『昭和天皇 第七部 独立回復(完結篇)』 福田和也
昭和天皇について書かれた本は、夥しく存在しています。 浩瀚な伝記から、エピソードを集めた本まで、毎居にいとまがありません。 来年度には、昭和天皇の実録が刊行されるそうです。 にもかかわらず、歴史の専門家でもない私が、文芸評論を業とする人間が、なぜ屋上屋を重ねる事になったのか。 それは、昭和天皇―彼の人―の視座を借りると、ありとあらゆる事件、人物を登場させることができる・・・ |
それらの登場人物は、次の展開に何の影響も与えずに舞台を去っていく。・・・にもかかわらず、あとには何かが残るのだ。まるで、音も立てずに雪が積もっていくように、積もっていくものがある。それは時期に、とてつもない厚みを持って、その舞台に登場したはずの人物たちの物語を飲み込んでいく。・・・たぶん、それが“時代”なのだろう。
![]() | 『昭和天皇 第七部 独立回復(完結篇)』 (2014/04/18) 福田 和也 商品詳細を見る |
この本は第七部。そして完結編。仕方がないでしょ、知らなかったんだから。第一部は二〇〇八年に出てますね。熱くなって読むようなタイプの本じゃないけど、その気になったときに、より興味の持てるところから読んでみよう。
第一部 日露戦争と乃木希典の死 第二部 英国王室と関東大震災 第三部 金融恐慌と血盟団事件 第四部 二・ニ六事件 第五部 日米交渉と開戦 第六部 聖断 第七部 独立回復(完結篇) |
だめだ❢ これじゃ、全部読みたい。ハハハ、・・・でも、今すぐそんな訳にはいかないし・・・、まあ、時期にね。
この書き方で、昭和天皇と相対化されると、何だかみ~んな歴史のピースとして、ただ、生身の等身大でそこに存在する。いろいろな肩書を削ぎ落とされて等身大まで相対化されると、マッカーサーあたりがよ~く見えるように思える。
昭和天皇とマッカーサーの三度目の会談の時、マッカーサーはこう言ったという。
『驚くべきことは、世界中の人々が、戦争は世界を破滅に導くということを十分に認識していない、ということです。戦争は、今や不可能です。戦争を放棄する以外に世界を救う道はありません。私は予言します。五十年後、日本が道徳的にいかに勇猛であったかが、証明されるでしょう。百年後、日本は世界の道徳的指導者になるでしょう。すべては歴史が証明するでしょう』
証明されたのは、方法論的に自分の格を高めるすべを熟知していたということ以外、マッカーサーがノータリンだったということだった。昭和天皇は、“やれやれ”と言った面持ちで、これを聞いただろう。それから、こんな馬鹿さかげんを思うと、“戦争放棄”自体、幣原喜重郎から持ちかけたことじゃないかという考えも、信憑性を持つ。
さて、とりあえずは、第六部の『聖断』かな。


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