『日本の1/2革命』 池上彰・佐藤賢一
“1/2革命”について触れておかなきゃね。佐藤賢一さんだから、当然、“日本の革命”の対象になっているのはフランス革命。つまり、フランス革命が行きつくとこまで行った“1革命”で、日本の、・・・これは明治維新にしても、GHQによる改革にしても、みんなその半分、“1/2革命”ってことね。
まずはブルジョア革命をおこして、そこからプロレタリア革命に・・・、なんて二段階革命論てのがあったけど、それもフランス革命の二段階ロケットを検証してのこと。一七八九年のバスティーユ牢獄襲撃ではじまったフランス革命は、一七九二年の八月一〇日事件で、それまでとは次元の違う革命に突入する。
それこそパリ民衆、貧困層が主役になる。そしてルイ一六世や、王妃マリー・アントワネットを断頭台の前に引きずり出し手首をはねる。彼らは、人々が誰も到達したことのない純粋理性のみを信奉するロベスピエールに権力を与え、恐怖政治を出現させたわけだ。
「そんなんだったら“1/2革命”で十分」、・・・そういうことを言ってるわけじゃないんだな。
ある意味では、日本の明治維新は、フランスの一七八九年の革命に瓜二つだって。その革命が発生する前の危機的状況が、つまり、絶対王政と幕藩体制が似てるってことはこの間書いたけど、革命そのものがそっくりだって。
たしかに、よく似てる。だけどフランスは、この状況からさらに先へ進んで、一七九二年の革命に突入したってわけだな。なぜそうなったのか。たとえば、ミラボーが病死したとか、王一家がビビって逃げちゃったとか・・・。それに対して日本は坂本龍馬が・・・。佐藤賢一さんはヴァレンヌ事件をあげてる。それもそうだし、その後のオーストリア、プロイセンの干渉宣言もパリ民衆を追い込んでる。池上彰さんが火山の噴火を持ちだしているのは面白い。一七八三年にはアイスランドのラキ火山に、日本の浅間山も噴火している。
食糧不足はパリのような都会には特に厳しかったろう。立憲君主制がどうとか、アンシャンレジームがどうとか、身分がどうとかより、飯を食わせろと。背景には間違いなくそれがありそうだな。
さて、日本の“1/2革命”だけど、半分でいいとか、いやフランスのように天皇陛下に・・・、なんてことを言ってるんじゃないんだな。つまり1/2で終わっているがゆえに、民衆の力で社会を変えたという体験になっていないことが、現在の日本にも大変大きな影響を及ぼしているということならば、・・・こんなところにしておこう。
佐藤賢一さんの日本の歴史に関する認識にはちょっと首をかしげたところがあったんだけど、フランス史に関しては、『貴族化したブルジョワが三部会では平民に分類されて頭にきた』とか、『貴族は斬首、平民は絞首。ギロチンは平等』とか、細かいところだけど、それこそ“神が宿る”かもしれないような知見がふんだんに披露されているのもとても面白かった。






一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
まずはブルジョア革命をおこして、そこからプロレタリア革命に・・・、なんて二段階革命論てのがあったけど、それもフランス革命の二段階ロケットを検証してのこと。一七八九年のバスティーユ牢獄襲撃ではじまったフランス革命は、一七九二年の八月一〇日事件で、それまでとは次元の違う革命に突入する。
それこそパリ民衆、貧困層が主役になる。そしてルイ一六世や、王妃マリー・アントワネットを断頭台の前に引きずり出し手首をはねる。彼らは、人々が誰も到達したことのない純粋理性のみを信奉するロベスピエールに権力を与え、恐怖政治を出現させたわけだ。
「そんなんだったら“1/2革命”で十分」、・・・そういうことを言ってるわけじゃないんだな。
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まえがき ロベスピエールの二分の一革命 佐藤賢一 序章 改革、変革、革命 第一章 日本人がフランス革命を語る意味 第二章 「半分」だった明治維新 第三章 「半分」だった戦後の革命 第四章 言葉の時代、あぶない後半戦 終章 日本は後半戦に挑むべきか? 関連年表・「人および市民の権利宣言」(一七八九)・一七九一年九月三日の憲法(冒頭)・人物、用語解説 対談を終えて 「二〇一一中東革命」の嵐の中で 池上彰 |
ある意味では、日本の明治維新は、フランスの一七八九年の革命に瓜二つだって。その革命が発生する前の危機的状況が、つまり、絶対王政と幕藩体制が似てるってことはこの間書いたけど、革命そのものがそっくりだって。
フランス一七八九年の革命 | 明治維新 | |
担い手 何をめざした 中間団体は? 身分 | 開明派貴族・貴族化したブルジョワ 立憲君主制の憲法を制定 諸侯の領国を前身とする州を整理して八三県を置く 身分の廃止 | 武士 立憲君主制の憲法を制定 廃藩置県で藩を整理して三府三〇二県を置く 四民平等 |
たしかに、よく似てる。だけどフランスは、この状況からさらに先へ進んで、一七九二年の革命に突入したってわけだな。なぜそうなったのか。たとえば、ミラボーが病死したとか、王一家がビビって逃げちゃったとか・・・。それに対して日本は坂本龍馬が・・・。佐藤賢一さんはヴァレンヌ事件をあげてる。それもそうだし、その後のオーストリア、プロイセンの干渉宣言もパリ民衆を追い込んでる。池上彰さんが火山の噴火を持ちだしているのは面白い。一七八三年にはアイスランドのラキ火山に、日本の浅間山も噴火している。
食糧不足はパリのような都会には特に厳しかったろう。立憲君主制がどうとか、アンシャンレジームがどうとか、身分がどうとかより、飯を食わせろと。背景には間違いなくそれがありそうだな。
さて、日本の“1/2革命”だけど、半分でいいとか、いやフランスのように天皇陛下に・・・、なんてことを言ってるんじゃないんだな。つまり1/2で終わっているがゆえに、民衆の力で社会を変えたという体験になっていないことが、現在の日本にも大変大きな影響を及ぼしているということならば、・・・こんなところにしておこう。
佐藤賢一さんの日本の歴史に関する認識にはちょっと首をかしげたところがあったんだけど、フランス史に関しては、『貴族化したブルジョワが三部会では平民に分類されて頭にきた』とか、『貴族は斬首、平民は絞首。ギロチンは平等』とか、細かいところだけど、それこそ“神が宿る”かもしれないような知見がふんだんに披露されているのもとても面白かった。


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