めんどくせぇことばかり 続『日本‐喪失と再起の物語 (上)』デイヴィッド・ピリング

続『日本‐喪失と再起の物語 (上)』デイヴィッド・ピリング

著者のデヴィッド・ピリング氏が日本通であることは間違いない。日本が好きなことも間違いなさそうだ。ただ、・・・その“好き”っていうのが、けっこう問題ありそうなんだ。
日本は優れた技術力を持つ欧米の脅威に直面し、中国中心の世界観とはきっぱりと決別して、西欧の「列強」を手本とするようになる。封建制度を廃止して近代化をめざしたのである。その後、人種差別的で狂信的な天皇崇拝の旗印の下で領土拡張に乗り出すが、その残忍で帝国主義的な試みは、悲劇的な敗戦と国家滅亡の危機にまで自国を追い込むことになるのだ。その結果、今日でも、日本はアジア地域で孤立し、近隣諸国との関係では、いまだに歴史問題を引きずっている。こうして日本は、欧州の一部になれないばかりか、完全にアジアの一因にもなりきれず、当てもなく漂流しているように見える。外交的に唯一の頼みの綱は、アメリカの「従属国」として結んでいる関係だけだ。

とまあ、こんな調子なんだな。

・・・おいおい、イギリス人にそんなことを言われる筋合いはねぇよ・・・と、そんな声が聞こえてきそうなところだね。有色人種を蔑視する白人に必死でウェストファリア体制に食いついていった日本人にすればね。

「神によって与えられた権利」なんか要求されたって困んだよ。日本にいるのは、怖いけどなんだか融通のききそうな八百万の神様たちなんだから。しかたなしに天皇陛下をかつぎあげることになるけど、陛下だって迷惑な話だったろうよ。でも、白人列強ののさばる世界で自分の足で立って行こうとするんなら、けっこうな無理も押し通すさ。何が悪い。
 
『日本‐喪失と再起の物語 (上)』デイヴィッド・ピリング『日本‐喪失と再起の物語 (上)』デイヴィッド・ピリング
(2014/10/24)
デイヴィッド ピリング

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ー黒船、敗戦、そして3・11ー

それでも著者は、日本の潜在的な力を高く評価してんだよな。おまけにマナーを重視して他人に気遣いをする日本社会に、劣等感に近いほどの好感触を持ってるんだよな。でもね・・・

『19世紀、日本が列強の植民地的野心に立ち向かった挙句、数百万もの自国民の命を犠牲にして国家滅亡一歩手前まで行った。これが逆境をばねにすることであるなら、おそらく、なにもしない方がまだましだったろう』なんて言われた日にゃあ、ちょっと勘弁できないだろう。ったく、あの頃、自分たちが何をやってきたかって記憶に残ってねえのか。都合のいい健忘症か。敗戦に至る経緯には稚拙な間違いも多々あったよ。でもな、お前らアジアで何してた?

明治以来の皇室と国民の関係については、著者自身が偏見から解き放たれていないようだ。天皇の人間宣言を面白おかしく取り上げるなら、どうして《朕と爾等国民との間の紐帯は、終始相互の信頼と敬愛とに依りて結ばれ、単なる神話と伝説とに依りて生ぜるものに非ず》という一言に言及しない。 『戦前の日本がまさにそれを真実(天皇を現人神と認識すること)として受け入れていた』なんて、本気で書いているんだから参ってしまう。

宮内庁が古墳の調査を禁じているのは、何らかの不愉快な真実の判明を怖れているからで、それは皇室と朝鮮半島のつながりであるというようなことが述べられている。朝鮮から多数の帰化人が来朝したのは事実。しかし今、私たちは支那語でも朝鮮語でもなくヤマト言葉を起源とする日本語を話し、漢字仮名混じり文を発明して自らの思いを自由自在に書き表している。支那人とも朝鮮人とも違う日本人的特性の、ときに不都合な事態を生じさせるところをも理解したうえで、それに多いに誇りを持っている。古墳からもしも、これまで知らなかった新たな事実が明らかにされるなら、先祖の苦労を愛おしく迎え入れよう。

でもね。諸外国と違って、その血脈を受け継ぐ方々がおられるのよ。そういうのがない、歴史と現代が断絶してしまっている国の人には分かりづらいかもしれないけど、日本はそうじゃないからね。慮りも必要でしょ。分かんないかな。

人間宣言のことと言い、古墳調査のことと言い、どうも著者は、日本の左翼系の言論の影響を強く受けているようだ。高慢なイギリス人的人種偏見に、日本のわけの分かんない左翼思想の影響とあっては・・・、どうにもね。

第4章『「脱亜」への決意ー日本外交のルーツをたずねて』の最初の項目には、『「脱亜」に成功し、「入欧」に失敗する』というお気楽な題名がつけられている。そんな簡単なことじゃないんだよ、福沢が「脱亜」を叫んだのは・・・。それは声にならない慟哭。そんなことも理解できずに著者は、『列強植民地政策の矛先である弱者から、アジア侵略国家という強者への変貌』などと、《脱亜入欧》を受けとめているんだそうだ。

・・・もういいや、これ以上読まなくて・・・。下巻、買わなくて良かった。




     




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こんな本、あんな本


この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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