『特攻の真意』 神立 尚紀
昭和二〇年八月一六日に壮烈な割腹自決を遂げた大西中将の遺書は、神風特攻の命令を下し、戦争継続を激しく主張していた人物が書いたとは思えない世界平和を願う言葉が綴られていた。その遺書の意味を考え続けていた大西の元副官門司親徳は、元特攻隊員の門田和男がダバオの基地で耳にした「特攻の真意」を聞いて、長年の疑問が氷解していった・・・ あの戦争の空白を埋める衝撃のノンフィクション作品。 |
![]() | 『特攻の真意』 神立 尚紀 (2011/08/04) 神立 尚紀 商品詳細を見る ー大西瀧治郎 和平へのメッセージー |
第一章 元零戦特攻隊員の真情 第二章 「徹底抗戦」と「世界平和」のはざまに 第三章 「決死隊を作りに行くのだ」 第四章 神風特別攻撃隊誕生 第五章 「忠烈万世に冠たり」特攻隊突入と栗田艦隊の反転 第六章 特攻の真意 第七章 棺を蓋うても事定まらず 第八章 終戦の聖断くだる 第九章 特攻隊の英霊に日す エピローグ 「神風」の見果てぬ夢 |
中央公論 2006年10月号に掲載された、「世界の海軍にあって最も下劣 なぜ、今、戦争責任の検証か 渡邉恒雄(読売新聞・主筆)」 の中で、渡邉氏は次のように語る。
特攻隊の編制は、形式的には志願で始まったが、間接的強制、そして実質的な命令に進んだ。その結果、未来ある若い学生出身の下級将校たちが、肉弾となって意味もなく殺された。特攻はあの戦争の美談ではなく、残虐な自爆強制の記録である。イスラム原理主義者の自爆は宗教上の妄信や、指導者のマインドコントロールによる自発的自爆だが、『特攻』はほとんどが実質的には『命令と強制』であった点で、イスラム・テロリストのケースとはまったく違う。悪い意味で合理的な計算に立ち、こういう非道、外道の作戦を考え、実行した軍の参謀や司令官、さらには、人間を物体としての兵器と化した軍部当事者の非人間性は、日本軍の名誉ではなく 汚辱だと思わざるを得ない。 |
渡邉氏の不見識を指摘したくて取り上げたわけじゃなくて、仮にわずかながら時代を共有しても真実に迫ることがいかに難しいかを示す一例にさせてもらった。
ましてや、敗戦国日本はみずからの歴史を語ることを戦勝国アメリカによって禁じられた。
先頭に立った者たちは公式の場から追放され、アメリカに追随する者たちがそれに代わった。
真実に迫るべき学問や報道が率先してアメリカの検閲に屈していった。
今の日本は、未だにその延長線上にある。
でも、「真意」は受け継がれてきていた。
日本中のあちらこちらで、ひっそりと生きる者たちの胸のうちに。
多くが失われたに違いないが、ときには伏流水のように、後世の人ののどを潤すこともある。
そんな本だ。
一日も早く講話を結ばなければならぬ。マリアナを失った今日、敵はすでにサイパン成都にいつでも内地を爆撃して帰れる大型爆撃機を配している。残念ながら、現在の日本の国力ではこれを阻止することはできない。それにもう重油、ガソリンが、あと半年分しか残っていない。・・・半年後には、仮に敵が関東平野に上陸してきても、工場も飛行機も戦車も軍艦も動けなくなる。 そうなってからでは遅い。動ける今のうちに講和しなければ大変なことになる。・・・一度でよいからこのレイテから追い落とし、それを機会に講和に入りたい。敵を追い落とすことができれば、七分三分の講和ができるだろう。 これは九分九厘成功の見込みはない。これが成功すると思うほど大西は馬鹿ではない。では何故見込みのないのにこのような強行をするのか。ここに信じて良いことが二つある。《あとは読んでね》 |
大西は十字腹を切り、喉を突き、胸を突いて、なおみずからの血の海に15時間のたうちまわった挙句に亡くなったという。
それが、有望であるはずの前途を絶たれ、空に海に散っていった若者たちの御霊を慰めるものであったかどうかはわからない。
しかし、日本人は、そうやって責任をとってきた。
そして歴史を作ってきた。
終戦時、醜態を晒した将官もいた。
瀬島龍三のごときは・・・。
そして今は・・・
「特攻 空母バンカーヒルと二人のカミカゼ-米軍兵士が見た沖縄特攻戦の真実」マクスウェル・テイラー・ケネディ |


- 関連記事