めんどくせぇことばかり 『飢餓浄土』 石井光太
FC2ブログ

『飢餓浄土』 石井光太

2012年12月の記事に加筆修正したものです。
いい歳になった。幼い頃は両親に祖父母、二人の兄に加えて、結婚前のおじ、おばが同居し、十一人家族の時代もあった。祖父母、両親が亡くなり、おじやおばも徐々にその数を減らしている。そのたびに悲しかった。でも人間って、どんなに悲しくても、やがて腹がへる。深刻な通夜の席でも、遺体を前にして飯を食い、酒を飲む。

『飢餓浄土』 石井光太『飢餓浄土』 石井光太
(2011/03/11)
               

商品詳細を見る
現実のなかで、幻が人間を励まし、ふるい立たせることも少なくない。私はそれが人間のつよさの一つであると思っている。


生き続けるようにできてるんだな。人間って。まったく忘れてしまうわけじゃないけど、悲しい、苦しい記憶を封印して、生き続けるように人間はできている。時に封印が解けて、記憶との落差を埋めつためには物語が必要になる。その物語は絶対である。生きていく為には、なくてはならないものなのだから・・・。

この本は、そんな物語が集められた本。でも、著者が取材した場所は、必ず、そう遠くない過去に大きな混乱を経験した場所である。深く傷ついた人びとは、生きていくために物語を生み出した。

大東亜戦争で亡くなった日本兵を巡る話。追い詰められた敗残兵。酷い話はいくらでもあったろう。でも、生き続ける人びとは、そのための様々な物語を生み出した。
第一章  残留日本への亡霊
  • 敗残兵の森
  • 幽霊船
  • 死ぬことのない兵士たち
  • 神かくし
第二章  性臭が放つ幻
  • せんずり幻想
  • ボルネオ島の嬰児
  • あさき夢みし
  • 胎児の寺                             

第三章  棄てられし者の嘆き
  • 奇形児の谷
  • 横恋慕
  • 魔女の里
  • けがれ
  • 物乞い万華鏡
第四章  戦地にたちこめる空言
  • 戦場のお守り
  • 歌う魚


ケニア、アフガニスタン、ネパール、ボルネオ、ミャンマー、インド、ベトナム、ラオス、タンザニア、ブルンジ、ヨルダン、コンゴ、ルワンダ、スリランカ。

みんな、生きるために、物語を作り出した。

ベトナムの産婆の話が頭からはなれない。ジャングルを呪ったアメリカ軍の使用した枯葉剤は、戦後のベトナムにとてつもない悲劇をもたらした。奇形児が生まれれば、夫婦は引き裂かれる。良いとか悪いとかじゃない。そうやって生きてきたのだから。多くの場合、責任を問われるのは女。産婆は生まれた子を、死んだと偽って、自分の手で始末した。女たちを救うためだ。でも、産婆は自分が殺した奇形児たちからは自由にはなれない。

一説だが、「こけし」とは「子消し」であるという。産婆は、貧しさにあえぐ夫婦のために“子を消す”役割を引き受けた。だから「こけし」は、どこか悲しい。「こけし」に腕がないのは、呪われた腕をあえて消すためだったという。

著者の創作がどの程度なのかわからないが、元になった悲しみが、そこにあったことには疑いがない。けっして、ベッタリにならない距離感もいい。一九七七生まれの若い作家さんだが、人間が“物語”を必要とする生き物であることを知っている。

この二冊、帚木蓬生の本で「軍医たちの黙示録」という副題がついています。戦争を、軍医という、同じ戦場であっても兵たちとは少し違う視点から見ることができておもしろいです。この中にも色々な物語が語られています。 なんだかイメージが重なる部分があった。
 



にほんブログ村 本ブログへ一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
読書
記事一覧


関連記事

テーマ : 歴史・時代小説
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

非公開コメント

ありがとうございました



「《めんどくせぇことばかり》は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。」
よくお越し下さいました

イーグルス16

Author:イーグルス16

息も絶え絶えです、ぜひ応援してください


人生に必要なもの、一人の女性、一人の親友、一つの思い出、一冊の本。
その一冊。
カウンター
カテゴリ
こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
やられた本


















































































リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
最新記事