めんどくせぇことばかり アメリカ領事タウンゼント・ハリスの功罪 『逆説の日本史 19 幕末年代史編2』 井沢元彦
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アメリカ領事タウンゼント・ハリスの功罪 『逆説の日本史 19 幕末年代史編2』 井沢元彦

“日米修好通商条約は、一方的に領事裁判権を認め、関税自主権が奪われた不平等条約であり、ハリスはそうした条約を日本に押し付けた「大悪人」である”

果たしてどうだろうか。まず、関税自主権について言えば、日本には“関税”に関する基本的知識すらなく、交渉役の岩瀬忠震(タダナリ)は優秀な人物であったが、ハリスから“関税”の説明を受ける有様だった。


日米修好通商条約
第四條   總て國地に輸入輸出の品々別册の通日本役所へ運上を納むへし
“運上”は関税のこと。関税は、「別冊の通り」とあるが、“別冊”とは貿易章程を指す。貿易章程においては、関税は“5~35パーセントの従価税”とされ、最後にこのようにある。
右ハ神奈川開港の後五年に到り日本役人より談判次第入港出港の税則を再議すへし
“再議すべし”とあるように、関税自主権はなかった。たしかにその意味では不平等な内容であったが、この時点において、関税は後のように低く見積もられたものではなかった。アメリカは独立以来、対英高関税によってインフラを整備し、自国産業を育成した。おそらくハリスは、日本もそのように産業を育成していく余地を見込んでおり、これが多くの日本人に苦渋を飲ませるものとの認識はなかったろう。

問題は、慶応二(一九六六)年に行われた貿易章程の改正、改税約書、『江戸協約』にある。この頃、幕府は、下関戦争の賠償金の支払いに困窮していた。イギリス公使パークスを中心とする列強は、兵庫沖に艦隊を集結させて圧力をかけ、賠償金の三分の二を免除することを条件に、兵庫早期開港、関税率低減を要求した。こうして結ばれたのが『江戸協約』である。これによって、関税は従価5パーセントを基準とする従量税に切り替えられた。これにより、外国商品は国内のインフレーションに即応しない安価な商品が大量に流入することとなり、国際貿易収支を不均衡にしたのみならず、日本における産業資本の発達が著しく阻害された。一方、高価格の外国商品の輸入には有利であり、外国品輸入がおおいに促進された。

また、領事裁判権にしても、当時の日本の国法は、徳川幕府が人民を統治するに必要とした法律であって、外国人は対象から外されていた。鎖国の時代という背景もある。ハリスが日本に無理を押し付けたというより、幕府の思想がそういった状況にあったことが大きな原因である。


『逆説の日本史 19 幕末年代史編2』 井沢元彦『逆説の日本史 19 幕末年代史編2』 井沢元彦
(2013/04/10)
井沢 元彦

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しかし、ハリスは許せない罪を犯した。日本に対して一方的な損賠をもたらした。「一分銀」のもつ“信用貨幣”という概念を、岩瀬忠震らの必死の説得にも理解せずにその価値を三分の一と見積もり、「一分銀」四枚が「一両金貨」と交換される状況を利用して、メキシコ銀貨を本来の三倍の「一両金貨」と交換した。さらに、国際的な金銀交換比率と日本のそれとの差の問題も大きい。国際比率が金:銀=1:16であったのに対して、日本のそれは1:5であった。この点でも、日本に持ち込んだ銀は、国際比率の三倍の金と交換された。“信用貨幣”に関しては、ハリスの無知により、交換比率に関しては、ハリスの無作為により、日本は一方的な損害を与えられた。この時期に日本から流出した膨大な金は、数百万両を下らないといわれる。そして、ハリスもこれによって一財産を築いたのだった。

さらに“金流出”について、ハリスやイギリス領事のオールコックは、遅ればせながら、小判の金含有量を三分の一に減らすことを提案した。幕府がこれを実行した事によって、国内の金銀交換比率は、国際基準に近い1:15に落ち着き、ようやく金流出に歯止めがかかる。小判の価値を三分の一に落とした分、供給量は三倍に増やされた。これが幕末の大インフレを招いた。生活に困窮した下級武士、庶民は、この大インフレにより、社会の変革を望むようになる。

ハリスの墓には、こう刻まれているそうだ。
日本国民の権利を尊重したので、彼らから“日本の友”という称号を得た

・・・“ふざけたことぬかしてんじゃねぇ” としか言いようがない。

  

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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



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高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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