時多発テロ後の米の変化に対して書かれている部分である

果たしたそうした意思の表明はアメリカがこれまで国是としてきた「自由」と合致するものなのかという疑惑が湧いた。他者に対する否定的な雰囲気が蔓延し、疑念がそこかしこで見られる状況や、東アジアの地域に対する無理解や偏見で起きた私の苦境を思う時、かつてニューヨークで感じたあの活力や自由な空気をアメリカが失いつつあるのだと感じた。

その中で、私のアメリカへの情熱も薄れ、事件のけりも付いたことで、改めて自分の日本での夢を追うことに大きく舵を切り、本腰を入れて研究活動へ邁進することとなった。

“私の苦境”とは、本来認められて相応の永住権が一係官の判断で却下されたことを指す。だから、“アメリカへの情熱も薄れ”たので、“日本での夢を追う”という。彼女への永住権は結果的に認められたのだ。それによる責務は彼女にはない。移民局の女性係官はアメリカへのテロに腹を立て、アメリカへの危険性を出来る限り取り除くべく行動した。同じアジア人としては腹立たしい限りだが、それが女性係官のアメリカへの責任感からとられた行動だった。

エピローグで日本の家族観への言及がある。金惠京さんは「日本でもかつて強い家族の連帯があったが、一九八〇年頃、日本社会は大きく変質した」と書いている。

・・・様々なしがらみや、体面等も気にしなければならず、自由を標榜していた世代(団塊)にとって、そうした関係が面倒くさく感じられた部分もあったろう。・・・バブル期の活気の中で自分一人でなんとかなる時期があったことで、困難に直面した際に頼るべき家族という存在が顧みられなくなった。
的外れとは言わないが、少なくとも本質は得ていない。大東亜戦争の敗北で、日本は根底から作り変えられてしまったのだ。分断と朝鮮戦争の悲劇は大きなものだが、社会そのものを根底から変えられたわけではないだろう。日本はそれをやられた。戦前を知る人々が社会の一線から消え、戦後の民主主義教育で培養された世代が全面に出たのが一九八〇年台だ。

金惠京さんの志は尊敬に値する。だけどそれだけに、今後、彼女は苦しむはずだ。おそらくこれまで以上に。彼女が日韓を思えば、必ずこれまで封印してきた“韓国”そのものと向き合わなければならなくなる。彼女のような人間には相応しくないが、安易に流れるなら、私はため息を付いて済ます。泣きながらもがき苦しむなら、なんとか彼女を支えてあげたい。


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No title

興味深いですね。
日韓の親交を深めようとする姿勢は素晴らしいです。
二つの文化を共有して苦しみながらも進もうとする人は好感を持ちますね。
日本の左翼や差別主義者よりはるかに応援したくなる。
日本海より深い相互理解の谷間は、なかなか埋めるのはしんどそうです。
子孫に委ねるのは心苦しいのですが、時間がかかりそう。

きいち 様

コメントありがとうございます。

ただ朝鮮人を動かす“恨”の心情は、日本人にとってあまりに灰汁が強い。
彼女がそれに飲み込まれないことを願うのですが・・・。

ありがとうございました



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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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