『武士道の名著 - 日本人の精神史』 山本博文
以前の記事に、ちょこっと手を加えました。
この本、各項目の最後にその項で取り上げた名著の中の選りすぐりの名言をあげています。書かれている内容を類推するにも役立つと思うので、その中のいくつかを紹介します。最近のニュースと照らし合わせてみると、・・・どうにもその精神は受け継がれていないみたいに思えるんだけどね。 |
恩ばかり受けて、用に立つことを心懸ざる侍は、其家にて、君に忠孝忠節したる人を、猜むものなり (小幡景憲『甲陽軍鑑) | |
治まれる時乱を忘れざる、是兵法也 (柳生宗矩『兵法家伝書』)
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神仏を尊べど、これをたのまず (宮本武蔵『五輪書』) | |
およそ士の職と云うは、其身をおもうに、主人を得て奉公の忠を尽くし、朋輩に交わって信を厚くし、身の独りを慎んで義を専らとするにあり (山鹿素行『山鹿語録』)君子小人の差、王道と覇者の違いは、すべて義と利との間に之有る也 | |
我々一分之身晴れに討ち死にいたすべき道理なし 待にくき所を待ち、恥多して時節を相待申すも、勇義にても之有るべく候 (堀部武庸『堀部武庸筆記』) | |
武士道とは死ぬことと見つけたり (山本常朝『葉隠』) | |
武田、越後の上杉と、信濃の川中島という所に戦いし時に、みかたの軍やぶれぬと見えしかば、かの山本まつさきに討ち死にしてけり。すこしく恥ある事をしらむものはかくこそありけれ (新井白石『折たく柴の木』)
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この度の役儀につき、女房には暇をやるので、親元へ帰れ。子供は勘当するので、どこへでも立ち退け。家来どもは暇をやるので、どこへでも奉公せよ。 (恩田木工『日暮硯』) | |
凡そ事をなすには、すべからく天につかうるの心有るを要すべし。人に示すの念有るを要せず 当今の毀誉は懼るるに足らず。後世の毀誉は懼るべし (佐藤一斎『言志四録』)
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身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留置まし大和魂 至誠にして動かざる者は未だ之れ有らざるなり (吉田松陰『留魂録』) | |
廟堂に立ちて大政を為すは天道を行ふものなれば、些かとも私を挟みては済まぬもの也 万民の上に立つ者は、己を慎み、品行を正しくし、驕奢を戒め、節倹に勉め、職務に励んで人民の規範となり、人民がその働きを気の毒に思うくらいでなければ政治は行えない。それなのに、創業の始めに立ちながら、家屋や衣服を飾り、美妾を置き、蓄財に励むようでは、維新の功業は遂げられないだろう。今となっては戊辰の義戦もまったく自分のために行ったようになり、天下や戦死者に対して面目ない (西郷隆盛『西郷南州遺訓』) | |
サムライにとって、卑怯な行動や不正な行為ほど恥ずべきものはない 武士道は、日本の標章である桜の花に勝るとも劣らない、わが国土に根ざした花である (新渡戸稲造『武士道』) |
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この前、読者様からコメントをいただきました。
『日本の全人口のたった1割にすぎなかった武士の教えを日本人の代表的思想にするよりも、商人としての道徳や社会との利益共生を説いた近江商人や石田梅岩などの「商人道」を、現代日本人はもっと注目するべきでは・・・』 |
「売り手良し、買い手良し、世間良し」といった近江商人の考え方。武士ではなく商人であっても、「借金の証文に、いついつまでに返済すると書き、“もし、このことに違えば、どうぞお笑い下さい”」というのが江戸時代までの証文だったとか。武士という以前に日本人としての穢れを遠ざけた“清き明き心”、“誠の心”を尊ぶ姿が見られます。 |
そういうものの上に武士の特殊性があるんでしょうね。
でも、読者様にもお返事したんですけど、外向きには“サムライ・ジャパン”ですよね。“アキンド・ジャパン”は腰は低そうだけど、あまり強くなさそうだし・・・。
山鹿素行や佐藤一斎の言葉は、比較的スッと入って来て共感を生みやすいんじゃないかと思えます。もちろん、その気になってそんな生き方を貫こうとするほど骨のある人間じゃありませんけどね。でも、そう長い将来を持つ身でもなし、なんかの時は、それなりの意地を張ってみようかなってくらいのことですね。
佐藤一斎の言う、「天につかうるの心」で、おもむくままに力を尽くして、その先は、「いたるところ青山あり」と。この先は単純に、ひたすら単純に・・・。


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