『日本‐喪失と再起の物語 (上)』デイヴィッド・ピリング
著者のデイヴィッド・ピリング氏はフィナンシャル・タイムズの元東京支局長。二〇〇一年から二〇〇八ねんまで日本に滞在していたそうだ。その著者が日本を離れて三年目の三・一一、東日本大震災が日本を襲った。
バブル崩壊後の先の見えない経済的低迷はすでに二十年に達していた。著者も言うように社会の高齢化、高い自殺率、いじめ問題、巨額の財政赤字、エレクトロニクス産業の行き詰まり。そこへ巨大地震。東北地方太平洋側を飲み込んでいく津波。爆発する福島第一発電所施設。その映像は海外でも繰り返し繰り返し放映された。多くの専門家は考えた。
さすがに日本は、もう立ち上がれないだろう。・・・しかし、・・・
あの恐るべき災害で最も大きな被害を受けた沿岸地域の住民は、悲しみを背負いながらも、直後の混乱が収まると、身の回りの片付けを始めた。
著者は、将来に日本がどうあるべきかではなく、現在に日本が自分の目にどう映っているかを書きたかったという。彼にとっての日本は常に適応と進化の過渡期にあり、型にはまった普遍の社会などではないと感じているという。でも、それは当たり前のことで、そうでない社会などない。
「日本人は・・・である」
「日本人なら・・・考える」
そのような論調には抵抗があるという。その上で、「次々と押し寄せる国難に立ち向かい、その都度不屈の精神で乗り越えてきた国民の肖像を描きたい」という。それが、この本になった。
さすがジャーナリスト。日本を上手に観察して、上手に楽しんでくれてるように思える。目のやりどころは外の方ならではで、日本人の自分では気づけない様々なことに気づかせてもらえて、読んでいてとても楽しかった。
「日本というのはとても異質な国で、絶対に理解することがかなわない国である」という見方は根強いという著者の見解には賛同する。そして、それは日本人自身の中にも同様の頑なさを作り上げてしまっており、自らを特別視してしまう傾向がある。著者は内外からのステレオタイプの日本人観に反論し、その先にある日本の真の姿を描き出そうとしているようだ。その姿勢は極めてフラットなものに思えるんだけど、私はそのフラットさに疑問を感じてしまう。
日本を描き出そうとすれば、その対象となる世界が当然のように広がる。もちろん著者たち、日本をより真実に近く理解しようとする者たちの立っている世界だ。その世界からフラットな目で日本を眺めても、おそらく真の日本は見えない。日本はあまりにも宗教的だからね。でも、著者の立つキリスト教文明圏という世界も、かなり偏った世界であると思えるけどね。
日本人的な・・・、著者はこういう言い方を排除したいと思うかもしれないけど、日本人的な世界観は、かつては世界に広く存在したもんだと思うんだ。でも、ほとんどの地域で、それは捨てられた。それを捨てて、彼らは前に進んだ。でも、捨てたのは彼らの勝手であって、日本人にもそれを捨てろというのは、理不尽だと思うんだ。とりあえず読みはじめてみての印象なんだけど、どうもやっぱり“捨てろ”と言われてるような気がするんだ。
ジョン・ダワーの書いた『敗北を抱きしめて』という本があった。私も読んだ。著者は、外国人の目から見た、戦争や、戦後の日本の歴史を書いた本の中では、これが最も優れていると書いている。んんん~、私はそうは思わない。ヘレン・ミアーズの『アメリカの鏡・日本』。この本の上をいくものは今のところないと思う。
そうそう、著者の歴史認識は不満。これについては、また今度書かせてもらおうっと。

一喜一憂。ぜひポンとひと押しお願いします。
バブル崩壊後の先の見えない経済的低迷はすでに二十年に達していた。著者も言うように社会の高齢化、高い自殺率、いじめ問題、巨額の財政赤字、エレクトロニクス産業の行き詰まり。そこへ巨大地震。東北地方太平洋側を飲み込んでいく津波。爆発する福島第一発電所施設。その映像は海外でも繰り返し繰り返し放映された。多くの専門家は考えた。
さすがに日本は、もう立ち上がれないだろう。・・・しかし、・・・
あの恐るべき災害で最も大きな被害を受けた沿岸地域の住民は、悲しみを背負いながらも、直後の混乱が収まると、身の回りの片付けを始めた。
著者は、将来に日本がどうあるべきかではなく、現在に日本が自分の目にどう映っているかを書きたかったという。彼にとっての日本は常に適応と進化の過渡期にあり、型にはまった普遍の社会などではないと感じているという。でも、それは当たり前のことで、そうでない社会などない。
「日本人は・・・である」
「日本人なら・・・考える」
そのような論調には抵抗があるという。その上で、「次々と押し寄せる国難に立ち向かい、その都度不屈の精神で乗り越えてきた国民の肖像を描きたい」という。それが、この本になった。
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さすがジャーナリスト。日本を上手に観察して、上手に楽しんでくれてるように思える。目のやりどころは外の方ならではで、日本人の自分では気づけない様々なことに気づかせてもらえて、読んでいてとても楽しかった。
「日本というのはとても異質な国で、絶対に理解することがかなわない国である」という見方は根強いという著者の見解には賛同する。そして、それは日本人自身の中にも同様の頑なさを作り上げてしまっており、自らを特別視してしまう傾向がある。著者は内外からのステレオタイプの日本人観に反論し、その先にある日本の真の姿を描き出そうとしているようだ。その姿勢は極めてフラットなものに思えるんだけど、私はそのフラットさに疑問を感じてしまう。
日本を描き出そうとすれば、その対象となる世界が当然のように広がる。もちろん著者たち、日本をより真実に近く理解しようとする者たちの立っている世界だ。その世界からフラットな目で日本を眺めても、おそらく真の日本は見えない。日本はあまりにも宗教的だからね。でも、著者の立つキリスト教文明圏という世界も、かなり偏った世界であると思えるけどね。
日本人的な・・・、著者はこういう言い方を排除したいと思うかもしれないけど、日本人的な世界観は、かつては世界に広く存在したもんだと思うんだ。でも、ほとんどの地域で、それは捨てられた。それを捨てて、彼らは前に進んだ。でも、捨てたのは彼らの勝手であって、日本人にもそれを捨てろというのは、理不尽だと思うんだ。とりあえず読みはじめてみての印象なんだけど、どうもやっぱり“捨てろ”と言われてるような気がするんだ。
ジョン・ダワーの書いた『敗北を抱きしめて』という本があった。私も読んだ。著者は、外国人の目から見た、戦争や、戦後の日本の歴史を書いた本の中では、これが最も優れていると書いている。んんん~、私はそうは思わない。ヘレン・ミアーズの『アメリカの鏡・日本』。この本の上をいくものは今のところないと思う。
そうそう、著者の歴史認識は不満。これについては、また今度書かせてもらおうっと。


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