主役はスターリン(覚書)『山川日本史 近現代史編 下』 倉山満
なぜ日本の言論界で、そして政治においてアジア主義と親独派が野合できたのかといえば、アングロサクソン陰謀論という接点があったからです。英米という悪い陰謀団体がいて、地球を支配している、という一点において、「敵の敵は見方」でくっついてしまったわけです。 こんな奇妙な世界観にとらわれさえしなければ、日本は英米と対立することはなかったはずです。当時の世界は英米のように憲法を奉じる自由主義国、ドイツのように民族主義を鼓吹するファシズム、ソ連のように共産主義を広げようとするファシズム、といった陣営が争っていました。二大政党の間で政権が揺れ動いていた日本はとうてい一党独裁のファシズムにはなれません。 そもそも、日本は第一次世界大戦の戦勝国です。英米と同じ大国なのに、なぜ負け組のドイツの陣営に入っていたのか。これは歴史の必然でも何でもなく、明らかな政策の失敗です。 では、本来同じ陣営に入ってもおかしくないはずの日本と英米が対立して、ついには戦争になって潰し合うことで得をしたのは誰でしょうか。対立を外から眺めていたソ連です。この点に注目すると大東亜戦争と第二次世界大戦の意味が違って見えてくるのです 本書P77~78 |
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“政策の失敗”さえなければ、日米が衝突することはなかったかと考えれば、決してそうとも言い切れないと思う。アメリカ人の反日感情は、特定のグループにおいてはきわめて高く、執拗である。それをコミンテルンにつけ込まれた。日本は日本で、“アングロサクソン陰謀論”なんて考え方をコミンテルンにつけ込まえた。
主役はスターリンである。「にもかかわらず・・・」である。コミンテルンはスターリンの謀略機関である。そんなことすら、教科書は書かない。
日米交渉の最後通告に等しいハル・ノートの起草者は、ルーズベルト政権の財務次官補ハリー・デクスター・ホワイト。ホワイトは、戦後、ソ連のスパイであったことが判明した。
ゾルゲ事件に連座して逮捕された尾崎秀実。彼も、ゾルゲ同様ソ連のスパイだった。その尾崎秀実は朝日新聞記者であり、同時に当時の総理大臣近衛文麿のブレーンの一人だった。尾崎は、朝日新聞記者としては支那事変に関して最も強硬な主戦論を唱え、「暴支膺懲」の世論を盛り上げ建てた役者で、近衛文麿のブレーンとしては、日本を支那事変へとのめり込ませ、近衛の政策を南進論に傾けることに大きな役割を果たした。
アメリカの戦争目的は、ヨーロッパにおいてはヒトラーから東欧を取り戻すこと、アジアにおいては支那という巨大市場を手に入れること、だったはずである。しかしドイツを屈服させても、日本を屈服させても、その目的は達成されなかった。東欧はソ連の手に落ち、支那も共産化した。この戦争の勝者は、スターリンである。そしてその子分の毛沢東である。時にはそのまた子分の金日成であったりもする。


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