『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』 門田隆将
![]() | 『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』 門田隆将 (2012/11/24) 門田 隆将 商品詳細を見る あの時、福島第一原発には、命をかけて戦っている人たちがいた |
著者、門田隆将の『太平洋戦争 最後の証言』は、いずれも圧巻だった。その中にも出てきたが、真珠湾攻撃行われた一九四一年を二十歳で迎えた人は、一九一一年に九〇歳になった。当時、戦場に向かった世代は、そのまま戦後の日本の復興を担った世代である。“大正生まれ”こそが、その世代である。
『死の淵を見た男』は、『太平洋戦争 最後の証言』で日本を支えてきた大正世代の日本人が、現代の日本にも生きていたことを教えてくれる本だ。アメリカによるマインドコントロールの中でも、精神の深い部分で日本人を支えたきたのは、戦争世代の自己犠牲であった。それが現代の日本人にもあったことを教えてくれる本でもある。
吉田昌郎所長が想定していた「最悪の事態」
格納容器が爆発すると、放射能が飛散し、放射能レベルが近づけないものになってしまうんです。ほかの原子炉の冷却も、当然、継続できなくなります。つまり、人間がもうアプローチできなくなる。福島第二原発にも近づけなくなりますから、ぜんぶでどれだけの炉心が溶けるかという最大を考えれば、第一と第二で計十基の原子炉がやられますから、単純に考えても、“チェルノブイリ×10”という数字が出ます。私は、その事態を考えながら、あの中で対応していました。だからこそ、現場の部下たちの凄さを思うんですよ。それを防ぐために、最後まで部下たちが突入を繰り返してくれたこと、そして、命を顧みずに駆けつけてくれた自衛隊をはじめ、沢山の人たちの勇気を讃えたいんです。ほんとうに福島の人に大変な被害をもたらしてしまったあの事故で、それでもさらに最悪の事態を回避するために奮闘してくれた人たちに、私は単なる感謝という言葉では表せないものを感じています。 |
多くの部下たちとともに未曾有の原発事故と真正面から向き合った吉田昌郎は、その大きな役割を終えて、今度は自らの病との戦いを続けている。


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