『奥秩父 山、谷、峠そして人』 山田哲哉
無謀な、コースを外れたスノボを楽しみに行って遭難した人たちのことで記事書いていたら、無性に山が恋しくなってしまった。四月辺りの将監峠にあがって、小屋で一週間くらいゆっくりしてみたいな。そういえばそんな贅沢な登山なんて、一度もしたことないな。何やってたんだろうな。 | ![]() |
高齢者の、山での遭難事故が多い。報道を聞けば、やはり無理がある。 高校で山岳部に入って“山屋”になった。もちろん遮二無二「頂き」を目指した時期はあるものの、“山屋”の本質は、ひたすら山のなかに身を置くことと考えるようになった。生まれながらの股関節変形症で、痛みがひどくなったここ十五年は、それすらあきらめた。 高齢でも登山を続けられる健康な方が羨ましい。時に妬ましい。「だから年取ってからの山登りなんてやめたほうがいいんだよ」なんて、言い捨ててしまうこともある。言っておいて、後で惨めになる。 風呂に入るように、山にも浸かってもらいたい。ドップリと、首まで。この本の著者は奥秩父にドップリ首まで浸かっている。本当に好きなんだとすぐ分かる。奥秩父が。 紹介されているのは、甲武信、金峰、雲取、和名倉、飛龍、両神、雁坂、十文字などなど。いいなぁ。懐かしいなぁ。高2の夏休みは甲武信の小屋でアルバイトをしていた。週末の予定がなければ、雲取ヒュッテに歩荷に行った。 でも懐かしがってばかりもいられない。奥秩父は幾つもの問題を抱えているという。私にはもう行くことはできないが、昔のように、ドップリ首まで浸かれるような“山”であって欲しい。
もう私は行くことはないが、一番好きな場所は、将監峠である。春から初夏のさわやかな季節、将監小屋の前でなにもせず、一日を過ごす。最高だ。 忙しく「頂き」を目ざす人達、奥秩父にドップリ浸かって見ませんか。雨が降ったら小屋の軒先で、雨見ながらチビチビ一杯やって過ごして見ませんか。 |


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