『レイヤー化する世界』 佐々木俊尚
ずいぶん前から、本のランキングの上位に入っていて気になってはいたんだけど、『レイヤー化する世界』という題名。おまけに、副題が『テクノロジーとの共犯関係が始まる』。ということで、私には無縁の世界の本だろうということで、敬遠。ところが先日、本屋の店先で、つい手にしてペラペラっと・・・。そしたら何!世界史の本じゃないですか。それも“通史”。これは読んでおかなくちゃ。もう・・・、ややこしい題名つけるのやめてほしいな。近頃、何でもかんでもカタカナ言葉にしやがってさ。チョッピングボードってなんだよ
リテラシーとかいいかげんにしろよ
・・・、そんな私が“レイヤー”ってな本を手にするわけがない。
この本にたどり着くのが遅くなってしまった原因の“レイヤー”なんだけど、“層”という意味みたいですね。人間で考えてみれば、「私の中に重層化されたいくつかの属性」のことを言っているようなんだけど。とりあえず、それを説明した部分。
逆じゃねえのか?って、突っ込みたくなるんだけど、とりあえずレイヤーというのはそういうものであるようで、個人はレイヤーとして存在し、レイヤーとしてつながりあっていく。つまり、切り分けられた断片として浮遊することで、それを必要とする人はいつでもその断片に手を出すことができる。断片は人格に結びついて存在しているわけではないので、気軽に結びついて、気軽に離れることができる。
一九九〇年ころから始まった第三の産業革命。情報革命、IT革命とも呼ばれる。つまりはインターネットのこと。ところが、インターネット自体は価値を生み出さない。さらに、インターネット自体は働き口を増やさない。まあ、そういうことから始まって、第三の産業革命によって決定的に変化していくということが予言されている。
私は競馬が大好きですが、それだけに未来を予想する人を見ると、胡散臭く思ってしまう。この本の著者の佐々木俊尚さんにそんな感情を向けるのはお門違いだろうが、第三部の『未来』に関しては“競馬の予想をしている井崎脩五郎の話”を聞く時と同じ程度の真剣さで読みました。
第一部『中世』と第二部『近代』は面白かったです。“歴史は現代を把握し、将来に生かすためのもの”という視点がしっかりしているから、とても面白く読めます。細かな記述の乱暴さは多々あるようだけど、そんな些細な事よりも通史としての世界史の構造をしっかり抑えていることに価値があると思う。一部と二部だけで、もうちょっと肉付きのいい本にしてもらいたかったな。
第三部〈未来〉は、ちょっと遠くを予想し過ぎていると思う。あんまり先を予想すると、・・・まあ、これは私にとってということだけど・・・井崎脩五郎の競馬予想と同じになってしまう。


![]() | 『レイヤー化する世界』 佐々木俊尚 (2013/06/05) 佐々木 俊尚 商品詳細を見る テクノロジーとの共犯関係が始まる |
この本にたどり着くのが遅くなってしまった原因の“レイヤー”なんだけど、“層”という意味みたいですね。人間で考えてみれば、「私の中に重層化されたいくつかの属性」のことを言っているようなんだけど。とりあえず、それを説明した部分。
例えば私という人間は、・・・一人の独立した人間だけれども、一方で様々なレイヤーを持っています。 日本人というレイヤー・・・ジャーナリストというレイヤー・・・兵庫県西脇市出身というレイヤー・・・愛知県立岡崎高校を卒業したというレイヤー・・・和食が好きで、料理をつくるのが日課という食の好みのレイヤー・・・登山とランニングを愛好しているという趣味のレイヤー そういう無数のレイヤーを積み重ねていった結果として、私という個人がある。 |
逆じゃねえのか?って、突っ込みたくなるんだけど、とりあえずレイヤーというのはそういうものであるようで、個人はレイヤーとして存在し、レイヤーとしてつながりあっていく。つまり、切り分けられた断片として浮遊することで、それを必要とする人はいつでもその断片に手を出すことができる。断片は人格に結びついて存在しているわけではないので、気軽に結びついて、気軽に離れることができる。
一九九〇年ころから始まった第三の産業革命。情報革命、IT革命とも呼ばれる。つまりはインターネットのこと。ところが、インターネット自体は価値を生み出さない。さらに、インターネット自体は働き口を増やさない。まあ、そういうことから始まって、第三の産業革命によって決定的に変化していくということが予言されている。
プロローグ 現代-第三の産業革命が起きている 第一部 中世-多くの民族がともに栄えた帝国の時代
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私は競馬が大好きですが、それだけに未来を予想する人を見ると、胡散臭く思ってしまう。この本の著者の佐々木俊尚さんにそんな感情を向けるのはお門違いだろうが、第三部の『未来』に関しては“競馬の予想をしている井崎脩五郎の話”を聞く時と同じ程度の真剣さで読みました。
第一部『中世』と第二部『近代』は面白かったです。“歴史は現代を把握し、将来に生かすためのもの”という視点がしっかりしているから、とても面白く読めます。細かな記述の乱暴さは多々あるようだけど、そんな些細な事よりも通史としての世界史の構造をしっかり抑えていることに価値があると思う。一部と二部だけで、もうちょっと肉付きのいい本にしてもらいたかったな。
第三部〈未来〉は、ちょっと遠くを予想し過ぎていると思う。あんまり先を予想すると、・・・まあ、これは私にとってということだけど・・・井崎脩五郎の競馬予想と同じになってしまう。
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