めんどくせぇことばかり 『小説フランス革命11 徳の政治』 佐藤賢一
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『小説フランス革命11 徳の政治』 佐藤賢一

いや、エベールだけではない。フイヤン派も、ジロンド派も、あろうことか、タレイラン・ペリゴール、デュムーリエの類に至るまで、思えばダントンは余さず手を差し伸べてきた。
「誰より、この私にさえ・・・」

「ああ、マクシミリアン、あんたを応援することに決めたんだ、俺は」
そう打ち上げて、動きの中心にいたのがダントンだった。私の主張は理解された。私の熱意は受け止められた。ロベスピエールは事実、涙の出る思いだった。あの安心感ときたら・・・


『小説フランス革命11 徳の政治』 佐藤賢一『小説フランス革命11 徳の政治』 佐藤賢一
(2013/06/26)
佐藤 賢一

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徳なしでは恐怖は有害であり、恐怖なしでは徳は無力である
誠実な精神は今こそ一に団結して揺らぐなと勧告している。五年に及ぶ痛ましい革命の果実を、今こそ人民に与えよと勧告している。また誠実な精神は、革命の敵を根絶せよとも勧告している。…人を殺せる矢をもって、わが子の頭に載せられた林檎を撃ちぬいてみせよ。そう強いられたウィリアム・テルこそ、内なる敵に立ち向かう我ら人民のイマージュである。今こそ陰謀を、諜報を、密謀を、工作を、つまりは邪心を覆い隠す黒布を、皆して剥ぎ取ろうではないか。サン・ジェスト
サン・ジェストの告発文は、まっすぐエベールに向けられた。躊躇するロベスピエール。左のエベールを切れば、右のダントンをも切ることになるのは理の当然だからだ。そんなロベスピエールにサン・ジェストの声が飛ぶ。「ロベスピエールさん、この期に及んで、何を迷うことがあるのです」

無様に死んでいくエベール。しかし、死の直前、エベールは居合わせたロベスピエールに腐臭を嗅ぎとった。

愉快じゃねぇか、くそったれ。あのきれいだった男が、俺っちを殺し、たぶんダントンたちまで殺し、あげくが共和国まで滅ぼす、その理由が臭えってんだ。祖国のためでも、政治的配慮からでも、ましてや徳のためでもねぇ。…ああ、人間てのは臭えんだ。

デムーラン寛大派と呼ばれたダントンやデムーランも逮捕された。しかし、法廷闘争で、逆に公安委員会を追い詰めた。ダントンの迫力にたじろぐ革命裁判所、そして公安委員会。デムーランも、一縷の希望をいだいて必死に戦った。生きて、愛する妻と子供のもとに帰るために。緊迫した状況のなか、カミーユ・デムーランの妻リュシルが、ロベスピエールを一人で訪れる。何としても、夫を救う。そのためなら革命を、いや、仮に世界を敵に回すことになったとしても、この時のリュシルなら、瞬時もためらわなかったろう。
リュシル

そんなリュシルに、ロベスピエールが投げかける。「ああ、私が告発を取り下げよう。そのかわりにカミーユと別れてほしい。リュシル、私のものになってほしい」

「ああ、マクシミリアンが幸せにならない、幸せになりたがらない本当の理由は、俺には最後までみえなかった」

「だから、最期まで救えなかったと」

「ああ無念だ。かくなる上は俺たちが道連れにしてやるしかないだろう」
いいながら、ダントンは顔をあげた。マクシミリアンだってはじめから不幸だったわけじゃない。少なくとも幸せを拒絶していたわけじゃない。現に俺たちとは友情を結んだじゃないか。それこそギリギリのところまで、あいつを悩みに悩ませたくらいの友情だ。
「その友情の分だけは、マクシミリアンも幸せだったのだ。ならば、せめて、俺たちが・・・」
囁くような小声が、不意に大声に変わられていた。
「俺はロベスピエールを連れて行くぞ」
ダントン

革命は最後の時を迎えようとしていた。しかし、疾走する“革命”の巨体を止めるためには、それに見合った制動が必要だった。エベールが、カミーユ・デムーランが、妻のリュシルが、さらにはジョルジュ・ダントンが・・・。

革命は、あらゆる人と時代を飲み込んで、いよいよ最終章へと向かう。



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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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