めんどくせぇことばかり 国民国家の功罪(覚書) 『レイヤー化する世界』
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国民国家の功罪(覚書) 『レイヤー化する世界』

ヨーロッパが中世まで続いた帝国を終わらせ、世界を支配できたのは、団結した国民を持っていたから。それが強力な軍事力の源にもなった。

西ローマ帝国が滅亡した後の西ヨーロッパ。小国家が乱立し、現実的権力が消失した状態が続く。地中海東岸、中東、インド、支那には帝国の時代が続くが、土地、物産ともに貧しく、世界の辺境である西ヨーロッパに力を及ばそうと考える者はなく、いわば、「忘れられた土地」だった。

精神的権威であるキリスト教に現実的権力であるフランク王国が結びつくことによって、ヨーロッパ社会の原型が生まれる。《聖》の世界においては、人々は絶対的に教会に支配された。《俗》の世界においては封建制度である。王と諸侯、諸侯と騎士の間に土地を媒介にした主従関係が成立する。これは法や制度によらない個人的契約関係であり、彼らの領土である荘園やそこに生活する農民の立場は、領主が結んでいる様々な契約関係に左右された。

十六世紀、そういった世界において、ある一領主の力が肥大化する。ハプスブルク家である。スペイン王位と神聖ローマ皇帝位を手にして、さらに西ヨーロッパ全域の支配、つまり帝国化を目論んだ。結局はフランス、イギリス、ドイツ諸侯の反発で挫折し、以後、ヨーロッパは主権国家に向かう。もとよりキリスト教を絶対視した西ヨーロッパには帝国化するような宗教的寛容はなかった。さらに三十年戦争後のウェストファリア条約では、相互の領土を尊重し内政干渉を控える取り決めがなされ、主権国家体制が確立する。

精神世界でも教会の権威が失墜する。一時は絶対王政が登場し、《俗》の圧倒的な力で精神世界の空白を受けようとするが、絶対王政以上に強力な力で精神世界を支配することになるのが“国民”というイデオロギーであった。フランス革命において、“国民”は絶対王政を倒し、教会の財産をも没収した。周辺の絶対王政国家からの干渉とは“国民”からなる軍隊が戦った。そして、“国民”の軍隊は、やたらと強かった。 主権国家は、“国民国家”という新しい姿を鮮明にする。
『レイヤー化する世界』 佐々木俊尚『レイヤー化する世界』 佐々木俊尚
(2013/06/05)
佐々木 俊尚

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テクノロジーとの共犯関係が始まる
上の文章は、本書の記述をもとに私の意見を含めてみたんだけど、大枠としてはいいと思う。このように“国民国家体制”を確立したヨーロッパの世界進出によって、結局は世界全体が国民国家に塗り替えられていく。

《国民国家、戦争を引き起こしやすいシステムである》と著者は書いている。当然の事で、国民国家は帝国よりもはるかに細かい単位で内と外を分ける。かと言って、“国民”の強烈な吸引力になる“民族”を正確に内外に仕分けするのは不可能であり、必ず不満が生まれる。それに決着を着けるのが、国民国家の軍事力である。これが不満を再生産する。つまり、国民国家は、常に戦争の危険をはらんでいる。

「戦争と革命の二十世紀」と言われる。そんな時代を克服しようと、世界は国際連盟や国際連合を設立して、以前の帝国の役割を担わせようとしたが、それらの機関に戦争を抑止するまでの力はなかった。冷戦終了後、唯一の超大国アメリカが軍事力を背景に抑止力足らんとしたが・・・。事態は“テロとの戦争”という新たな展開を生み出し、アメリカも《世界の警察》のお仕事は廃業せざるを得ないだろう。つまり、テロという形態も含めて決して戦争はなくならない。

《国民国家は民主主義を生み出した》のは確かだが、「全員が政治に参加する」システムはどのようにして維持されたか。一時は社会主義革命でしか解決できないと考えられた資本主義社会の社会的不平等は、「第二の産業革命」による経済成長の利益を吸収して抑えられた。しかし、この経済成長を支えたのは周辺地域から安価な原材料を調達できたからであり、それによって国内で民主主義を成立させ、国民全体で国家を確立した。

    

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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本








































































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