アメリカはなぜ日本を追い込んだのか(覚書)『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか』 石平
この本の中に、アメリカが日本をアメリカとの戦争に追い込んだ理由について、石平さんの考え方が記されている。
アメリカが日本を戦争に追いこんだがことさらに語られること自体、石平さんが、それを不自然なことと感じていることを証明しているわけだ。
石油禁輸と並んで、アメリカが日本を開戦へと追い込んだもう一つの決定的な行動として、石平さんは「ハル・ノート」を取り上げている。
さて、それでは、石平さんが取り上げた、「ハル・ノート」にかかわる《「植民地利権」云々をはるかに越えた別の論理》を考えてみよう。
アメリカは、その《スタンス》を、弱肉強食の帝国主義から「領土不全、主権不可侵原則」「内政不干渉の原則」「機会均等の原則」「手続きによる国際調停の原則」へと変更して、それを日本への要求として突きつけたというのだ。英仏がいまだに植民地に対して力による支配を続ける中、アメリカは“清教徒として信仰心の厚い当時のアメリカ人は、国内において信奉している民主主義の理念を、神の掟の普遍的理念として後進のアジアに広めようとしていた”、というのだが・・・。
その「アメリカの理念」、「アメリカの正義」のために、血の犠牲を払ってそれをやり遂げた。大した「利権」につながるわけでもないのに太平洋と東南アジアの全域に大軍を送って十万もの若者の命を犠牲にして日本と戦ったって言うんだけど・・・。
それって、南進論に追い込まれていった日本が、そのために東亜新秩序という理念を持ちださざるを得なくなった状況とおんなじじゃないかな。石平さんは、この段階で、日本と戦わなければならないほどの「中国利権」をアメリカは持ってないって言うけど、それはちょっと逆に説得力に欠ける。
大体アメリカが新機軸を打ち出したのは、パリ講和会議に際してウッドロー・ウィルソンの提唱した十四か条が始まりで、そもそもそれ自体が第二次世界大戦の遠因をつくった。新機軸を打ち出す割には無責任なんだ。この段階におけるアメリカの行為は、世界に対して責任を取る意識もなく自分本位の新機軸を打ち出した、ノータリンな暴れん坊という状況だ。
ハル・ノートの四原則もその筋にそっているが、まず言えるのは“四項目”に反するものに侵略のレッテルを張れること。アメリカはそれまでの所業を棚上げして、侵略の対岸に席を確保できること。それが、すでに世界の債権国となったアメリカの利益に反していないことだな。以上のようなアメリカにとっての好都合があげられる。おまけを言えば、日本とアジアに対する勘違いとモーレツな差別意識がある分だけ余計にたちが悪いということだ。
だいたいが、ハル・ノートの原案を練り上げたハリー・ホワイトはソ連のスパイで、アメリカに日本をぶつけることが目的でこれを書いた。その点でルーズベルトと利害が一致したってわけだな。もちろん共産主義者のシナリオに利害が一致してしまうアメリカ大統領がおかしいわけだけどね。そのへんのところは、アメリカが勝った後のアジアを見ればよくわかる。大東亜共栄圏構想の余波で多くの国々が独立したことのほか、アメリカにとってを考えてみても、何一ついいことはなかったわけだからね。
石平さんの言うとおり、アメリカはあれを“新機軸”として日本を追い込んで打ち破り、流れはそのまま戦後世界に通じてくるわけだ。“新機軸”の打ち出しは、ウッドロー・ウィルソン、フランクリン・ルーズベルトという二人の狂人の人並み外れた自己顕示欲によった点が大きいと思う。この二人の狂人は、第二次世界大戦から現在に至る世界政治に、きわめて大きな影響を与えているように思える。

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アメリカが日本を戦争に追いこんだがことさらに語られること自体、石平さんが、それを不自然なことと感じていることを証明しているわけだ。
