『井沢元彦の激闘の日本史 北条執権と元寇の危機』
蒙古襲来を、井沢さんがどう三枚におろすのか。・・・“三枚おろし”は武田鉄矢さんの専売特許か?・・・それはともかく、すでに『逆説の日本史』で取りあつかっている時代。あらためて取り上げるからには、より深く掘り下げた内容となる。楽しみに読みました。 |
とりあえず、《一般常識としての蒙古襲来》がどのようなものか。それを見ておきましょう。
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神風のお蔭ってことですよね。亀山天皇が神に祈ってくれてるわけでしょ。あの筥崎宮に奉納された『敵国降伏』の扁額ね。あれのおかげで神風が吹いたってことですよね。それで勝てたと・・・。まさかね。 | ![]() |
日本は神風のおかげでモンゴル軍に勝ったのではない。突然の暴風雨に恵まれたこともあるが、基本的には鎌倉武士団の奮闘ことが、第一の勝因である。 |
これが基本的な結論ね。この線は本書でも動きません。当然だけど。だけど、掘り下げ方は『逆転の日本史』で扱った時以上だった。たったこれだけの結論を語るために、なぜ真実が語られず神話のほうが定着してしまったかという理由を語るために、これだけの掘り下げが必要だったということだ。
d | 『井沢元彦の激闘の日本史』 株式会社KADOKAWA ¥ 2,052 世界史から見て例外中の例外、・・・だからこそ、このできごとから日本史の特徴がわかる |
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井沢さんが門外漢の立場から日本史学会に喧嘩を売らざるを得なかったのは、日本の歴史学会っていうのが歴史学の本筋から道を外しているからに他ならない。歴史から、たとえば日本人の一般的法則を抽出し、それを今後の日本に活かすって言うような姿勢が、今の日本の歴史学会にはない。のみならず、日本の歴史は、特に戦後、マルクス史観に染まっていまだにその影響下から抜け出せずにいる。
たとえば井沢さんは護憲派の人たちを取り上げて、「神風が吹いた」と固く信じる人たちの精神構造と一緒であると言っている。それはなぜか。 |
亀山天皇や宮中の人々は、実際に元軍を撃退した鎌倉武士の功績を軽視して彼らを代表する北条時宗に褒美の一つもないばかりか、褒め言葉の一つ与えていない。天皇及び宮中の人々は自分たちの行った言あげこそが神を動かして風を読んだと信じていたからだ。さらには死や血をけがれとして、それに携わる武士たちを見下していたからだ。
護憲論者とは、憲法九条をおし頂いて「自衛隊廃止」を叫ぶ人たちである。「平和憲法」を守って軍事力を持たない“平和国家”に徹することで、これまでのように日本の平和は維持できると考える人たちである。
・・・ってこういう人たちね。まあ、私もあんなくらいの歳の時分には三里塚や横須賀に出没していたからな。・・・でも、こんなじゃなかったと思うんだけどな。
この映像の中でインタビューに答えてる人たち。もしも、バイトでお金もらってるからあんなことを言ってるんならいいんですけど、もしも本気でそう言ってるんなら、きっとなんかの時には神風が吹くと、ウルトラマンかなんかが来てくれると、そう思ってるんじゃないでしょうかね。


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