説得力が違う(覚書)『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!』 小名木善行
多くの言葉を要しているわけではないのに説得力が違う。なぜだろう。読むほどに呆然とした。それなりに本は読んでいるのに、おそらく同じような情報に触れているのに、筆者は私には見えないものを見いだしている。理解力というより、情報を収める器、情報を処理する仕組みそのものが違うような気がする。この本を呼んで、自分にちょっとがっかりしちゃった。量にこだわらず、もう一度、歴史をおさらいする必要がありそう。
二十の話から成り立つ本ですが、その一つ一つに、びっくりするような視点がたくさんあって、興奮した。読みながら書きだした中からほんの幾つかを何かのときに使おうと思って、以下に覚書にした。
縄文から弥生へ
支那の春秋戦国時代。血で血を洗う戦乱の時代の余波が日本列島へ。平時から戦時へ変化に対応して装飾を施した多様な土器は必要最低限の機能だけ持った簡素な土器へ。耳飾り、首輪、腕輪等の装飾品も消える。
海ゆかば水漬く屍 山ゆかば草むす屍 大君の辺にこそ死なめ かえりみはせじ
武門を統括する大伴氏は、民を護るためならばボロボロになるまで、海山に屍を晒す覚悟で戦う。それが青雲の志である。「大君の辺にこそ死なめ」は庶民を国の宝と思し召す天皇を中心とするわが国の治世。
遣唐使廃止の背景
遣唐使を廃止した理由は、「安史の乱以降、混乱した支那であっては、航海の危険を犯してまで使者を派遣する意味が無い」という理解が一般的だった。“交易によって得られる利を捨てる”という視点は、今までの私は持ってなかった。その莫大な利益を放棄するというのは、一部勢力にしみれば死活問題であったはずだし、反対勢力は強力だったはず。事実、菅原道真は陰謀により左遷、死期を早める。それを押して遣唐使を廃止したのは、支那の混乱により、遣唐使を利用して入国を果たす大陸・半島系の亡命者の存在があった。国内の治安維持の必要。
鎌倉時代の武家体制の本質的欠陥
財産を子どもたち全員へ均等に分配する相続制度。田を分けて家を滅ぼすことを“たわけ”と呼ぶ。幕府は、一二九七年に徳政令を出して御家人を救おうとする。しかし、借金を帳消しにするのは、今で言えば“破産宣告”に当たる。
ザビエルの言葉
戦国時代まっただ中の状況を、ザビエルはこう言っている。“度重なる戦乱で、田畑は荒らされ、庶民は飢え、国は乱れ・・・”というだけでは捉えられない戦国時代。
過酷な年貢の取り立てに苦しめられる江戸時代の農民
「五公五民」などと言われるが、年貢計算のもととなる検地は、江戸時代に平均二回しか行われず、幕府直轄地では太閤検地の結果がそのまま使われた。隠し田、農業技術の進歩、換金作物栽培等により収入が増えた中期以降には、税率は十%程度か。
小麦農林十号
開発者は稲塚権次郎氏。背が低く、風に倒れない。収量が多く、土地を傷めない。戦勝国として乗り込んできたGHQは、農林十号の優れた性質に気づき、国外に持ちだした。これ自体、本来違法行為である。この農林十号がメキシコで開発されていた病気に強い品種と掛け合わされ、世界の食糧危機を救った。







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二十の話から成り立つ本ですが、その一つ一つに、びっくりするような視点がたくさんあって、興奮した。読みながら書きだした中からほんの幾つかを何かのときに使おうと思って、以下に覚書にした。
![]() | 『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!』 小名木善行 (2013/11/07) 小名木 善行 商品詳細を見る 日本はとてつもなく、すごい国だった |
縄文から弥生へ
支那の春秋戦国時代。血で血を洗う戦乱の時代の余波が日本列島へ。平時から戦時へ変化に対応して装飾を施した多様な土器は必要最低限の機能だけ持った簡素な土器へ。耳飾り、首輪、腕輪等の装飾品も消える。
海ゆかば水漬く屍 山ゆかば草むす屍 大君の辺にこそ死なめ かえりみはせじ
武門を統括する大伴氏は、民を護るためならばボロボロになるまで、海山に屍を晒す覚悟で戦う。それが青雲の志である。「大君の辺にこそ死なめ」は庶民を国の宝と思し召す天皇を中心とするわが国の治世。
遣唐使廃止の背景
遣唐使を廃止した理由は、「安史の乱以降、混乱した支那であっては、航海の危険を犯してまで使者を派遣する意味が無い」という理解が一般的だった。“交易によって得られる利を捨てる”という視点は、今までの私は持ってなかった。その莫大な利益を放棄するというのは、一部勢力にしみれば死活問題であったはずだし、反対勢力は強力だったはず。事実、菅原道真は陰謀により左遷、死期を早める。それを押して遣唐使を廃止したのは、支那の混乱により、遣唐使を利用して入国を果たす大陸・半島系の亡命者の存在があった。国内の治安維持の必要。
鎌倉時代の武家体制の本質的欠陥
財産を子どもたち全員へ均等に分配する相続制度。田を分けて家を滅ぼすことを“たわけ”と呼ぶ。幕府は、一二九七年に徳政令を出して御家人を救おうとする。しかし、借金を帳消しにするのは、今で言えば“破産宣告”に当たる。
ザビエルの言葉
この国の人々は今までに発見された国民の中で最高であり、日本人より優れている人々は異教徒の間では見つけられない。彼らは親しみやすく、一般に善良で、悪意がない。驚くほど名誉心の強い人々で、ほかの何よりも名誉を重んずる。大部分の人々は貧しいが、武士も、そうでない人も、貧しいことを不名誉とは思わない。 |
過酷な年貢の取り立てに苦しめられる江戸時代の農民
「五公五民」などと言われるが、年貢計算のもととなる検地は、江戸時代に平均二回しか行われず、幕府直轄地では太閤検地の結果がそのまま使われた。隠し田、農業技術の進歩、換金作物栽培等により収入が増えた中期以降には、税率は十%程度か。
小麦農林十号
開発者は稲塚権次郎氏。背が低く、風に倒れない。収量が多く、土地を傷めない。戦勝国として乗り込んできたGHQは、農林十号の優れた性質に気づき、国外に持ちだした。これ自体、本来違法行為である。この農林十号がメキシコで開発されていた病気に強い品種と掛け合わされ、世界の食糧危機を救った。


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