『逆説の世界史 1』 井沢元彦
読んでる途中で、すでに二回もメモを残してしまったんだけど、あらためて本書の紹介をさせてもらう。なんで、井沢氏は『逆説の世界史』を始めてしまったんだろう。カバーにこうある。
“なんで『逆説の世界史』を始めてしまったんだろう”なんて書いたのは、彼我の年齢のこと。井沢氏は一九五四年生まれだから六十歳。『逆説の世界史』は、始まって二十年二十巻で江戸末期。それだけだって、「最後まで読めるだろうか」と心配していたところ、加えて『逆説の世界史』に六十歳になって取りかかるとは・・・。
べつに、井沢氏が死にそうだと言ってるわけじゃなくて・・・。言ってるか、明らかに。でも、それだけじゃなくて、一九六〇年生まれで、七十歳くらいで死ぬであろう自分は、『逆説の世界史』の完結を読めないだろうし、場合によっては、テンポが遅れることによって『逆説の日本史』の完結を迎えられないなんてこともなくはない。・・・タバコ、やめようかなぁ。
読んでいく中でわかるけど、井沢氏は外国人読者を意識しながら書いている。と、思ったら、小学館ウェブサイトには英語版も連載中であるという。日本人にとっての世界史ではなく、人類にとっての世界史ということだ。
『逆説の世界史』は、これまで幾多書かれてきた“世界史”とは違う方法論を持って書かれるという。キーワードになるのが“比較”。地域や時代を限定して研究する歴史家には難しい時空を超えた比較によって新たな視点を開く。
もう一つのキーワードがETの目で見た「地球史」。ETが見た人類は肌の色の違い以外には大きな違いはない。ところが、経済的、政治的関係において優位な立場にある特定肌の色のグループの中に、そうでないグループを差別する感情があることが、ETには見える。
ETはいったい、どんな歴史を書くのだろう。
前漢の宦官、蔡倫が紙を発明した。紙をつくる技法がイスラームやヨーロッパに伝わり、ルネサンス期、グーテンベルクの活版印刷が登場した。これが人類社会を変えた。産業革命から現代へ向けて、人類社会は激しく変化した。
しかし、古代エジプトにもパピルスがあり、文字もあった。それによって私たちは、古代エジプトのいろいろなことを知ることができる。ところが、現代でもその技法を解き明かすことができない巨大ピラミッドの建造。それだけの技術がなぜ伝承されなかったのか。
歴史のある時期まで、明らかに世界の文明をリードし、同一の地域に、同質の文化を営んだ中国。ならばなぜ、中国は世界スタンダードになれなかったのか。そこにある儒教文明の呪縛とは、また朱子学の悪影響とは何か。
とまあ、こんな具合のことが書かれておりまして、面白かった。ただし、私には井沢氏の姿がちらついた。どうも、ETがこれを書いているようには思えなかった。今回のテーマでは、日本が頻繁に登場したことが理由かな。今後のETの活躍に期待したい。
最後になりますが、私は井沢氏が『逆説の世界史』を書き始めた理由を、私なりに考えている。実際、この二十年間で、日本人の日本史のとらえ方にもずいぶん変化があったと思う。教科書の記述は相変わらずの所もあるけど、前に比べれば、日本史のとらえ方にもいろいろな変化が起きていると思う。『逆説の日本史』の近現代史がいよいよ楽しみなところだ。
ごめんなさい。『逆説の世界史』について・・・、です。井沢氏は“日本史”を“世界史”の中に相対化することをねらってるんじゃないだろうか。たしかに最近、日本を包む近現代史のとらえ方にも大きな変化が表れている。でも、戦争に負けた日本は、やはり正当な評価が受けられない。その評価を下すのは戦勝国、中でも白人国家というギルドみたいな組合だ。敗戦国として、ねじ曲げられた歴史だって、これから正さなきゃならない。そんな時、“世界史”のなかで日本の存在を相対化することにより、日本が“世界史”に、“人類史”に果たした役割を主張できるようにするための援護射撃みたいなもんなんじゃないだろうか。・・・そんな理屈はいらない?