しかし当のアメリカはなぜ、日本軍の南部フランス領インドシナ進駐を理由に日本への石油禁輸に踏み切ってまで、あれほどの窮地に日本を追い込まなければならなかったのか。考えてみればじつに不思議である。日本軍が進駐した南部フランス領インドシナはその名称の通り、そもそもフランスの植民地であり、フランスこそがこの地域に莫大な利権を持っている。日本軍の進駐に対して本気になって日本と対立しなければならなかったのは、当のフランスであるべきだ。 だが妙なことに、このフランスにとって代わり、日本との全面対決も辞さずに厳しい制裁に踏み切ったのは、この地域の植民地利権とほとんど関係のないアメリカだった。それはなぜか。じつはそのときのアメリカは、「植民地利権」云々をはるかに越えた別の論理で行動していたからだ。 本書P104 |
『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか』 石平 PHP新書 ¥ 842 中華秩序の本質を知れば、「歴史の法則」がわかる |
石油禁輸と並んで、アメリカが日本を開戦へと追い込んだもう一つの決定的な行動として、石平さんは「ハル・ノート」を取り上げている。
さて、それでは、石平さんが取り上げた、「ハル・ノート」にかかわる《「植民地利権」云々をはるかに越えた別の論理》を考えてみよう。
切実な理由(これが石平さんが言う、中華思想にとりつかれた日本ということになるわけだが)があって、日本側は結局、ハル・ノートを受け入れられないものとしたが、不思議なのはむしろ、「支那からの撤兵」を日米戦争回避の条件として日本側に突きつけたアメリカのスタンスである。 本書P106 |
アメリカは、その《スタンス》を、弱肉強食の帝国主義から「領土不全、主権不可侵原則」「内政不干渉の原則」「機会均等の原則」「手続きによる国際調停の原則」へと変更して、それを日本への要求として突きつけたというのだ。英仏がいまだに植民地に対して力による支配を続ける中、アメリカは“清教徒として信仰心の厚い当時のアメリカ人は、国内において信奉している民主主義の理念を、神の掟の普遍的理念として後進のアジアに広めようとしていた”、というのだが・・・。
その「アメリカの理念」、「アメリカの正義」のために、血の犠牲を払ってそれをやり遂げた。大した「利権」につながるわけでもないのに太平洋と東南アジアの全域に大軍を送って十万もの若者の命を犠牲にして日本と戦ったって言うんだけど・・・。
それって、南進論に追い込まれていった日本が、そのために東亜新秩序という理念を持ちださざるを得なくなった状況とおんなじじゃないかな。石平さんは、この段階で、日本と戦わなければならないほどの「中国利権」をアメリカは持ってないって言うけど、それはちょっと逆に説得力に欠ける。
大体アメリカが新機軸を打ち出したのは、パリ講和会議に際してウッドロー・ウィルソンの提唱した十四か条が始まりで、そもそもそれ自体が第二次世界大戦の遠因をつくった。新機軸を打ち出す割には無責任なんだ。この段階におけるアメリカの行為は、世界に対して責任を取る意識もなく自分本位の新機軸を打ち出した、ノータリンな暴れん坊という状況だ。
ハル・ノートの四原則もその筋にそっているが、まず言えるのは“四項目”に反するものに侵略のレッテルを張れること。アメリカはそれまでの所業を棚上げして、侵略の対岸に席を確保できること。それが、すでに世界の債権国となったアメリカの利益に反していないことだな。以上のようなアメリカにとっての好都合があげられる。おまけを言えば、日本とアジアに対する勘違いとモーレツな差別意識がある分だけ余計にたちが悪いということだ。
だいたいが、ハル・ノートの原案を練り上げたハリー・ホワイトはソ連のスパイで、アメリカに日本をぶつけることが目的でこれを書いた。その点でルーズベルトと利害が一致したってわけだな。もちろん共産主義者のシナリオに利害が一致してしまうアメリカ大統領がおかしいわけだけどね。そのへんのところは、アメリカが勝った後のアジアを見ればよくわかる。大東亜共栄圏構想の余波で多くの国々が独立したことのほか、アメリカにとってを考えてみても、何一ついいことはなかったわけだからね。
石平さんの言うとおり、アメリカはあれを“新機軸”として日本を追い込んで打ち破り、流れはそのまま戦後世界に通じてくるわけだ。“新機軸”の打ち出しは、ウッドロー・ウィルソン、フランクリン・ルーズベルトという二人の狂人の人並み外れた自己顕示欲によった点が大きいと思う。この二人の狂人は、第二次世界大戦から現在に至る世界政治に、きわめて大きな影響を与えているように思える。


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