めんどくせぇことばかり 自由主義市場経済の限界 『日本型雇用の真実』 石水喜夫
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自由主義市場経済の限界 『日本型雇用の真実』 石水喜夫

ケインズは、労働市場において実質賃金と雇用量が決定されるという労働価値説を完全に否定した。労働価値説は、雇用の現実を何も説明していないのであって、そこには根本的な誤解があり、雇用の現実を規定している「ある別な力」が、“有効需要の原理”という考えに導かれる。ケインズは、一国の雇用量を決定するのは、貨幣の裏付けを持った支出の総量であると考えており、それを“有効需要の原理”と呼んだのである。

第一次、第二次大戦で、各国は国民に多大の負担を強いた。国家は、国民の忠誠に応えるため、格差の是正や雇用機会の拡大を政策目標の中心に据えた。社会主義国家の登場もそれに拍車をかけた。 アダム・スミスの自由主義市場経済のもとでは、必要最小限の夜警の役割しか果たさないはずの国家が、「福祉国家」という理念のもと、国民の福祉を増進させるために積極的な役割を果すべきという時代精神が成立した。経済学は、アダム・スミスの経済学から急速にケインズの経済学へとシフトし、財政、金融政策によって経済と雇用の安定をはかることが国家運営の通念となった。

しかし、日本やアメリカなど戦後西側先進国の高度経済成長は、ケインズの提案した財政、金融政策に助けられた面はあるものの、内実を仔細に見れば、成長速度の安定化を確保する機動的政策運営による微調整が功を奏していることが分かる。経済成長とともに、有効需要を増進させるための財政負担は、徐々に各国の体力を消耗させ、自由主義市場経済論者に自信回復の機会を与えることになった。

『日本型雇用の真実』 石水喜夫『日本型雇用の真実』 石水喜夫
(2013/06/05)
石水 喜夫

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新古典派経済学に支配された労働経済学の主張は、知的欺瞞にすぎない
冷戦終結後、グローバル化は一大潮流となった。独自の特徴をもった国家同士が外交手段を用いて意思疎通を図り、相互の協力関係のもとに構築されてきた世界的経済機構を「国際協調主義」(インターナショナリズム)と呼ぶならば、冷戦の終結は、それを一気にグローバリズムに塗り替えた。国と国との違いを認め合った上で世界秩序を構築しようという‘インターナショナル’という言葉の目ざしたものは、‘グローバル’という物理的概念を用いて不用意にも地球の一体化を目ざすものに置き換えられた。ここでは想定されている‘市場’はたった一つの‘世界市場’であり、同じ服を着て、同じ靴を履いて、そこに参加することが、顔も、しゃべる言葉も違うすべての国の人に求められた。このような世界認識を提供し、それを前提とした政策論を構築するのが新古典派経済学であった。

ケインズの後継者として、彼の自由主義市場経済への懸念を経済理論に仕立て上げたのがロイ・ハロッドである。ハロッドは経済成長の上限を資本ストックの成長率に等しくなるとして、これを保証成長率と呼んだ。さらに、労働生産性上昇率と労働力人口増加率に規定される自然成長率を設定し、これらとのバランスから実際の経済成長率
を説明した。

注目しなければならないのは、自然成長率である。戦後自由主義世界の高度経済成長期、保証成長率に比べ、自然成長率は極めて高い水準にあった。第二次大戦中、各国では科学技術研究が盛んに行われ、各分野において飛躍的発展が見られた。戦後、これらの技術が一気に民生化し、労働生産性を押し上げた。さらに復員にともなうベビーブームも自然成長率を長期的に押し上げた。効果的経済政策が打たれることによって、現実の経済成長率はたちまち保証成長率を超える水準に達し、自然成長率の天井にぶつかって、賃上げと物価上昇をともなって長期の経済成長を可能にした。

ハロッドの理論は上記のように高度経済成長を説明するが、ハロッドの理論は現在のような、人口増加が終わり、自然成長率が低下する時代にこそ注目されるべきである。自然成長率が低下する社会は、企業が欲するだけの成長を実現することができなくなった社会である。自然成長率が保障成長力を下回る社会においては、実際の経済成長率は自然成長率を超えることはできず、当然、保証成長率を下回り続ける。この状況においては、企業は過剰資本を抱え続け、積極的な投資活動に出ることはなくなる。政府による財政政策によっても企業の自律的な投資を誘導できないまま、国家財政への負担を増やし続けることになる。

アダム・スミスのいう「神の見えざる手」が働かなくなった以上、経済理論もまた変わらざるを得ない。



   

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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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