戦闘に勝って、戦争に負けたイスラエル(覚書)『サバイバル宗教論』 佐藤優
2014/8/4 The Economist-JBpress Winning the battle, losing the war 戦闘に勝ち、戦争に負けるイスラエル http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41393 |
- イスラエルからの攻撃により、1000人を超えるパレスチナ市民が殺され、それが世界中で同情を集めるであろうことを、ハマスは知っている。事実、イスラエルは戦闘には勝利しつつあるものの、国際世論を巡る戦いでは苦戦している。
- パレスチナ地域の占領が長引くにつれて、同情は急速に薄れていった。ガザ攻撃前の6月に発表された国際世論調査では、世界23カ国の国民のうち、イスラエルが世界に悪い影響を与えていると回答した人が、良い影響を与えていると回答した人を26ポイント差で上回った。
- イスラエル人の多くが、世界は自分たちに敵対していると感じ、イスラエルに対する批判の下にユダヤ人への嫌悪が潜んでいると信じている。しかし、ガザの破壊は、ハマスに対する支持を後押しし、イスラエルにとって平和実現に向けた最大の勝機となるはずの穏健なパレスチナ人を遠ざけている。
- ガザ地区で血が流され、悲惨な事態に至っているにもかかわらず、ネタニヤフ首相には近く、批判に耳を傾けていることを示す機会が与えられる。戦闘に勝ったネタニヤフ首相は、交渉のテーブルに戻り、今度こそ本気で和平を提案できるはずだ。イスラエルの真の友人は皆、そうするように圧力をかけなければならない。
抜粋
![]() | 『サバイバル宗教論』 佐藤優 (2014/02/20) 佐藤 優 商品詳細を見る 宗教を知ることは今後の世界を生き抜くための必須の智慧だ |
『全世界に同情されながら死に絶えるよりも、全世界を敵に回してでも戦い、生き残りを試みる』
ここで問題にされているのはハマスの残虐行為ではない。イランの核開発を問題にしている。しかし、実際、イスラエルはこの夏、生き残りのためなら“世界を敵に回してでも・・・”自らの敵と戦う意思を世界に示したことにならないか。たしかに、“Winning the battle, losing the war”と揶揄される状態が発生している。《それでもなお、そうした》、その意味は何か。
イランは、核濃縮工場の一部をコムという町に移しました。このコムという町は、十二イマーム派の聖地で、メッカよりも重要な意味を持つ巡礼地なんです。ホメイニさんもここの神学院で教えていました。もしこのコムを攻撃することになれば、これは文明間戦争、宗教戦争になります。イランとしては、そういうカードを切りながら、なんとしても核を開発したいと考えているわけです。 本書P55 |
この夏、多くの人がテレビのニュースを見ながら思ったはず。「いくらなんでもイスラエルはやりすぎだ」、「いくらハマスの暴力が悪いのだと言っても、これだけ多くの子供たちが犠牲になるような攻撃をすることはないだろう」と。たしかに、この夏の場面では、イスラエルは“生き残りの危機”にはない。それが訪れるのは、・・・イランの核開発が成功した段階である。その時、イスラエルは“全世界を敵に回しても生き残りを試みる”という意思表示が、この夏のガザ攻撃ではなかったか。


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