『岡田英弘著作集 シナとは何か?』『破綻する中国。反映する日本』
『岡田英弘著作集 第四巻 シナとは何か?』 藤原書店 ¥ 5,292 皇帝はさまざまな事業を経営しており、皇帝というシステム自体が、巨大な営利事業体であった |
岡田英弘さんの本で読んだんだけど、支那の歴史の特徴をなすのは皇帝制度というシステムで、これ抜きに支那は語れないという。岡田さんは、“皇帝こそが支那の本質”とまで言う。
支那はいつの世でも皇帝が中心であり、皇帝が時間を支配した。暦をつくるのは皇帝の特権で、民間で暦を発行したら反逆とみなされた。年号をつくるのも皇帝と特権で、皇帝は空間を支配するだけでなく、時間をも支配したのであると・・・。 |
皇帝制度は巨大な営利事業でもあったという。皇帝は全国に県城と呼ばれる城壁を巡らせた地方都市を設置し、そこに官吏を派遣して、年貢を集め、首都から送った商品を売りさばく市場を設けた。皇帝はたくさんの都市を直営した。市場で取引するには入場料を払わなければならない。これは税金として直接皇帝の収入となる。また幾つもの税関の収入も同様である。
ちなみに始皇帝が統一した“天下”とは、“世界”というのとはちょっと違う。“天下”とは、皇帝が営利事業を営む“商業圏”をいう。つまり、皇帝が皇帝が経営する直営の都市がおかれている範囲が“天下”である。 |
後世になると、磁器や絹織物をつくる工場が登場するが、一番上等な製品を作る稼ぎ頭の工場は皇帝の直営で、一手に専売が行われた。さらに、資金の必要な物は皇帝から借りた。現在も、支那で、民間銀行という発送がないのはそのせいかもしれない。皇帝は銀行でもあったのだ。
皇帝に様々なルートで収入が流れ込んでくるしくみが作られていたが、これはあくまで皇帝の収入であった。
地方のあらゆる官庁は独立採算制で、官庁はサービスを提供したらその分だけコミッションを取る。官吏は原則として俸給はもらっていないのだ。サービスを提供しコミッションを取ることが許されている立場を官吏という。 |
たとえば裁判なら、官吏は原告と被告の両方からコミッションを取ったり、口利きをするなどして生活費を稼ぐ。どれだけ稼ぐかは、その官吏の個人的才能による。そしてそれは今でもそうで、人民解放軍は万を数えるほどの私企業を抱えているという。それは兵隊や将校の生活を支える糧となる。
兵器工場でピストルを大量生産して、日本のヤクザに売りさばく。そんなことは人民解放軍にしてみれば常識的なことであるという。・・・ちょっと待って。人民解放軍って、一体何してるの?
『破綻する中国、繁栄する日本』 長谷川慶太郎 実業之日本社 ¥ 1,620 シャドーバンキングの経営破綻で中国の中小企業300万社が倒産の危機、2億人の失業者発生の可能性 |
この本で、北朝鮮の張成沢の処刑に関して解説してもらった。この時点で、習近平は瀋陽軍区を筆頭とする人民解放軍を掌握していた。胡錦濤時代、あそこまで北京政府の鼻面を引き回した瀋陽軍区。習近平はどうやってそれを手なづけたのか。
種明かしは意外となんてことはない。習近平が、・・・ということは北京政府が、人民解放軍の抱えた借金の肩代わりをしてやったと言うだけのこと。人民解放軍の借金っていうのが、シャドーバンキングの焦げ付きってことだな。 |
正直、この本でそう解説されても、『シナとは何か?』で、支那特有の皇帝制度というシステム自体が巨大な営利事業体であるということを知るまでは、なぜ人民解放軍がシャドーバンキングの実態となりうるのか、まったく理解できなかった。
習近平は“汚職没滅”とかやってるけど、皇帝というシステムは、ある意味“汚職”を前提としているわけだ。つまり、「汚職をやめろ」というのは、「収入を得てはいけない」というに等しいわけだ。
軍となると、なかなかうまい汁にありつけないから、その代わりが軍事費の増大ね。人民解放軍はそれを、支那未曾有の経済成長にかこつけて、シャドーバンキングによる利殖に結びつけようとした。なんと十数年連続して二桁台の増加を続けた軍事予算、これがシャドーバンキングに転用されていたという。だから、シャドーバンキングの経営者は人民解放軍の幹部がほとんどであるという。 |
それにしても、なんてことだろう。辛亥革命で清王朝が倒されたのち、袁世凱は皇帝になろうとして夢破れ、失意のうちに死んだ。彼が死んで内乱期となり、ソ連よりの中華人民共和国の時代となった。でも、いきなり毛王朝と呼ばれていたし、改革開放の時代になっても、やっぱり皇帝体制というシステムで動いているんだね。だとしたら、現在の皇帝は?習近平ってことになるのかな。それとも中国共産党のほうがふさわしいのか?


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