『黄禍論と日本人』 飯倉章
![]() | 『黄禍論と日本人』 飯倉章 (2013/03/22) 飯倉 章 商品詳細を見る 欧米は何を嘲笑し、恐れたのか |
日本は欧米からひっぱたかれるように太平の眠りを覚まされ、アジアにおける非白人の国家として最初に近代化を成し遂げ、それゆえに脅威とみなされ、黄禍というレッテルを貼られもした。それでも明治日本は、西洋列強と協力する道を選び、黄禍論を引き起こさないように慎重に行動し、それに反論もした。また時には近代化にともなう平等を積極的に主張し、白人列強による人種の壁を打ち破ろうとした。人種平等はその後、日本によってではなく、日本の敵側の国々によって規範化された。歴史はこのような皮肉な結果をしばしば生む。 本書P246 |
アッティラに率いられるフン族の記憶、バトゥに率いられるモンゴル軍の記憶が根底あるということを“ウソ”とは言わない。しかし、有色人種を支配する理としての白色人種の優秀が、実は何の根拠も持たないくらいの記憶を持ったものは少なくなかったろう。つまり、“黄禍論”は、アジアへの罪悪感から生み出される恐怖心の現れである。恐怖にとりつかれた白人たちに、キリスト教的博愛の精神は微塵も残されておらず、キリスト教の神は彼らの蛮行に根拠を与えるだけの存在に成り下がる。
序章 風刺画の発展と人種主義 第一章 風刺画の中の日清戦争・・・日本が世界へ登場 第二章 黄禍の誕生・・・三国干渉とドイツ皇帝 第三章 「黄禍の図」のパロディと国際関係 第四章 擬似人種戦争・・・義和団事変 第五章 異人種間の同盟成る・・・日英同盟 第六章 黄色人種と白人の戦い・・・日露戦争 第七章 移民紛争から戦争論へ・・・太平洋を挟んだライバル 第八章 甦る黄禍のイメージ・・・第一次世界大戦 第九章 人種平等への萌し・・・パリ講和会議以後 |
![]() | 日露戦争当時の風刺画である。描かれる人物の大きさは、その国の国力をも表すのだろう。この頃の日本は、あまりにもちっぽけだ。 右の絵は、歴史の教科書にも出てくる風刺画である。 | ![]() |
ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が、三国干渉後に欧米諸国の元首に送った、「ヨーロッパの諸国民よ、汝らの最も神聖な宝を守れ❢」という風刺画で、黄禍思想が流布するもとになった。黄禍の対象は日本をあらわす大仏と支那をあらわす龍である。 | ![]() |
![]() | 義和団は北京在住の外国人大虐殺は実際あったことなので、この絵は風刺画と読んでいいものかどうか。白人種の黄禍論は、本来、支那人を対象とする。日本人と比べた支那人の体の大きさを見れば、やはりそうだろう。義和団事件は、それが実際の事になったわけだ。 |
![]() | 日露戦争。ったく、ロシアはデカイな。世界はロシアをそう捉えていた。でも、顔や態度に、なんというか。間抜けさ、人の良さが出ている。どちらにしても、この日露戦争で、世界の日本に対する捉え方が変わった。 右の写真は、ロシアの侵略から、日本が韓国を守ってるって感じ?フランスの風刺画のようだけど。乳出しチマチョゴリはいかがなものか。 | ![]() |
たしかに、風刺画というのは、時代のナマの感じを伝えてくれるように思う。そしてこの時点から、“黄禍”はもはや冗談で語られるものではなくなっていく。日本は最新の注意を払う。日本が唯一こだわるのが、“人種差別”である。
ヨーロッパ人とアメリカ人が主張する人道と正義は、彼ら自身だけのためのものである。彼らは東洋人に対しては、罰を受けることなく非人道的で不公正な処置をしても良いのだ。 |


“今の世界は違う”と言い切れる人間がいるだろうか。白人社会はいまだに有色人種を蔑み、数の巨人である支那と、何をするかわからない日本に対して警戒を怠らない。私はそう思うけど・・・。


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