『日本軍と日本兵』 一之瀬俊也
“はじめに”の中で、以前このブログでも取り上げた片山杜秀著『未完のファシズム「持たざる国」日本の運命』という本を取り上げて、以下のように述べている。

その上で、日本陸軍はひたすら「玉砕」ばかりを絶叫していたのではなく、ニューギニア、フィリピン、硫黄島、沖縄と持久戦方針がとられ、それがために一九四五年の敗戦まで戦闘が続いた理由を解き明かそうとしている。その試みとして著者が行ったのが、もう一方の戦争の当事者である米軍の視点を導入することである。
本書は米陸軍軍事情報部が毎月発行していたIntelligence Bulletin(『情報広報』)に掲載された記事から“日本軍と日本兵”の姿を明らかにしようとするものである。
“日本兵は比類なき戦闘能力を持った一種の超人である”
本書によれば、これは戦前、「劣等人」と見下していた日本人に東南アジア一帯をまたたく間に占領されたことに驚愕し、恐怖した彼らが勝手に作り上げた虚像であったが、事実、アメリカはこのような日本兵像をいだいていたらしい。ジョン・W・ダワーは『容赦なき戦争』の中でこの状況を、古い黄禍論の一変種とも言うべき「日本兵超人伝説」の誕生と紹介しているそうだ。
開戦当初の米兵の、そんな日本兵像を打ち砕くためにも『情報広報』が発行されていたということらしい。そんな中で日本兵はどのように語られ、評価されていたか。「日本兵超人伝説」を払拭するためにも、ベクトルは大きく反対を向くわけだけど、正反対に向くベクトルの中にも、著者は読みとるべき日本兵の真実があるし、日本軍の、そして日本の抱えていた問題があるという。






一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
日本陸軍は第一次世界大戦で総力戦、物量戦とその重要性を詳しく学んだが、「持たざる国」の貧弱なる国力ではこれに追い付けず、そのため国力に見合った殲滅戦(短期決戦)を目ざした軍人小畑敏四郎も、「持てる国」造りを目ざした石原莞爾も、激しい軍内権力闘争のすえ放逐されてしまった。 結局、総力戦遂行を可能にする政治権力の一元的集中は、権力の多元性―つまり独裁を許さぬ体制を定めた明治憲法の壁に阻まれて実現せず、仕方がないので物質力に対する精神力の優位に呼号しているうちに本物の総力戦=対米戦に突入してしまい、あとはひたすら敵の戦意喪失を目ざして「玉砕」を繰り返すしかなかったのだという。 |
『未完のファシズム』は面白かった。けっこう興奮しながら読んだ。時間があったら、私の書いた記事も覗いてみて下さい。 http://jhfk1413.blog.fc2.com/blog-entry-1641.html http://jhfk1413.blog.fc2.com/blog-entry-1642.html |
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本書は米陸軍軍事情報部が毎月発行していたIntelligence Bulletin(『情報広報』)に掲載された記事から“日本軍と日本兵”の姿を明らかにしようとするものである。
はじめに ― 我々の日本軍のイメージ 第一章 「日本兵」とは何だろう 第二章 日本兵の精神 第三章 戦争前半の日本軍に対する評価 ― ガダルカナル・ニューギニア・アッツ 第四章 戦争後半の日本軍に対する評価 ― レイテから本土決戦まで おわりに ― 日本軍とは何だったのか |
“日本兵は比類なき戦闘能力を持った一種の超人である”
本書によれば、これは戦前、「劣等人」と見下していた日本人に東南アジア一帯をまたたく間に占領されたことに驚愕し、恐怖した彼らが勝手に作り上げた虚像であったが、事実、アメリカはこのような日本兵像をいだいていたらしい。ジョン・W・ダワーは『容赦なき戦争』の中でこの状況を、古い黄禍論の一変種とも言うべき「日本兵超人伝説」の誕生と紹介しているそうだ。
開戦当初の米兵の、そんな日本兵像を打ち砕くためにも『情報広報』が発行されていたということらしい。そんな中で日本兵はどのように語られ、評価されていたか。「日本兵超人伝説」を払拭するためにも、ベクトルは大きく反対を向くわけだけど、正反対に向くベクトルの中にも、著者は読みとるべき日本兵の真実があるし、日本軍の、そして日本の抱えていた問題があるという。


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