抑止力と穢れ(覚書)『逆説の日本史テーマ編 英雄の興亡と歴史の道』 井沢元彦
本当に日本の歴史は難しい。それでも二十年も井沢元彦さんの本読んでれば、日本の歴史が日本人の無意識のなかに隠された“和を重視する意識”、“言霊信仰”、“怨霊信仰”、“穢れを忌避する思想”に強く影響されてきたことは、それなりに理解している。今の日本の良い部分も、悪い部分も、その影響をのもとに成り立っている。
それって大東亜戦争の悲劇を生み出した間違った判断の背景にある日本人的思考の悪い部分を、そのまま今に引きずっているってことだな。面白いのは、 あの戦争を戦った“日本”そのものに批判的な人たちほど、その悪い部分の影響を強く受けているように思えることだ。
この文章、なにについて語っていると思う?“ケガレ”という言葉が使われてはいるけど、なんだか現代における妄想的平和主義について語っているように思わない?
違うんだな、これが・・・。これは平安後期に武力を持つのをやめてしまった朝廷のことを語っているのであって、次のように続いている。
つまり、それは《平和を維持する》という観点からすれば、とても危険な思想であるということだな。さらに言えば、戦後、日本をリードしてきたのは、そのような危険思想であった。そんな日本が無事でいられたのは、そのケガレ仕事をアメリカに押し付けてきたからだ。アメリカには、それ以上の見返りがあればこそのことだけど、押し付けっぱなしで平気でいる方の神経もすごいよね。でも、本当はとても大事なものを失っているんだけどね。ハハハ・・・、私にはもう無理だな。
上のことが語られているのは、《後醍醐天皇》に関わる項目。建武の新政が潰れた様子を、「後醍醐天皇が心の底では“ケガレ”として蔑視している武士を利用し、そして利用した武士によって、最終的には後醍醐天皇のほうが排除された」とまとめている。《後醍醐天皇》とか、《武士》という部分に違う言葉を入れてみると・・・、今の日本がとても危険な状況にあると思わない?









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悪い部分といえば、あれだけの悲劇を生み出した大東亜戦争。その時の日本人の判断の一つひとつにも、やはりその影響がある。恐ろしいのは、その反省が何一つなされていないということだ。そういや、昨日は終戦の日でしたね。 | ![]() |
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《武器〈武力〉とは、ダイレクトに「死」や「血」につながるケガレの最たるものだ》 皮肉なことに、こういう考え方をする人々は、たとえば「抑止力」などということは絶対に考えない。平和とは神聖なもので、ケガレに染めてはいけない。だからケガレに満ちた武力で平和を守れるなどと考えてはいけないのである。・・・は武力を持つのをやめてしまった。「紛争を解決する手段としての戦争」を一切放棄したのである。 本書P110より(抜粋) |
この文章、なにについて語っていると思う?“ケガレ”という言葉が使われてはいるけど、なんだか現代における妄想的平和主義について語っているように思わない?
違うんだな、これが・・・。これは平安後期に武力を持つのをやめてしまった朝廷のことを語っているのであって、次のように続いている。
朝廷が武力を放棄したからといって日本が平和になるわけではない。それどころか事態はまったく逆の方向に進み、平和への「抑止力」を捨ててしまった朝廷を嘲笑うかのように、各地で私的武装集団が生まれ権力闘争を始めた。これが武士団というものだ。彼らは「武力なき中央政府」である朝廷を圧倒して軍事政権を樹立した。これが幕府というものである。 |
つまり、それは《平和を維持する》という観点からすれば、とても危険な思想であるということだな。さらに言えば、戦後、日本をリードしてきたのは、そのような危険思想であった。そんな日本が無事でいられたのは、そのケガレ仕事をアメリカに押し付けてきたからだ。アメリカには、それ以上の見返りがあればこそのことだけど、押し付けっぱなしで平気でいる方の神経もすごいよね。でも、本当はとても大事なものを失っているんだけどね。ハハハ・・・、私にはもう無理だな。
上のことが語られているのは、《後醍醐天皇》に関わる項目。建武の新政が潰れた様子を、「後醍醐天皇が心の底では“ケガレ”として蔑視している武士を利用し、そして利用した武士によって、最終的には後醍醐天皇のほうが排除された」とまとめている。《後醍醐天皇》とか、《武士》という部分に違う言葉を入れてみると・・・、今の日本がとても危険な状況にあると思わない?


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