“ケンカ”できないオバマ(覚書)『ケンカ国家論』 落合信彦
2012年9月11日、リビアのベンガジにあるアメリカ領事館がテロリストに襲われ、クリストファー・スティーブンス米大使が殺害されるという大事件が発生したのである。2000人の暴徒が領事館を取り囲み、自動小銃やRPG(ロケット弾発射機)で武装した集団が敷地内に侵入すると、リビア人警備員たちは蜘蛛の子を散らすよう逃げ出した。結果、好き放題に放火や略奪が行われた。2011年の政変で独裁者カダフィが打倒されたリビアでは、民衆がいまだに武器を手放さない。アメリカなどの大国の後ろ盾無しで誕生した暫定政権には治安維持能力が無いため、こうした事件が発生してしまう。公務中のアメリカ大使が殺害されるのは1979年のアフガニスタン以来で、冷戦崩壊後では初めてのことだった。 もちろん領事館の敷地は治外法権であるから、侵入は領土侵犯と同義であり、アメリカ政府の「全権大使」を殺害することは宣戦布告に等しい行為だ。 しかし、この事件を受けてなおオバマは機敏な反応を見せなかった。リビア沖に駆逐艦をたった2隻派遣しただけ。強硬姿勢を見せることで現地の反米感情がさらに高まることを恐れたのだ。 ここまでされてなお「相手を刺激したくない」という発想なのである。「9月11日」という犯行の日付を見てもわかるように、領事館襲撃事件は明らかに国際テロ組織アルカイーダの犯行だ。国家の総力を上げてテロリストに毅然と立ち向かう姿勢を示さずに、どのように国益を守るつもりなのだろうか。それどころか、国内向けにはこれがテロリストの犯行であることをなかなか認めず、アメリカ国民までも騙し続けたのである。 |
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日本経済新聞 2013/9/11 ロシア大統領、米にシリア軍事介入放棄求める http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM10057_R10C13A9EB1000/ |
ロイター 2014/3/20 米国、ウクライナで軍事行動に関与せず=オバマ大統領 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA2I09P20140319 |
どうにもオバマは揉め事から逃げまくっている印象がある。ある意味では、世界中がオバマを試している状況だろうか。腕の寸法測って、肩幅測って、股下測って。測り終わったら、「寸法どおりにドカン」ってことかな。
プーチンはオバマを測りきっているようだ。だけど、オバマを測っているのはプーチンだけじゃない。世界中がオバマを測っている。先日記事にした『イスラム国』は、これから内部分裂が発生する可能性が高いものの、支配領域を拡大し、バグダード侵攻を目指している。彼らもまた、オバマを測りきったようだ。
東アジアではどうか。アメリカの大統領が“ケンカ”のできないオバマである以上、日本は“ケンカ”のできるリーダーを持たなければならないし、日本国民自体が“ケンカ”のできる国民にならないといけない。
もちろん、“ケンカ”っていうのは“戦争”と同義ではないからね。勘違いしないでね。


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