『嘘だらけの日中近現代史』 倉持満
‘はじめに’を読めば、この本が期待できるものであることがはっきりわかります。なにしろ、「ところで、最初にお断りしなければなりません。この本の題名がいきなり嘘です」で始まるんですから。しかも、こんな短い題名の中に、著者は二つも‘嘘’を叩きこんでいます。
一つは、この国に「近代」などないということ。古代、中世、近代という時代区分自体、西洋史を考えるにあたってつくられた便宜上の区分で、それを他地域の歴史にそのままあてはめるのは困難ではありますが、市民革命の成果である基本的人権の尊重、主権在民、三権分立を確立した国家を近代国家と呼ぶならば、この国は近代的国家ではないし、近代でもない。古代やら中世やらが繰り返されているにすぎません。
もう一つは「中国」という名前が嘘。中華人民共和国の略称である中国。「中華」とは、「我こそは文明で、他は野蛮である」という差別意識丸出しの言葉で、歴史の中のある時期における東洋のあり様を示す言葉ではありうるものの、現在の国名に「中華」を使いこと自体、周辺諸国に対する差別であり、「侵略するぞ」という脅しでさえありうる。日本から「支那」と呼ばれるのは嫌なのだそうだが、これもわけが分からない。国際的呼称として定着しているチャイナ、その漢字表記である支那の何が嫌なのか。その上、「中華と呼べ」とは、「脅されろよ」という強要か。
この点からしても、この本が、‘読む価値のある本’であると確信して読み、予想通りいろいろと有意義な勉強をさせてもらいました。お勧めです。
ブレがないので、一貫性があって読みやすい。言っていることは、一々常識的で、すんなり頭に入ってきます。
第一章では、支那の歴史のパターンが紹介されていて、これを理解しておけば、支那の王朝史は理解が容易い。
という具合です。これは実際、どの王朝でも、ほぼ当てはまります。
第二章以降では、日本と支那の近代史のなかで、特に重要ないくつかの問題が解説されます。アヘン戦争。琉球、台湾、朝鮮への対応。日清戦争。孫文と辛亥革命。日露戦争。第一次世界大戦と二十一か条の要求。満州某重大事件から排日運動の激化。満州事変と支那プロパガンダ。溥儀と満州国。中国共産党と盧溝橋事件。支那事変。日本の敗北と中国共産党の勝利。
第六章は、毛沢東という人物に割いています。第七章、第八章は、その後の日本と支那の関係から現状と言う流れです。
著者は、全体を通して、日本人にありがちな、支那への認識の過ちを指摘しています。これまで様々な機会に言及されていることも少なくありませんが、そこでは自分の知識の再確認ができます。新たな知識も含めて、支那の歴史に一つの筋が通された感じです。
ボレロを支える小太鼓のように、全体に流れる意志があります。「日本人はなぜ支那を特別なものと考えるのか。その文明を特別なものと考えるのか。なぜ日本文明の源流に支那文明があると勘違いするのか」という問いかけである。おそらくそれが、本書における一番のテーマであり、著者がこの本を書いた理由だろう。日本人は、誤って、しかも自らすすんで、支那文明を日本文明の源流と自己催眠にかかっている。
最後に、その自己催眠から覚めるための、”はじめに”に書かれている「中国を理解する三つの法則」を紹介します。
1、力がすべて
2、陰謀でごまかす
3、かわいそうな人たち





一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
一つは、この国に「近代」などないということ。古代、中世、近代という時代区分自体、西洋史を考えるにあたってつくられた便宜上の区分で、それを他地域の歴史にそのままあてはめるのは困難ではありますが、市民革命の成果である基本的人権の尊重、主権在民、三権分立を確立した国家を近代国家と呼ぶならば、この国は近代的国家ではないし、近代でもない。古代やら中世やらが繰り返されているにすぎません。
もう一つは「中国」という名前が嘘。中華人民共和国の略称である中国。「中華」とは、「我こそは文明で、他は野蛮である」という差別意識丸出しの言葉で、歴史の中のある時期における東洋のあり様を示す言葉ではありうるものの、現在の国名に「中華」を使いこと自体、周辺諸国に対する差別であり、「侵略するぞ」という脅しでさえありうる。日本から「支那」と呼ばれるのは嫌なのだそうだが、これもわけが分からない。国際的呼称として定着しているチャイナ、その漢字表記である支那の何が嫌なのか。その上、「中華と呼べ」とは、「脅されろよ」という強要か。
