めんどくせぇことばかり 孝明天皇:攘夷の信念と「航海遠略策」 『逆説の日本史 19 幕末年代史編2』 井沢元彦
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孝明天皇:攘夷の信念と「航海遠略策」 『逆説の日本史 19 幕末年代史編2』 井沢元彦

当初、公武合体策を進めるため、幕府から将軍家持の御台所としての輿入れを求められたのは、孝明天皇と女御の間に生まれた女児、富貴宮であった。しかし、富貴宮が二歳で夭逝したことから、孝明天皇の妹、和宮がその候補となった。しかし、和宮はすでに六歳にして有栖川宮熾仁親王しており、幕府からその意向が朝廷に伝えられた安政七年、その歳の冬に輿入れすることが決まっていた。幕府は何度も和宮降嫁を申し入れ、天皇は何度も拒絶した。

ところが、ある人物の説得で、天皇の考えは一八〇度方向展開した。その人物こそ、天皇のお手つきとなった妹のコネで侍従にまで出世していた岩倉具視である。岩倉具視は、“和宮降嫁の見返りとして、幕府に攘夷実行を確約させる”と孝明天皇を説得した。具体的には条約を破棄させ、夷人を一人残らず叩きだす、ということである。

和宮は、手紙で天皇に頼んだが、天皇は岩倉の進言を受け入れ、「幕府が攘夷を実行するなら、和宮降嫁も止むを得ない」という断を下した。攘夷実行のためには、妹の犠牲も止むを得ないということだ。

これは「極端な外国嫌い」などという問題ではない。信仰の問題である。「日本教」の主催者であり「教皇」である天皇は、この国を宗教的手段によって守る責任がある。そして、地震や津波といった天災、疫病の流行、長引く不景気までもが、すべては清浄であるべき神州に、ケガレに満ちた夷人どもを入国させ自由に動き回らせたせいということになる。

孝明天皇はこの時代の天皇=「教皇」として、幕府が開国などという、結果的に日本を「ケガレの極致」に追いやる政策を実行したことを、みすみす見逃してしまったという罪悪感にも近い後悔の念を抱いていた。“皇祖皇宗に対して申し訳ない”という感情である。

『逆説の日本史 19 幕末年代史編2』 井沢元彦『逆説の日本史 19 幕末年代史編2』 井沢元彦
(2013/04/10)
井沢 元彦

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井伊直弼と尊皇攘夷の謎

朱子学という、現実から乖離し逃避することを正当化する学問によって、日本の歴史教育は徹底的に歪められた。幕末の混乱の最大の原因の一つが「誤った歴史教育」であり、その最大のものが「日本は神国であり昔から夷人との通商(朱子学における卑しい行為)を許さなかった」、つまり「鎖国が国是」ということである。

長州藩の秀才、長井雅楽は『航海遠略策』に、行き詰まった日本に方向性を与える自分の考えをまとめた。彼の考えは、日本は鎖国ではなく開国し、広く世界と通商して国力を貯え、むしろ世界を圧倒して国威を示すべきだ。そのためには、朝廷は一刻も早く攘夷の方針を転換して、幕府にこの方向で進むよう命じるべきである。そうすれば、朝廷と幕府の無用な対立もなくなり、国はひとつにまとまる、というものである。そして彼は、「誤った歴史」を、以下のように正した。
鎖国という政策は、ここ三百年ほどの特殊なものにすぎない。島原の乱の影響である。それ以前、日本は自由に外国人を出入りさせていた。特に天皇家の勢いが盛んな頃は、京都へ鴻臚館という迎賓館まで建て、諸外国と積極的に交流していたのである。

だから、鎖国よりも開国の方が、むしろこの国の国是と言うべきだ。

天照大神は太陽の下すべてに天皇家の恩威が行き届くべきだと仰せられているが、それは逆に言えば世界中にそれを示せということであり、鎖国という政策は大神の神慮にも反することだ。人の子孫たるものは先祖の志(開国)を継ぐべきであり、それこそ先祖に対する孝というものである。 
文久元(1861)年、長州藩はこれを反論として天下に広めていく方針を決めた。孝明天皇は大いに満足し、これを支持した。幕府もこの策に賛同した。

残念ながら、長井雅楽の存在は、当時力をつけつつあった攘夷派にとっては、あってはならない障害物だった。特に同じ長州藩内においては、桂や高杉ら、松陰門下がその中心であった。当時の長井雅楽は、後に江戸で処刑される松陰を送り出す役割についていた。幕府温存を主張する雅楽と過激な松陰は、その意見の上でも対立する存在でもあった。師を失ったあと、やがて松陰門下生の憎しみは長井雅楽に向けられた。文久3(1863)年、長井雅楽は自害に追い込まれた。


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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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