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文明はどのように発達し、なぜ衰退していくのか。 民族・宗教・イデオロギーによる偏見や差別を超越した視点で、「通史としての世界史」に挑む新たなライフワーク❢❢ 構想15年、逆説史観による文明論が「世界とニッポン」の歴史認識を覆す。 |
“なんで『逆説の世界史』を始めてしまったんだろう”なんて書いたのは、彼我の年齢のこと。井沢氏は一九五四年生まれだから六十歳。『逆説の世界史』は、始まって二十年二十巻で江戸末期。それだけだって、「最後まで読めるだろうか」と心配していたところ、加えて『逆説の世界史』に六十歳になって取りかかるとは・・・。
べつに、井沢氏が死にそうだと言ってるわけじゃなくて・・・。言ってるか、明らかに。でも、それだけじゃなくて、一九六〇年生まれで、七十歳くらいで死ぬであろう自分は、『逆説の世界史』の完結を読めないだろうし、場合によっては、テンポが遅れることによって『逆説の日本史』の完結を迎えられないなんてこともなくはない。・・・タバコ、やめようかなぁ。
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『逆説の世界史』は、これまで幾多書かれてきた“世界史”とは違う方法論を持って書かれるという。キーワードになるのが“比較”。地域や時代を限定して研究する歴史家には難しい時空を超えた比較によって新たな視点を開く。
もう一つのキーワードがETの目で見た「地球史」。ETが見た人類は肌の色の違い以外には大きな違いはない。ところが、経済的、政治的関係において優位な立場にある特定肌の色のグループの中に、そうでないグループを差別する感情があることが、ETには見える。
ETはいったい、どんな歴史を書くのだろう。
序章 人類はいかにして文明をもったか・・・通史としての世界史を書く方法論 第一話 民族、宗教、イデオロギーを超越した新たな視点 第二話 時代分類は「利器の材質」から「情報蓄積ツール」へ 第一章 古代エジプト文明の崩壊・・・科学技術情報を隠蔽したファラオの言霊信仰 第一話 なぜ巨大ピラミッドが建造されたのか 第二話 ヒエログリフと文字の起源 第二章 中国文明の力量と停滞・・・六百年も停滞し続ける「中華思想」国家の臨界 第一話 儒教文明の呪縛と毛沢東の文化大革命 第二話 朱子学国家が東アジアに与えた悪影響 第三話 歴史を改竄する中国共産党の偏向教育 |
前漢の宦官、蔡倫が紙を発明した。紙をつくる技法がイスラームやヨーロッパに伝わり、ルネサンス期、グーテンベルクの活版印刷が登場した。これが人類社会を変えた。産業革命から現代へ向けて、人類社会は激しく変化した。
しかし、古代エジプトにもパピルスがあり、文字もあった。それによって私たちは、古代エジプトのいろいろなことを知ることができる。ところが、現代でもその技法を解き明かすことができない巨大ピラミッドの建造。それだけの技術がなぜ伝承されなかったのか。
歴史のある時期まで、明らかに世界の文明をリードし、同一の地域に、同質の文化を営んだ中国。ならばなぜ、中国は世界スタンダードになれなかったのか。そこにある儒教文明の呪縛とは、また朱子学の悪影響とは何か。
とまあ、こんな具合のことが書かれておりまして、面白かった。ただし、私には井沢氏の姿がちらついた。どうも、ETがこれを書いているようには思えなかった。今回のテーマでは、日本が頻繁に登場したことが理由かな。今後のETの活躍に期待したい。
最後になりますが、私は井沢氏が『逆説の世界史』を書き始めた理由を、私なりに考えている。実際、この二十年間で、日本人の日本史のとらえ方にもずいぶん変化があったと思う。教科書の記述は相変わらずの所もあるけど、前に比べれば、日本史のとらえ方にもいろいろな変化が起きていると思う。『逆説の日本史』の近現代史がいよいよ楽しみなところだ。
ごめんなさい。『逆説の世界史』について・・・、です。井沢氏は“日本史”を“世界史”の中に相対化することをねらってるんじゃないだろうか。たしかに最近、日本を包む近現代史のとらえ方にも大きな変化が表れている。でも、戦争に負けた日本は、やはり正当な評価が受けられない。その評価を下すのは戦勝国、中でも白人国家というギルドみたいな組合だ。敗戦国として、ねじ曲げられた歴史だって、これから正さなきゃならない。そんな時、“世界史”のなかで日本の存在を相対化することにより、日本が“世界史”に、“人類史”に果たした役割を主張できるようにするための援護射撃みたいなもんなんじゃないだろうか。・・・そんな理屈はいらない?


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