めんどくせぇことばかり 『満州国演義9 残夢の骸』 船戸与一

『満州国演義9 残夢の骸』 船戸与一

主人公は敷島四兄弟。長男太郎は満州国国務院外交部政務処長。次男次郎は満州で馬賊を率い、後に放浪の身に・・・。やがて、陸軍の裏側の活動に巻き込まれていく。三男三郎は陸軍少佐。関東軍憲兵隊の花形。四男四郎は満映勤務を経て関東軍特殊情報課第四班嘱託を務める。その敷島四兄弟に粘りつくようにして生きる間垣徳蔵。果たしてその関係は・・・。

第八巻を読んだとき、ブログに、以下のように書いた。
この物語の特異性は第一巻冒頭で会津戦争を描いたことにある。そこで、ひとりの会津武士の娘が官軍兵士に凌辱されるシーンがえがかれている。これがどう敷島四兄弟の人生に関係してくるか。敷島四兄弟それぞれの人生に共通して絡んでくる奉天特務機関中佐の間垣徳蔵とは何者か。兄弟や間垣の人生はどう会津戦争とつながっているのか。


『満州国演義9 残夢の骸』 船戸与一『満州国演義9 残夢の骸』 船戸与一
(2015/02/20)
船戸 与一

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ー足掛け八年、全九巻の最終巻ー

陵辱された会津武士の娘は物語の都合上、自分を犯した官軍兵士の子を生んでいるはず。官軍兵士とは、物語の都合上、長州藩士であるはず。斗南でも、その後も、生まれた子は会津の者達からは長州藩士の子と見られる。自分の出生を知れば、彼は長州を憎むとともに、自分に辛く当たる会津をも蔑んだはず。

・・・この物語の主人公は、その“子”であるべきだったんじゃないかな。

実際、物語の中でも、会津武士の娘を陵辱した官軍兵士は長州藩士の敷島某で、敷島四兄弟は陵辱された会津武士の娘の子と祖父を同じくする。つまりいとこ同士。それは、この九巻でようやく語られた真実。

残念ながらその真実は、“満州”には関係してこなかった。それも、陵辱された会津武士の娘の子である間垣徳造の過去の生育歴を何ら語ることもなく、大日本帝国の最後を迎える時期に、間垣から敷島太郎に語られるだけで終わる。

やはり、間垣徳造を主人公にすべきだったね。

その時代の中での四兄弟の生き様に、そのまま物語を重ねていく物語になっているので、物語というよりも、その時の昭和史、しかも、かなり特異な昭和史を読まされた感がある。明治維新期における、特に長州藩の中のドロドロとしたルサンチマンが、最悪な形でこの時期に噴き出してくるからだ。

物語の中では、昭和史における日本の無様を、吉田松陰の『留魂録』にある対アジア侵略思想を背景にするかのように書かれるが、幕末の限られた情報の中で、刑死を目前に書かれた『留魂録』を何かの当てにするのはお笑いだ。

長州は、武士としての体面を保とうとする幕府を、いや、幕府に代表される“武士”そのものを滅ぼした。滅ぼされた会津や幕府を中心に、傍流から“武士”はそのイメージを後に伝えたが、明治からの日本の本流は長州のドロドロとしたルサンチマンだ。

この物語は、それを執拗に書く。

いつの間にか、昭和史実録物にかわってしまっので、わたしたちは物語の行く末を類推できる。まずは、最も感受性豊かな次郎は、すでに前巻で滅んだ。他の兄弟も・・・。

一時は、満州物のバイブルに・・・、なんてことを考えたこともあったので、終盤はちょっと残念。全九巻で終了したことに、どこかでホッとしている。おそらく著者の方もそうなんじゃないかな。
船戸与一さんの書いたものの中では、ずいぶん前の本だけど、『蝦夷地別件』が面白かったな。あれが最初で、そこから船戸さんの本を読み漁った。




    




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この本、今でも売れてるんですね。何時頃読んだんだろう。記憶も定かじゃないけど・・・。この男の子が嫌いでね。涙が出た。白血病で入院してた女子高生にこの本を送ったことがある。感想、聞かせてもらってないな。



中学1年で読んだと思うんだけどな。アレクサンダーの伝記。夏休みの読書感想文で郡市の大賞を取ったんだ。「アレクサンダーによって異なる国や民族が一つの領域にまとめられたように、いつかこの世界も・・・」・・・なんてことを書いた。なんだか、アメリカがやろうとしてるよね。・・・当時はそれがいい事のように思ってた。



高校で山岳部に入ったんだよね。もとが山ん中だからさ。そんでもって山岳部っていうのもどうかと思ったんだけど。この本を読んじゃったもんでね。入部したての1年の夏休み、北鎌尾根から槍に登った。・・・記憶に誤り。取り付いただけだった。



今みたいに女の裸が氾濫している時代じゃなかったわけですよ。私の中学生時代っていうのは・・・。そんな時代なのに、中学校の図書館に置いてあったんですからね。この表紙の本が・・・。手にした理由はもちろんこの表紙の女。・・・もちろんそんなことは誰にも言えない。ただ、以前から無類の本好きであったことは功を奏した。それに加えて、私は以前からのSFファンということになった。この本を不自然なく手にするために・・・。
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