国民国家と国民(覚書)『近代の呪い』 渡辺京二
具体的には国民皆兵制。お国のことなんてしらねえよと言っていた民衆が、喜んでお国のために死ぬことになった。そこには民衆世界の自立性は存在しない。フランス革命のキーポイントは民衆世界の自立性が解体されたことにある。 前史として存在した絶対王政時代、国民と王権の間には様々な中間団体があり、絶対王権はそれを解体しようとはしなかった。それを解体したのがフランス革命であり、中間団体の解体は民衆の自立性が侵食されていくことを意味する。 国家と国民が一体化されたとき、国家と国家の戦争は国民と国民の戦争を意味するようになる。国民と国民が全体的に戦争によって対立するというのはナポレオン戦争が生み出した新事態であった。
その覇権争いが東アジアまで拡大された時代が、日本においては江戸時代後半であった。明治維新の動乱はその余波として起こる。当時、日本の先覚者たちは、世界経済の中で占める地位を国民国家単位で争う状況を“万国対峙”と呼んだ。ぼやぼやしていれば、対立する諸国が国力を高めるために冷や飯を食わされる。それどころか植民地にされてしまう。 そんな時代への対応の中で明治維新が発生し、日本でも徴兵制が実施され、教育が施され、国民国家が創出されていった。同時に日本社会に網の目のように存在した様々な中間団体が侵食されていき、民衆の自立性は解体されていった。 |
久々に渡辺京二氏の本を読めて嬉しい。まだ、昨日読み始めたばっかりで、しかも仕事が忙しかったので、読むためのまとまった時間は取れなかったんだけど、脳みそが喜んでるのがわかる。そんなわけで、“勇み足”ぎみに、ちょっとだけ覚書を・・・
日本にとって見れば近代化された西洋の出現を背景にして、それでも結局は利益に導かれた選択を繰り返した結果が今なわけだけど、その過程でいろいろなものを失ってきた。なかにはずいぶんと味のある世間とのつきあいかたもあったのにね。
国民は国家に貼り付けられてしまったわけだけど、それでも、国民が全員政治に関心があって、政治評論家のようになるっていうのは“実に不健全な状態だ”と著者は言う。・・・もう~、まったくその通り。口にしたくてもできないことを言ってくれてほんとうにありがたい。私たちが一生のうちに遭遇する大事な問題は、ともに生きる他者との生活上の関係の中にこそあるって、本当にありがとう。


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