この点からしても、この本が、‘読む価値のある本’であると確信して読み、予想通りいろいろと有意義な勉強をさせてもらいました。お勧めです。
![]() | 『嘘だらけの日中近現代史』 倉持満 (2013/06/01) 倉山 満 商品詳細を見る 『嘘だらけの日中近現代史』っていう題名が、すでに“嘘だらけ”…これ、著者が言ってんのよ。 |
第一章 嘘だらけの「中国」史 第一節 中国史は繰り返す 第二節 孔子は建前、本音は韓非子の「余計な奴は殺せ」 第三節 「インテリヤクザ」諸葛孔明の真実 第二章 欧州に翻弄された「清」と抗った「日本」 第四節 「中国五千年」というコケおどし 第一節 民族問題は「明」に答あり 第二節 アヘン戦争で眠り続けた清と目覚めた日本 第三節 明治政府の凄腕外交と朝鮮の悲劇 第三章 動乱大陸「中華民国」 第四節 決着としての日清戦争 第一節 『ラスト・エンペラー』の大嘘と孫文のインチキ革命 第二節 帝国主義者にして愛国者・石井菊次郎に学べ❢ 第三節 「二十一か条」というプロパガンダに騙されるな 第四章 満州事変で騙される日本 第四節 アメリカに振り回される日本 第一節 「排英排ソ」のち「排日」 第二節 中華民国の無軌道が満州事変を引き起こした 第三節 嘘つきチャイニーズのプロパガンダの手口 第五章 お人好しすぎる日本人 第四節 最強だった帝国陸海軍は日本外交に敗北した 第一節 わがまま放題の溥儀と満州国 第二節 暗躍する中国共産党 第三節 支那事変が「日中戦争」ではない理由 第四節 「大」「虐殺」を定義する 第五節 「夷を以て夷を制す」の精髄 第六章 究極の中華皇帝❢ 毛沢東の野望 稀代の暴君・毛沢東 第七章 中国の悪あがき 第一節 敗戦後の「媚米」と「親ソ」の行方 第二節 三角大福のマヌケな死闘 第三節 中国の資金源と化した日本銀行 終章 アベノミクスと中国崩壊の予兆 日本の未来はあなたが決める |
ブレがないので、一貫性があって読みやすい。言っていることは、一々常識的で、すんなり頭に入ってきます。
第一章では、支那の歴史のパターンが紹介されていて、これを理解しておけば、支那の王朝史は理解が容易い。
1,新王朝成立 → 2,功臣の粛清 → 3,対外侵略戦争 → 4,漢字の一斉改変と改竄歴史書の作成 → 5,閨閥、宦官、官僚など皇帝側近の跳梁 → 6,秘密結社の乱立と農民反乱の全国化 → 7,地方軍閥の中央侵入 → 8,1へ戻る |
第二章以降では、日本と支那の近代史のなかで、特に重要ないくつかの問題が解説されます。アヘン戦争。琉球、台湾、朝鮮への対応。日清戦争。孫文と辛亥革命。日露戦争。第一次世界大戦と二十一か条の要求。満州某重大事件から排日運動の激化。満州事変と支那プロパガンダ。溥儀と満州国。中国共産党と盧溝橋事件。支那事変。日本の敗北と中国共産党の勝利。
第六章は、毛沢東という人物に割いています。第七章、第八章は、その後の日本と支那の関係から現状と言う流れです。
著者は、全体を通して、日本人にありがちな、支那への認識の過ちを指摘しています。これまで様々な機会に言及されていることも少なくありませんが、そこでは自分の知識の再確認ができます。新たな知識も含めて、支那の歴史に一つの筋が通された感じです。
ボレロを支える小太鼓のように、全体に流れる意志があります。「日本人はなぜ支那を特別なものと考えるのか。その文明を特別なものと考えるのか。なぜ日本文明の源流に支那文明があると勘違いするのか」という問いかけである。おそらくそれが、本書における一番のテーマであり、著者がこの本を書いた理由だろう。日本人は、誤って、しかも自らすすんで、支那文明を日本文明の源流と自己催眠にかかっている。
最後に、その自己催眠から覚めるための、”はじめに”に書かれている「中国を理解する三つの法則」を紹介します。
1、力がすべて
2、陰謀でごまかす
3、かわいそうな人たち


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