七重八重花は咲けども 『名将言行録 現代語訳』 岡谷繁実
幕末の館林藩士 岡谷繁実が、十六年もの歳月をかけて完成させた武将たちの逸話集『名将言行録』。千二百を超える膨大な諸書を渉猟して編纂されたその内容は、戦国時代の武将から江戸時代中期の大名まで、数多の武士たちん言行を詳細に描き、彼らの人物像と叡智を活写する。本書は同書から戦国期の武将二十二人を選び、平易な文章で完全現代語訳する。 本書より |
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太田資長(道灌)はかつて鷹狩に行って雨にあい、ある小さな家に入って蓑を借りようとすると、若い女が何も言わずに山吹の花一枝をさし出した。資長は「わしは花を求めているのではない」といって怒って帰った。ある人がこのことを聞いて「それは“七重八重花は咲けども山吹の実の一つだになきぞ悲しき”という古い歌の心を暗示したのでしょう」といった。彼はこれを聞いて大いに恥じ、それから発奮して和歌の勉強をした。 | ![]() |
“実の”を「蓑」にかけて、その娘は「貧しさ故に、お貸し申す蓑一つさえも持ち合わせがありません」という恥を、口には出さずに相手に伝えるすべを持っていた。太田資長(道灌)にはそれを感じ取る和歌の教養がなかった。史実であるかどうかはともかく、その後、勉強をして和歌の大家になった資長は、このような逸話を残されるにふさわしい人物であったということだ。


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