めんどくせぇことばかり 月形半平太(覚書)『逆説の日本史 21』 井沢元彦

月形半平太(覚書)『逆説の日本史 21』 井沢元彦

雛菊「月さま、雨が・・・」
月形「春雨じゃ、濡れてまいろう」

まったくかなわないね、このセリフ。

《新国劇》に迎えられた行友李風が書いた芝居。月形半平太のモデルは土佐の武智半平太だそうだけど、やっぱり無視できないのは“月”だよね。上のセリフも、“月”に、“雨”に、“春”。やっぱり“月”がないことには恰好がつかない。
月形半平太

福岡藩黒田家。幕末の当主は薩摩藩から養子に入った長博(斉彬の大叔父)。「開国して米露と同盟を結び、英仏に抗すべき」という外交策を建白するほどの人物。これはすごいね。現代人は現代の感覚で考えるから、米露との同盟なんてビックリするけど、たしかに当時の日本にとっては、それはベストに近い選択肢。ところがこの人物、そんなに名前が通ってないよね。そのことに、月形半平太が関係してくるらしい。

黒田家は藩祖長政以来佐幕の傾向が強く、それはこの時代でもそう。でも、開明的な君主を迎えて攘夷思想を持つ者たちも、結構活躍できた。そのように優遇された藩士の一人に月形洗蔵がいた。

幕末もいよいよ押し迫り、第一次長州遠征が終わった頃、俗論派が政権を握った長州から九州に遷った三条実美ら五卿。福岡藩の預かりとなるが、これが厄介を招いた。当初の処遇はひどいものだったらしいが、三条実美の取り次ぎ役をしていた中岡慎太郎の奔走で、太宰府天満宮別当寺院の延寿王院に賓客として迎えられた。そこからは厚遇されることになるんだけど、これが厄介。預かり藩にしてみれば、“倒幕を狙う大罪人”の五卿を冷遇するか厚遇するかが、幕府に対する踏み絵となる。延寿王院での厚遇に、福岡藩佐幕派は一気に緊張した。

しかも、五卿が太宰府入りしたのは一八六五年の二月。一月には挙兵した高杉晋作が俗論派の首魁椋梨藤太らを排斥して藩の実権を握っているのだ。幕府が「福岡は長州と示し合わせて倒幕に踏み切るのでは・・・」と考えても不思議はない。藩主黒田長博が開明的で、勤王派にも好意的であることは知られている。

このような状況の中で、藩主黒田長博による勤王派の粛清が行われている。

世子である婿養子の長知は、長博以上の開明派で、長州に同情的な人物であった。藩内勤王派は、佐幕派にも寛容な長博に飽き足らず、長博に隠居を迫って長知を立て、佐幕派を一掃しようとしていた。これが粛清の理由である。このクーデタが、実際に計画されていたのか、それとも佐幕派の謀略であったのかははっきり結論の出ていないところである。しかし、粛清は間違いなく行われた。

六月二〇日、長博は勤王派一四〇人を一斉に逮捕し、七人に切腹を命じ、一四人を斬首した。斬首されたなかに月形洗蔵も含まれた。この大粛清を乙丑の獄という。

だから長博は、開明的頭脳の持ち主ながら、維新とは正反対の席を用意されることになる。日本を救う貴重な人材を多く殺してしまったのだから。


『逆説の日本史 21』 井沢元彦『逆説の日本史 21』 井沢元彦
(2014/10/24)
井沢 元彦

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ー幕末年代史編4 高杉晋作と維新回天の謎ー

筑前勤王党は薩摩との関係が深く、同時に長州に極めて同情的であった。五卿を通して中岡慎太郎と関係したことを考えれば、直後に動き始める薩長同盟に、月形洗蔵ら筑前勤皇党が無関係であったと考える方が不自然である。薩長同盟の案は、その実現に最も貢献できる筑前勤王党に始まる。それが、本書著者井沢氏の考え。たしかに、筑前勤王党がつぶれれば、まず第一に浮上するのが中岡慎太郎になる。そして、やはり薩摩、長州の双方と良好な関係を持つ龍馬に行きつくことになる。

さてさて、月形半平太。土佐勤王党の武智半平太と筑前勤王党の月形洗蔵。共通することがたくさんある。土佐藩山内家、筑前黒田家ともに、本来が佐幕の藩だということ。そこに登場し、一時は藩主をも動かした勤王党。おんなじように藩主に弾圧されてつぶされる。武智半平太も月形洗蔵も無念の死を遂げる。両者を合わせて月形半平太

言ってみたいね。   “春雨じゃ、濡れてまいろう”



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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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